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コミフォラの育て方|多肉植物の研究家が水やりや温度管理のコツ、「カタフ」や「エイル」など人気種の特徴を解説


自然と盆栽のような樹形に育つことから「天然の盆栽」として親しまれているカンラン科の植物コミフォラ。白や緑の木肌が美しく、葉や枝を剪定すると切り口から爽やかな芳香がするのも特徴です。この記事では、コミフォラの育て方や人気種について、多肉植物の栽培に詳しいベテラン園芸家が解説します。

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Shabomaniac! 監修者

園芸家

Shabomaniac!

幼少期から40年以上、世界中のサボテンと多肉植物を栽培している園芸家。栽培が難しい種の播種や育成、新種の輸入にも早くから取り組む。実体験に基づく栽培方法や、自身が所有・栽培する植物の写真、自生地巡りの紀行をブログとInstagramで発信。長年の栽培経験に基づく豊富な知識で愛好家たちからの信頼も厚い。 Blog:http://shabomaniac.blog13.fc2.com Instagram:@shabomaniac 著書:『珍奇植物 ビザールプランツと生きる』(日本文芸社)、『多肉植物サボテン語辞典』(主婦の友社)…続きを読む

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kiko

出版社にて雑誌編集に3年間に携わった後、現在はWebライターとして活動中。多肉植物・観葉植物の魅力にはまり、鉢が増えていく日々。…続きを読む

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モンストルオーサ
コミフォラは灌木状(かんぼくじょう)の無骨な樹形に育ち、樹皮が剥がれ落ちる特徴をもつ個性的な盆栽多肉です。古代エジプトでミイラの防腐剤に使用されていた「ミルラ」や、入手が困難なことから骨董品的に珍重されている「カタフ」など、200以上の種類があります。この記事では、コミフォラの育て方を多肉植物の栽培に詳しい園芸家のShabomaniac!さんが解説。水やりや温度管理のコツもご紹介します。

コミフォラの特徴

 
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クラウセリアナ
コミフォラは天然の盆栽といわれる樹木で、多くは低木状ですが、自生地には高さ10mくらいまで生長するものや、矮性(わいせい・樹高が極端に低いこと)で幹や枝ががっちりと詰まって塊茎状に太るものがあります。樹形のおもしろさとあわせ、樹皮が薄く剥ける姿も鑑賞のポイントです。約500種あるカンラン科の植物の中でコミフォラ属はもっとも種類が多く、全部で200〜300種程度が知られています。中でも「ミルラ」という種の樹脂は没薬(もつやく)と呼ばれ、薬や香料として古くから利用されていたことで有名です。ミルラだけでなく、コミフォラ属の植物全般は葉をちぎったり枝を剪定したりすると、上品な香りが漂います。ちなみに没薬と並んで二大香木として知られる乳香(にゅうこう)は、同じくカンラン科でコミフォラと近縁にあたるボスウェリア属の樹木から採取されています。また、カンラン科のブルセラ属にも「盆栽多肉」として親しまれているものがあります。

コミフォラの自生地

アフリカ大陸やマダガスカル、さらに中東からアジアまで、旧世界の熱帯域に広く分布し、気温が高く、雨量が少ない場所に生えています。

コミフォラの花

花も咲きますが小さく目立たないので、鑑賞価値はさほど高くありません。

コミフォラの入手方法・価格

昔は一部のマニアックな人にしか知られておらず、市場に出回ることもまれでしたが、現在は自生地から輸入された野生株が多く流通しており、ネット通販やオークションで入手できます。価格は数千円から数万円です。希少性が高いものは20万円近くすることもあります。

コミフォラの基本情報

ドレイク-ブロックマニー
分類 カンラン科コミフォラ属
原産地 アラビア半島からマダガスカルを含むアフリカ大陸、一部のアジア地域

生育型

夏型

生長速度

とても遅い
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種から育てると幹が太るまで十年以上かかります。

コミフォラの人気種

ここからはコミフォラ属の人気種を紹介していきます。それぞれの栽培難易度は、星の数(☆~☆☆☆☆☆)で表示していますので、育てる際の参考にしてください。星の数が少ないほど栽培難易度が低くなります。

モンストルオーサ(Commiphora monstruosa)

栽培難易度☆☆☆
モンストルオーサはマダガスカルが原産です。暗色のがっしりとした幹と枝に、小さな葉(羽状複葉/うじょうふくよう)を密につける涼しげな印象のコミフォラで、成株は数メートルの高さまで育ちます。最初に学名記載されたときには、同じマダガスカル原産の植物・オペルクリカリア属に含まれていましたが、後にコミフォラ属に移されました。両者を比べてみると、確かによく似ています。ちなみに、学名のモンストルオーサは「モンスター」や「奇怪なもの」といった意味ですが、サボテンや多肉植物の成長点異常「石化(モンストローサ)」とも語源は同じです。「モンストローサ(Commiphora monstrosa)」という名前で出回っているものもありますが、これは正式に記載されている学名ではありません。

羽状複葉
小葉が葉軸の左右に鳥の羽のように並んだもの。


カタフ(Commiphora kataf)

 
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栽培難易度☆☆☆
カタフはエチオピア、ケニア、ソマリア、タンザニア、イエメン、サウジアラビアなどアフリカから中東まで広範囲に生えており、自生地の標高も75〜1,500mと幅広いため、見た目や性質はバラエティに富んでいます。その中でマニアに「本物のカタフ」と呼ばれて人気があるのは、とっくりのような丸い幹と白い肌、枝先だけが黒く色づく特徴をもち、ソマリアの特定の地域から輸入されてきたものです。実際にはさまざまな幹丈や樹形、色のカタフがありますが、日本でカタフといえばこのタイプです。多肉植物ブームが起こる前は1株1万円程度で入手できましたが、今では現地でも採取が難しく、日本にも滅多に入ってきません。そのため美術品のような位置付けにあり、少し立派な株であれば20万円近くすることも珍しくありません。ターカネンシス(Commiphora kataf ver. turkanensis)やホルトジアーナ(Commiphora holtziana)という名前で出回っているものはカタフの近縁種か別産地のカタフで、ミルキーグリーンの美しい幹肌が好まれています。

クラウセリアナ(Commiphora kraeuseliana)

 
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栽培難易度☆☆☆
今日本に入ってきているコミフォラは東アフリカ(ケニア、ソマリア、エチオピアなど)産のものが大半ですが、クラウセリアナは南西アフリカのナミビアが原産です。コミフォラの中では小型で、葉はトクサ科のスギナに似て棒のように細く繊細です。種子から繁殖された苗が多く出回っており、小さいものであれば数千円で入手できます。最近はほとんど輸入されておらず、自生地から採取された成株はかなり稀少です。

エデュリス(Commiphora edulis)

栽培難易度☆☆☆
南アフリカを中心に広い範囲に生えており、自生地では数メートルの高さまで生長し、大きな赤い実がなります。ただし、実がなるまでにはかなりの大きさまで育てる必要があるほか、日本では冬の寒さに耐えられないので地植えにも向かず、盆栽として樹形や葉姿を楽しむのが一般的です。

アフリカーナ(Commiphora africana)

栽培難易度☆☆☆
アフリカーナはサハラ以南のアフリカ大陸の広い範囲に分布します。変異の幅が広く、栽培されるサイズの株(幼木~若木)を見て「これがアフリカーナだ」と同定するのはかなり困難です。さまざまなタイプの植物がアフリカーナの名前で流通しているので、市場での流通名は必ずしも本当の学名とは照応しないと思った方がよいかも知れません。同じことはコミフォラの多くの種にいえます。
Shabomaniac!さん
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流通名の多くは輸出業者が付けたラベルに由来していますが、彼らに必ずしも専門的な知見があるわけではないようです。

エイル(Commiphora sp. somalia eyl)

エイル
写真提供:Shabomaniac!
栽培難易度☆☆☆☆
エイルも正式な学名は不明ですが、ソマリアのエイルという地域に生えていることからこの名前で流通しています。強風が吹き付ける丘の上などに自生しているためか、高山地帯に生える這松(はいまつ)のように横に幹を伸ばし、背丈が低く樹高は生長しても10cm程度です。コブを積み重ねたようなユニークな樹形で、コミフォラの中でも顕著な外観的特徴があり、特に人気があります。
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10年ほど前に輸入されて以降、日本にはほとんど入ってきていません。ソマリアは治安や交通の便が極めて悪く、エイルの自生地は主にケニアやタンザニアに拠点を持つ現地の採取業者も近付きたがらない地域にあり、新たな採取は極めて困難だからです。ただ、愛好家が昔手に入れた株をネットオークションに出品していることがあり、高いと10万円以上もしますが入手できないことはないでしょう。

フンベルティ(Commiphora humbertii)

栽培難易度☆☆☆
幹が太く茶色い樹皮が特徴です。マダガスカル産で、パキポディウムなどと一緒に大量に輸入されてくるので入手はしやすいでしょう。

ミルラ(Commiphora myrrha)

 
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栽培難易度☆☆☆
樹高の割には幹があまり太らずスリムな姿が特徴です。ミルラの樹脂は没薬として知られ、痛み止めや殺菌効果のある薬として使用されていたほか、芳香がすることから香水や儀式の際の焚香料(ふんこうりょう)に使われたり、ミイラの防腐剤に使われたりしていました。

ドレイク-ブロックマニー(Commiphora drake-brockmanii)

コミフォラ・ドレイク-ブロックマニー
写真提供:Shabomaniac!
栽培難易度☆☆☆☆
ソマリア北部の砂漠地帯が原産です。やすりをかけたようなざらざらの白い幹をもち、丈が低くがっしりとした盆栽状に育つことから、特に鑑賞価値の高いコミフォラとして知られています。生育期の見極めは難しく、気温や水やりなどの栽培条件によって葉を生やしたり落としたりを繰り返すことがあります。
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例えば、4〜5月に葉が出たかと思うと6月ごろには落葉し、7月の梅雨明けごろに新葉が出て2週間程度で再び落葉、10月にまた葉が出るなど、生長と休眠のサイクルが明確ではありません。少し気温が高過ぎたり水が切れたりするだけもすぐに葉が落ちます。ただ、高温を維持できる温室以外では、真冬は動きません。

コミフォラの育て方

 
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カタフ

水やり

基本は夏型で5〜10月ごろまでが生育期にあたりますが、エイルやドレイク-ブロックマニーなど一部の種は突然落葉したり、6月まで葉が出なかったりと気難しいところがあります。日ごろから植物の様子をよく観察し、葉が出そうな兆しがあれば水やりし、葉が落ち始めたら水を切りましょう

日当たり・置き場所

自生地は周りにほとんど植物が生えていない岩場のような環境で、強い日差しを浴びているので、基本的には日当たりを好みます。夏場は戸外に出しっぱなしにして直射日光に当てた方が丈夫でがっしりとした姿に育ちます。エイルなど入手困難で高価なものは温室で管理した方が安心です。

温度

過酷な乾燥地帯に生えているので暑さに強く、日本の夏であれば40℃くらいまでは耐えられます。極端な暑さにさらされると葉を落とすことはあるものの、種によっては2週間くらいで新葉を出します。反対に寒さには弱いので、冬は最低5℃、できれば10℃は必要です。

用土・肥料

水はけがよければ土はあまり選びません。肥料は生育期に適度に与えます。

コミフォラの植え付け・植え替え

 
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アフリカーナ
生育期の早い時期、5〜7月くらいまでに行います。

多肉植物の植え替え方法についてはこちらの記事で詳しく解説


コミフォラの剪定・切り戻し

放っておくとどんどん枝が伸びるので、適度に剪定してバランスを整えましょう。切り落とした枝は挿し木すれば根が出て活着します。ただ、幹が太るまでは長い年月がかかります。

コミフォラの殖やし方

コミフォラ
写真提供:Shabomaniac!
実生もしくは挿し木で殖やすことができます。ただ、非常に生長が遅く、実生株は10年でようやく親指程度にしかなりません。挿し木ではさらに時間がかかり、鑑賞できるサイズになるまでには20年ほどかかるため、現地株を入手しての栽培が中心です。
Shabomaniac!さん
Shabomaniac!さん
野生株を買うとなると自生地の環境への影響が気になりますが、同じコーデックスでもコミフォラはパキポディウム・グラキリウスなどと違って特定の種だけが集中的に採取されるようなことはないので、そこまで深刻な状況には至っていないでしょう。

コミフォラの病気・害虫

コミフォラ
出典:Flickr(Photo by Terrie Schweitzer
病害虫には極めて強く、風通しの悪い温室などで育てているとまれにカイガラムシがつくことがありますが、十分な日射と雨、風通しを確保できていればそこまで心配は要りません。

コミフォラを育ててみよう

天然の盆栽として個性的な樹形が楽しめるコミフォラ。枝を適度に選定して全体のバランスを整えながら、ゆっくりと生長を見守ってあげましょう。生育と休眠のサイクルがわかりにくい種もありますが、植物のコンディションをよく観察して水やりを調整してあげてくださいね。

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