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水田に生える雑草の種類は?
水田に除草剤を使用するにあたり、なによりもまず雑草の種類を知る必要があります。分類例としては一年生雑草と多年生雑草に分類することができ、さらにそれぞれイネ科雑草(ノビエ、キシュウスズメノヒエ)や広葉雑草(コナギ、ミズアオイ、クログワイ、オモダカ、ミズガヤツリ)などに分類されます。特にノビエは水田雑草の代表格でイネとの見分けが付きにくく、脱穀時に籾と混ざってしまう可能性があるなど注意が必要です。
水稲用除草剤が雑草を枯らす仕組み
除草剤をまいて、稲を枯らさず雑草だけ枯らすことがどうしてできるのか。先ほどご紹介したイネ科雑草であるノビエを例にあげてみましょう。可能にするポイントは雑草である「ノビエだけ」を枯れさせるために植物の「生長点」を利用するということです。
どのようにして水稲用除草剤が雑草に効くのか
稲を植えるための準備として、畑を荒起こし、入水、代かきと作業を済ませた田植えをします。このとき植えるのは、本葉が2〜3葉位まで育苗した稲です。この田植えを済ませた後から雑草として生長を始めるのがノビユです。ノビユは土の中で発芽したばかり。そんなところに除草剤を入れられては大事な生長点に除草剤が触れ枯れてしまうというわけです。
「稲は枯れないの?」と心配してしまいますが、その時の稲の生長点はしっかりと土の中にあるため枯れることがないんです。
効果を最大限に引き出すポイントは「使用時期」と「水管理」
雑草の種類や生長の段階で除草剤を的確にまくことが重要になります。この除草剤の効果をしっかり引き出すのが、使用時期と田んぼの水管理です。除草剤の使用時期
雑草を抑えたいがための早すぎる除草剤の処理は稲に薬害が生じてしまう恐れがあります。必ず除草剤のまき始めの時期が、稲の移植後何日からなのかをしっかり把握する必要があります。逆に稲の薬害を恐れるあまり、除草剤をまくのが遅ければ雑草に十分な効果が現れないことがあり、せっかくのお米への栄養が雑草に奪われてしまいます。
それぞれの除草剤の使用時期がラベルに記載されていますので、必ず確認をしましょう。
田んぼの水の管理
除草剤の処理をした水田では、拡散した成分が土壌の表面に処理層というものを形成します。土の上に水が張られて薬剤の成分の行き渡っている処理層が雑草の発生を抑えるのです。この処理層は水がなければ薬剤が行き渡らないので効き目がありません。散布後7日間は水田の水に含まれる有効成分が流出しないように止水管理をします。効果をしっかり得るための止水管理は、成分を田んぼから出さないためにも重要なことです。除草剤を使用するときは環境を考えてむやみに拡散させないように注意しましょう。
水田用除草剤の種類
除草剤の使用時期が大事だということは、除草したい雑草の発生具合や生長段階に合わせた薬剤の投与が必要になるからです。発生した雑草の状況を把握し、その雑草に合う除草剤(体系処理・一発処理)を的確な時期に散布することが求められます。
「初期」「中期」って?使用時期別にみる除草剤
体系処理
田植えから5日後位までに使用するのを「初期除草剤」、田植え20日〜25日後位までに使用するのを「中期除草剤」、それ以降に使用するのを「後期除草剤」というように段階に応じて除草剤を使用することを体系処理といいます。一発処理
一発処理とは、さまざまな雑草に効果のある成分を含んでいる高性能な薬剤を使用して的確な時期に除草する処理をいいます。しかし、さまざまな雑草が存在するので、現在使用されてる除草剤が全ての雑草に一発で効果を出すものは残念ながらありません。「粒剤」「ジャンボ剤」って?剤型別にみる除草剤
粉剤、フロアブル剤などの水和剤、豆つぶ剤やジャンボ剤などの粒剤、除草剤の型の違いにより、除草剤の量やまく方法、それに伴う処理層の形成は変わってきます。ジャンボ剤は、手になじむ塊状またはパック状の形をしているため飛散することなく、人の手で水田に投げ込むことが可能です。
ジャンボ剤よりも小さい豆つぶ剤は、その形状により自己拡散性が優れているため散布する量を少量に抑えることもできます。
水稲におすすめの除草剤
1. 月光フロアブル
月光フロアブル P25Jun15
しつこいノビエにしっかり効く水稲用一発除草剤。軽量のボトルで散布が簡単!
・容量:500ml
・参考価格:3,000円程度
・容量:500ml
・参考価格:3,000円程度
2. エリジャン乳剤
3. シンウチEW
シンウチEW 500ml
幅広い雑草の初期発生を抑えてくれる除草剤。
・容量:500ml
・参考価格:1,000円前後~
・容量:500ml
・参考価格:1,000円前後~
4. コメット
抵抗性雑草の除草に!・1キロ粒剤:1kg、10kg
・ジャンボ:300g、900g
・フロアブル:500ml
・顆粒:80g
畦畔部(けいはんぶ)で使う除草剤のおすすめ
畦で除草剤を使用するポイントとして、畦の崩れを防止しなくてはなりません。というのも、憎い雑草の根が畔の土をしっかり崩れないように抑えているからなのです。そのため、「浸透移行型除草剤」のような茎葉や芽から、根や成長点に成分が移行して効果を発揮する除草剤では根も枯らせてしまうので畦を崩してしまいます。
「接触型除草剤」といって植物の葉や茎に薬剤を直接接触させて効果を発揮する除草剤であれば、雑草の根は残るため畦は崩れにくという利点があります。
除草剤の散布方法
安全対策はしっかりと
除草剤を使用するときは、まずは自身の安全を考え、周辺の住民の方々や環境配慮、消費者の安全を守るために育てている作物への薬害が出ないような対策をしっかり守ることが大切です。厳重な装備で、使用量を守り、余った薬剤はむやみに下水道や用水に流さないないように心がけましょう。散布は雑草が育つ前に
除草剤を効果的に使用するためには、散布する時期を逃さないことです。雑草の草丈が大きくなると、薬剤が雑草全体に回りにくくなったり、規定量では効き目が出にくかったりする場合があるため、草丈が小さいうちに除草することが望ましいでしょう。しかし、効き目が出ないからといって規定量を上回る除草剤の量を散布するのは絶対にやめましょう。
要注意!展着剤で効果が薄れる製品も
展着剤とは、植物の表面への付着、拡展、固着をよくする目的で、雑草の茎葉に散布する際に除草剤に添加する薬剤です。除草剤の種類によって展着剤の使用により薬害が出てしまうものもありますので、必ず使用上の注意書きをよく読み、正しく使いましょう。作物の登録を確認
水田に直接種をまく「直播水稲」の場合と、育苗してから植え付ける「移植水稲」では除草剤の登録が異なる場合があります。雑草の生育段階により使用する時期も異なりますので確認が必要です。除草剤の薬害に注意!飛散防止のために行うこと
液剤の散布時には、圧力や方向、位置などに配慮しましょう。もちろん強風時の散布はNG。飛散低減ノズルや飛散防止カバーを使用するのも、薬剤の飛散防止に有効です。天候に注意
雨の日、雨の前はNG
雨の日、雨の前の散布はNG!アプリの雨雲レーダーなどを活用して、数時間後の予報をチェックしましょう。というのも除草剤を散布した後、効き目を最大限に引き出す適切な処理層を作る必要があるからです。また、水田外への農薬流出を防ぐためにも雨による漏水が無いよう湛水状態を保ちましょう。
強風もNG
風が強いときもNG!的確な量の除草剤を散布するためにも、やはり風の強い日は避けましょう。近隣への飛散は迷惑になりますし、単なる薬剤の無駄使いになり効果も薄れてしまいます。有機栽培での除草は?
消費者の多様なニーズにより薬剤を多用しない有機栽培が求められています。有機栽培では除草剤を使用できないことから、機械による除草方法が有効です。小面積を手軽に処理でき、しかも比較的低価格なチェーン除草機。水田用乗用管理機又は乗用田植機に搭載可能な高精度水田用除草機、高能率水田用除草装置。手のかかるアイガモ農法の代わりにアイガモロボットなどを使った機械除草法が挙げられます。このアイガモロボットが走行することで雑草を踏みつぶし、水田の水を濁らせることで雑草の光合成を阻害し、幼い雑草や種に土をかぶせて生育・発芽を阻害する働きをするかわいいロボットなんです。
ほかにも、田植え後に米ぬかを散布したり、鯉や本物のアイガモを使った自然農法、段ボールなどからできた再生紙マルチの敷設も有効な手段です。
除草剤の効果を最大限に!
水田に生える雑草の種類を知って、適切な除草剤の散布方法をとれば、雑草の繁殖が防げ稲の収穫量は増加します。・除草剤の種類は茎葉処理と土壌処理がある。茎葉処理での除草には適切な散布時期を考え、土壌処理には薬剤の効き目を最大限にする適切な処理層を作ること。
・稲の生育に合わせた除草方法、除草剤を選ぶ。
・除草剤が最大限に効くための水田を作る。田面が凸凹の状態は、除草剤を投与しても、水田に均一な処理層ができずに効果が強く出るところとそうでないところの差が。水田作りの代かきは丁寧に行うこと。
・除草剤をまくときの天候に注意し、雨の日、雨の前、風の強い日の除草剤の散布は控える。
以上のことに留意し、使用する際は製品の注意事項をしっかり読み、効果的に除草剤を使用して収穫量のアップにつなげましょう!
なお、他にもメーカー別のおすすめの除草剤など、下記の記事で紹介していますのでチェックしてみてくださいね!
<構成>こぐま農場
→こぐま農場やさいひろば:https://koguma.theshop.jp/