ダニ類を防除する方法

農作物に被害を与えるダニ類には、「ハダニ類」「サビダニ類」「ホコリダニ類」「ケナガコナダニの仲間」「ネダニ類」などがいます。特に「ハダニ類」は、薬剤抵抗性が付きやすく、ローテーション散布や天敵の活用など総合的な防除が欠かせません。農業で問題となる5つのダニ類の種類や防除方法について説明します。


ダニ類

Illustration:umi
ダニ類には畳やじゅうたん、ぬいぐるみなど室内で一生を過ごす「屋内ダニ」のほかに、自然界の至る所に生息する「屋外ダニ」など数多くの種類があります。なかでも植物に寄生して加害するダニ類は農作物の生育を阻害したり、果実の品質を著しく低下させたりするため農業において大きな問題になっています。特に「ハダニ類」は薬剤抵抗性が付きやすく、作用の異なる薬剤のローテーション散布や天敵の活用など総合的な防除が欠かせません。本記事では、農業において問題となるダニ類の種類と防除方法について説明します。

▼薬剤抵抗性についてはこちらをご覧ください。
▼天敵についてはこちらをご覧ください。

昆虫ではない!?ダニ類について

ナミハダニ、Tetranychus urticae male
出典:Flicker(Photo by:K-State Research and Extension
近年動物寄生性で血を吸う「マダニ」や、ぜんそくを誘発する「チリダニ」などが問題になっていますが、じつは地球上にいる多くのダニ類は無害な存在です。例えば、地表や土中にいるダニ類は落葉などを分解したり、チーズの熟成に欠かせないダニ類もいます。

ダニ類と昆虫類の違い

ダニ類は昆虫ではなくクモの仲間に分類されていますが、昆虫とどの部分が異なるのか説明していきます。

胴部

ハダニ
出典:Flicker(Photo by:eLife – the journal
昆虫と違って、ダニ類の胴部は頭部・胸部・腹部の区別がありません。

脚(肢/あし)

ダニ 昆虫
Illustration:umi
ダニ類(若虫〜成虫)の脚が4対8本なのに対して、昆虫は3対6本です。
※ダニ類の中でもフシダニ科に属するダニの脚は2本4対など、一部のダニ類で例外的に成虫の脚が2対または3対のものがいます。

触角

昆虫には2本の触角がありますが、ダニ類にはありません。触角の代わりに触肢(しょくし)や鋏角(きょうかく)といった付属肢(ふぞくし)がついています。

ダニ類には昆虫のような複眼はなく、目があったとしても光を感じる程度の単眼で、ダニ類の多くは目がありません。
※複眼は単眼が複数集まったもの(働きや機能についてはまだわからないことも多い)。ちなみにヒトの目は角膜や水晶体を持っており、カメラのような働きをします。

昆虫現在わかっている種類には翅(はね)のあるダニ類はいません。

ダニ類の生活史

ダニ
Illustration:umi
卵から孵化した3対6本の脚を持つ幼虫から、4対8本の脚を持つ若虫に、その後成虫へと脱皮を繰り返します。

増殖スピード

農作物に被害を与えるダニ類のほとんどは、卵から成虫まで約10日程度で成長する増殖スピードの早いものが多く、その期間はダニの種類や温度によって異なりますが「高温」「乾燥」の条件下で短くなる傾向があります。
※ホウレンソウケナガコナダニのように低温に強く、高温に弱い種類のダニ類も存在します。


農業で問題となる5つのダニ類

ナミハダニとナミハダニに加害されたナスの葉 ダニ類の中でも特に農業で問題となる種類には、「ハダニ類」やフシダニ科の「サビダニ類」「ホコリダニ類」コナダニ科の「ケナガコナダニの仲間」「ネダニ類」などがあります。ダニ類は体長が1mm以下のものも多いことから発生初期での発見が難しく、種類によって寄生する作物も異なるのが特徴です。
ここからは農作物で気を付けたい5つのダニ類の種類や被害の特徴についてみていきましょう。

1. ハダニ類

ハダニ
出典:Flicker(Photo by:K-State Research and Extension)
ダニ類の中でもハダニ類は最も重要な害虫とされています。

ハダニ類の種類と寄生する作物への被害の特徴

ハダニ類 寄生する作物例 被害の特徴
 ナミハダニ、カンザワハダニ  果樹、野菜、花、雑草など  葉に白い小斑点が生じ多発すると落葉する。
 ミカンハダニ  カンキツ、バラ科果樹、イヌツゲなど  葉に白い小斑点が生じ多発すると落葉し、果実では着色期前に加害されると白い小斑点を生じ、着色期以降では着色不良になる。
 リンゴハダニ  バラ科果樹  多発すると葉表では白い小斑点が生じ葉裏は褐変する。
▼ハダニ類の防除方法についてはこちらをご覧ください。

2. フシダニ科に属するダニ

ブドウハモグリダニの虫えい(ブドウハケフシ)
出典:wikimedia
ハダニ科に近縁のフシダニ科のダニの脚は、ハダニ類とは異なり2対4本です。「虫えいを作る種類」と「虫えいを作らない種類(サビダニ)」がいます。
※虫えいとは虫こぶともいい、植物の組織が異常に生長しこぶ状になること。

【虫えいを作るダニ】
・ブドウハモグリダニ
【虫えいを作らないダニ(サビダニ)】
・トマトサビダニ
・ミカンサビダニ
・ブドウサビダニ


フシダニ科に属するダニの種類と寄生する作物への被害の特徴

トマトサビダニに加害されたトマト
フシダニ科に属する 寄生する作物 被害の特徴
 ブドウハモグリダニ  ブドウ  葉の表面が凸状になり、葉の裏面は凹状にくぼみ毛せんを作り、ブドウえそ果病ウイルスを媒介する。
 トマトサビダニ  主にトマト  下葉の裏面が褐変して表や裏に巻き込み、被害が進むと下部から徐々に上部へと広がって全体が褐変、枯死する。多発すると果実にも寄生し、果実表面が灰褐色になって細かい亀裂が生じる。
 ミカンサビダニ  カンキツ類  新葉が変形し、多発すると落葉する。果実では表面が褐変しコルク化する。
 ブドウサビダニ  ブドウ  葉脈近くが黒褐色になり多発すると葉全体がすすが付いたようになる。

3. ホコリダニ類

ホコリダニ類は、野菜の中でも果菜類に発生すると著しく品質が低下してしまうダニ類です。

ホコリダニ類の種類と寄生する作物への被害の特徴

チャノホコリダニに加害されたイチゴの葉と果実
ホコリダニ類 寄生する作物 被害の特徴
 チャノホコリダニ  ウリ科、ナス科の野菜、イチゴ、花き類、果樹、チャ  新芽では葉が萎縮し、果実では奇形になって褐変する。
 スジブトホコリダニ  施設栽培のウリ科野菜、ナス、トマト、インゲン、ブドウなど  育苗〜生育初期の生長点が加害されることが多く、委縮したり芯止まりになったりする。
▼チャノホコリダニの防除方法についてはこちらをご覧ください。

4. コナダニ科に属するケナガコナダニの仲間

乾燥を好み、低温に強く、高温に弱い特徴があります。
ホウレンソウ栽培で深刻な被害を及ぼす「ホウレンソウケナガコナダニ」は、土壌に生息し有機物などをエサに増殖するダニです。

ケナガコナダニの仲間と寄生する作物への被害の特徴

ケナガコナダニの仲間 寄生する作物 被害の特徴
 ホウレンソウケナガコナダニ  ホウレンソウ、キュウリ、カボチャ、トウモロコシなど  葉に穴をあけたり、縮れたり、こぶ状の突起物が生じたりして褐変し、芯止まりになる。
 オンシツケナガコナダニ  コチョウラン、キュウリ、菌床キノコなど   花き類では蕾が落ちたり、花がしおれたりして黄化して落下する。

5. コナダニ科に属するネダニ類

ほかのダニ類は葉や果実などに寄生することが多いのですが、ネダニ類は根や茎の部分に寄生します。

コナダニ科ネダニ類の種類と寄生する作物への被害の特徴

ネダニ類 寄生する作物 被害の特徴
 ネダニ、ロビンネダニ  ネギ類などヒガンバナ科  土の中の茎の部分と根に寄生する。茎の部分が加害されると葉が黄化し枯れることもあり、根が加害されると生育が悪くなったり、分けつや球根の肥大が悪くなったする。

ダニ類の防除方法

防除
出典:写真AC
ダニ類は増殖スピードが速いことから一度多発すると防除が困難な害虫です。農薬の使用と合わせて総合的な防除が不可欠です。

1. 圃場周辺の環境整備

圃場の周辺の雑草(スベリヒユ、クローバ、カラスノエンドウなどのマメ科植物など)や樹木(チャ、サザンカなど)がハダニ類の発生源となるので、雑草は除去します。樹木は薬剤を散布して発生を予防します。

2. 残渣

前作の残りの枯れ終えた植物や、落ち葉などにハダニ類やネダニ類などが潜んでいる可能性があります。栽培前には残渣は圃場外に持ち出して片付け、圃場を清潔に保ちます。

3. 土壌

ケナガコナダニの仲間は土壌中の有機物などをエサにして繁殖するため、未熟な稲わらや家畜糞堆肥などの堆肥の施用は控えます。

▼家畜糞堆肥のことならこちらをご覧ください。

土壌消毒

コナダニ類や土壌に残っているネダニ類を防除するには、太陽熱などによる土壌消毒が効果的です。

▼土壌消毒のことならこちらをご覧ください。

4. 湿度

ダニ類は乾燥によって急激に繁殖し増加するため、圃場の湿度を一定以上保つことも防除に効果があります。水を嫌う性質があるため、圃場の加湿の観点から散水することもおすすめです。
※湿度が高い圃場では、病気が発生する恐れがあるため加湿は控えてください。

▼ハウス栽培での湿度管理のことならこちらをご覧ください。

5. 蒸し込み

ハダニ類の被害にあった作物の栽培(夏期のみ)を終えたら、残渣に残っている卵、幼虫、成虫をしっかり殺虫します。圃場の一箇所に残渣を集め、ビニールをかけて、強い太陽光のもと1週間ほど放置して蒸し込み作業を行いましょう。

▼ハウス栽培の蒸し込みはこちらをご覧ください。

圃場に持ち込まない

ハウスなど施設内の蒸し込みを終えた後でも、新たに植え付ける苗からダニ類が持ち込まれることが多いので、植え付け前にダニが寄生、発生していないかしっかり確認しましょう。

6. 光防除

ハダニ類では近年「光」を使った防除の効果が実証されています。

▼光防除のことならこちらをご覧ください。

7. 予防的な薬剤散布

温暖で乾燥した条件で多発するため、特に梅雨明けに高温で雨が少なくなると被害が拡大します。発生が予想される時期に地域の発生予察などを有効活用して防除を行いましょう。

▼地域の発生予察を活用する薬剤散布のことならこちらをご覧ください。

ローテーション散布

特にハダニ類は薬剤抵抗性の発達しやすい害虫で、新規薬剤でも数年で防除効果が低下する事例があります。薬剤の系統を把握し、同系統の薬剤は連用を避けることが大切です。

▼薬剤抵抗性のことならこちらをご覧ください。

ダニ類には総合的な防除

防除
出典:写真AC
農作物に被害を与えるダニ類でもさまざまな種類が存在し、作物によって害を与える種類は異なります。そのため、栽培している作物にはどのようなダニが寄生し、どのような被害を与えるのかを理解しておく必要があります。またダニ類は増殖スピードが早く、薬剤の抵抗性が付きやすいため防除するのが難しい害虫です。作用性の異なる薬剤を上手くローテーション散布したり、薬剤だけでなく天敵や物理的防除を活用したりと総合的な防除を行いましょう。

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umi

農業資材メーカと農協にて6年間勤務。農家への栽培技術(農薬・肥料・栽培システムなど)の普及を担当。役立つ情報を初心者の方にもわかりやすくお伝えします。

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