スマート農業とは
スマート農業とは、スマートアグリ、アグリテックなどとも呼ばれるテクノロジーを活用した農業のことです。スマート農業と聞くとなにやら難しいものを思い浮かべてしまうかもしれませんが、「さまざまなツールを使用して農業を楽に、豊かにする」のがスマート農業です。農林水産省もスマート農業の普及のために実証実験に支援を行うなど、国を挙げてスマート農業を推進しています。
スマート農業とはどのようなものなのか、具体的にはどのようにして利用するのか、次の項目で詳しく紹介します。
スマート農業にはさまざまな種類がある
一口にスマート農業といってもその内容はさまざまです。スマート農業にはどのような種類があるのか見ていきましょう。ロボットを活用するスマート農業
今やあらゆる分野でロボットの活用が進んでいます。もちろん、農業もその例外ではありません。畑やハウスでは、野菜や果樹を収穫するロボットが活躍しています。ロボットに付いたセンサーが障害物や路面状況を都度確認しながら作物の間を進み、収穫適期の野菜・果樹を見極めて収穫してくれます。収穫ロボットを導入することで、足腰に負担がかかる収穫作業もロボットで楽々行えるようになるのです。酪農業でもロボットが大活躍
酪農業では、搾乳ロボットや給餌ロボット、牛が散乱させた餌を寄せる餌寄せロボットが活躍中です。酪農業では人力で行う作業が多くあります。搾乳、給餌、餌寄せを自動化することで、作業の効率化・省力化が大幅に進みます。ドローンを活用するスマート農業
作物の状況を把握したり、農薬を散布したりと、ドローンは農業の現場でとても役立ちます。農業機械を販売するクボタでも、農薬散布用のドローンを販売しています。必要な部分に適量の農薬を散布できるドローンを使うことによって、農薬使用量を大幅に減らすことも可能です。従来のスプレーヤーや農薬散布用ヘリコプターよりも、大幅にコストを抑えて農薬が散布できるようになります。農薬使用量の低減にもつながり、栽培作物に新たな付加価値をつけることもできるでしょう。トラクターなどの自動運転技術を利用したスマート農業
トラクターやコンバインの自動運転技術は日々進歩しています。農業機械を販売するメーカーも、続々と自動運転の商品を販売。1つの圃場に自動運転のトラクターを数台投入して、1日がかりだった仕事を数時間で終わらせてしまうこともできます。作付面積・経営規模の大きい農家や農業生産法人で大きな戦力として活躍できるテクノロジーです。ICTやIoTを活用して生産を「見える化」するスマート農業
作物の栽培履歴やハウスの温度、天候、土壌、施肥履歴などのデータを集めて見える化し、栽培に役立てる技術です。データに基づいた栽培によって、適切な管理ができるようになるほか、教育実習生や社員、後継者にも合理的な指導・育成を行えるようになります。酪農業の現場では、牛にセンサーを取り付けて飼養管理・繁殖管理を行う酪農家の姿もあります。クラウド上であらゆるデータを管理することで、スマートフォンやタブレット、パソコンを使いいつでもどこでも、誰でもデータを入力・閲覧・管理できるのもポイントです。休憩の合間に作業日報を打ち込んだり、水や肥料を与える前にスマートフォンで現在の必要量を調べたりできるようになります。
農作業別のスマート農業の事例について、詳しくはこちらをご覧ください。
スマート農業の推進で農業はこう変わる
農林水産省は、スマート農業によって「超省力・大規模生産」「多収・高品質生産」「誰もが取り組みやすい農業」が実現できるとしています。スマート農業の実現・浸透で、具体的に現場ではどのような変化が現れるのでしょうか。ロボットやアシストスーツで労働力不足の解消・高齢化への対策
自動運転技術や収穫ロボット、ドローンの活用で、これまで大人数で行っていた作業が省人化されます。例えば、自動運転トラクターを2台所有している場合、トラクター2台に対し操作を行う人は1名になり、単純に作業者を1名減らすことができるのです。作物の植え付けの前に1台がスプリングハローをかけて、1台がロータリーをかることができれば、作業時間の短縮にもなりトラクターの運転による体への負担も軽減されます。
収穫ロボットを活用することで、収穫時期には家族総出で、さらにアルバイトも雇っていたという農家も、主な作業者数名で収穫に対応できるようになるでしょう。加齢にともない収穫作業の足腰への負担が気になっていた農家も、ロボットや腰の負担を軽減するアシストスーツに任せておけば安心です。
実際に利用できるパワーアシストスーツについて、詳しくはこちらの記事をご覧ください。
ICT・IoTで生産性の向上
ICTを活用して過去のデータに基づいた栽培を行うことで、作物のポテンシャルを最大限に引き出す農業も可能になるといいます。集積したビッグデータをAIが解析して、生産量や病害虫の発生を予測したり、クラウドとカメラの活用で自身は自宅や事務所にいながら社員に栽培の指導を行ったりすることもできます。また、これまでのノウハウや技術をデータ化することで、農業の知識・経験がない人でもはじめから生産性の高い農業ができるようになるのもポイントです。経験によらず、誰でも品質の高い作物を作ることができるようになります。
おすすめの営農管理サービスについてはこちらをご覧ください。
食料自給率の向上
日本では、食材の多くを海外からの輸入製品に頼っていることは周知の事実です。食料自給率の向上に向けた取り組みが重要性を増す中、テクノロジーを活用した農業に期待が集まっています。これまでに紹介したあらゆる技術を使い、農業を効率化していくことができれば、後継者がおらず放棄された農地の活用も進むかもしれません。スマート農業の普及で、農業の「つらい、大変」というイメージが変わり、誰でも安定した収入を得られる産業となれば、農業従事者も増加していく可能性を秘めています。
作付面積が増えて農業従事者も増えれば、生産量は自ずと増大していくでしょう。スマート農業で、食料自給率を向上させることができるかもしれません。
スマート農業普及への課題
このようにさまざまなメリットがあるスマート農業。しかし、実際に普及・浸透させるためには「機器やシステムを導入するためのまとまった資金」が必要です。人手を必要としている小規模農家や高齢化で作業に負担を感じている農家こそ利用したいスマート農業ですが、規模が小さい農家では資金を用意できず、スマート農業の恩恵を受けられないというデメリットがあります。
資金に関する課題は、小規模の農家が複数で機器を共同購入する、リースでコストを抑えながら導入する、各種補助制度を利用するなどで解決できることもあります。スマート農業の導入を考えているのなら、さまざまな方法を検討してみましょう。