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園芸家
Shabomaniac!幼少期から40年以上、世界中のサボテンと多肉植物を栽培している園芸家。栽培が難しい種の播種や育成、新種の輸入にも早くから取り組む。実体験に基づく栽培方法や、自身が所有・栽培する植物の写真、自生地巡りの紀行をブログとInstagramで発信。長年の栽培経験に基づく豊富な知識で愛好家たちからの信頼も厚い。 Blog:http://shabomaniac.blog13.fc2.com Instagram:@shabomaniac 著書:『珍奇植物 ビザールプランツと生きる』(日本文芸社)、『多肉植物サボテン語辞典』(主婦の友社)…続きを読む
寒さに強い多肉植物の特徴
多肉植物に限らず、高緯度地域に生えている植物は寒さに強く、赤道に近い低緯度地域に生えている植物は寒さに弱いのが一般的です。また、同じ緯度でも海岸や平地に生えている植物より標高の高い山の上に生えている植物の方が寒さに強くなるほか、冬に雨が多く降る地域に生えている植物も比較的寒さに強い傾向にあります。ただし、例えばその植物の祖先が現在の自生地まで北上してきたのか南下してきたのかなどによっても耐寒性に差が生じるため、同じ場所に生えているからといって同じだけの耐寒性を備えているとは限りません。したがって多肉植物の耐寒性を把握するためには、まず自生地を調べ、その上で植物ごとの性質を知ることが大切です。
多肉植物が寒さで死んでしまうわけ
植物は細胞が氷結すると内部組織が破壊されて死んでしまうため、体内に多量の水分を含んでいる多肉植物は基本的に寒さに弱くなります。それでも亜寒帯などに生育している多肉植物が死なないのは、体内の水分が凍っても生き延びられる仕組みを備えているからです。多くの植物はまず細胞と細胞の隙間にある水分が凍ります。水は純度が高いほど凍りやすいという性質があるので、有機質や糖、アミノ酸などいろいろなものが解けている細胞内は外側よりも凍りにくいのです。細胞の外に氷ができると、細胞内の水分は氷に引きつけられて外側に移動していきます。水分が細胞外に出ると、さらに細胞内の溶質濃度が濃くなるため、細胞内は0℃を下回っても氷結を防ぐことができます。栽培下で冬場に水を切るのには明確な理由があって、水を切ることで細胞内の溶質濃度を高くして内部組織が氷結で壊れるのを防いでいるわけです。
また、温度が低下すると呼吸や光合成といった代謝活動も低下しますが、植物は代謝を最小限に抑えることで寒い時期を乗り越えることが可能になります。このように植物の体は氷点下でも生きていけるような構造と性質を持っていて、気温が低くなると自分で冬支度をします。よく遅霜で植物が枯れてしまうのは、春が来て暖かくなり、冬支度を解いているところに突然の寒さに襲われて耐えられなくなってしまうことが原因です。
−20℃でも平気|寒さにとても強い多肉植物
ここからは多肉植物を耐寒性の高い順に紹介していきます。まずは−20℃でも耐えられるもっとも寒さに強い種からです。アフリカを中心とする低緯度の乾燥地帯や熱帯地域に生えていることの多い多肉植物ですが、中には高緯度の高山に自生し、抜群の耐寒性を有するものがあります。センペルビウム
分類 | ベンケイソウ科センペルビウム属 |
ジョビバルバ
分類 | ベンケイソウ科センペルビウム属(旧ジョビバルバ属) |
−5℃までは耐えられる|そこそこ寒さに強い多肉植物
グラプトペタルム
分類 | ベンケイソウ科グラプトペタルム属 |
セダム
分類 | ベンケイソウ科セダム属(マンネングサ属) |
セダムの育て方はこちらの記事でも解説!
イワベンケイ
分類 | ベンケイソウ科イワベンケイ属 |
アガベ
分類 | キジカクシ科リュウゼツラン亜科アガベ属(リュウゼツラン属) |
アガベについてはこちらの記事でも解説!
サボテン
サボテンは思っている以上に寒さに強く、中南米のジャングルなどに生えているものを除き、明け方の短時間だけ氷点下になるくらいの寒さであれば耐えられるものが多いです。中にはカナダなどに分布していて−20℃以上の寒さに耐えるものもあります。近年は気温上昇によって関東でも露地植えで越冬できるようになりつつあります。エキノケレウス
分類 | サボテン科エキノケレウス属 |
エキノプシス
分類 | サボテン科エキノプシス属 |
オプンチア
分類 | サボテン科オプンチア属 |
メセン類
メセン類は冬生育型なので、水分含有量が多い割にはある程度の耐寒性を備えています。−5℃でも生き延びますが、冬はもっとも旺盛に生長する時期なので、ギリギリまで寒さに耐えさせるのではなく、できれば5℃以上を保って管理した方がよく育ちます。コノフィツム
分類 | ハマミズナ科コノフィツム属 |
コノフィツムの育て方についてはこちらの記事もチェック!
リトープス
分類 | ハマミズナ科リトープス属 |
リトープスの育て方はこちらの記事もチェック!
0℃以上をキープすれば大丈夫|寒さに強くも弱くもない多肉植物
続いては、特に寒さに強いというわけではないけれども弱いというほどでもない、耐寒性レベルが中くらいの多肉植物をご紹介します。0℃以上をキープすれば枯れてしまうことはありませんが、できれば5℃くらいに保つ方が安心です。屋外で越冬させるにはガラス温室やビニールハウスが欠かせません。エケベリア
分類 | ベンケイソウ科エケベリア属 |
ハオルチア
分類 | ツルボラン科ハオルチア属 |
ハオルチアの育て方はこちらの記事もチェック!
セネキオ
分類 | キク科セネキオ属 |
10℃以上は保ちたい|圧倒的に寒さに弱い多肉植物
パキポディウム、アデニウム、アデニア、コミフォラ、熱帯産のユーフォルビアなど
多肉植物の中でも根や茎に水分を溜め込むコーデックスと呼ばれるグループは、マダガスカルなど熱帯アフリカ原産の種が多く、また水分含有量も多いため、圧倒的に寒さに弱くなります。できれば10℃程度を保ちたいので、冬越しにはガラス温室やビニールハウスを用意することはもちろん、その上でさらに加温や保温が必要です。暖房設備付きの温室を用意できない場合、無理に戸外で冬越しさせず暖かい室内に移しましょう。Shabomaniac!さん
本来多肉植物やサボテンは、温室や暖房設備があることを前提に育てた方がいい植物です。特に寒さに弱い種類は冬場に数日間、暖房のないところに置くだけで死んでしまいます。
パキポディウム・アデニア・コミフォラの育て方についてはこちらの記事で詳しく解説
冬場の管理で気をつけること
冬支度は秋彼岸までに済ませる
夏に生育するタイプの多肉植物は、夜間の気温が10℃を切る9月後半ごろから葉が落ち始め、根も水を吸収しなくなります。秋の長雨に当てるとなかなか土が乾かないので、秋彼岸(9月後半)までを目安に温室もしくは室内に移します。それなりに寒さに強い多肉植物も、霜が降りる前、10〜11月くらいには室内に取り込みましょう。水やりは控えめに
低温で代謝が止まっている間は水を与えても根が吸収せず、土も乾きにくいので基本的に断水します。与えるとしても鉢底から水が流れ出るほどの量は必要なく、ごく少量のみにし、晴れの日の日中など気温が高い時間帯を狙って水やりするようにしてください。日当たりのよい暖かい場所へ
室内で管理する場合、暖房が効いている部屋であれば15℃くらいは維持できますし、まず寒さで枯れる心配はありません。暖房が入らず日も当たらない玄関などは避け、よく日の当たる窓辺などに置くのがおすすめです。ただし、暖房の風が直接当たらないよう置き場所には配慮してあげてください。直射日光にあててもいい?
Shabomaniac!さん
同じ冬でも11月と2月では日差しの強さが違います。早春に締め切った温室で育てていると日焼けすることがあるので、直射日光に当ててもよいですが通風は必要です。