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【連載第21回】SDGs目標12:米をつくる責任から考える|農業なくして持続可能な社会なし


SDGs目標12「つくる責任つかう責任」が今回のテーマ。米農家の大津愛梨さんが米をつくっているからこそ「つくる責任」、また消費者として「つかう責任」について考えます。持続可能な社会のために、農家はもちろん、身近なところで私たちにできることを考えましょう!

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Avatar photo ライター
大津 愛梨

慶応大学環境情報学部卒業後、夫と共にミュンヘン工科大学で修士号取得。2003年より夫の郷里の南阿蘇で農業後継者として就農、有機肥料を使った無農薬・減農薬の米を栽培している。女性農家を中心としたNPO法人田舎のヒロインズ理事長、里山エナジー(株)の代表取締役社長、一般社団法人GIAHSライフ阿蘇の理事長などを兼任。農業、農村の価値や魅力について発信を続ける4児の母。…続きを読む

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南阿蘇の田園風景

提供:O2Farm
九州のほぼど真ん中、熊本県南阿蘇村という場所でお米とあか牛を育てているO2Farm(オーツーファーム)のEriこと大津えりと申します。「農業者こそ“SDGs(持続可能な開発目標)”を達成するための立役者!」という視点で連載をしています。

月間連載アーカイブはこちら

【毎月更新!】農業なくして持続可能な社会なし

今回のテーマ:SDGs目標12|つくる責任つかう責任

SDGs目標12
出典:国際連合広報センター
今回のコラムと関係するSDGs目標は、【12:つくる責任つかう責任】。
目標12の内容は「持続可能な消費と生産のパターンを確保する」です。

SDGs目標別アーカイブ

目標1・2・3目標4目標5目標6目標7目標8目標10目標11目標12目標13目標14・15

米をつくる責任

稲を持つ女性
提供:O2Farm
今回のテーマは、「つくる責任つかう責任」です。なんといっても、私は「生産者(=つくる人)」ですから、もちろん米づくりの話から。

O2Farmでは、我が家のお米を買ってくれる方々や周りの自然環境に対して、責任をもって米づくりをしています。もとい、つくっているつもりでいます。
農薬を使わない、もしくは極限まで減らす栽培を1回だけやったところで、それは単なる実験に過ぎず、それを続けることではじめて責任をもって米づくりをしている、といえるわけで、SDGsの目標すべてに対しても同じですが、「やり続けること」が重要だと思っています。

環境負荷をできる限り減らした米づくり

私と夫は農業を始める前の3年半、国費留学生としてドイツ南部のミュンヘンという場所で環境や景観の勉強をしました。日本の税金ではありませんでしたが、ドイツの国費を使ってサポートしてもらったからには、実践して社会に恩返しするのが当然の義務というもの。日本に戻り、農薬をなるべく使わず、環境負荷をできる限り減らした米づくりをするようになって19年の月日が経ちました。

環境に全く負荷をかけていないかといえば、現実はそれほど甘くなく、まだまだ納得していない点も多々あります。でも少なくとも、「今できる限りのことはやっている」という自負は持っています。

それに加えて、「技術や制度的に可能になったらあれもやりたい、これもやりたい」という具体的な目標があるので、常に前向き!例えば、肥料などを入れているプラスチック製の袋が生分解性プラスチックになればいいのにとか、お米を収穫・管理・発送するときの紙袋や段ボールがリユースできたらいいのにとか、いろいろと考えては情報を集めたり、妄想を膨らませたりしています。

お客様に対しての責任|生産者と消費者、お互いの顔が見える関係に

米を収穫する女性
提供:O2Farm
就農以来、我が家のお米を買ってくださるお客様には、自分たちがやっていることや目指していることを通信に書き記して、お米と一緒に毎月お届けしています。もちろん通信は印刷したものですが、100件を超えるお客様それぞれに手書きのメッセージを一言書き加えています。これは、つくり手としての私のこだわり(意地?)です。
このお便り+手書きメッセージで、私たち「つくる人」とお米を食べてくださっている消費者の皆さん、つまり「つかう人」がお互いに顔の見える関係を築きやすくなると思うからです。

顔の見える関係性をつくることがお互いのためになる

米袋を持つ男性と大津さん
提供:O2Farm
これは、SDGsの目標「つくる責任つかう責任」のためにやってきたというより、せっかく市場より高いお米を取り寄せていただいているわけですから、安心して食べられるお米というだけでなく、顔の見える関係性をつくることがお互いのためになるという、いわばWin-Winの関係づくりのためです。

そんな関係づくりの結果として、台風が近づいたり地震があったりすると、お客様から「大丈夫ですか?」というメッセージや電話をいただきます。子どもが生まれたり進学したりすると、実際にお会いしたことのないお客様からもお祝いの言葉をいただきます。本当にありがたいことです。
農業を辞めようと思ったことはほとんどありませんが、キッツイな〜と思うことはもちろんたくさんあるわけで、お客様からのエールや気遣いはそんなときの励みになっています。南阿蘇まで会いに来てくださるお客様もたくさんいて、みんなの田舎になれたらなぁというのが、「田舎」のなかった私の夢です。

『北の国から』五郎のセリフ

私は『北の国から』のマニアではないのですが、見ればもれなく泣きます。2021年3月に亡くなった俳優の田中邦衛さん演じる、五郎という田舎暮らしをする2児のお父さんの名ゼリフを紹介します。

考えてみるとさ、今の農家は気の毒なもんだとオレは思うよ。
どんなにうまい作物つくっても、食ったやつにありがとうって言われないからな。
誰が食ってるか、それもわからねぇんだ。
だからな、オイラは小さくやるのさ。
ありがとうって言葉の聞こえる範囲でな
(『北の国から ’98時代』より)

全くその通りだな、と思います。

環境に対しての責任|自分たちのために

田んぼの調査をする男性
▲専門家の植物・生物調査。提供:O2Farm
日本では農業というとグリーン産業のようなイメージが、特にここ最近はメディアによってつくられている気がしますが、世界的にみると農業は「環境へ負荷をかける産業」という扱いをされています。正確にはわかりませんが、実際、世界の農業分野が排出している温室効果ガスは非常に多いと思います。

ただ、日本は島国なので、限りある国土や資源で人間が生きていくために必要な食糧をつくる、というのが自国のためにも当たり前のことで、環境に負荷をかけ過ぎると、農業を続けることができなくなるわけですから、続けるためにはサスティナブルであったはず。持続可能じゃなくなってきたのは戦後、農業に機械を使うようになってからじゃないかと思います。

トラクターをはじめとした農機具はもちろん、農村には欠かせない車を動かすためには燃料か電源が必要で、燃料といえば化石燃料。より少ない人数で多くの農産物をつくるために化学肥料や農薬を使うと、それも元は化石燃料から作られます。化石燃料を使えば、温室効果ガスが出ます。それらが全て悪いというつもりは毛頭ありませんが、環境に負荷をかけていることは事実です。

CO2排出ゼロに向けて

アカハライモリ
提供:O2Farm
以前にこの連載で紹介しましたが、O2Farmでは化石燃料の代わりに、食用の天ぷら油を再生して作った植物性の燃料(バイオディーゼル燃料)を使ってみたり、農薬を使わない、もしくは微量しか使わなかったりと、CO2排出ゼロのために「継続した実践」をしています。その取り組みが、生物多様性を豊かにすることにどれぐらい効果をあげているかを知るために、これまでに3回ほど専門家の力を借りて植物・生物調査をしました。温暖化ガスの防止とは直接関係ないとはいえ、たくさんの動植物が田んぼで確認できたときはとてもうれしかったです。

農業を続けるためには…

阿蘇で育つ赤牛
提供:O2Farm
自然環境が健全でなければ農業はできません。環境が悪くなっていけば、結果的に大変な思いをするのは自分たち自身なので、環境に対する「責任」は、シンプルに自分たちのため。今回はあえて、環境への責任については深掘りしません。農業を続けるためには、環境への負荷を減らすのが当然!ってことで。

責任って?

田植え機に乗る親子
提供:O2Farm
ところで「責任」って何なんでしょうね。
我が家では、子どもたちに「自由と責任」という言葉を、物心がつく前から耳にたこができるほど繰り返し言ってきました。

「ダメ」は3つだけ

就学前から成長のステージによって内容は変わるのですが、子育て中に私が子どもに「ダメ」ということは常に3つ。それ以外のことでは怒らない、と決めています。

最初に禁じられるのは、「危ないこと(道路に飛び出ない、枝などの長いものを振り回さないなど)」「ウソをつくこと」「食べ物で遊ぶこと」。何かモノを壊しても、それが故意でなければ怒りませんが、それを隠したりウソをついたときはメッチャ怒ります。お尻ペンペン程度ですが、手を出す場合もあります。食べ物で遊ぶことはもうしない前提で、小学生になると「人が嫌がること」に置き換わります。

自由と責任

この禁止事項3つに背かなければ、基本的に子どもたちの行動や選択は自由。「〇〇したい」と子どもたちが言ってきたことに対しては、基本的に「どうぞ」と言います。その代わり「自由と責任ね」と。自由に選んでいい、決めていい、というのは責任を伴うんだよ、ということを、意味がわかるのかどうか怪しい年齢から教えてきました。

水をコップになみなみと注ぐのは自由。「こぼれるよ!」と言って止めたりしません。でもそれでこぼしたら自分の責任なので、床を拭くのはこぼした本人です。何においてもそんな感じ。庭でボール遊びしてもいいけど、窓が割れたら片付けるのは自分たち。自由にしていい代わりに何か起きたら責任を取るのが当たり前。

やってしまったら考える

バケツの中を見つめる子ども
提供:O2Farm
あるとき、息子が小屋のガラスを割ってしまいました。たまたま私が内側にいたので様子を伺っていましたが、しばらくうなだれた後、中にいた私の存在には気づかずに自分で片付け始めました。
割ったことを隠したら怒られる、でも庭でボールを投げたらガラスが割れるかもしれないというのはわかっていたし、やっちまったなぁ~と、幼いながらもいろいろ考えを巡らせていたのでしょう。ガラスの処理は危ないので、「自分から片付け始めた」という行為を見届けた上で、親が片付けましたが。

子どものアルバイトとやり遂げる責任

稲刈りをする子ども
提供:O2Farm
もう少し「責任」の話を続けます。
我が家の子どもたちは小さいころから、親がやっている仕事を「僕も(私も)やりたい!」と言って手伝ってくれていました。手伝いにならないこともたくさんありますが、我が家のルールとして、自分から「やりたい」と言ってきた手伝いに対しては、お駄賃が出ません。やりたいと言ったのは本人ですから。

こちらが「やってくれない?」とお願いしたことに対しては、何らかの形で「アルバイト代」を出します。幼少期はそれがジュースやアイス、上の息子たちが野球を始めてからは、それがグローブやバット、高校生になった今は現金。その代わり、仕事は最後までやることを支払いの条件にしていました。途中でやめたらノーカウント。なかなか厳しい親ですね(笑)。私の想いとしては、最後までやり遂げることが責任だ、ということを教えたくて。

上の3人は既に親元を離れており、どれだけ「責任」をとれる人間になっているかはわかりませんが、私が「自由と…」と言いかけたら「責任ね」と返してくるぐらい、言葉としては染みついています。それぞれ野球チームのキャプテンをやったり学級委員をやったりしているので、自分が選んだことや行動に対する責任だけでなく、与えられた任務に対する責任についても全うできるようになってから、社会に出て欲しいものです。

つかう責任|農家だって消費者

ファーマーズマーケット
提供:O2Farm
いやぁ、お恥ずかしい話、農家が集まる会議などで大手チェーン店のお弁当が配られるのはざら。その中には自分たちが作っているモノはほとんど使われてなかったりするわけでして…。買い物に行っても、地元のスーパーに並んでいるのは外国産や他産地のものが多いこと。
就農当時はモンモンとしていましたが、熊本地震を機に「地産地消カフェ」をつくってからは、可能な限りそこにお弁当を頼むことで、やれる範囲のことはやっているなという自負が持て、少しは気が楽になっています。

女性参画と消費者目線

農林水産省の「農業女子プロジェクト」が、発足8年目を迎えました。初期メンバーとして参画した割に、ここ数年はほとんどメンバーとして関わることができていませんが、農業女子プロジェクトの担当課である農林水産省の就農・女性課が出したデータによると、経営に女性が参画している事業体のほうが業績が伸びているそうです。女性の“消費者としての感覚や目線”が、消費者のニーズに合った商品開発につながっているから、という分析がなされていますが、その通りだと思います。ジェンダー論を持ち出すのが年々難しくなってはいますが。

最後まで使う責任

地産地消カフェのご飯
提供:O2Farm
2021年4月から南阿蘇に移り住んで、「生産者」としての目線も持つようになった東京出身の20代女子が、地産地消カフェで、規格外農産物や我が家のお米を使った朝ごはんの提供を始めたのは9月終わり。ビジネスとも呼べない小さな取り組みではありますが、つくるからには責任をもって最後まで使う、という明確な姿勢が素晴らしい!移住してたった半年でアクションに移した彼女の行動力に脱帽しています。

夫も子どももみ〜んな消費者

魚をさばく少年
提供:O2Farm
我が家は料理好きの私が調理担当ですが、子どもたちもよく台所に立ちます。特に、農家仲間や友人から珍しい食材や「つくった人の顔の見える食材」が届いたときは、子どもたちは率先して料理に参加!学生時代に4年間1人暮らしをしていた夫も、料理はお手のものです。よくある話ですが、たまにしかつくらないと丁寧にこだわってつくるので、子どもたちは「お父さんの方が料理がうまい」と思っている気がします。

今年に入ってから息子たちが親元を離れ、差し入れやら身の回りの世話やらで私が家を空けることが増えました。そんなときは我が家の炊事を夫に頼んだり、買い物を頼んだりすることも増えてきました。野菜高騰の中、「高くても野菜も肉も加工品も国産のものにしてね」と怖い奥様に言われているので、夫も「消費者」として、財布とにらめっこしながらレジに並んでいることでしょう。

買い物という政治参加

マルシェを歩く女性
提供:O2Farm
ドイツに住んでいたとき、「買い物」という行動が社会に対する意思表示になることを肌で感じていました。日本でも少しずつは変わってきているし、買い物袋を持ち歩くのはついに「普通のこと」になってきましたが、感覚としては20年遅れているなぁ、と思います。私は日本が大好きですし、ドイツかぶれしている訳でもありません。日本もドイツも敗戦国だし、工業がもたらした公害に苦しんだ歴史を持っていて、勤勉な国民性もよく似ていると思います。

でも、過ちを繰り返さないことを絶対的な目標としているドイツと、済んだことは水に流す日本では、大きな差が出ているなぁと残念に思っています。フードロス問題にしろ、過剰包装問題にしろ、日本でできることはまだまだあり過ぎるほどある!まずは「エシカルな」、つまり環境や人権に対して十分配慮された商品やサービスを選択・購入することについて考えてみてほしいと思います。

1人の100歩より
100人の1歩が
世界を変える
一般社団法人エシカル協会より)

というメッセージが大好きです。

つくっているからこそできること

冒頭にも書きましたが、私たち農業者は生産者、つまり「つくる人」。つくり続ける責任を果たしつつ、つくり手だからこそわかる「つくる苦労」を大事にして、モノやヒトに対しても考えていきたいと思っています。「人にやられたら嫌なことは自分もしない」を意識すれば、フードロスは減るはずだし、ファストフードやファストファッションに偏らない消費行動につながるんじゃないか、というのは理想論過ぎるかなぁ。結局、収入の話になっちゃうしなぁ。私も結局100均で買っちゃうモノもあるもんなぁ。悶々(もんもん)…。

大津愛梨さんのコラムアーカイブはこちら

【毎月更新!】農業なくして持続可能な社会なし
家族経営農家の生活を写真と共に紹介♪「ハッピーファミリーファーマーズ日記」

大津 愛梨(おおつ えり)プロフィール
1974年ドイツ生まれ東京育ち。慶応大学環境情報学部卒業後、熊本出身の夫と結婚し、共にミュンヘン工科大学で修士号取得。2003年より夫の郷里である南阿蘇で農業後継者として就農し、有機肥料を使った無農薬・減農薬の米を栽培し、全国の一般家庭に産直販売している。
女性農家を中心としたNPO法人田舎のヒロインズ理事長を務めるほか、里山エナジー株式会社の代表取締役社長、一般社団法人GIAHSライフ阿蘇の理事長などを兼任。日経ウーマンの「ウーマン・オブ・ザ・イヤー」やオーライニッポン「ライフスタイル賞」のほか、2017年には国連の機関(FAO)から「模範農業者賞」を受賞した。農業、農村の価値や魅力について発信を続けている4児の母。
ブログ「o2farm’s blog」

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