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菜園家・ブルーベリー研究家
福田 俊東京農工大学農学部農学科卒。「どうすればおいしい野菜がたくさん採れるか」「いかにラクで楽しい野菜づくりができるか」を追求し、「フクダ流」自然農的有機栽培を実践。16平米という限られたスペースの市民農園で、年間50品目以上の野菜を有機・無農薬で栽培しています。監修を務めた家庭菜園誌や著書も多数。 ■関連サイト HP:http://www.fukuberry.com/ Youtube:https://www.youtube.com/user/f104ryo Instagram:https://www.instagram.com/fukuberry104/?hl=ja Twitter:https://twitter.com/29da104 facebook:https://www.facebook.com/toshi.fukuda.73 ■著書:『市民農園1区画で年間50品目の野菜を育てる本』(学研プラス)、『フクダ流家庭菜園術』(誠文堂新光社)、『福田さんのラクラク大収穫!野菜づくり』(学研パブリッシング)…続きを読む
ヤーコンはこんな野菜
ヤーコンは南米のアンデス地方を原産とするキク科の野菜で、紀元前の時代から先住民によって食用や薬用にされてきた長い歴史があります。日本には1985年、ペルー産の品種がニュージーランドから導入されたのが始まりです。現在では北海道から沖縄まで全国的に栽培されていますが、もともと年間を通して春のような気温が続く高山気候で育つ野菜なので、極端な高温と低温が苦手。暖地では夏に新葉の生育不良などの高温障害が起きやすいため、比較的冷涼な地域での栽培に適しています。
一方で病害虫には強く丈夫で、無農薬でも栽培可能。1株から約2〜5kgのイモが収穫できます。追肥もそれほど必要ないので、家庭菜園ビギナーにもハードルが低く収穫の楽しみが大きい野菜です。
ヤーコンの味や栄養素は?
見た目はサツマイモとよく似ていますが、甘さは控えめです。食感はシャキシャキとして歯ごたえがよく、ナシやレンコンに近いかもしれません。近年の研究によってヤーコンにはオリゴ糖やポリフェノール、食物繊維、ミネラルなどが豊富に含まれていることが判明し、健康野菜として注目されています。ヤーコンの味や栄養、おいしい食べ方をもっと知りたい!
ヤーコンの栽培カレンダーと栽培条件
栽培カレンダー
- 植え付け:4〜5月中旬
- 収穫:10月下旬〜11月
栽培適温
15〜23℃栽培の条件
日当たりと水はけのよい土壌連作障害
影響は少ないがなるべく避けるヤーコンの品種
ヤーコンの品種は大きく分けると2種類あります。従来種のペルー品種と、それを日本で改良した日本品種です。同じ品種でも地域によって収量や出来栄えが変わってくるので、自分の栽培地域に適した品種を選びましょう。ペルー品種
ペルーA
日本に初めて導入された品種。肉色は薄い黄色で、甘味は強めです。たくさん収穫できるものの、関東以南の暖地ではイモのひび割れが起きやすいのが欠点とされています。日本品種
ここでは福田先生おすすめの日本品種をご紹介します。1. サラダオトメ
世界で初めて人工的な交配によって作られたヤーコンの品種。北海道などの寒地で安定して高い収量が期待できます。皮は灰色っぽく、イモの中は薄黄色。甘味は少なめで、水分が多いためサラダや酢の物など生食に最適です。遅い時期に収穫してもひび割れしにくく、貯蔵しても腐りにくいという長所があります。2. サラダオカメ
サラダオトメに比べて糖の含有量が高いため甘味が強く、肉色も鮮やかなオレンジ色で食感のよさでも優れた品種です。その反面、ひび割れが起きやすく形の崩れたイモが多いのが難点。長期の保存には向かないためなるべく年内に食べ切るのがおすすめです。ちなみに「サラダオカメ」とは見た目は悪くても中身がよいことから名付けられたとのこと。北海道や東北、西南暖地の標高が高い地域など夏場も冷涼な地域での栽培に適しています。3. アンデスの雪
肉色が白く美しいことから命名された品種。貯蔵性に優れ、冷蔵保存すれば翌年の秋ごろまでもちます。収量はサラダオトメとほぼ同等です。サラダオカメ同様、北海道や東北、西南暖地の標高が高い地域など夏場も冷涼な地域での栽培に適しています。4. アンデスの乙女
サラダオトメを改良して育成された品種。1株あたりの収穫量が多く、ひとつひとつが大きいため高収量が期待できます。わかりやすい特徴は収穫直後から皮が赤紫色をしている点。従来の品種と比較して生育が旺盛で、ひび割れも起きにくいように改良されています。ヤーコンの育て方|畑の場合
Step.1 土づくり
ヤーコンは弱酸性の土を好むため、苦土石灰を1平米あたり100〜150g散布して土の酸度を調整します。生育期間は6〜7カ月と長いので、元肥には堆肥などの有機肥料を十分に使用しましょう。なお、堆肥と苦土石灰は同時に施すと化学反応を起こして肥料効果が失われてしまいます。そのため苦土石灰は植え付けの2週間前、堆肥は植え付けの1週間前を目処に施します。必要な栽培スペース
- A:畝幅/70cm
- B:畝の高さ/10cm
- C:植え付けの間隔/1m
土づくりに関してはこちらの記事もチェック!
苦土石灰や堆肥に関してはこちらの記事をチェック
Step.2 畝づくり
ヤーコンに限らず根菜類は根を深く張るため、土を深めに耕しておきます。畝づくりに関してはこちらで詳しく解説!
Step.3 植え付け
ヤーコンは寒さに弱いため、霜の心配がない4〜5月ごろが植え付けの適期です。寒冷地では5月下旬ごろに植え付けましょう。畑に直接植える場合は芽がついた状態で塊茎を20〜30gに切り分け、芽を上向きにして土に隠れる深さに埋めます。浅く植え過ぎると土が乾燥して生育が悪くなるので注意してください。不安であればポットで育苗してから移植する方が確実です。その場合は1ポットあたり5〜10g程度にし、本葉が3〜5枚になったら定植します。育苗期間は30〜45日です。
株間は50cmを目安としてください。遅霜に当たると枯れる可能性があるので気温が低ければマルチをして保温すると安心です。雑草の抑制にもなります。
植え付けシーズンを迎えるとホームセンターや園芸店でポット苗が出回るので、初めてであればそれを購入して育てるのが一番簡単です。苗植えの場合はマルチなしで6月くらいまで植えられます。
Step.4 水やり
ヤーコンは乾燥に強いので畑栽培では水やりは基本的に不要です。ただし、夏場など地面が極度に乾燥しているときには午前中の涼しい時間帯にたっぷり水を与えましょう。Step.5 除草
生育初期に雑草に負けてしまうと塊根が十分に肥大せず収量が極端に減ってしまいます。6〜9月の生育期は1カ月に1回の頻度で除草して栄養を奪われないようにすることが大切です。除草特集をチェック!
除草に便利な草取り道具
Step.6 暑さ対策
ヤーコンは暑さに弱く、気温が25℃を超えると生育が悪くなります。梅雨が明けたらマルチを外して風通しよく育てましょう。株の周りにワラを敷いておくと地熱の上昇を抑える効果があり、暑さ対策になります。Step.7 追肥
元肥をしっかり施していれば追肥は必要ありません。ただし地上部の生育が悪い場合は9月ごろまで1カ月に1回程度、化成肥料を株元に施すと効果的です。Step.8 土寄せ
土寄せとは畝の間から株元に土を寄せてかける作業のことです。株の倒伏や雑草の繁茂を防止したり、土の中に空気を入れてあげることで微生物の活動を促進し、肥料効果を高めたりする役割があります。とはいえ、何度も土寄せをすると畝付近の根がちぎれて塊根の肥大を妨げてしまうことがあるので、塊根が肥大を始める前の7月中に行います。Step.9 支柱・摘心
9月ごろには枝葉がどんどん生長し、10月になると草丈が1mを超えるようになります。あまり伸び過ぎると台風などの強風で倒れてしまうおそれがあるので、太めの支柱を立てるか、摘心をして高さを抑えます。支柱の立て方はこちらで詳しく解説!
ヤーコンの育て方|プランターの場合
プランター栽培も基本的な育て方は畑での栽培と変わりませんが、いくつか異なるポイントもあるのでしっかり押さえておきましょう。Point.1 深さのあるプランターに植える
一般的な幅65cmのプランターで2株植えが目安です。塊根は根元から20〜30cm伸びるため、プランターも深さ30cm以上あるものを用意しましょう。土は市販の培養土に堆肥を混ぜて使います。水はけをよくするために鉢底石を敷き詰めた上から培養土を入れてください。Point.2 水やりは土が乾いたらたっぷり
土が乾きやすいので、土の表面が乾いていたらたっぷり水やりします。Point.3 真夏は日陰に
畑での栽培と違って移動ができるので、夏場はプランターを風通しのよい明るい日陰に移してあげましょう。ヤーコンの収穫と保存
ヤーコンの収穫時期と方法
晩秋ごろになると茎の先端にヒマワリのような小さな花が咲きます。やがて花が枯れ、葉が乾燥して枯れ始めたら収穫のサインです。時期としては霜が降りる前の10月下旬〜11月ごろ。品種にもよりますが根元に10〜15個くらいのイモがまとまってできます。地上部を刈り取り、イモを傷つけないように根元の周辺20〜30cmくらいのところをスコップでほぐして掘り起こしましょう。
霜に当てるとイモが凍って腐ってしまうので、寒冷地では早めに収穫します。暖地では地中に埋めたまま冬を越しても問題ありません。