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土づくりの監修は、家庭菜園のプロ!福田俊先生
東京農工大学農学部農学科卒。菜園家。ブルーベリー研究家。「どうすればおいしい野菜がたくさん採れるか」「いかにラクで楽しい野菜づくりができるか」を追求し、「フクダ流」自然農的有機栽培を実践。16平米という限られたスペースの市民農園で、年間50品目以上の野菜を有機・無農薬で栽培しています。監修を務めた家庭菜園誌や著書も多数。関連サイト
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著書
『市民農園1区画で年間50品目の野菜を育てる本』(学研プラス)
『フクダ流家庭菜園術』(誠文堂新光社)
『福田さんのラクラク大収穫!野菜づくり』(学研パブリッシング)
福田さんが考える、自然農的有機栽培のための土づくりとは?
自然農法や有機栽培について
家庭菜園で育てる野菜は、できるだけ化学肥料や農薬を使わない有機栽培や自然に近い育て方をしたいもの。とはいえ、自然の力に任せるだけで健康に野菜は育つの?という疑問が…。自然農的有機栽培のこと、土づくりがなぜ大切なのかを福田さんにお聞きしました。それは生長してその後枯れた植物が、土中の微生物を含めた小動物などにより分解され、次の植物が分解された成分を吸収して育つという循環があるから。それと同じ条件を畑に再現すれば、野菜は病気にもならず元気に育つという考えです。土が肥えれば、肥料も少なくて済みます。
自然農法や有機栽培について詳しくはこちら
有機質たっぷりの土だと、連作障害は起きにくい!
同じ畑で作物を何度も栽培していくと、うまく生長しなくなることがあります。化学肥料は野菜の生長に即効性がありますが、土中の微生物の餌にならないため土はどんどん養分不足になり、病気も害虫も増えるという悪循環が起こります。それが連作障害の原因です。完熟している有機質の肥料を混ぜることも大切ですが、野菜を収穫した後の元気な葉・茎・根や雑草などの残さは、土から吸収した養分がまだたっぷり残っています。畑をきれいにしようと外に持ち出してしまうと、せっかく吸った養分そのものを破棄しているのと同じです。そこで養分欠乏が起こります。
残さは絶対に畑の外へ持ち出さず、通路に置くなどして土に還元することで、自然界と同じ土に近づきますよ。
野菜づくりのための良い土の条件を知ろう
良い土とは一言でいうと、完熟堆肥がたくさん入っていて、微生物がいっぱい活動しているふかふかの土です。農薬を使わず、肥料が少なくても野菜がすくすく育つ良い土づくりのポイントは、以下の3つだけ!難しくありませんよ。ふかふかの良い土とは?
Point1. 水はけが適度に良く、通気性に優れている土
土と土の粒子の間にすき間があり、空気と水分が適度にある土の状態を団粒構造といいます。土の中に完熟堆肥などの栄養がしっかりあり、微生物が活動していると、土が柔らかくこのようないい状態になります。土を手で軽く握ると団子状になり、押すとすぐに崩れるので試してみましょう!Point2. 育てる野菜にあった酸度の土
日本の土は酸性寄りですが、野菜の多くはpH6.0〜6.5程度の弱酸性の土壌を好みます。アルカリ性の石灰や草木灰を土に混ぜることで、野菜の生育に適した酸度に中和させることができます。Point3. 栄養のバランスが良い土
野菜が育つためには、窒素・リン酸・カリなど、土の中の栄養のバランスがいい状態であることが大切です。有機質の堆肥や肥料などは、野菜の生長に必要な栄養がバランスよく入っているので、難しく考えることはありません。畑での土づくりの基本|時期・順番・道具など
土づくりの時期
土づくりに適期はなく、一年中可能です。とはいえ、厳寒期には微生物の活動も鈍化し、肥料の分解もゆっくりになるため、あまり積極的に行いません。土づくりのときにあると便利な道具
最低限あると便利なのは、スコップとレーキです。スコップは、地面を掘って堆肥を入れるとき、レーキは、土をならしたり肥料を畑に混ぜ込むとき、また畝立てにも使えますよ。土づくりの基本の順番
土づくりの基本の行程はこの5つだけ!それぞれの方法については、この後詳しく紹介します。1. 土を耕す
2. 堆肥を入れる
3. 中和剤を混ぜて、酸度を調整する
4. 元肥を混ぜる
5. 畝を立てる
【土づくり1】土を耕す
畑で野菜を栽培する場所を決めたら、いよいよ土づくりのスタートです!土に空気を入れるように、土の表面を優しくレーキでならします。土の中から出てくる小石・幼虫・サナギなどは、可能な限り取り除きましょう。使っていなかった畑や硬い土壌なら「部分深耕天地返し」をしよう!
ただし、畑全体の土を入れ替えるのは、大変な労力が必要な作業です。そこでおすすめなのが、必要最低限の栽培スペースだけを入れ替える「部分深耕天地返し」。労力は少なく、効果は絶大です!
部分深耕天地返しの方法
1. 2m幅の栽培スペースの場合、その半分の1m幅の表層土をレーキで片側に寄せて山を作っておきます。2. 真ん中にスコップ幅(約25cm)で、硬盤層もあればぶち抜くように穴(溝)を掘っていきます。
3. 掘った深層土は、表層土で作った山と反対側に山にしていきます。
4. 深さ約1mまで掘ったら、掘った穴(溝)に、まず表層土を埋め込みます。長い間使っていなかった畑の場合は、この時に地表から10cmほどの浅い部分に堆肥も入れ込みましょう。堆肥について詳しくは、以下の「【土づくり2】堆肥を入れる」で紹介しています。
5. 最後は、レーキを使って、掘り上げた深層土を畑の表面に広げます。
部分深耕天地返しを動画でチェック!
【土づくり2】堆肥を入れる
堆肥とは?
有機物(落ち葉・生ゴミ・木くずなど)が、微生物によって分解されている状態の肥料です。微生物が活動している堆肥を土に混ぜることによって、野菜がのびのび育つ団粒状のふかふかの土になります。堆肥を選ぶポイント
堆肥は残さや生ゴミ堆肥など手作りもできますが、初心者は市販の完熟堆肥を使いましょう。牛ふん、豚ふん、バーク堆肥など様々な種類が売ってますが、必ず完熟している堆肥を選んでください。もし袋をあけて臭い匂いがする場合は、未熟です。未熟のものは、発酵時に発生する熱などにより作物が育ちません。
おすすめの完熟堆肥
堆肥の量と土への入れ方
深さ10cmぐらいの深さの溝を掘ります。1平米あたり5kgを目安に完熟堆肥を入れたら、掘った土を戻し、レーキで混ぜ込みます。
【土づくり3】中和剤を混ぜて、酸度を調整する
中和剤とは?
日本の土は酸性土が多いのでアルカリ性の有機質を混ぜて、野菜の生育に適したpH6.5の土に調整します。有機石灰か、カリ成分がより豊富に入っている草木灰がおすすめです。おすすめの有機石灰
おすすめの草木灰
中和剤の量と土への混ぜ方
草木灰など中和剤の量は、1平米あたり100g(一握り)を目安にしてください。地表にまんべんなくまいたら、レーキで混ぜ込みます。中和剤がほとんど必要ない野菜・必ず必要な野菜
酸性に強い野菜や酸性に極端に弱い野菜もあるので、その場合は混ぜる中和剤の量を調整します。・酸性に強い野菜:ジャガイモ(中和剤をほぼ入れない)
・酸性に弱い野菜:ホウレンソウ(中和剤を必ず混ぜる)
あると便利!手軽にpHチェックできる酸度計
土壌酸度計の記事はこちら
【土づくり4】元肥を混ぜる
元肥とは?
野菜が育つために必要な、三大要素(窒素・リン酸・カリ)などの栄養が入った肥料のことです。堆肥を入れ終わって微生物がたくさんいる土に、バランス良く栄養を与えます。野菜作りに必要な栄養素|肥料の三大要素(窒素・リン酸・カリ)の効き目
要素 | 効果 |
N(窒素) | 炭水化物と合体してたんぱく質を生成し、葉や茎を生長させます。 |
P(リン酸) | エネルギーの移動が植物内で起きる時に重要な働きをし、花付きや実付きを良くします。 |
K(カリ) | 光合成の促進や根の生長、病害虫への抵抗力を強くします。 |
即効性のある「ぼかし肥」
ぼかし肥とは、米ぬか・油かす・魚粉・骨粉などの有機物を、微生物が一度分解し発酵している肥料のこと。生のままの有機物の栄養は、微生物が分解してくれないと植物は吸収できません。ぼかし肥なら、分解〜発酵までが終わっているので、即効性があるのが特徴!追肥にも使えます。おすすめの完熟ぼかし肥
ぼかし肥の量と土への混ぜ方
地表にぼかし肥をまんべんなくまき、レーキを使って地表10cm程度の表土と混ぜ合わせます。野菜の種類別 元肥の量の目安
野菜 | 量(1平方メートルあたり) |
果菜類/トマト・ピーマン・ナス・キュウリ・カボチャ・スイカなど | 500g |
根菜類/ダイコン・カブなど | 200~300g |
葉物野菜/レタス・キャベツ・コマツナなど | 200~300g |
豆類など/エダマメ、ラッカセイ、ごぼうなど | 少なめ |
サツマイモ | 一握りだけ |
【土づくり5】畝を立てる
畝とは?
畝は、畑に土を盛り上げて作ったまっすぐな土の列のこと。土の中の水分量や通気性の管理をしやすくし、肥料も周りの土壌に流れづらくなります。野菜の特性に合わせて、高さや幅を変えましょう。畝を作るコツ
畝の中央を数cm高くし、水が溜まらないようにするのがコツです。レーキを使って、畝の中央に向かって土を寄せるようにして盛り上げていきましょう。畝づくりについて詳しくはこちら
畝の高さと特徴
平畝|高さ15cm未満の畝
高さが15cm未満の畝を、平畝といいます。土が乾燥しにくいのが特徴で、水はけが良い土地に向いています。盛り上げる土が少なく、畝の斜面部分も緩やかなので作業が楽。ほとんどの野菜が平畝で栽培できます。平畝に向いている野菜
ジャガイモ、キュウリ、トウモロコシ、エダマメ、キャベツ、ホウレンソウなど
高畝|高さ15cm以上の畝
畝の高さを15cm以上にするものを、高畝といいます。水はけが悪い土壌の表面積を広くし、通気性と排水性を良くします。水はけが良い土を好むさつまいも、根が広がるナスなどの野菜にも高畝が向いていて、30cmくらいの高さにするとより効果的ですよ。高畝に向いている野菜
サツマイモ、ナス、ダイコン、トマト、メロンなど
そのほかの畝
スイカの鞍付きやゴボウの波板畝など、野菜の生長に合った畝の作り方がほかにもあります。スイカの栽培方法はこちら
プランターでの良い土づくり
プランターにも有機質100%の培養土を入れて、ゆっくりと分解される有機質の肥料を使いましょう。プランターの中でも微生物が豊富な環境を作れますよ。入れるだけ!プランターにおすすめの培養土
野菜を収穫した後、プランターの土はどうするの?
微生物が豊富なやわらかい土であれば、そのまま次の種をまいても問題ありません。土が硬くなってしまった場合は、一度プランターから土を出して乾かして栄養たっぷりの元肥を混ぜるなどして、また土を戻します。ただし、育てた植物に病気が発生した場合は、必ず新しい培養土に変えましょう。プランターの土の処分や再生方法など、詳しくはこちら
プランターでできるおすすめ野菜
家庭菜園の基本は土づくりから!
土づくりは少し難しいイメージもありますが、微生物に野菜づくりを助けてもらうように、堆肥・元肥・中和剤をしっかり土に混ぜ込めば、野菜はどんどん根を張って元気に育ち、病気にもかかりにくくなります。良い土づくりをして、おいしい野菜をたくさん収獲してくださいね!【AGRI PICKチャンネル】
AGRI PICKでは、家庭菜園初心者にもわかりやすい!畑でも手軽に視聴できる動画もあります。
野菜を育てるときのお困りごとや、失敗を防ぐワンポイントアドバイス付きの「AGRI PICKチャンネル」も合わせてご覧ください!