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菜園家・ブルーベリー研究家
福田 俊東京農工大学農学部農学科卒。「どうすればおいしい野菜がたくさん採れるか」「いかにラクで楽しい野菜づくりができるか」を追求し、「フクダ流」自然農的有機栽培を実践。16平米という限られたスペースの市民農園で、年間50品目以上の野菜を有機・無農薬で栽培しています。監修を務めた家庭菜園誌や著書も多数。 ■関連サイト HP:http://www.fukuberry.com/ Youtube:https://www.youtube.com/user/f104ryo Instagram:https://www.instagram.com/fukuberry104/?hl=ja Twitter:https://twitter.com/29da104 facebook:https://www.facebook.com/toshi.fukuda.73 ■著書:『市民農園1区画で年間50品目の野菜を育てる本』(学研プラス)、『フクダ流家庭菜園術』(誠文堂新光社)、『福田さんのラクラク大収穫!野菜づくり』(学研パブリッシング)…続きを読む
- AGRI PICK 編集部
AGRI PICKの運営・編集スタッフ。農業者や家庭菜園・ガーデニングを楽しむ方に向けて、栽培のコツや便利な農作業グッズなどのお役立ち情報を配信しています。これから農業を始めたい・学びたい方に向けた、栽培の基礎知識や、農業の求人・就農に関する情報も。…続きを読む
この記事では、そんなアブラムシの駆除方法や生態について解説。家庭菜園のプロに聞いた、農薬を使わないアブラムシ対策は必見です!
農家向け!アブラムシの本格的な防除方法はこちら
アブラムシはどこから来るの?発生する原因と増殖時期
そもそも、アブラムシはどのような原因で発生するのでしょうか?しっかり退治するためにも、まずはアブラムシの性質や行動を知っておきましょう!アブラムシが発生しやすい時期
アブラムシが発生しやすくなるのは、気温が上がる春〜夏。気候がおだやかな秋も注意が必要です。とくに気温が高く、雨の少ない年にはアブラムシが多いといわれます。寒くなると徐々に数が減りますが、ビニールハウスや暖かい室内などでは真冬も活動します。
アブラムシが発生する原因は?
翅のある個体が飛来してくる
アブラムシには通常は翅(はね)がなく、集団で新芽や葉の裏側などにじっと潜んでいますが、個体数が増えると翅のある個体が生まれ、風に乗って新しい寄生植物にたどり着き、そこでまた集団化します。それまでいなかった場所にいつの間にか大量発生するのは、この移動するアブラムシがいるためです。チッ素肥料の与え過ぎ
アブラムシは、植物が生成するアミノ酸に引き寄せられます。チッ素成分の多い肥料を与え過ぎると、植物がアミノ酸を多く生成し、アブラムシを誘引してしまうので注意しましょう。植物が密生して風通しが悪い
風通しの悪い場所は、アブラムシが好む環境です。また、植物が密生しているとアブラムシを発見しにくくなり、大量発生につながる危険も。苗を植えるときは株間をあける、枝葉が混雑してきたら剪定するなど、風通しを良くする環境づくりを心がけましょう。コーヒーや酢、牛乳などで!無農薬のアブラムシ対策9選
アブラムシを駆除したいけれど、口にする野菜などはできるだけ農薬を使いたくないですよね。そんなときにぜひ試したい、無農薬でのアブラムシ対策を紹介します!1. 防虫ネット|アブラムシの成虫が飛来するのを防ぐ
野菜をめがけて飛んで来るアブラムシを物理的に防ぐには、防虫ネットをかけるのが効果的です。ネットの目合いは、0.8mm以下のできるだけ細かいものを選び、早めに設置するようにしましょう。防虫ネット 0.8mm目合い
アブラムシなどの小さな害虫をシャットアウトできる防虫ネット。目合いは0.8mmと細かいものの、光をしっかり通すため生育不良の心配はありません。水やりも、そのままネットの上からかければOK。固定用のUピン20本付きです。
サイズ | 2.5×10m |
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素材 | ポリエチレン |
防虫ネットの種類や選び方は、こちらの記事で!
2. コーヒー|アブラムシを忌避&窒息させる
虫が嫌いなコーヒーを利用して、アブラムシを防除するというアイデアも。使用するコーヒーは、お湯で溶かすインスタントでOKです。そのままでも使えますが、食器用洗剤もしくは純石けんを少量加えると、アブラムシにしっかり付着して窒息させることができます。2Lのコーヒー液であれば、洗剤は10ml程度が目安。よく撹拌したらスプレーボトルに入れ、週に1回程度を目安に吹きかけましょう。3. お酢|うどん粉病の予防にも!
強い臭いのあるお酢も、アブラムシを近寄らせないのに有効なアイテムです。お酢の濃度が濃過ぎると、植物の生育に悪影響を与えてしまうため、水で300倍程度に希釈して使いましょう。大量に寄生される前に、こまめにスプレーしておくと予防になります。4. お酢+焼酎+木酢液|「ストチュー」でアブラムシを遠ざける
お酢に焼酎と木酢液を加えて作る「ストチュー」は、アブラムシの忌避剤になります。分量はそれぞれ1:1:1で混合し、原液にします。使うときは、水で100~300倍に薄めてからスプレー容器に移し、直接吹きかけましょう。さらにパワーアップしたいときは、ニンニクとタバスコを加えると良いですよ!ストチューではアブラムシを殺すことはできませんが、確実に遠ざけることはできます。ただし、使い過ぎると益虫のてんとう虫もいなくなくなってしまうので注意してくださいね。
「ストチュー」の詳しい情報は、こちらの記事で!
5. 牛乳+中性洗剤|被膜でアブラムシを包み窒息させる
牛乳も、スプレーすることでアブラムシの駆除に役立ちます。これは牛乳の被膜でアブラムシを包み込み、窒息させるというものです。アブラムシの体毛ではじかれないように、展着剤として中性洗剤を少量加えるとより強力になります。牛乳スプレーはかなり効果がありますが、葉などが白く汚れてしまうのがデメリット。雨が降れば自然と流れ落ちますが、草花など見た目が気になる場合は避けたほうが良いかもしれません。
6. 天敵のてんとう虫|旺盛な食欲でアブラムシを食べ尽くす!
アブラムシの天敵は、ナミテントウやナナホシテントウなどのてんとう虫類です。幼虫・成虫ともにアブラムシが大好物で、もりもりアブラムシを捕食してくれます。てんとう虫はアブラムシの発生場所に自然と現れますが、すぐに退治して欲しいときは、幼虫や成虫を連れてくるという手も。アブラムシのついた野菜を草むらに置いておくと、てんとう虫を効率良く集めることができますよ。アブラムシがびっしり付いていても、そのままにしておくと必ずてんとう虫が来ます。さらにそのまま観察を続けると、アブラムシはどんどん増えますが、てんとう虫も産卵して幼虫が現れます。幼虫がどんどんアブラムシを食べ、約1カ月後にはアブラムシはゼロになりました!
このように、自然の摂理に任せて気長に待つことで、アブラムシを根絶することができるんですよ。
アブラムシの天敵は、てんとう虫以外にも!
てんとう虫のほか、ヒラタアブやカマキリの幼虫もアブラムシを捕食します。7. ふのり(布海苔)|粘液がアブラムシを包み込む
ふのりを煮詰めて茶こしで漉し、水で6倍ほどに薄めてからスプレーするという方法も。スプレーに入れて吹きかけることで、とろみのある溶液がアブラムシの体を包み込み、窒息させることができます。8. アルミホイル|光を拡散させてアブラムシを防除する
アブラムシはキラキラした光を嫌う傾向があります。そこで、予防対策として植物の根元にアルミホイルを敷いておくのもおすすめです。光が反射して、葉の裏側にアブラムシが付くのを防ぐ効果が期待できます。9. 粘着テープ|初期段階のアブラムシ駆除におすすめ
アブラムシに気付いたときに、すぐできるのが粘着テープで捕殺する方法です。葉裏や茎にいるアブラムシをテープにくっ付けることで、ある程度まとめて駆除することができます。アブラムシを農薬で徹底駆除!おすすめの殺虫剤3選
大量発生してしまったアブラムシをすぐに駆除したいというときは、殺虫剤に頼ってみましょう。手軽に使えるスプレータイプや、お酢を原料にした環境にやさしいものなど種類がいろいろあるので、使いやすいものを選んでみてくださいね。忌避効果が約1カ月持続|ベニカXファインスプレー
住友化学園芸 ベニカXファインスプレー
手軽に使えるスプレータイプの殺虫剤です。即効性と持続性に優れており、アブラムシでは約1カ月効果が持続。害虫忌避だけでなく、病原菌の侵入も防ぐことで、植物の健康な生育にも役立ちます。
内容量 | 1,000ml |
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有効成分 | クロチアニジン、フェンプロパトリン、メパニピリム |
適用病害虫 | アブラムシ類、アザミウマ類、クロケシツブチョッキリ、コガネムシ類成虫、ヘリグロテントウノミハムシ、ツツジグンバイ、カイガラムシ類、ケムシ類、コナジラミ類、チュウレンジハバチ、ハダニ類、ハモグリバエ類、ハスモンヨトウ、ゴマダラカミキリ成虫、うどんこ病、黒星病、灰色かび病、褐斑病 |
食酢100%で収穫直前まで使える|やさお酢
アース製薬 やさお酢
収穫直前の野菜にも安心して使える、食酢100%でできた病害虫防除剤です。2・3日置きに約2週間スプレーすると、1カ月ほどアブラムシの発生を防止。もちろん、発生後の駆除にも使えます。
内容量 | 1,000ml |
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有効成分 | 酢酸、甘味料(キシリトール)、調味料、乳化剤 |
適用病害虫 | アブラムシ、コナジラミ、ハダニ、うどんこ病 |
パラパラまくだけ!使いやすい粒状タイプ|オルトラン粒剤
住友化学園芸 オルトラン粒剤
細かな粒状の害虫忌避剤。使い方は、植物の株元にパラパラまいても、土に混ぜ込んでもOK。じっくりと続く効果で、アブラムシなど幅広い害虫から植物を守ります。
内容量 | 200g |
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有効成分 | アセフェート |
適用病害虫 | アザミウマ類、アブラムシ類、マメハモグリバエ、ネギコガ、アオムシ、コナガ、オンシツコナジラミ、ネキリムシ類、シバツトガ、ヨトウムシ類、コガネムシ類幼虫 |
アブラムシの種類|緑や黒、赤、白いものなど体色はいろいろ
アブラムシはカメムシ目アブラムシ上科に属する、体長1〜4mmの昆虫です。実はアブラムシというのは総称で、非常に多くの種類が存在しています。日本では700種以上のアブラムシが見つかっており、このうち30種ほどが野菜に寄生するといわれています。また、アブラムシは種類によって体の色もさまざま。ナス科やウリ科などの果菜類に多い「ワタアブラムシ」は黄色や緑色、黒いものなどが見られます。アブラナ科によくつく「ダイコンアブラムシ」は、白っぽく見えるのが特徴です。さらに、日本全国で多く発生する「モモアカアブラムシ」のように、環境によって赤褐色や黄色、黄緑色などに変化するものも。このように、同じ種類でも色が違うものも多いので、アブラムシを見分けるのはなかなか難しいかもしれません。
アブラムシの生態|卵・幼虫・成虫の期間と生育サイクル
アブラムシは卵の状態で越冬し、春に孵化するのが一般的です。幼虫は10日ほどで成虫になりますが、交尾をせずに体内の未受精卵を孵化させ、メスの幼虫を産み始めます。生み出された幼虫も同様に、メスの幼虫を次々産んで増え続け、集団化していきます。その後、密度が高くなると翅の生えた個体が発生し、新たな寄生先へと移動。秋になり気温が下がってきたころに、オスの個体が生まれて交尾し、植物に卵を産み付けます。
アブラムシの寿命は30~40日程度。メスは一生を終えるまでに毎日幼虫を生み続けるため、またたく間に繁殖してしまいます。