乾腐病の原因と対策|防除方法と使用薬剤について(農薬)

タマネギやジャガイモ、サトイモ、ニンニク、ニラなど多くの作物に発生し、特にタマネギでは育苗時から収穫後の貯蔵中も発症する、乾腐病の症状や原因、おすすめしたい薬剤(農薬)など防除対策について紹介します。


乾腐病、ジャガイモ

出典:Flickr(photo by Scot Nelson)
乾腐病(かんぷびょう)とは土壌中、または貯蔵中の作物を腐らせる糸状菌(カビ)による病気です。この病原菌はタマネギなどの鱗(りん)茎内部や基部、土壌中の根茎部分など隠れた部分を侵すため、ほかの病気と比べて発見が遅れやすくなります。タマネギやジャガイモなどに発生する乾腐病の症状と発見のポイントを押さえて、予防と早期発見、防除を心がけましょう。

乾腐病の症状は地下部の腐り

「作物の葉が日中萎(しお)れるようになってきた」「土の中の球やイモを掘り出すとカビが生えている」などの症状が現れたときは、乾腐病を疑いましょう。
乾腐病は土壌中の病原菌が、作物の土壌中の部分や地際部を腐らせます。
▼植物の病気の症状についてはこちらの記事もご覧ください

タマネギは栽培中や貯蔵中、ジャガイモは貯蔵中に発症

乾腐病は主にフザリウム属菌という糸状菌(カビ)によって引き起こされる病気で、大きな被害を受ける代表的な作物はタマネギとジャガイモです。
同じ乾腐病でも作物によって発症する段階が異なります。
タマネギをはじめとするニラなどのヒガンバナ(ユリ)科の作物は栽培中や貯蔵中に、ジャガイモやニンジン、サトイモなどの根菜類は貯蔵中に病気が発症して被害が大きくなります。
続いては、タマネギとジャガイモに発症する乾腐病について詳しく紹介します。


タマネギ乾腐病

タマネギ乾腐病はタマネギのほか、ニラ、ネギ、ニンニク、ラッキョウなどにも感染します。
下葉が黄化して湾曲し、タマネギの球の部分である鱗茎では茎盤部と外側の輪片が褐変します。症状が進むと鱗茎内部が無くなることもあります。
タマネギ収穫後の貯蔵期間中にも発生し、茎盤部が灰褐色に変色し、白いカビが生えて鱗茎内部が腐敗します。
菌名  Fusarium oxysporum
分類  糸状菌/不完全菌類
発生時期  5〜8月(多発:8月中〜下旬)
発生適温  25〜28℃

タマネギ乾腐病は土壌伝染性病害

タマネギ乾腐病の病原菌は、土壌中や残渣(ざんさ)内で主に長期生存が可能な厚膜胞子(こうまくほうし)という形で存在します。この厚膜胞子は、土壌中で5年以上も生存することができます。
タマネギ乾腐病の病原菌が存在する土壌で、新たに植物が植え付けられると根で反応して病原菌が発芽し、根の表面や傷口から侵入して植物体内で菌糸(きんし)を蔓延させます。
維管束で胞子を多数作って増殖し、道管を閉塞させるため、植物は水や養分を送ることができず、病原菌自体が出す毒素も生育を抑制する原因となります。
※残渣とは枯れ終えた植物体や落ち葉のこと
※維管束とは植物の内部組織のひとつで、水や養分を運ぶ通路機能のほかに、葉・茎・根など植物の各器官をつなぎ支える組織。
※道管(または導管)とは、水分や養分を運ぶ維管束の構成要素のひとつ。

種子も伝染源となる

タマネギ乾腐病は種子に付着して生存し、植え付けの際に伝染源となります(種子伝染)。

タマネギ乾腐病が発生しやすい条件とは

タマネギ乾腐病が発生しやすい環境や土壌について説明します。

◆高温

発生適温は25〜28℃前後と高温で、気温が高い時期に植え付けると発生します。
発病は定植2カ月後くらいから徐々に増加して、球の肥大期に急増します。

◆多肥

窒素肥料を多く施用すると、発病を助長します。

◆乾燥

土壌が乾燥していると多発傾向にあります。

タマネギ乾腐病に有効な防除方法

タマネギ乾腐病に有効な防除は、圃場の管理で行う方法(耕種的防除方法)と農薬の使用で行います。
タマネギ乾腐病は、病気が発生してから使用できる農薬は無いため、発生しないように予防することが大切です。
※圃場(ほじょう)とは、田や畑のような農作物を育てる場所のことです。

1. 植物残渣の処理

前作の枯れた植物に病気が感染している可能性があります。
残渣を鋤(す)き込むと病原菌が増殖する恐れがあるので、圃場外に持ち出して処理しましょう。

2. 土壌の入れ替え、消毒

タマネギ乾腐病が発生した圃場、また発生が心配される圃場は、土壌を消毒するか新しい土を入れます。苗床で使う土も必ず消毒するか、新しい土を使いましょう。
▼土壌消毒のことならこちらをご覧ください。
プランター栽培では、新しい土と入れ替えるか、乾腐病が発生した土に水をたっぷり含ませ、透明のビニール袋で包み、太陽の熱を利用して消毒します。
▼プランターの培土処理のことならこちらをご覧ください。

3.保水性の良い圃場づくり

乾燥しやすい土は、保水性を高めるために腐植を投入したり、土壌表面からの水分の蒸発を防ぐためにポリマルチを使用することもおすすめです。
▼土壌改良のことならこちらをご覧ください。

▼マルチのことならこちらをご覧ください。

4. 適切な施肥

土壌中の窒素分が多いと病気が多発するため、施肥は適量を行います。
土壌分析してから施肥量を決定することをおすすめします。
▼ECメーターのことならこちらをご覧ください。

5. 連作の防止

連作すると土壌中の菌密度が年々高まり、発生が増えます。ほかの作物で輪作を行います。

6. 抵抗性品種の利用

タマネギ乾腐病に強い品種を植え付けることも効果的です。
※品種の例:スーパー北もみじ、カムイなど

7. 無病の種子と苗、植え付け前の消毒

種、苗はできるだけ無病のものを用います。
苗は植え付け直前に、ベンレート水和剤の20倍液で、3分間根部浸漬消毒を行うと効果的です。
※農薬使用の際は必ず作物登録、使用方法をラベルで確認してください。地域の防除指導機関やJAなどの使用基準を守り施用してください。
ITEM
ベンレート水和剤
幅広い適用をもった殺菌剤で、浸透性にすぐれ、予防と治療の2つの効果を示します。
茎葉の病害、貯蔵病害、種子伝染性病害、土壌病害など多方面にわたりすぐれた効果があります。
低濃度で使用できるため、作物を汚染することが少なく、また経済的です。

・容量:100g
・有効成分:ベノミル(50.0%)



ジャガイモ乾腐病

ジャガイモ 乾腐病
出典:Flickr(photo by Internet Archive Book Images)
主に貯蔵中や催芽(さいが)時に発生します。
収穫時などにできた塊茎の傷口や打撲部、ストロン跡を中心に陥没部を生じ、徐々に拡大します。
湿度が高いと腐敗して、しだいに褐色となり、しわを生じて乾燥します。塊茎内部には空洞部ができ、被害部の表面と空洞部には白~淡紅色のカビが発生します。
ニンジンやサトイモ、コンニャクにも感染すると考えられています。
※催芽とは発芽を早めて発芽時期を揃えるために、種や種イモを植え付ける前に発芽させること。
※ストロン跡とは、地下茎から出たわき芽とつながっていた部分。ジャガイモが付いていたわき芽のこと。
菌名  Fusarium oxysporum
 Fusarium solani など
分類  糸状菌/不完全菌類
 発生時期  4〜7月

ジャガイモ乾腐病は土壌伝染性病害

ジャガイモ乾腐病の病原菌は感染したイモ、あるいは土壌中で数年間生存します。
病原菌は収穫の際に生じた傷口や、病気や生理的症状で弱った部分から侵入して感染します。また、貯蔵、輸送中に、発病したイモのカビの菌糸が、隣のイモに接触して侵入感染することもあります。

ジャガイモ乾腐病が発生しやすい条件とは

ジャガイモ乾腐病が発生しやすい貯蔵環境について説明します。

◆高温

貯蔵中の温度が高いと病気が早く進展します。

◆多湿

多湿環境で多発します。低温乾燥状態では病気の発生がやや抑制されます。

ジャガイモ乾腐病に有効な防除方法

ジャガイモ乾腐病に有効な圃場でできる防除方法と、収穫、貯蔵時の注意点について説明します。

1. 連作をさける

連作をすると病原菌の密度が高くなるため、連作は避けます。

2. 無病の種イモを使用する

種イモが感染していると、子世代にも伝染します。種イモは消毒した物を用いましょう。

3. 収穫時の注意点

収穫は打撲跡や傷口を作らないようにていねいに収穫します。

4. 貯蔵時の注意点

傷や病気があるものは除去して、十分に乾燥させてから貯蔵開始します。
貯蔵期間中は低温に保って、過湿状態にならないように換気します。

放線菌を増やして乾腐病を撲滅!

土壌には「放線菌」という菌がもともと生息しています。
放線菌は土壌をふかふかにする効果があり、この菌を増やすことによって水はけの良い、乾腐病の病原菌が好まない環境にすることができます。
また、放線菌はキチン質をエサとするため、病原菌が増殖する前にキチン質の資材を入れて、放線菌を増やすことで乾腐病の予防になります。

カニ殻で放線菌を増やす

カニ殻のキチン質が、放線菌のエサとなり、放線菌が増殖します。
カニ殻は、ホームセンターなどでも販売されています。肥料と一緒に土壌に混ぜて、放線菌を増やしましょう。
ITEM
病気予防!!カニ殻
キチン質が植物の病気の原因のフザリウム菌の増殖を抑制します。
病気に強くなるだけでなく、ゆっくりと植物を元気にし、土壌の微生物のバランス改善もしてくれます。
キチン質は健康食品などにも使用されているため、身体にも安全なので安心して使用できます。

・容量:1.2L

漢方かすの肥料

漢方を作るときにできる残渣を発酵させて作られ堆肥です。
微生物を多く含んでおり、特に放線菌が多いため、乾腐病の予防に効果があります。
また、微生物が土壌の団粒化を促進して土壌環境を改善するため、根張りが良くなる効果もあります。
ITEM
ツムランド粉末
漢方薬の原料の各種生薬からエキス分を抽出した後の生薬かすを発酵させた、100%有機質原料の肥料です。
長期間好気発酵、完熟させたもので、一切の添加物はありません。
多種多様な微生物が含まれ、とりわけ放線菌が多く、土壌病害を軽減します。

・容量:15kg
・肥料成分:窒素2.4% りん酸1.0% 加里1.0%

乾腐病対策に重要なのは病原菌を持ち込まないこと

乾腐病は発病してからの防除は難しいため、発症しないための環境づくりと土づくりが大切です。
乾腐病が発生した圃場、発症が懸念される圃場では、土壌の消毒を行ってください。
また、土壌に良いとされる菌を増やして、病原菌が住みにくい環境にするのも効果的です。連作に注意し、乾腐病に強い品種を使い、病気にかからない対策をしましょう。

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rinko

農学部大学院にて植物病理学の修士号を取得。 農協、農業資材メーカーで合わせて約10年間、農家へ栽培技術指導、病害虫診断業務を担当。現場で得た経験と知識で正確な情報をお伝えします。