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米を作るとはどのようなことなのか、稲作の仕事についてご案内します。
稲作とは?
イネはイネ科の1年草で、その種子を米(コメ)といいます。稲作は米を栽培することです。日本の稲作は、水を張った田んぼで栽培する「水田稲作」がほとんどですが、「陸稲」という畑で育つイネもあります。稲作の歴史|中国からの伝来。そして日本各地へ
稲作の起源は、中国の長江流域と考えられています。稲作はここからインド、アジア各地へと広がっていきました。日本では、縄文時代の終わりごろに水田稲作が行われていた可能性が高いといわれています。弥生時代以降、水田稲作は急速に日本各地に広がっていきました。以後、日本では数千年にわたって稲作が続けられ、食生活のみならず、宗教や文化に大きな影響を与えています。日本で稲作を行っている農家の数は?
5年ごとに行われている農林水産省の調査(農林業センサス)によると、稲作(水稲)を行っている経営体数は約93万戸(平成27年度)に上りますが、年々減少傾向にあります。これは、後継者がいない小規模、高齢農家が多いことが主な要因ですが、一方で規模拡大等の動きもあるため、作付面積や生産量の減少に直結しているわけではありません。また、専業農家が減少し、農業所得以外を主とする兼業農家が増えています。同時に、複数の個人または世帯が共同で農業を行う組織経営体が増加傾向にあります。
収益はどのくらい?
水田作経営(全国平均)の1経営体あたりの農業粗収益は277万円、水田作作付延べ面積20.0ha以上の階層をみると、農業粗収益は5,001万円となっています。1経営体当たりの農業所得は増加傾向にあります(平成29年農業経営統計調査)。稲作経営の農業所得を向上させるためには、品質や収量の向上はもちろん、生産コストの削減が必要です。規模が大きく、生産性の高い経営体が大きな収益を上げることができるといえます。
米の需要|高まる外食・中食向けニーズ
日本における1人あたりの米の年間消費量は、ピークの昭和37年度から一貫して減少傾向で推移しています。年間消費量と人口が減少する中、主食用の米の需要量は毎年8万トン程度のペースで減少しており、この傾向は今後も続くと見込まれています。主食用米の中で、需要が高まっているのが外食・中食向けの米です。外食・中食などの業務用途では、例えば寿司など、使われ方によって求められる品質がさまざまであることや価格が手ごろであることも重視されるため、コメの生産段階で販売先を検討し、ニーズに合わせた生産、販売を行っていくことが求められています。
また、国では、飼料用米の生産量について、2025年のまでに110万トンに増産する目標を設定しており、飼料用米により生産した豚肉、牛肉、鶏卵等のブランド化の取り組みが広がっています。
参考:平成29年度『食料・農業・農村白書』(平成30年5月22日農林水産省公表)
日本で栽培されているコメの品種
日本では、その土地の気候に合わせて、さまざまな種類のコメが生産されています。日本で栽培されているコメの種類とその比率のトップ5は以下のとおりになっています。順位 | 品種 | 比率(%) |
1 | コシヒカリ | 35.0 |
2 | ひとめぼれ | 9.2 |
3 | ヒノヒカリ | 8.6 |
4 | あきたこまち | 6.8 |
5 | ななつぼし | 3.4 |
稲作のスケジュール
稲作の始まりは3月ごろです。地域によって時期が多少異なりますが、3~10月ごろがオンシーズン、11~2月ごろがオフシーズンといえるでしょう。時期 | 仕事 | 内容 |
3~4月 | 苗作り | 土を入れた苗箱に種もみをまき、ビニールハウスの中に置きます。 |
4~5月 | 代かき | 代かきとは、田んぼの土を砕いて、土の性質を良くすること。田植えの前にトラクターや耕運機を使って行います。 |
5月上中旬 | 田植え | ほとんどが田植え機によって行われています。 |
6~7月 | 水の管理・追肥 | 田んぼに水を入れ、水の量を調節します。また、稲の様子を見ながら、肥料などを少しずつ与えます。 |
9~10月 | 稲刈り・脱穀 | 稲を刈ります。コンバインという機械を使えば、脱穀も同時にできます。 |
9~10月 | 乾燥・もみすり | 乾燥機で熱風をかけて乾燥させます。もみからもみがらを取ります。 |
作業工程のポイント
1. 積極的な土作り
土壌診断を基に、適切な土作りをします。有機物が適正量含まれているほ場では、異常気象でも生育が安定します。有機物の確保は重要です。2. 健やかな苗作り
苗代で育てる苗の良否が本田での生育や収量を左右します。水や温度を適切に管理して、元気な苗を育てましょう。3. 効率的な雑草防除
ほ場に凹凸があると、凸部から雑草が生えてきますので、ほ場を均平に整えます。その他、除草剤の適宜防除で雑草対策を徹底します。4. 病害虫の防除
病害虫は年によって程度や種類が変わります。稲を観察して、日頃から注意を払う必要があります。5. 水管理の徹底
植えたばかりのイネは弱いので、水は深めのままとし、ある程度育った後、中干しという田んぼを乾かす作業をします。出穂直後はイネが最も水を必要とするなど、水管理を徹底することが、収量・品質の向上につながります。6. 作付設計と適期収穫
品種や作付時期の組み合わせによって、収穫時期を分散したり、適期収穫に努めます。稲作の仕事の特徴|気象に左右される難しさの一方で大きなやりがいも
稲作はハウス栽培とは異なり、気候や気温に左右されるため、気象を判断しながら臨機応変に仕事を行わなくてはなりません。一生懸命に取り組んでも台風など天災の被害に遭うこともあります。また、稲作で生産性を上げるためには、大型機械の導入が必要であるため、新たに始める場合には多額の初期投資が必要になります。一方、機械化が進んだことで、生産性が向上しているとともに、体力的な問題がネックになることが少なくなっているほか、自然を相手に、どのような品種の米をどのように育て販売するか工夫して、できたお米を消費者に届けることは大きなやりがいとなるでしょう。
経験がなくても、農業法人などに就職し、いろいろなことを教わっていけばキャリアを積むことができます。