植物におけるホウ素の働き
植物が生長するために必要な微量要素の一つに「ホウ素」があります。ホウ素は土壌中から根によって吸収されて作物の隅々に行き渡ります。ホウ素の働き
ホウ素は主に植物の細胞壁を構成する成分で、根や新芽の生育を促進したり、細胞分裂や受粉に関わります。ホウ素の欠乏と過剰
ホウ素が植物体内で不足すると「欠乏症」、過剰になると「過剰症」があらわれます。特にアブラナ科野菜などでは、生長に必要なホウ素量が多いため、欠乏症を起こしやすい微量要素です。
ホウ素欠乏症とは
ホウ素の量が植物体内で不足することで起きる「ホウ素欠乏症」について説明します。ホウ素欠乏症の症状
「新芽が茶色く変色している」「果実にかさぶたのようなものができている」そんな症状はホウ素欠乏症かもしれません。ホウ素は植物内で移行しにくい成分なので、欠乏すると上位葉(新しい葉)や新芽、果実に症状が現れやすくなります。
先端部や生長点は萎縮し、新葉の生育が停止し、茎や果実の亀裂やコルク化、根の伸長不良、種子ができないなど植物によってさまざまな症状が出ます。
ホウ素欠乏症が出やすい植物
アブラナ科作物や果菜類などで影響が出やすくなります。ハクサイ
葉はデコボコと変形、奇形化します。葉柄部は木質化して茶色く変色し、その後両脇部分から白く枯死します。▼ハクサイの育て方ならこちらをご覧ください。
ダイコン
褐色芯腐れ症といって、根の表面がガサガサし、芯が黒く変色して空洞(スが入る)ができます。▼ダイコンの育て方ならこちらをご覧ください。
トマト
生長点近くの新芽や葉が周囲から茶色く変色し、生長が止まります。果実では、表面が引っかき傷のような茶色いカサブタ状になり、茎の内部がコルク化することもあります。
▼トマトの育て方ならこちらをご覧ください。
ホウ素欠乏症の原因
ホウ素欠乏症が引き起こされる原因について説明します。1. pHが高いアルカリ性の土壌
ホウ素は土壌pHの影響を受けやすく酸性土壌に溶けやすいため、土壌中にホウ素が十分にあったとしてもpHが高いアルカリ性の土壌では不溶化して、根から吸収できないことがよくあります。2. 土壌の過湿
土壌の過湿、病害虫の食害などによる根傷みで根の機能が弱ると、栄養分の吸収が抑制されホウ素欠乏が起こります。また、pHが低い土壌でも多雨が続くと土壌中のホウ素が水に溶けて地下に流れ出てしまうため、欠乏症が発生することがあります。
3. 土壌の過乾燥
水分の少ない過乾燥の土壌では、ホウ素が溶出しないため欠乏が起こりやすくなります。4. 砂質化した土壌
老朽化した粘土質の少ない砂質化しているような場所では、ホウ素の溶出が進みホウ素欠乏症が起こりやすい傾向があります。ホウ素欠乏症を発症させない管理や対策
ホウ素欠乏症を発症しないための管理方法について説明します。1. 土壌pHの調整
pHの高い圃場(ほじょう)では欠乏症の予防のため石灰(カルシウム肥料)の使用は控え、硫安、硫酸カリなどの酸性に傾ける肥料を使用します。※圃場とは、田や畑のような農作物を育てる場所のこと。
▼土壌のpH測定のことならこちらをご覧ください。
2. 土壌改良
乾燥を防ぐため水はけの良過ぎる圃場では、腐植を入れて保水性を高めたり、畝間に敷き藁やマルチを貼って水分の蒸発を抑えます。また、砂質化した土地は保肥力を高めるためにも、堆肥や腐食を投入することも効果的です。
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▼堆肥など有機質肥料のことならこちらをご覧ください。
▼マルチのことならこちらをご覧ください。
3. ホウ素肥料の施用
土壌のホウ素不足が疑われる場合は、ホウ素入りの複合肥料や微量要素肥料、あるいはホウ砂を1aあたり100gを元肥として施用します。微量要素肥料やホウ砂は面積に対して量が少ないので、まきムラに注意して圃場の全面に均一に施用します。
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4. 葉面散布
栽培中にホウ素欠乏が発生した場合の応急処置としては高湿・高温時を避けるなど薬害が出ないように注意してホウ砂の0.3%(生石灰等量加用)を葉面に数回散布すると効果的です。またホウ素入りの葉面散布剤もおすすめです。カルマグホウ素-PK
ホウ素欠乏・苦土欠乏・カルシウム欠乏が出やすいハクサイ、レタス、トマト、ブロッコリー、ビート、ブドウなどの専用液肥。
溶けやすく吸収されやすい、発泡タイプです。
成分にホウ素(8.6%)、苦土(7.8%)、カルシウム(9.2%)、リン酸(7.5%)、カリ(5.0%)そのほか微量要素を含みます。
・容量:1kg
溶けやすく吸収されやすい、発泡タイプです。
成分にホウ素(8.6%)、苦土(7.8%)、カルシウム(9.2%)、リン酸(7.5%)、カリ(5.0%)そのほか微量要素を含みます。
・容量:1kg
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ホウ素過剰症とは
ホウ素の量が植物体内で過剰になると、ホウ素過剰症を発症します。ホウ素過剰症の症状
葉では下葉から被害が発生します。葉縁部あるいは葉脈間に白〜褐色の斑点が生じて、落葉したり奇形となることもあります。果実では内部が褐変化することがあります。生育が進むにつれて症状がひどくなり商品価値が下がります。
ホウ素過剰症の発症
過剰症は通常の施肥量では発生しにくい症状です。元肥や葉面散布などの施肥量を多量に施用した場合に発生します。全ての植物で起こりうる生理障害です。▼元肥など施肥のことならこちらをご覧ください。
ホウ素過剰症の原因
ホウ素過剰症が引き起こされる原因について説明します。1. 人為的なミス
施肥量や葉面散布量を基準を大きく超えて施用してしまった場合に発生します。▼効果的な施肥のことならこちらをご覧ください。
ホウ素過剰症の発症後の対応策
ホウ素過剰症の発症後の対応策について説明します。1. 土壌pHの調整
pHが低い酸性の圃場では、消石灰や炭酸石灰などのカルシウム肥料やアルカリ質資材を株元に施用してpH調整します。土壌のpHが上がりホウ素が不溶化するため、過剰害を多少軽減する効果があります。2. ホウ素を洗い流す
灌水(かんすい)量を多くして、余分なホウ素を洗い流すことも、ホウ素過剰症の改善に効果があります。後作には高ホウ素耐性がある作物(ホウレンソウ、ダイコン、トマト、ナスなど)を植えます。
※灌水とは水を注ぐこと、植物に水を与えること。
▼灌水のことならこちらをご覧ください。
▼ナスの育て方ならこちらをご覧ください。
ホウ素障害対策に何より大事なのは土壌の水分とpH調整
ホウ素は欠乏症、過剰症ともに生理障害を起こしやすい微量要素です。土壌酸度を調整すると解決することが多いので、石灰肥料などを投入して適正なpHに調整します。また、土壌の過乾燥や過湿、土質にも影響されるため、保水性と保肥性、排水性を高め、作物の生育に適した土壌に改良しましょう。