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【毎月更新!】農業なくして持続可能な社会なし今回のテーマは、SDGs目標14:海の豊かさを守ろう/15:陸の豊かさも守ろう
目標14の内容は、「海洋と海洋資源を持続可能な開発に向けて保全し、持続可能な形で利用する」です。
目標15の内容は、「陸上生態系の保護、回復および持続可能な利用の推進、森林の持続可能な管理、砂漠化への対処、土地劣化の阻止および逆転、ならびに生物多様性損失の阻止を図る」です。
SDGs目標別アーカイブ
目標1・2・3|目標4|目標5|目標6|目標7|目標8|目標10|目標11|目標12|目標13|目標14・15海が好き!
海の近くに住むのは苦労も多いと思います。自転車とかすぐにさびるっていうし、台風のときとか怖いし…。でも、私や子どもたちのような山に住む人間としては、たまに海を見ると「わぁ!」と叫びたくなるぐらいテンションが上がります。
海が好きなのに、海から離れて暮らしている。でも、「やれることはある」。もう、このフレーズの繰り返しでしかないですが(笑)。しかも、最近では本当に良くテレビや雑誌でも、SDGsの目標に対して「自分ができること」の紹介をするようになってきましたよね。というわけで、まずは海の話から。
海が遠くても、やれることは必ずある
その当時、沖縄に住んでいた友人が「この先、海です」という環境教育ワークショップをあちこちでやっていることを知って、せっかく子どもたちが集まるのだから、そのワークショップを一緒にやろう~!ということになって、沖縄から友人夫妻が駆けつけてくれました。
この先、海です
保育園で魚の着ぐるみ
価値あり!シンプルで子どもにもわかりやすい環境保護活動
ご夫妻はその後、東北に移住して、東日本大震災後の南三陸地方を中心に、「NPO法人 海の自然史研究所(海研)」という団体で、「この先、海です。プロジェクト」も含めた環境保護活動を続けられています。シンプルだけどとっても効果のある環境学習だと思うので、「お、やってみたい」と思っていただけたら、ぜひ問い合わせてみてくださいね。
海はボーダーレス
家族でハワイへ留学
「そのことにおびえて過ごすぐらいなら、この際、家族で留学だ」と、スーパーポジティブ思考の母(私)は家族を連れてハワイへGO!
みんなでやれば楽しいビーチクリーン
モロカイ島に行く前に、そのことを知る由もなかった私たちですが、滞在中、一緒にビーチクリーンに参加!実際に日本の地名や商品名が書かれたゴミが、たくさん流れ着いていました。
モロカイ島を再訪
家族留学中に仲良くなった地元の友人たちや子どもたちも加わってくれて、海のゴミ拾い。英語なんかわからなくても、言葉の壁を越えて、子どもたちには海がつながっていることや海遊びは楽しいことが、記憶として残ったに違いありません。
中村天平さんもモロカイ島に
共通の友人を通じて仲良くさせてもらっていた天平さんに、モロカイ島には津波で流されたゴミが5年以上も流れて来ていること、島民のみんながボランティアで集め続けていること、それを私たち農家仲間や子どもたちと、微力だけど手伝いたいと思っていることなどを伝えたら、「俺も行く」と。
パンデミックが始まる前は、毎年国内外のツアーをしている多忙な身でありながら、島民の皆さんのこれまでの努力に少しでも恩返しがしたい、と駆けつけてくれました。
音楽の力もボーダーレス
天平さんは、さびれた教会の調律もほとんどしていないようなピアノで、魂が震えるような演奏をボランティアでしてくださり、島の皆さんの中には涙を流していた人もいました。環境問題とか、人権問題とか、経済格差とか、とかく複雑でどこから手を付けていいかわからない大きな社会課題がいくつも横たわっていますが、音楽は言葉や人種の壁を超えて、ときに慰め、ときに勇気を与え、そしてみんなを笑顔にしてくれるんだ、としみじみと感じました。本題とは少しズレますが、ぜひ紹介したいエピソードでした。
陸の豊かさ、守ってますよ~
まず、農薬をほとんど使いません。合成洗剤も使いません。これらは、海の豊かさを守ることにも直結します。保水力も生物多様性もアップする、適正な間伐や山の手入れもしています。
今年から、冬にも田んぼに水をためておく冬季湛水(たんすい)をしています。そのことで、地下水の涵養(かんよう:少しずつ自然に染み込み養生すること)にもなれば、渡り鳥のえさ場にもなるそうです。これらも海と連動しますね。結局、この目標14と15は切っても切り離せない目標です。
ガーンと思ったことも、もちろんあります
共存する心を育てる
いるのが当たり前という感覚
いるはずがないと思うからなのか、都会では「虫、キライ」と言っている子たちでも、農村に来ると最初こそキャーキャー言いますが、不思議なことに、割とすぐに慣れて観察を始めます。なんなら、捕まえるようになっていきます。私だって別に特に虫が好きな女子ではなかったし、むしろ苦手でした。でも、農村に暮らしていると、虫がいるのが当たり前な訳ですから、耐性ができるというか、そりゃいるよねみたいな気になるわけです。かくいう我が家の子どもたちも、さんざん虫を捕まえたり遊んだりしている割には、虫が好きという訳ではないそうで。でも、付き合い方を知っている、というのは強みだなと思います。
関心を持つ
ちょっと写真が多過ぎたかもですが、就農するまで見たこともなかった生き物たちがおもしろ過ぎて、ついつい撮っちゃうんですよね。眺めてあげてください。
私も娘と一緒に1年生に!?
野焼きという陸の豊かさの守り方
世界的にみると、「焼き畑農業」という有機物を全部焼き尽くしてしまう、環境に大きな負荷をかける農法と同一視されがちなのですが、野焼きの場合は、地上にある枯れた部分だけを燃やすので、地中の温度は上がらないのだそう。そのおかげで、植物の根っこや虫の卵や幼虫も熱の影響を受けることはなく、むしろ枯れた有機物を燃やすことで生物多様性を豊かにしているのです。これは、先人の知恵としかいいようがないですね。
草原を残していくために
バリバリと音を立てて枯れススキが燃えていくのは迫力満点!危険を伴う作業ではあるので、農村の高齢化や人口減少で、「阿蘇にしかない独特の生態系」を守れるレベルの草原を、今後も維持していけるかどうかは、今のところ何とも言えません。公益財団法人 阿蘇グリーンストックが、野焼きボランティアを募集して草原の減少に歯止めをかけています。美しい草原を残していくためにも、一住民として努力していきたいと思います。ネイチャーポジティブ
もちろん完璧なわけではなく、やるべきことややれることはまだまだある訳ですが、どの目標についても「やり切った」ということはありえません。農業者という立場だからできる、海や陸の豊かさを守る意識や取り組みをする人がどんどん増えてくれたらうれしいです。この辺は、連載の最後となる次回につなげたいと思います。
大津愛梨さんのコラムアーカイブはこちら
【毎月更新!】農業なくして持続可能な社会なし家族経営農家の生活を写真と共に紹介♪「ハッピーファミリーファーマーズ日記」
大津 愛梨(おおつ えり)プロフィール
1974年ドイツ生まれ東京育ち。慶応大学環境情報学部卒業後、熊本出身の夫と結婚し、共にミュンヘン工科大学で修士号取得。2003年より夫の郷里である南阿蘇で農業後継者として就農し、有機肥料を使った無農薬・減農薬の米を栽培し、全国の一般家庭に産直販売している。
女性農家を中心としたNPO法人田舎のヒロインズ理事長を務めるほか、里山エナジー株式会社の代表取締役社長、一般社団法人GIAHSライフ阿蘇の理事長などを兼任。日経ウーマンの「ウーマン・オブ・ザ・イヤー」やオーライニッポン「ライフスタイル賞」のほか、2017年には国連の機関(FAO)から「模範農業者賞」を受賞した。農業、農村の価値や魅力について発信を続けている4児の母。
ブログ「o2farm’s blog」