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決定的な有効打がなく農家を悩ませてきた霜害
とはいえ、農家としても黙って手をこまねいているわけではありません。作物を熱伝導率の低いシートで覆う被覆法、防霜ファンで上空の暖かい空気を作物に吹き付ける送風法、薪などの可燃物を燃やして地面を温める燃焼法、水が凍る時に放出される潜熱を利用して霜を防ぐ散水氷結法など、これまでにもさまざまな防霜対策が講じられてきました。しかし、いずれの方法も多くの費用と労力を必要とし、いまだ決定的な対策法が確立されていないのが現状です。関西大学とアサヒが開発した防霜資材「フロストバスター」
こうした状況を打開すべく、関西大学発のベンチャー企業KUREi(カレイ)と、飲料メーカーのアサヒクオリティーアンドイノベーションズが共同開発した新しい防霜資材が「フロストバスター」です。コーヒーの副産物を利用した天然成分由来のエキスで、霜の降りる前日に作物に散布するだけで農家に負荷をかけずに高い防霜効果が期待できます。フロストバスターの開発者インタビューについてはこちらの記事で紹介しています。
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2018年から全国で実証試験を実施!
その効果を確かめるため、2018年から全国の農家の協力を得て実証試験を実施しているフロストバスター。2020年からは全国での販売もスタートしています。ほかの対策に比べて、効果や散布の手間はどうなのか、今回は2021年に実証試験に参加した青森県のりんご農家・アルファームさんに、具体的な効果や使用感を伺いました。
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フロストバスターを使用したりんごの農家の声
全国の生産量の半数以上を占める日本一のりんご王国・青森県。冷涼で昼夜の温度差が大きい気候はりんご栽培に適しており、実の引き締まった糖度の高いりんごが多く作られています。今回お話を伺ったりんご農家のアルファームは、県西部の津軽地方に位置し、弘前市に1ha、板柳町に1.4ha、合計2.4haの園地を展開。22歳で祖父の跡を継いでから今年で就農14年目を迎えた農園主の会津宏樹さんと、そのお母さんの2人で作業を行っているそうで、現在は約20品種のりんごを栽培しています。就農2年目に霜被害で大打撃
アルファームが霜害で過去一番の損失を受けたのは12年前、会津さんが就農して2年目の年。当時の園地は現在の1/3程度の広さでしたが、そのうち約7割にも及ぶ50aが霜害に遭い、胸の高さよりも下の位置についていた花が結実せずにすべて落下。少なく見積もっても木箱(20kgのコンテナ)200箱分のりんごがなくなり、100万円単位の損失を被ったそう。樹の上の方は霜の被害が少なかったものの、不運なことに残ったりんごも雹害(ひょうがい)に見舞われるという悲惨な状況だったといいます。さらに、その年はりんごの価格が例年より安かったこともあり、正確な被害金額を計算できないほどの大損害が出てしまいました。これだけの被害が生じたのは、園地の周辺を土手や住宅に囲まれて風が弱まり、霜がたまりやすい立地だったことも影響していると考えられます。被害を受けた園地よりさらに標高の低いところにも園地があるそうですが、そちらは近くを岩木川という大きな川が流れ、風が生じるおかげなのか、これまで霜の被害はほとんどなし。同じ土手の近くでも、川のあるなしで気温も被害状況も雲泥の差が出るといいます。
さらに、例年と比較して春先の冷え込みが厳しかった今春(2021年)にも霜害が発生。特に霜害に弱い「王林」という品種では、3割程度で中心花の枯死や蔓元(つるもと)のサビなどの被害を受けました。アルファームでは側果である程度の収量を確保できたものの、サビなしの中心果と比較すると価格の差は1箱3,000円以上。周辺の農家も大きな被害を受け、ひどいケースでは何十万個単位でりんごを失い、売上げ的にも大きな損失を被ったそうです。
従来の対策方法と問題点
就農初期の経験に学び、これまでも複数の霜害対策に取り組んできた会津さん。霜注意報を参考にしつつ、ロガーでも15時ごろから夕方までの気温を計測。風の有無も考慮し、翌日に霜が降りそうな日には春に剪定(せんてい)したりんごの枝を燃やす燃焼法を実施していました。火を燃やすのは、午前2〜3時から朝日が登るまでの間、気温の低くなる園地のみ。風ですぐに火が消えてしまうため、寒さの中3時間以上もぶっ通しで作業し続けなければならないという大変な重労働でした。コスト的にも、灯油代がかさむことから負担が大きかったといいます。燃焼法以外では、霜ガードという防霜資材を使用。スピードスプレイヤーを利用するため燃焼法に比べると作業負担は軽減されるものの、散布後は機体が真っ白に汚れてしまい、掃除の手間がかかるという課題がありました。
燃焼法に代わる防霜対策として実証試験に参加
会津さんがフロストバスターの存在を知ったのは知人の紹介がきっかけでした。ちょうど燃焼法に代わる有効な防霜対策を探していた時期。以前は50aの被害で済んだものの、現在はそこに隣接する園地も購入していたため、再び霜害が発生すれば被害金額も倍増してしまうことが予想されていました。そこで霜被害を軽減する一つの手段として試してみようと、実証試験への参加を決めたそうです。散布方法は?
散布日 | 2021年4月11日、4月26日 |
散布作物 | りんご(つがる) |
散布方法 | 背負式の動力噴霧器で散布 |
散布面積 | 20a |
散布時間 | 各1時間 |
散布回数 | 各1回 |
被害の差は歴然!フロストバスターで驚きの成果が
フロストバスター散布区 | フロストバスター無散布区 | ||
評価基準 | % | 評価基準 | % |
A:障害なし | 80 | A:障害なし | 17 |
B:障害あり | 10 | B:障害あり | 14 |
C:枯死 | 10 | C:枯死 | 69 |
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使用した感想は?
従来の防霜対策と比較しての感想を会津さんに伺うと「安価な資材ではない分、上手く使えば大きな費用対効果が期待できそうです。エキスが透明なので、スピードスプレイヤーで散布する場合も機体が汚れずに済むのは助かります」と評価していただきました。次のシーズンにも期待
今回は一部の区画のみの使用でしたが、来年も霜被害が予想されるようであれば、すべての園地に散布したいと意気込みを語ってくれた会津さん。品種や散布方法、散布量による効果の違いも自分なりに試してみて、知り合いの農家とも情報を共有していきたいとのことでした。フロストバスター散布のコツ
今回の試験で効果が得られた理由について、会津さんに心当たりをお聞きしたところ、「動力噴霧器で下枝を重点的に散布したことが大きいのかもしれません。ほかの薬剤をスピードスプレイヤーで散布するときはサッとかける程度ですが、今回は枝がビショビショになるくらいまで、かなり多めにまきました」とのこと。また、丸葉栽培では枝が入り組んでいるため、スピードスプレイヤーよりも動力噴霧器で狙ったところだけピンポイントで散布していく方がロスが少なく、効率化できると教えてくれました。一方で、全面的に高密植栽培を導入している農家であればスピードスプレイヤーの方がおすすめだそう。高密植栽培とは、10aあたりに植える苗木を通常の倍以上に増やし、面積あたりの収穫量を増やす新しい栽培方法のこと。丸葉栽培と違って丈の低い樹が等間隔に並ぶため、スピードスプレイヤーでも無駄を抑えて散布できるといいます。
「フロストバスター」の販売情報をチェック
「フロストバスター」は2020年に販売開始され、りんごなどバラ科の花芽のほか、茶などの霜害対策に効果が期待できるエキスです。霜害にお悩みの農家さんは、ぜひ詳細をチェックして問い合わせてみてください!詳しい製品情報はこちら
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適用植物
・バラ科植物:リンゴ、梨、ビワ、桃、プルーンなど・カキノキ科植物:柿
・ツバキ科植物:茶
使用量の目安
メーカー推奨の使用量は10a当たり250L。500倍希釈で使用します。使用方法
霜降が予想される前日の散布が推奨されています。展着剤の使用有無は自由です。取材協力
アルファーム(青森県)
青森県津軽地方に位置するりんご農家・アルファーム。なるべく化学肥料を使わず有機肥料を使用し、減農薬にも取り組んでいます。卸売のほか、収量の2割ほどを産地直送や直売所、ネットショップなどで消費者に直接販売。県外大学生のファームステイ受け入れや、青森県内ではまだ実施している農家が少ない高密植栽培にも積極的に挑戦中です!アルファーム:http://alfarm.blog.fc2.com/
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