症状からわかるダイコンの害虫

ダイコンの葉や根を食害し、被害をもたらす害虫。加害部位とそこに現れる被害症状から、害虫そのものは見えなくても原因を判別できるよう、現れる部位ごとのダイコンの被害・症状を説明します。


畑で栽培されているダイコン

出典:Flickr (Photo by Social Geek)
ダイコンは生長するにつれて地上部の葉が大きく広がり、根は土中深くに伸長していきます。多くの害虫に食害されやすいアブラナ科の作物で、特に生育初期の葉の食害と、収穫部位となるダイコンに直に影響を及ぼす害虫に注意が必要です。また、ダイコンは育てる季節に応じた品種を選ぶことで周年栽培することができるので、一年を通した害虫防除が必要です。ここでは各害虫による被害の特徴を示しました。

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葉や茎に被害を及ぼす害虫

地上部に伸びるダイコンの葉は害虫に最も食害されやすい部位です。一度害虫が発生して増殖してしまうと、そこから防除するのは大変な手間がかかります。早めの予防と駆除を心がけましょう。

ハムシ類

ハムシに食害されたダイコンの葉
出典:Flickr (Photo by plenty.r.)

【害虫名】
キスジノミハムシ、ダイコンハムシなど
【食害の様子】
成虫がダイコンの葉を食害します。食害は新芽の時期や本葉が出始めるときから発生し、食害痕は数ミリの穴が無数にあいたような状態となります。特に幼苗期にあまりにも食害を受けるとその後の生育に影響するため注意が必要です。
【予防と対策】
年の発生回数が多く、6~8月は高密度になります。成虫は活発に動き回るので、侵入させないように気を付けましょう。
キスジノミハムシを駆除・防除する方法


チョウ類

葉を食害するモンシロチョウ
出典:Flickr (Photo by Scot Nelson)

【害虫名】
アオムシ(モンシロチョウ)など
【食害の様子】
ふ化したばかりの幼虫は葉裏から食害し、葉表の表皮を残すため、食害痕は葉が透けたようになります。中齢以降では摂食量も多くなり、葉に穴をあけ、多発すると葉がボロボロになります。特に幼苗期が食害を受けると株そのものの生長を妨げるため注意が必要です。
これらの被害状況はヨトウムシ類とよく似ていますが、あまり移動しないので加害部が集中していることや、葉上の緑色の糞(ふん)、葉裏に1個ずつ黄色いトックリ状の卵から見分けることができます。
【予防と対策】
アオムシを駆除・防除する方法


アブラムシ類

アブラムシの食害を受けるダイコンの葉
出典:Flickr (Photo by Scot Nelson)

【害虫名】
モモアカアブラムシ、ニセダイコンアブラムシ、ダイコンアブラムシなど
【食害の様子】
葉に寄生し、集団となって吸汁します。多発して被害が進むと葉が縮んでしまい、商品価値が損なわれます。
また、吸汁被害のみでなく、排泄物による「すす病」発生の原因や、ウイルス媒介によって引き起こす「モザイク病」の要因となります。
【予防と対策】
アブラムシ類を駆除・防除する方法

▼すす病のことならこちらをご覧ください。

▼モザイク病のことならこちらをご覧ください。

カブラハバチ

カブラハバチに葉脈を残して食害されたダイコンの葉

【害虫名】
カブラハバチ
【食害の様子】
黒、濃青紫色の幼虫が葉に寄生して食害します。比較的新しい葉の方が加害されやすく、多発すると葉が食べつくされることもあります。
食害痕はアオムシやヨトウムシとよく似ていますが、葉脈部分を残して葉の縁部分から食べるという点で判断可能です。地際部の根部が食害されることもあります。
【予防と対策】
カブラハバチを駆除・防除する方法


ハモグリバエ類

ハモグリバエに食害されるダイコンの葉
撮影:AGRI PICK編集部

【害虫名】
ナスハモグリバエ、ナモグリバエなど
【食害の様子】
葉の内側に産み付けられた卵がふ化し、生まれた幼虫が葉の内側を食害しながら不規則に進みます。葉には白いスジ状の食害痕が残ります。
【予防と対策】
ハモグリバエ類を駆除・防除する方法


ヨトウムシ類

ダイコンの葉裏に集団で産み付けられたヨトウムシの卵

【害虫名】
ヨトウガ、ハスモンヨトウ、シロイチモジヨトウなど
【食害の様子】
葉裏に集団で産み付けられた数十個から数百個の卵からふ化した幼虫が、表皮を残して食害するため食害部分は白くかすれたようになります。中齢以降の幼虫では、加害によって葉に不規則な穴をあけます。摂食量は齢数とともに増え、葉脈を残して食い荒らし、葉をボロボロにします。移動量・摂食量ともに多いため、アオムシによる被害状況と比べて食害範囲が広く、周囲に糞がたくさん落ちています。
【予防と対策】
成長とともに被害は甚だしくなり、老齢幼虫では農薬などの薬剤も効きにくくなるので早期防除が必要となります。
ヨトウムシ類を駆除・防除する方法


メイガ類

ダイコンの若い葉の中心葉や生長点付近を好んで食害するハイマダラノメイガ

【害虫名】
ハイマダラノメイガ(ダイコンシンクイムシ)、ケブカノメイガなど
【食害の様子】
葉に数個から十数個産み付けられた卵からふ化した幼虫が、狭いところに潜んだり、新葉をつづり合わせて中に入り込んだりして生長点付近の芯部を好んで食害します。
若苗のときに生長点付近に寄生して食害されると奇形や芯止まりが発生し、株全体が枯死してしまうこともあります。
【予防と対策】
ハイマダラノメイガを駆除・防除する方法


ネキリムシ類

発芽直後に食害を受けたダイコン

【害虫名】
カブラヤガ、タマナヤガなど
【食害の様子】
若齢幼虫は主に葉を食害します。老齢幼虫になると日中は土中にもぐり、夜になると地上に現れて地面近くの茎や葉を食害します。若齢幼虫は摂食量が少ないのであまり問題になることはありませんが、老齢以降の幼虫は摂食量も多くなるので複数の株を食い荒らしたり、幼苗の根元を切断したりするなど大きな被害をもたらします。
【予防と対策】
毎年被害の多い地域は予防をしっかり行ましょう。
ネキリムシ類を駆除・防除する方法


ナガメ

ナガメに食害された大根の葉

【害虫名】
ナガメ、ヒメナガメ
【食害の様子】
アブラナ科植物を加害するカメムシの仲間であるナガメは、ダイコンの葉に寄生して吸汁害をもたらします。葉の被害を受けた部分は、白く脱色したようになります。さらに多発して被害が進むと生長を阻害したり、萎れて枯れてしまいます。
【予防と対策】
雑草などにも寄生して繁殖するので、周辺の雑草管理を適切に行い、圃場内に侵入させないようにしましょう。


葉・茎を食害するほかの注意すべき害虫

上記の害虫以外にも発生することがある害虫について紹介します。

コナガ

【害虫名】
コナガなど
【食害の様子】
幼虫が葉裏から食害します。葉の表皮のみを残すため、食害部分は透けたようになった後穴があきます。体サイズは10mmほどで、一匹のみの食害ではそれほど大きな被害とはなりません。しかし、春から初冬にかけて発生回数が多く高密度になると、多数の幼虫が新葉などを食害したり、成虫が次世代の卵を産卵したりして大きな被害をおよぼします。
【予防と対策】
農薬などの薬剤に対する抵抗性が生じやすいため、大発生すると防除が難しくなります。
コナガ類を駆除・防除する方法


ゾウムシ類

【害虫名】
ヤサイゾウムシ
【食害の様子】
秋から春にかけて成虫と幼虫が発生して葉茎を食害します。食害痕は1〜2cmの円形の穴となります。特に幼虫は葉表に出ることを嫌い、生長点近くに寄生するので、幼苗時期にダイコンの茎内に食入されると株全体の生長が妨げられることがあります。
【予防と対策】
多種類の植物に寄生するため、圃場内に広葉雑草が多い場合などに発生する可能性があります。周辺の雑草管理を適切に行いましょう。


ダニ類

【害虫名】
ハクサイダニ
【食害の様子】
成虫、幼虫ともに集団となって葉から吸汁します。被害を受けた葉は色が抜けて白っぽくなったり、褐色に変化したりします。生長点付近の食害が進むと、芯止まり症となることがあり、またさらに被害が進むと萎(しお)れて枯死してしまいます。
主に冬に発生する害虫で、暖冬の年では発生量も多くなります。
【予防と対策】
除草や残渣処理などによって発生・侵入を防ぐことが必要です。雑草によく寄生するので、圃場全体や施設周辺の雑草管理が重要となります。


根に被害を及ぼす害虫

根はダイコンの主な生産部位であり、ここに被害を受けると直接、商品価値が低下してしまいます。種をまく前から予防と対策を心がけましょう。

センチュウ類

ネグサレセンチュウの被害を受けたダイコン

【害虫名】
キタネグサレセンチュウ、サツマイモネコブセンチュウなど
【食害の様子】
ダイコンの主な収穫部位である根に寄生し、表面に小さな白い斑点を生じさせるネグサレセンチュウ類が問題となっています。被害が進むと斑点部分が黒くなり商品価値を損わせます。
一方、ネコブセンチュウ類が寄生すると根長が短くなったり、岐根(きこん)が生じて側根が肥大したりして商品価値が著しく低下します。
【予防と対策】
センチュウ類は多発すると、被害を抑える効果的な方法がないので、作付け前に太陽熱を用いた土壌消毒や農薬使用、対抗植物の利用などであらかじめ予防を行いましょう。
センチュウ類を駆除・防除する方法

▼土壌消毒のことならこちらをご覧ください。

ハムシ類

キスジノミハムシに食害された大根の根

【害虫名】
キスジノミハムシなど
【食害の様子】
幼虫が地中の根を加害します。地上部に成虫がいる場合には地中にも幼虫がいる可能性が高くなります。
幼苗期に被害が進むと根が弱って養分を送れなくなり、生育が悪化して株が枯死する場合もあります。
根の肥大期に食害を受けると、表面がザラザラとしたサメ肌状や、でこぼことしたナメリ状、黒褐色の穴が点々とつく孔状などの食痕で商品価値が下がります。
【予防と対策】
キスジノミハムシ類を駆除・防除する方法


根を食害するほかの注意すべき害虫

上記の害虫以外にも発生することがある害虫について紹介します。

タネバエ

【害虫名】
タネバエ(幼虫)
【食害の様子】
生育初期〜中期に主根が被害を受けると枯死したり、岐根が生じたりします。生育後期の被害は、根の内部に食入して食入痕を残すため商品価値を損なわせます。
地上部の生育不良や枯死が生じるまでタネバエの被害に気付くことが難しいので、あらかじめ予防することが重要です。
【予防と対策】
幼虫が発芽前の種子や幼苗を食害して発達を妨げるので、種をまく前にすじ状(畝に対して並行)に粒剤を散布するなどして発生を防ぎます。
また、においの強い有機肥料や堆肥は、タネバエの成虫を引き寄せてしまうので種まき直前の使用は避けるようにしましょう。


発生回数の多いコナガやハムシに要注意

ダイコン
出典:Flickr (Photo by Mike Licht)
アブラナ科を好んで食害する害虫がとても多いため、アブラナ科の作物であるダイコンも生育全般において害虫の被害に遭います。そのため、播種前の薬剤処理や防虫ネットなどの予防対策が欠かせません。特に年間の発生回数が多いコナガやハムシ類は、多発して高密度になると多大な被害を及ぼします。なかでも葉と根の両方を食害するキスジノミハムシは、重大な被害を及ぼす害虫なので防除対策をしっかり行いましょう。

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村田 康允

大阪府茨木市出身。大学院農学研究科で農業害虫を扱った研究に取り組み、博士号を取得。国際学会・ワークショップや応用研究プロジェクトなどに積極的に参加。 幼少期から持つ生物への興味とこれまでの経験を活かして、栽培・農薬・害虫などの記事編集を担当。 好きなことは音楽で遊ぶこと。

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