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ダニ類の防除|知って得する!殺ダニ剤(殺虫剤・殺虫殺菌剤)


農業害虫のダニ類は卵から成虫に成長し、卵を産むまでのサイクルがとても短い上に繁殖力が高く、薬剤抵抗性を獲得しやすい防除が困難な害虫です。薬剤抵抗性の強いダニ類を防除するときに、どんなことに注意して殺ダニ剤を使用すれば良いのか詳しく説明します。

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umi

農業資材メーカと農協にて6年間勤務。農家への栽培技術(農薬・肥料・栽培システムなど)の普及を担当。役立つ情報を初心者の方にもわかりやすくお伝えします。…続きを読む

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殺ダニ剤

llustration:umi
人間よりはるか昔から地球上に数多くの種類が存在するダニ類の中で、農業において問題になるのは、ハダニ類やサビダニ類、ホコリダニ類、ネダニ類などです。ダニ類は卵から成虫に成長し、卵を産むまでのサイクルがとても短い上に、繁殖力が高く、薬剤抵抗性を獲得しやすく防除が困難な害虫です。
殺ダニ剤(または殺虫剤・殺虫殺菌剤)を使用する際、その薬剤がどのような作用を与えるのかについて知っておくことは、ダニ類を防除するときに欠かすことのできない知識です。本記事では殺ダニ剤(または殺虫剤・殺虫殺菌剤)の中でもそれぞれ「化学農薬」「天然物由来の農薬」「生物農薬」ごとの主な種類について紹介します。

殺ダニ剤とは

ダニ
出典:Flicker(Photo by:Gilles San Martin
農作物に被害を及ぼすダニ類の防除のために、これまでさまざまな殺ダニ剤(または殺虫剤・殺虫殺菌剤)が開発されてきました。しかし、ダニ類は薬剤抵抗性を持ちやすいことから、新しい薬剤が開発されてもすぐに抵抗性を獲得する個体が出現してしまい、防除が難しいのが現状です。

▼農作物に被害を及ぼすダニ類の種類や総合的な防除のことならこちらをご覧ください。

農薬としての殺ダニ剤

農薬としての殺ダニ剤は、農作物や果樹などに被害を及ぼすダニ類を防除するための殺虫剤(または殺虫殺菌剤)で、農薬取締法によって適用作物や使用方法などが定められています。さまざまな毒性試験や効力試験等を行った結果をもとに、農薬の登録に係る審議会の審査を経て登録された薬剤です。
ダニ類だけでなく、ほかの害虫や病気にも登録のある殺虫剤・殺虫殺菌剤もあり、その中でもダニ類の防除を主とするダニ専用の殺虫剤は「殺ダニ剤」と呼ばれています。

▼殺虫剤・殺虫殺菌剤のことならこちらをご覧ください。

【農薬以外のダニ駆除用殺虫剤】
・医薬部外品
畳やカーペットに散布したり、室内に有効成分を拡散させたりするなどの方法でダニ類を防除する人体への影響に配慮されている薬剤です。
・動物用医薬部外品
畜舎、家畜や犬などのペットに寄生するダニ類の駆除のために使用する動物の安全に留意した薬剤です。


殺ダニ剤を使用する際の確認事項

農薬としての殺ダニ剤(または殺虫剤・殺虫殺菌剤)を安全に使用するためには、使用前に登録内容や周辺への影響を必ず確認しましょう。

8つの登録内容の確認

1. 適用作物名
2. 適用病害虫
3. 希釈倍率
4. 使用量・使用液量
5. 使用時期
6. 使用回数
7. 使用方法
8. ○○(有効成分名)を含む農薬の総使用回数

▼農薬の登録内容の確認方法についてはこちらをご覧ください。

ミツバチや天敵への影響

薬剤によってはミツバチや天敵に影響を及ぼすもの、散布後に影響を及ぼす日数が異なるものがあるため、農薬ラベルなどで使用前に確認しておく必要があります。

▼天敵のことならこちらをご覧ください。


主な殺ダニ剤の種類

ダニ剤 種類
llustration:umi
殺ダニ剤(または殺虫剤・殺虫殺菌剤)には化学農薬、天然物由来、生物農薬などさまざまな種類があります。

▼農薬の種類のことならこちらをご覧ください。

化学農薬の殺ダニ剤

化学農薬とは化学物質を有効成分とした薬剤で、化学農薬を使用することで効率良く防除を行うことができる反面、環境に少なからず影響を与えます。
ここでは、化学農薬の殺ダニ剤(または殺虫剤・殺虫殺菌剤)の作用部位や各生育ステージでの作用を確認して、薬剤抵抗性を持たせないローテーション散布の参考にしましょう。
また、各地域の普及所や指導機関の発生予察などの情報も参考にしながら農薬を選択しましょう。

▼薬剤抵抗性についてはこちらをご覧ください。

▼地域の発生予察を活用する薬剤散布のことならこちらをご覧ください。

化学農薬の殺ダニ剤の例

 代表的有効成分 作用部位 RACコード 薬剤名   作用の仕方
幼虫〜若虫成虫効果発現
 ミルベマイシン系 神経や筋肉 6 コロマイト水和剤
 エトキサゾール 成長調整 10B バロックフロアブル※1
 プロバルギット 呼吸系 12C オマイト水和剤※2
 アセキノシル エネルギー代謝 20B カネマイトフロアブル
 METI剤 21A サンマイト水和剤
※1 成虫に散布しても、殺卵や殺幼若虫のように駆除はできませんが、その成虫が産んだ卵は孵化しません。
※2 薬剤がかかった卵はふ化してもすぐに死亡してしまいます。

コロマイト水和剤

速効性に優れ、ハダニ類の卵から成虫までよく効きます。
カンキツではハミカンサビダニにも効果を発揮します。

・内容量:500g
・有効成分:ミルベメクチン(2.0%)
・RACコード:6


バロックロフロアブル

卵及び幼若虫に対し優れた効果を示します。

・内容量:20ml
・有効成分:エトキサゾール(10.0%)
・RACコード:10B

オマイト水和剤

リンゴ、カンキツ、オウトウ、モモのハダニ類に強い殺虫力を示します。 

・内容量:500g
・有効成分:BPPS(30.0%)
・RACコード:12C


カネマイトフロアブル

ミカンハダニ、リンゴハダニ、カンザワハダニ、ナミハダニなど各種ハダニ類の卵、幼虫、若虫、成虫の各発育ステージに対して高い効果があります。

・内容量:500ml
・有効成分:アセキノシル(15.0% )
・RACコード:20B

サンマイト水和剤

リンゴハダニなどハダニ類や、サビダニ類の卵から成虫までの全期間に対して効果を発揮します。

・内容量:500g
・有効成分:ピリダベン(20.0%)
・RACコード:21A



▼RACコードや作用性のことならこちらをご覧ください。


天然物由来の殺ダニ剤

天然物由来の殺ダニ剤(または殺虫剤・殺虫殺菌剤)なので環境に優しく、有機栽培においても使用可能な薬剤です。

天然物由来の殺ダニ剤の例

代表的有効成分作用部位RACコード薬剤例
 マシン油 気門封鎖 イヅツヤマシン油乳剤95
 硫黄 作用機構が不明または不明確 UN 硫黄粉剤50
 石灰硫黄合剤 作用機構が不明または不明確 UN 石灰硫黄合剤
※マシン油はダニ類に物理的に作用する薬剤のためRACコードはありません。また硫黄や石灰硫黄合剤は作用機構が不明または不明確なのでそれを示すRACコードになっています。

イヅツヤマシン油乳剤95

油と乳化剤を厳選したマシン油で、カイガラムシやダニ類、抵抗性をもつ果樹のハダニ類にも優れた防除効果があります。

・内容量:9L


硫黄粉剤50

カンキツのハダニ類に効果があります。

・内容量:3kg
・有効成分:硫黄(50.0%)


宮内石灰硫黄合剤

ハダニ類やサビダニ類に効果がある有機農産物の日本農林規格(有機JAS)に適合する農薬です。

・内容量:10L
・有効成分:多硫化カルシウム(27.5%)

生物農薬の殺ダニ剤

自然界の食物連鎖を活用して防除を行う際に用いられるのが「生物農薬」です。「生物農薬」は昆虫やダニ類、菌類などの生物が農薬として登録されていて、ダニを対象とした薬剤はダニを捕食または寄生する生物が製剤化されています。
天然物由来の殺ダニ剤(または殺虫剤・殺虫殺菌剤)と同様に、農薬散布回数にカウントされないので、有機栽培や減農薬栽培などにも使用できます。
※生物農薬のスパイカルEXなどは生物を製剤化したものなのでRACコードはありません。またボタ二ガードは作用機構が不明または不明瞭なのでそれを示すRACコードとなっています。

▼生物農薬についてはこちらをご覧ください。

天敵製剤の例

スパイカルEX
【種類】ミヤコカブリダニ剤
【適用作物名】果樹類、野菜類、花き類・観葉植物(施設栽培)(※1)
【適用害虫】ハダニ類
(※1)そのほか適用作物名「茶」には適用害虫名「カンザワハダニ」。
スパイデックス
【種類】チリカブリダニ剤
【適用作物名】野菜類(施設栽培)、豆類(種実)(施設栽培)、いも類(施設栽培)、果樹類(施設栽培)、花き類・観葉植物(施設栽培)、ばら(施設栽培)
【適用害虫】ハダニ類

微生物製剤の例

ボタニガードES

マルハナバチ、ミツバチ、天敵などへの影響が少ない微生物殺虫剤で、ハダニ類などさまざまな害虫に効果を発揮します。
害虫に寄生する糸状菌を利用した薬剤なので薬剤抵抗性の害虫に対しても優れた防除効果を発揮します。

・内容量:500ml
・有効成分:ボーベリア バシアーナGHA株
・RACコード:UNF(作用機構が不明または不明確)

殺ダニ剤の薬剤抵抗性発達に対するリスク理解

理解する
出典:写真AC
ダニ類はライフサイクルの短さと繁殖力の高さ、また薬剤抵抗性が発達しやすい特性から、殺ダニ剤(または殺虫剤・殺虫殺菌剤)を使用する際には異なる作用を持つ薬剤のローテーション散布が必要不可欠です。その薬剤がどのような作用を持つかを知るために、薬剤を購入・使用する際にはRACコードを必ず確認するようにしましょう。
しかし、ローテーション散布だけでは抵抗性の発達を防ぐことは難しいということもあるため、化学農薬以外にも天然物由来の殺ダニ剤や天敵など生物農薬を上手く組み合わせながら総合的に防除を行う必要があります。

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