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メンテナンスを怠ると、修理代の負担に加え、種まきなどの作業が後ろ倒しとなり、作物の収穫遅れを招くリスクもあります。汗水流して稼いだお金は修理代ではなく、種や苗、アタッチメントなど前向きな投資に使いたいですよね。
トラクターのメンテナンスにはどんなものがある?
トラクターのメンテナンスは、仕事を始める前や終えた後に行う「日常的メンテナンス」、そして半年や一年に一度行うべき「定期的メンテナンス」に分けられます。日常的なメンテナンス
ポイントをおさえて手際よくチェックを行いましょう。1.エンジンオイルやギアオイル、ラジエター冷却水、バッテリー液が規定量入っているか確認し、減っている場合は補充します。
2.タイヤについては、空気圧が減少していないか、ボルトやナットに緩みがないかをチェックします。
3.トラクター使用後は、高圧洗浄機などで汚れを落とし必要部位に注油もしくはグリスアップを行ってから倉庫に格納します。注油やグリスアップの箇所は取扱説明書に詳しく記載されていますので、チェックしておきましょう。
定期的なメンテナンス
例えばエンジンオイルであれば初回は運転50時間経過後、その後は100時間ごとにオイル交換を行ったほうが良いとされています(条件によって若干異なります)。また、ギアオイルであれば初回は運転50時間その後300時間ごとに、ラジエター冷却水は年1回程度交換する、といった目安があります。このときに注意したいのは、「〇〇時間」を鵜呑みにしないこと。条件によっては80時間でもエンジンオイルを交換すべき段階にあるかもしれません。日常のメンテナンスの結果も踏まえて判断しましょう。
大切なトラクターだから長く使いたい!耐用年数を延ばすコツ
ぶつけない
ハウスや縁石、電柱などにトラクターを接触させると、危険なだけでなく、傷から錆などが発生します。場合によっては部品交換が必要になることも。トラクターを運転する際は、新車を運転するときのように慎重な操作を心がけましょう。こまめなチェックで異常の早期発見を
トラクターは泥汚れが付着するため、車体の傷や破損、部品の欠落などの発見が遅れがちです。このため使用後は、きちんと洗浄を行ってから格納することをおすすめします。特に、高圧洗浄機を使えば頑固な泥の塊も簡単に落とせ、部品の欠落などの早期発見につながります。ただし、高圧洗浄機の水が運転台のパネルや電装部分、エンジンまわりにかかるとショートや故障の恐れがあるため、直接かからないようシートなどで覆ってから清掃します。
メンテナンス工具にもこだわりを
トラクターにはあらかじめ整備用の工具が付属していますが、爪交換用など最低限の工具にすぎません。特にスパナはしっかりしたものを使わないと、ナットの頭がつぶれてしまい修理工場送りなどになる場合もあります。仕事で使用する工具は、品質の良いものを選びましょう。主なメンテナンスの方法とポイント
トラクターの主なメンテナンス方法をまとめました。機種により部品の形状や手順が異なりますので、必ずお手持ちの取扱説明書もご確認ください。なお、一部メーカーでは、Webサイトから取扱説明書をダウンロードできます。→井関農機株式会社:https://i-next.iseki.co.jp/goriyoujyouken.html
→株式会社クボタ:http://www.kubota-nouki.jp/manual/
→三菱マヒンドラ農機株式会社:http://www.mam.co.jp/manual/manual_list.html
エンジンオイル交換
1.オイル交換前に、あらかじめ5分ほど暖気運転を行います。2.ドレンプラグを外し、古いエンジンオイルを排出します。オイル注油口のキャップを外しておくと早く排出できます。
3.排出が終わったらドレンプラグを閉め、規定量のエンジンオイルを給油口から注入します。
一般的に100時間ごとに交換が必要といわれていますが、真っ黒に汚れていたり、触ってザラザラしたりするようであれば、早めに交換します。
ラジエターと冷却水チェック
エンジンを冷却するための重要な箇所で、メンテナンスを怠るとオーバーヒートの原因となります。キャップを外して冷却水が減少していないか確認し、減少があれば冷却水を補充しましょう。
なおLLC(ロングライフクーラント)と呼ばれる冷却水は防錆効果があり、ラジエターが長持ちします。また、ラジエター防塵網やフィン(ヒダヒダの箇所)も掃除すると冷却効果が高まります。
バッテリー交換
バッテリーは消耗品です。通常はバッテリー液が規定量入っているかチェックし、足りないようであれば補充を行います。充電してもすぐに減ってしまうようであれば、バッテリー本体の交換が必要です。また、長期間使用しない場合は、バッテリーを本体から外して保管すると長持ちします。なお、マイナス端子だけを外して保管する方法もあります。ファンベルトチェック
エンジンを冷やすためのファンを作動させるためのベルトです。ベルトが緩んでいるとファンが回らず冷却能力が低下します。指でベルトの張り具合をチェックし、1cm程度の張りがあるように調整します。またファンベルトが、プーリーの溝の頂点よりへこんでいるようであれば、ベルト自体の交換を行いましょう。ギアオイル交換
ギアオイルは、変速や油圧の作動に必要なほか、潤滑や防錆、清浄の役割があります。交換頻度は500~600時間ごとといわれていますが、交換しないと油圧部品の寿命を縮めるほか、パワーステアリングや走行関係の機器が正常に作動せず走行できなくなる場合があります。定期的に規定量が入っているか確認し、減少しているようであれば補充してください。燃料補給
軽油を補給するポンプは、灯油やガソリンなど他の油種のものと兼用せず、必ず専用のポンプを用意してください。また燃料コックのカップの部分にほこりや水が溜まっていないか確認し、汚れているようであれば清掃を行います。カップの内側も、きれいに掃除します。タイヤ交換
タイヤの空気圧は年1回程度、業務を始める前にチェックして、足りないようであれば補充します。なお空気の入れすぎは禁物!牽引力の低下やひび割れの促進、消耗が早くなりますので注意が必要です。タイヤのラグ(ギザギザ)が地面に5つ接した状態が適正圧の目安ですので参考にしてください。なおタイヤのラグの減り、ひび割れ等が発生してきたら交換時期です。定期点検は所有者の義務!プロにも依頼してみよう
1997年に農耕車両の車検制度が廃止され、トラクター所有者は「自主点検整備」を自ら行うことが義務付けられました。そのため、基本的には各所有者が定期点検を行うことになっています。ただし、製造から20年を経過した高年式車などは、一度、業者への点検を依頼してみてはいかがでしょうか。自分のトラクターの不調を把握し、そこを重点的にメンテナンスしていくのが長持ちのコツです。こんな症状が出たら要注意
何かおかしいと感じた場合、実際にどこかで不調が発生している可能性が高いです。次のような場合は、いったんトラクターを停めてチェックしましょう。異音がする
エンジンが調子よく動いていたのに、キンキン音をたてて止まってしまう場合、焼き付いている可能性があります。冷却水やエンジンオイルをチェックしてください。地面に液体が漏れている
これは私の体験です。ある朝出勤時、トラクターの下に液体がこぼれていることに気が付きました。よくよくチェックしてみるとラジエター冷却水の漏れ!すぐに取り外し、自分で修理業者に持ち込んで修理を依頼したため、工賃なしの3万円程度で済みました。ほかにもロータリーのギアボックスからオイルが染みていたこともあります。トラクターから地面に何かこぼれていないか、毎日チェックしましょう。こまめなメンテナンスは結局おトク!
トラクターのメンテナンスは、繁忙期などついついサボりがち。でも、日常的なメンテナンスであれば15分もかからないでしょう。15分で故障が軽減できるのであれば絶対有益ですよね。さらに、整備台帳を作成してメンテナンス履歴を記録しておけば、将来の交換時期の目安になり、また他のスタッフとの情報共有にも役立ちます。こまめなトラクターのメンテナンスは、優れた農作物の生産に結びつきます。適切なメンテナンスでトラブルの予防と早期発見をし、高い収益を目指しましょう。