目次
乾燥しないように気を付ければ、鉢植えでも地植えでも育てることができます。
雨の多い季節、アジサイの爽やかな色でお庭を彩ってみませんか。
アジサイ(紫陽花)について
アジサイは日本に自生するガクアジサイ(額紫陽花)を原種とする栽培品種です。狭義には一般的な装飾花が美しいテマリ咲きのホンアジサイを指します。アジサイの学名であるHydrangea macrophyllaは、広義にはホンアジサイのほかに、額咲きのガクアジサイをはじめとするヤマアジサイやタマアジサイ、セイヨウアジサイ(日本原産のガクアジサイなどをヨーロッパで改良品種)や両性花だけを多数付けたコアジサイ、ツル性のツルアジサイなどをまとめてアジサイと呼んでいます。
品種にもよりますが、2~3mの高さまで育つものもあり、落葉性(または常緑性)の低木に分類されます。
※両性花とは、一つの花に雌しべと雄しべの両方をもつ花。
植物名 | アジサイ |
別名 | アジサイ |
和名 | アジサイ(紫陽花) |
学名 | Hydrangea macrophylla |
英名 | Hydrangea |
科名 | アジサイ(ユキノシタ)科 |
属名 | アジサイ属 |
原産地 | 日本(北米) |
ガクアジサイ(額紫陽花)
周りに開いている花のように見える部分は、「ガク」という葉のような働きをする器官で(一般的なガクは緑色が多い)、アジサイの場合色がついているため鑑賞価値の高い装飾花として位置付けられています。本当の花の部分は、真ん中に集まっている小さな粒のような箇所です(両性花)。
ガクアジサイは、両性花を装飾花が囲んでいる様子を額縁に見立てたことから、この名前がついたといわれています。
このような咲き方自体を、ガク咲きと呼びます。
アジサイ(紫陽花)
アジサイとして広く親しまれている品種です。両性花はなく、全て装飾花として開いている咲き方をテマリ咲きと呼びます。
別名ホンアジサイとも呼ばれます。
セイヨウアジサイ(西洋紫陽花)
日本原産のアジサイがヨーロッパに輸出され、品種改良されたものです。装飾花だけのものや、両性花と装飾花を併せ持つものもあり、色も豊富にあります。
ヤマアジサイ(山紫陽花)
主に西は九州地方から東は関東地方に分布しています。真ん中に両性花をもち、その周りに装飾花を持つガク咲きですが、花や葉、樹形ともにガクアジサイに比べて小さめです。
コアジサイ(小紫陽花)
ヤマアジサイと同じように、主に西の九州地方から東の関東地方に分布しています。装飾花がなく、両性花のみで形成されます。葉の大きさも樹高も、アジサイより小さく育ちます。
タマアジサイ(玉紫陽花)
北は東北地方南部から南は中部地方に分布しています。花が開く前の蕾(つぼみ)の状態が丸くタマのようなことから、この名前が付きました。
蕾の状態から、両性花と装飾花が徐々に開きます。ガクアジサイと違い、両性花の周りだけでなく、その間にも装飾花が咲きます。
両性花がほとんどないテマリ咲き品種もあります。
ツルアジサイ
北海道から九州地方まで分布しているツル性のアジサイで、両性花と装飾花を持ちます。空気中に根を張る気根(きこん)を伸ばし、地面から垂直な場所でも這い上がっていきます。
ツルアジサイによく似たイワガラミは、装飾花にあたる萼片が1枚しかないのですぐに見分けが付ききます。
アメリカ原産のアジサイ
アメリカが原産のアジサイで、日本でも大変人気のあるアジサイを紹介します。アナベル(アメリカノリノキ)
装飾花が多く開き、大きな花房を形成するアナベル。アメリカの中でも、気候が温暖で湿度も保たれる地域(アメリカ合衆国の東部から南東部にかけた辺り)に分布しています。
カシワバアジサイ
アナベルと同じアメリカ合衆国の東部やメキシコ湾北部沿岸に分布しています。装飾花で円錐状に花房を開かせ、柏の木のような葉を付けるカシワバアジサイ。両性花と装飾花で円錐状の花房を形成します。
カシワバアジサイと同じ円錐状の花房をもつノリウツギは日本原産のもので、昔和紙を作るときにノリウツギの樹液から糊(のり)を採取したことが名前の由来です。
最近では、このノリウツギがアメリカで改良され園芸品種として大変人気になっています。
アジサイ(紫陽花)を育てる前に
アジサイは乾燥にさえ気を付ければ比較的育てるのは難しくありませんが、品種によって寒さに弱いものもあるので、種類ごとにアジサイを育てる環境を確認しましょう。アジサイを育てる環境
アジサイは耐陰性ですが、花付きをよくするために適度に日当たりの良い所で育てましょう。ただし、西日が強過ぎたり、寒風が強く、葉が乾燥しやすい環境は生育場所としては適していません。土壌はやや湿り気があり、栄養豊富な場所を好みます。
酸性土壌で青く、中性〜アルカリ性土壌で赤色に?
アジサイの花の色は、酸性の土壌で青くなり、中性〜アルカリ性の土壌で赤い発色になるいわれています。花の色に関係しているのは、アジサイの「アントシアン」という物質と、土壌中に含まれる「アルミニウム」の量が関係するようです。土壌中のアルミニウムは酸性の土壌でよく溶け出し、アジサイの根がそれを吸収して、アジサイのアントシアニンに働きかけ、花色が青くなります。
反対に中性〜アルカリ性では、土壌中にアルミニウムが溶け出さないので、元々のアントシアニンの色である赤がアジサイの花色に現れます。
青系のアジサイの品種を酸性土壌で育てて、より鮮やかな青色に発色させるなど、元々の花の種類によって美しさを際立ててあげるような土壌環境を作りましょう。
準備するもの
保湿性と通気性のある用土を用意します。基本の赤玉と腐葉土を混ぜて使用しますが、酸性土壌に調整する際は、強酸性のピートモスも加えると良いでしょう。また、花の色に合わせたアジサイ用の培養土が販売されています。
アジサイの苗の選び方
葉は緑色が鮮やかで、形に張りがあるものが良いアジサイの苗です。枝は太めでしっかりしているものが理想的です。様々な色があるので、苗に付けられている札や、咲いている花の色を確かめて購入しましょう。
▼アジサイの品種についてはこちらをご覧ください。
アジサイ(紫陽花)の育て方
日本の環境に適しているため、地植えで大きく育てると2mもの高さに育てられます。鉢植え、地植えそれぞれの育て方を確認しましょう。
鉢植え
アジサイは根をよく張るため、鉢の大きさは苗より一回り大きなものを選びましょう。アジサイの植え付け時期
アジサイの落葉期である12~3月の間が植え付けに適しています。アジサイの植え付け手順
図のように準備したものを敷き詰めます。苗の周りに用土を入れるときには、割り箸などですきこむと細かく土を入れられます。
苗を植え付ける前に、苗と用土にしっかり水を含ませておけると理想的ですが、それが困難な場合は、植え付けてからすぐに、たっぷり水をあげましょう。
地植え
日陰を好むイメージですが、適度に日当たりの良い方が良く生育します。葉の乾燥を防ぐため、風の強過ぎない場所を選びましょう。
極端に粘土質であったり、砂の多い場所は避け、やや湿り気を保てる場所に植え付けます。
アジサイの植え付け時期
鉢植え同様、落葉期である12~3月に植え替え可能ですが、根を張りきる前に霜に当たると弱ってしまいます。霜に当たる心配がある場所では、暖かくなる3月ごろが適期でしょう。
アジサイの植え付け手順
植え付ける場所に深めの穴を掘り、崩れた土に準備した用土を混ぜ込みます(土質が合わない場合のみ用土を加える。それ以外は、そのまま地植えにしてOK)。鉢植えの手順と同様に、土と苗に水を含ませてから植え付け、苗を植え付けた直後にも水をあげて土と馴染ませると理想的です。
アジサイの水やり
鉢植え、地植え共に、植え付けてから苗が土に活着するまでは適度な湿り気を保ち、水切れしないように気を付けましょう。根付いてからは、地植えのものは基本的に水やりは「雨」のみで十分です。
鉢植えのものは、表面が乾いてきたら鉢の底から水が流れ出るくらいたっぷりあげましょう。
鉢植えの水やりは水を与えるだけじゃない!
鉢底から流れるくらい水をたっぷり与えることは、水分補給以外にも良いことがあります。
それは土中の空気の入れ替えです。
土の中にも酸素が存在しています。私たちの部屋でも時々空気の入れ替えが必要なように、植物も時々空気の入れ替えが必要です。
鉢底から流れてくるくらい水をたっぷり与えることで、土中の水分とともに空気を入れ替え、土中の状態を良く保ちましょう。
アジサイの肥料
落葉して力を蓄える冬の間(寒肥)(2~3月)と、花を咲かせ終わった後(お礼肥)(7~8月)に施します。アジサイ専用の肥料のほかに、寒肥では発酵油粕などの緩効性の肥料を株の周りに穴を掘って施します。
お礼肥は、花が終わった後1~2カ月後、緩効性の肥料を施します。鉢植えの場合は液肥を用いても良いでしょう。
アジサイの病害虫
たくさんの枝を伸ばすアジサイ。梅雨の時期は湿度や気温の変化も大きい日もあるため、枝や葉が多すぎると病害虫の影響が出てしまうことがあります。病気
気温や湿度の急激な変化により、うどんこ病(白い粉をまぶしたような見た目)や、炭疽病(灰褐色で円形の病斑が葉や茎に現れる)にかかる恐れがあります。枝を適度に剪定し、風通しを良くすることが防除に繋がります。
害虫
気温が高く、葉の乾燥が続いてしまうとハダニが発生してしまいます。新芽や風通しの悪い箇所にアブラムシが発生することもあります。
又、葉が込み入った所には、アジサイハバチが潜み、葉を食べてしまう可能性もあります。
適度な風通しの良さを確保することは、良好に育てるためのポイントです。
アジサイ(紫陽花)の剪定
アジサイは、今年伸ばした枝の先ではなく下の節に来年咲く花芽を付けるため、剪定には少しコツが必要です。アジサイの剪定時期
花が咲き終わった7月中には剪定を済ませましょう。翌年に咲く花芽は花後に作られます。植え付けてから2年目以降、樹形を小さく保つには落葉する11月下旬ごろに剪定を行います。
古くなった枝の整理は、2~3月上旬に行います。
アナベルなどのアメリカアジサイの剪定時期
アジサイの多くは、夏以降に翌年の花芽を形成させますが、アナベルなどは春に花芽を作り、その年の夏に開花しますので、剪定は3月上旬までに行うことで花を咲かせることができます。アジサイの剪定方法
アジサイの剪定で間違いやすいのは、花芽が付いた部分を切ってしまうことです。初めてアジサイを育てる方は、2段階に分けて剪定するか、一つ前の節で剪定することで花芽を切り落とす心配がなくなります。1回目の剪定
花が終わった後すぐ、てっぺんから2節目のわき芽を残してカットしましょう。通常その下の3節目のわき芽から出てくる枝に翌年花を付けます。
2回目の剪定
3節目のわき芽の上まで剪定をしても大丈夫ですが、秋に花芽が形成された枝を切ってしまうと翌年花が咲かなくなる恐れがあるため、ガーデニング初心者さんで判断が難しい場合は1回の剪定に留めておきましょう。アジサイの強剪定(切り戻し)
株が大きくなり過ぎて、コンパクトな状態に戻したいときは、全体の半分、もしくは3分の1ほどの高さで思い切って切り戻します(翌年には花を付けない)。強剪定の目安
地植えの場合は株が年々大きくなります。育てたい大きさを超えてきたら、強剪定を行いましょう。
強剪定の方法
全体の高さの半分くらい、もしくは根元から30cm前後のところで思い切ってカットします。もっと小さく仕立て直したいときには、根元から2〜3節を残して剪定しますが、翌年は花が咲かないことを覚悟してください。
鉢植えアジサイ(紫陽花)の植え替え
生育旺盛なアジサイは、根も増やしていくため、鉢の中で窮屈な思いをし、生育に影響が出てきます。数年に一度植え替えをしてあげましょう。アジサイの植え替えの目安
枝が鉢のふちよりも大きく外へ出てきたり、鉢の中が根っこで窮屈になってきたら植え替えどきです。アジサイの植え替え時期
休眠期である11~3月上旬に行います。花後の8~9月中旬にも行えますが、暑さを伴う時期の植え替えはうまくいかないこともあるので気を付けましょう。用意するもの
今植えている鉢より、一回り大きな鉢を用意します。鉢と株の隙間を埋めるための新しい用土、足りない分の鉢底石と、土をすきこむときに使う割り箸もあると便利です。
植え替え手順
今植えている鉢から株を取り出したら、側面を少し崩して発根を促します。鉢底石と新しい用土を敷いた新しい鉢の中へ移したら、植え付けのときと同じように用土を入れます。
十分に用土を入れたら、たっぷりとお水をあげましょう。
アジサイ(紫陽花)の増やし方
育てているアジサイ株から挿し穂を取ることで、新しく株を増やしていくことができます。お気に入りの品種の株を増やすことができますよ!アジサイを挿し木で増やす
てっぺんに近いところは、生育旺盛で養分を多く含むため、挿し木に適しています。準備するもの
通気性の良い鉢、新しく通気性の良い用土(赤玉土、鹿沼土、バーミキュライト)を準備して挿し床を用意します。挿し木をする前に十分に水を浸透させましょう。枝を差し込む場所を作るために割り箸もあると、枝を折らずに差し込めます。
植え付ける前に一度水あげをするので、水を貯められるバケツなども用意しておきましょう。
挿し木の時期
活動が活発になる5~9月上旬が良いです。特に、梅雨の時期は、湿度を保つことができるため適しています。
挿し木の手順
てっぺんから2~3節目をカットします。図のように一番上の葉以外を外し、一番上の葉は半分に切ります。
すぐに水に付けないと弱ってしまいます。切り口を斜めにカットし、水にさして1時間以上水あげをします。
挿し床には水をたっぷりあげておきます。
土に割り箸で穴を開け、そこへ挿し穂を挿しこみ、飛んでしまったりしないように土で抑えます。
最後に水をたっぷりあげれば完了です。
剪定を行ったときにカットした枝からも挿し穂を作れます。切った後すぐに行いましょう。
アジサイ(紫陽花)の花の楽しみ方
アジサイの花は鉢植えやお庭などで楽しめますが、切花やドライフラワーとしても綺麗です。切り花
バケツなどに水に入れ茎を水の中でカットすることで、アジサイが上手に水を吸い上げることができます。必ず水切れしないように気を付け、毎日水を取り替えましょう。
ドライフラワー
剪定などで花のついている枝をカットしたら、葉を取り除き逆さにして干しておくと簡単にドライフラワーができます。花びらがハラハラと落ちてしまうことがあるので、乾燥後はドライフラワー用の形状維持スプレーなどをかけて形を維持すると良いでしょう。
アジサイ(紫陽花)を育てよう
日本の環境に適しているアジサイは、剪定や水やりに気を付ければ、あまり小まめに手入れをしなくても元気に育ってくれます。さまざまな色合いや花の形からお気に入りのアジサイを見つけて、梅雨の時期をアジサイとともに過ごしてみませんか。
【AGRI PICKチャンネル】
AGRI PICKでは、家庭菜園初心者にもわかりやすい!畑でも手軽に視聴できる動画もあります。
野菜を育てるときのお困りごとや、失敗を防ぐワンポイントアドバイス付きの「AGRI PICKチャンネル」も合わせてご覧ください!