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菜園家・ブルーベリー研究家
福田 俊東京農工大学農学部農学科卒。「どうすればおいしい野菜がたくさん採れるか」「いかにラクで楽しい野菜づくりができるか」を追求し、「フクダ流」自然農的有機栽培を実践。16平米という限られたスペースの市民農園で、年間50品目以上の野菜を有機・無農薬で栽培しています。監修を務めた家庭菜園誌や著書も多数。 ■関連サイト HP:http://www.fukuberry.com/ Youtube:https://www.youtube.com/user/f104ryo Instagram:https://www.instagram.com/fukuberry104/?hl=ja Twitter:https://twitter.com/29da104 facebook:https://www.facebook.com/toshi.fukuda.73 ■著書:『市民農園1区画で年間50品目の野菜を育てる本』(学研プラス)、『フクダ流家庭菜園術』(誠文堂新光社)、『福田さんのラクラク大収穫!野菜づくり』(学研パブリッシング)…続きを読む
- AGRI PICK 編集部
AGRI PICKの運営・編集スタッフ。農業者や家庭菜園・ガーデニングを楽しむ方に向けて、栽培のコツや便利な農作業グッズなどのお役立ち情報を配信しています。これから農業を始めたい・学びたい方に向けた、栽培の基礎知識や、農業の求人・就農に関する情報も。…続きを読む
でも、初心者にはちょっと難しそうに見える支柱立て。そこでこの記事では、支柱の立て方の種類や組み立て方を紹介します。家庭菜園のプロフェッショナルに、支柱を立てる際のコツや注意点、台風対策についても教えてもらいました!
支柱の種類
支柱の種類は、野菜の草姿や育ち方などによって変わります。1本だけ使うものから複数本を組み立てるものまで、バリエーションは豊富です。ここでは、代表的な支柱の立て方の種類を紹介します。直立型
株ごとに支柱を添える、ベーシックな支柱の立て方です。株の脇に支柱を1本挿し、作物の主茎を誘引します。背が高くなる野菜や植え付け直後の苗の仮支柱、狭いスペースで少数の野菜を育てるときなどに適しています。何本か立てる場合は、横に支柱を渡して固定すると強度もアップ。ネットを取り付ければつる性野菜にも!合掌型
2本の支柱を上部で斜めに交差するように挿し、交差部分に支柱を渡して固定する組み方です。ぐらつきにくいので、果実で重くなるトマトなどの果菜類に適しています。ネットを張れば、ゴーヤなどのつる性野菜の栽培にも使えます。やぐら型
畝を挟むように柱となる支柱を何本か挿し、その天井部分に支柱を縦横に渡して固定する組み方です。やぐら型も頑丈なので、カボチャなどの果実で重くなる野菜などに向いています。V字型
2本の支柱を地際でクロスさせ、V字のように上部を広げる組み立て方です。枝を左右に振り分けることができるため、風通しが良くなり、果実が垂れ下がるようになるので収穫がしやすいのもメリット。スクリーン型
支柱を田の字型などに組み、園芸ネットを張る方法です。キュウリやゴーヤなど、つるもの野菜に適しています。あんどん型
数本の支柱に輪がついたタイプで、アサガオの栽培などにも使われます。また、株のまわりに支柱を何本かまっすぐ挿し、そのまわりにひもを巻き付ける方法もあります。アーチ型
上部がカーブした逆U字型の支柱を等間隔で設置し、トンネル状にしたものにネットを張ってつるを誘引します。左右ワンセットで販売されており、上の部分で組み合わせて使います。天井部分にビニールを張れば雨よけとしても活躍!支柱の立て方の種類
上記の支柱の種類と立て方、それぞれの支柱に適した代表的な野菜の品目を表にまとめました。支柱の種類 | 立て方 | 向いている野菜 |
直立型 | 株の脇に支柱を1本垂直に挿す。 | ヤマイモ、トマト、ピーマン、エンドウ、インゲンなど |
合掌型 | 斜めに挿した2本の支柱を上部でクロスさせる。栽培スペースに合わせて何セットか設置し、クロスした部分の上に支柱を横渡しにして固定する。 | トマト、キュウリ、ゴーヤ、エンドウ、インゲンなど |
やぐら型 | 栽培スペースのまわりに、柱になる支柱を何本か垂直に立て、天井部分に縦横に支柱を組んで固定する。 | ハヤトウリ、トマト、トマト、カボチャ、スイカ、エンドウ、インゲンなど |
V字型 | 斜めに挿した2本の支柱を下のほうでクロスさせ、V字のように上を広げる。 | キュウリ、ナス、ピーマン、エンドウ、インゲンなど |
スクリーン型 | 栽培スペースの横に支柱を田の字に組んで固定し、ネットを張る。 | ニガウリ(ゴーヤ)、キュウリ、エンドウ、インゲンなど |
あんどん型 | 市販のあんどん支柱を組み立て、株のまわりに設置する。 | メロン、エンドウ、インゲンなど |
アーチ型 | 市販のアーチ型支柱を組み立て、畝や栽培スペースに設置する。 | キュウリ、トマト、カボチャ、エンドウ、インゲンなど |
支柱の立て方1|直立型
トマトなど背が高くなる野菜や、苗の仮支柱に適した直立型支柱。誘引しやすいイボ付きタイプの支柱がおすすめです。必要な道具
園芸支柱
長さ2.4m前後、太さ20mmの園芸支柱直立型支柱の立て方
ひと株ごとに支柱を立てます。根を傷めないように、株元から10~15cmほど離れた位置に垂直に挿しましょう。20~30cmほどの深さでしっかりと挿し込むと風で倒れにくくなります。支柱の立て方2|合掌型
支柱を組み合わせ、さらに上部に支柱を渡すことで強度を高めた合掌型支柱。果実で重くなるトマトやゴーヤにも最適です。必要な道具
園芸支柱
長さ2.4m前後、太さ20mmの園芸支柱支柱用留め具(19mm径用フックバンド)
支柱が交差した箇所を固定するために使います。ひもでもOKですが、専用の留め具のほうが簡単でしっかり固定できます。合掌型支柱の立て方
Step1. 2本の支柱を斜めに土に挿し込む
2本の支柱を斜めに土に挿し、上部で交差させます。支柱は20~30cmほどの深さでしっかり挿し込みましょう。Step2. スペースに合わせて組んでいく
栽培スペースに合わせてStep1を繰り返します。間隔は50~60cm程度で。Step3. 支柱を1本横渡しに置く
交差した部分に、支柱を渡し置きます。Step4. フックバンドで固定する
横渡しにした支柱と交差部分をフックバンドで固定します。支柱の立て方3|やぐら型
垂直に立てた支柱を柱にし、天井部分で支柱をクロスさせて固定するやぐら型支柱。何本も支柱を組み合わせることで強度が高くなります。園芸支柱のほかに、直管パイプを使って強度をさらに上げるテクニックも。上の画像は、福田先生が19mm径の直管パイプを使い、頑丈なやぐら型支柱を立てている様子です。必要な道具
園芸支柱
長さ2.4m前後、太さ20mm径の園芸支柱支柱用留め具(19mm径用フックバンド)
支柱が交差した箇所を固定するために使います。やぐら型支柱の立て方
Step1. 柱となる支柱を立てる
畝を挟むように支柱を垂直に立て、柱にします。20~30cmの深さでしっかりと挿し込みましょう。柱となる支柱は、畝の長さに合わせて等間隔で設置します。Step2. 横渡しにした支柱をフックバンドで留める
Step1の柱支柱の天井部分に、支柱を1本横渡しにしてフックバンドで固定します。向かい側の柱支柱にも、長い支柱を横渡しにしてください。Step3. 縦渡しにした支柱をフックバンドで留める
畝の両サイドに挿した柱の支柱をつなぐように、支柱を縦に渡して固定します。Step2で横渡しにした支柱と同じ高さにして、クロスさせましょう。柱となる垂直の支柱をすべてつなげたら完了です。支柱の立て方4|V字型
株をはさむように、2本の支柱をクロスさせるV字型支柱。直立型支柱よりも強度はぐっと上がります。必要な道具
園芸支柱
長さ2.4m前後、太さ20mm径の園芸支柱支柱用留め具(19mm径用フックバンド)
支柱が交差した箇所を固定するために使います。V字型支柱の立て方
2本の支柱を下のほうで交差するように、斜めに挿します。Vの字をイメージして、上が開くように挿していきましょう。支柱が倒れないように、30cmほどの深さでしっかりと挿し込んでください。V字型支柱を何組も立てる場合は、上の部分と交差部分に支柱を渡して固定すると、さらに強度が上がります。支柱の立て方5|スクリーン型
狭いスペースにもおすすめの、スクリーン型支柱。株がたくさんある場合は、横に並ぶように連結させても良いですね。必要な道具
園芸支柱
長さ2.4m前後、太さ20mm径の園芸支柱支柱用留め具(19mm径用フックバンド)
支柱が交差した箇所を固定するために使います。園芸用ネット
組んだ支柱に張り、野菜のつるを誘引します。スクリーン型支柱の立て方
Step1. 支柱を3本垂直に挿す
畝の横に、支柱を3本垂直に挿します。畝の両端と中央に等間隔で立てましょう。Step2. 支柱を3本横渡しにして固定する
田の字になるように支柱を組みます。垂直に挿した支柱の上部・中央・下部に、支柱を3本横渡しにしてフックバンドで固定しましょう。Step3. 園芸用ネットを張る
組んだ支柱にネットを張ったら完了です。支柱の立て方6|あんどん型
プランター栽培にもおすすめなのが、あんどん型支柱です。手軽に使えるので初心者にもおすすめ!必要な道具
園芸支柱
市販のあんどん支柱あんどん型支柱の立て方
支柱に付属のリングをセットしたら、土に挿します。支柱の立て方7|アーチ型
強度が高く、果実で重くなる果菜類に最適なアーチ型支柱。設置するために必要な道具と立て方を紹介します。必要な道具
アーチ型支柱
左右に分かれたものを組み立てて使います。アーチ支柱は、キュウリ支柱やトマト支柱という名前で売られていることも。園芸用ネット
組んだ支柱に張り、野菜のつるを誘引します。直管パイプ
アーチ支柱のみでも大丈夫ですが、パイプを取り付けると強度がアップします。支柱用留め具(19mm径用フックバンド)
パイプを取り付ける場合は、留め具も用意しておきましょう。アーチ型支柱の立て方
Step1. 支柱をジョイントする
天井部分が差し込めるようになっているので、左右をジョイントしてアーチ型にします。Step2. 支柱の先端を土に挿す
支柱の先端を30cmほどの深さで土に差し込みます。Step3. 直管パイプで補強する
支柱の強度をさらにアップしたい場合は、両サイドや天井部分に直管パイプを横渡しして、フックバンドで固定します。Step4. 園芸ネットを張る
アーチ型支柱の側面にネットを張ったら完了です。応用編!ひも支柱に挑戦
支柱やネットを使う以外にも、上から垂らしたひもに野菜のつるを誘引する「ひも支柱」という方法もおすすめです。キュウリやインゲンなどのつる性野菜のほか、トマト、ナス、ピーマンなど背が高くなる野菜にも適しています。ひも支柱のメリットは、つるや枝をひもに巻き付けるだけと誘引が簡単なこと。また、ひもを長くすれば、どこまでもつるを伸ばすことができるため収穫量も多くなります。トマトの場合、主枝の長さで6m以上、栽培段数13段以上収穫できることも!
ひも支柱は、ビニールハウスのアーチや骨組みのパイプを利用するほか、園芸支柱で枠を組み、上からひもを垂らす方法もあります。
園芸支柱を使ったひも支柱の設置方法
Step1. 支柱で枠を組む
園芸支柱を使い、骨組みになる枠を組み立てます。狭いスペースであれば、スクリーン型支柱と同じように支柱を田の字に組む方法がおすすめです。支柱を等間隔で3本垂直に挿したら、上・中・下の位置に支柱を3本横渡しにして留め具で固定します。Step2. 一番上の横支柱にひもを結ぶ
横渡しにした支柱のうち、一番上にある支柱にひもを結びます。Step3. 一番下の横支柱にひもを結ぶ
Step2のひもを一番下の横支柱に結んだらOK!株の数だけ、Step2~3を繰り返します。支柱への誘引の方法
支柱栽培は支柱が倒れた、支柱に枝を結んだら枝が折れた…という失敗が多く難しいと思われがちです。実は安定した支柱栽培にはコツがあります。家庭菜園でも農園でも支柱の立て方のポイントは「しっかり」、そして支柱に野菜をとめるときのポイントは「ゆるく」です。支柱を丈夫に立てる挿し方
支柱を倒れにくくするには、できるだけ土に深く挿すことが大切です。イボ支柱であれば約20cm、パイプ支柱であれば約30cmの深さまで挿さなければ風などのあおりを受けて倒れやすくなります。ですが支柱を何本も手で深く挿すのは大変ですよね。そこでおすすめなのが、てこの原理を応用した設置用補助器具です。力いらずで支柱を深く挿すことができ、抜く際にも大活躍!補助器具にはイボ支柱用とパイプ支柱用があります。
支柱にゆるく枝をとめる
作物の枝が折れる最大の原因は、果実の重みです。重さは下の方向にかかるので、地面に垂直な動きを支えることがポイントです。逆にいえば、地面に平行な横の動きに対しては多少のゆるさがあった方がうまく横風の力を逃がすことができます。支柱と側枝を八の字の輪っかで結び、側枝が輪っかにもたれかかった状態にすると良いでしょう。栽培面積が広く一つひとつ結ぶのが大変な場合は、枝の種類によって簡単にとめることができる道具もあります。立性の野菜の主軸をとめる
麻ひもや園芸用輪ゴムで支柱に固定します。ひもを使う場合は、きつく結ぶと枝に食い込んで折れてしまうことがあるので注意しましょう。ひも支柱の場合は、道具は使わずにひもに巻き付けるだけでOKです。ナスやピーマン、トマトなどの地際の主軸と支柱をとめる場合は専用のクリップで固定するのもおすすめです。つる性の野菜の誘引ポイント
キュウリやニガウリ(ゴーヤ)などのつる性野菜は、基本的に放任で大丈夫!主軸をきちんと誘引すれば、そのあとは自分の巻づるでネットに巻き付いていきます。支柱の台風対策
支柱への誘引がうまくいっても、台風などの強風で倒れてしまったら台無しです。簡単に倒れたり抜けたりしないように、事前に対策をしておきましょう!そこでここでは、支柱の台風対策を紹介します。強度のある立て方にする
支柱は1本だけの直立型よりも、複数本を組み合わせたほうが強度が高くなります。台風に最も強いのはアーチ型、次に合掌型、V字型の順になります。支柱を深く埋める
支柱の挿し込み方が浅いと、強風であおられて倒れやすくなります。支柱は、地中に30cmくらい埋まるように挿すことが大切です。支柱は太いものを選ぶ
園芸用の支柱は、8mm~20mm程度の太さのものが多く販売されていますが、細くなるほど強度は低くなります。台風の強風に負けないように、できるだけ太い支柱を使いましょう。防風ネットを張る
せっかく支柱を立てたなら、台風が来る前に防風ネットを張るのもおすすめです。ネットが強い風をやわらげることで、作物への被害を少なくすることができます。強風にあおられて倒れないように、支柱はできるだけ深く挿すようにしましょう。防風ネットの選び方や設置方法は、こちらの記事で!
応用編!農家直伝の台風対策
緑肥で防風壁を作る
キュウリやナスは衝撃や摩擦で傷がつきやすい作物です。支柱栽培をしている畑に吹き込んでくる風の強度をできる限り抑えることができれば、傷のないきれいな状態で収穫ができます。防風ネットを畑の周りに囲うと良いのですが、キュウリ支柱を越える高さの防風ネットの設置には時間もコストもかかります。そこで、おすすめなのがソルゴーなど背丈が高い緑肥を使った防風壁。ナスやキュウリの露地定植を始めるころに、支柱栽培を行う畑の外周に種をまきます。キュウリやナスの生長とともに緑肥の丈も伸びるので、影を作ることなく防風対策ができます。ソルゴーは最大3mほどになるので、ある程度高くなったら必要な高さで切りそろえてると立ち枯れますが、完全に倒れない限り防風壁としての機能は維持できます。
緑肥についてはこちらの記事をチェック!
失敗しても起き上がる!支柱栽培の2度使い
大きな台風や強風の場合、キュウリなどは折れなくても風で葉がボロボロになったり、病気になってすぐ枯れてしまったりすることがあります。1作目がだめでも2作目を考えておけば、万が一の場合でも穴を埋めることができますし、1作目が順調であれば2倍の生産が可能です。実際には、1作目のキュウリが終わりかけてきた7~8月にマルチの間に追肥を行い、キュウリの植穴に重ならないようにインゲンやコリンキー(カボチャ)の種をまいていきます。このように支柱を2度使いすると、9月ごろには2作目の収穫が可能です。