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園芸家
Shabomaniac!幼少期から40年以上、世界中のサボテンと多肉植物を栽培している園芸家。栽培が難しい種の播種や育成、新種の輸入にも早くから取り組む。実体験に基づく栽培方法や、自身が所有・栽培する植物の写真、自生地巡りの紀行をブログとInstagramで発信。長年の栽培経験に基づく豊富な知識で愛好家たちからの信頼も厚い。 Blog:http://shabomaniac.blog13.fc2.com Instagram:@shabomaniac 著書:『珍奇植物 ビザールプランツと生きる』(日本文芸社)、『多肉植物サボテン語辞典』(主婦の友社)…続きを読む
パキポディウムの特徴
パキポディウムはラテン語で「太い」を意味するpachysと「足」を意味するpodosを合わせた造語で、由来の通り多くは幹が肥大化します。自生地では10mくらいまで成長するものもあります。幹からトゲのある枝を生やして灌木(かんぼく)状に育ち、幹や枝の先端に艶のある厚手の葉をつけます。マダガスカルと南アフリカに自生し、亜種・変種を合わせて25種類ほどが知られています。自生地はいずれも乾燥の激しい環境です。酷暑や乾燥が続く時期には落葉し、比較的雨の多い季節になると葉を出して花を咲かせます。価格は安いもので数千円、大きくて形のよいものは数十万円することもあります。
Shabomaniac!さん
パキポディウムは、ここ10年ぐらいのあいだに、マダガスカルからの野生株の輸入が増えました。しかし、中には原産地の環境に大きなダメージを与えているケースもあります。希少植物の原産国では、往々にしてワシントン条約(絶滅のおそれのある野生動植物が国境を越えて移動することに制限をかけるもの)の管理対応が十分機能しておらず、本来は採取されるべきでない植物が日本に入ってきているかも知れません。気に入った株を手元に置いて満足することと引き換えに、自生地の植物を根絶やしにしてしまったら悲しいことです。すでにアジアをのぞく海外では野生植物を買わないで、自分で種子から育てよう、という機運がSNSなどで広く共有されつつあります。世界的にも野生植物の採取・輸出に対して厳しい対応を取る傾向が強まっているため、いま国内にある輸入植物を大切に維持し、今後は国内で人工的に繁殖した株を増やしていきたいですね。
基本データ
分類 | キョウチクトウ科パキポディウム属 |
原産地 | マダガスカル、南アフリカ |
生育型
大半のパキポディウムは、初夏~初秋までの温暖な季節に成長します。基本的に自生地の環境に合わせて活動するので、マダガスカル産であれば温暖な夏の時期が生育期です。南アフリカ産の「ナマクアナム」などは日本の気候では冬に成長します。冬型種は一般的な草花とは成長サイクルが逆です。春になっても成長しないからと慌てて水やりすると、本来は休眠期なので腐らせてしまいます。栽培適温
「ナマクアナム」などは氷点下でもなんとか耐えられますが、「バロニー」は最低でも10℃は必要というように、種によって幅があるため一概にはいえません。ただ低緯度かつ標高の高いところに分布するものが多いため、極端な暑さや寒さは避けた方がよいでしょう。Shabomaniac!さん
日本の冬は昼でも5℃までしか気温が上がらなかったりしますが、南アフリカの冬は最高気温が日本よりも高く、夜はそれなりに冷えますが昼間は20℃を超えて暖かくなります。このような自生地に近い環境を作ろうとすると、どうしても温室やビニールハウスが不可欠です。また、栽培適温は原産地の気候を調べるのが一番です。その植物がどのような環境で自生しているのかという視点で考えると、それぞれの植物にふさわしい栽培環境が見つかります。
成長速度
種をまいてから4〜5年で開花、10年くらいで見ごろといえるサイズになります。Shabomaniac!さん
10年を長いと思うか短いと思うかは人それぞれですが、たとえば盆栽などは1つ仕上げるのに50〜100年もかかり、1人の代では完成できないわけです。そういう意味ではは種から10〜20年で見ごろに育つというのは、コーデックスの中では比較的早い方といえます。
パキポディウムの花
花は数センチのものから十センチくらいの大輪まであり、キョウチクトウ科らしく5枚の花弁をつけます。色は赤・黄・白・ピンクなどさまざま。受粉にはコツが要ります。パキポディウムの人気種
ここからはおすすめのパキポディウム属の品種を紹介していきます。それぞれの栽培難易度は、星の数(☆~☆☆☆☆☆)で表示していますので、育てる際の参考にしてください。星の数が少ないほど育てやすい品種になります。アンボンゲンセ(Pachypodium ambongense)
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栽培難易度 | ☆☆☆ |
イノピナツム(Pachypodium rosulatum ssp. inopinatum)
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栽培難易度 | ☆☆☆ |
グラキリウス(Pachypodium rosulatum ssp. gracilius)
栽培難易度 | ☆☆ |
サキュレンタム(Pachypodium succulentum)
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栽培難易度 | ☆☆ |
デンシフロラム(Pachypodium densiflorum)
栽培難易度 | ☆☆ |
ナマクアナム(Pachypodium namaquanum)
栽培難易度 | ☆☆☆☆ |
バロニー(Pachypodium baronii)
栽培難易度 | ☆☆☆ |
ビスピノーサム(Pachypodium bispinosum)
栽培難易度 | ☆☆ |
ブレビカウレ(Pachypodium brevicaule)
栽培難易度 | ☆☆☆ |
ラメリー(Pachypodium lamerei)
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背の高い木のように真っ直ぐ育ち、金棒のような姿が特徴です。寒さには弱い方ですが、暖かい環境で陽をたっぷり当て、水もたっぷりあげればすくすく育ちます。
パキポディウムの育て方
日当たり・置き場所
屋内は日当たり、風通しが悪いので、できれば冬場でも温室やビニールハウスで育てるのが理想的。日当たりのよくない屋内の窓辺などに置いておくと、徒長して株姿がヒョロヒョロになります。屋内栽培の場合は強力なLEDなどを準備する必要があります。また、ビニールハウスやガラス温室で育てていてもガラスやビニールが紫外線を遮ってしまい、徒長することがあります。丸々とした形の良い株にするためには、夏場は戸外で管理するのがひとつのコツです。ただし風通しが悪いと株が焼けてしまうため、酷暑が続くようであれば寒冷紗などで暑さ対策を行いましょう。風通しがよければ直射日光に当てても大丈夫です。水やり
マダガスカルや南アフリカの大半の植物は、春から秋の温暖な時期に水をたっぷりやり、風通しと日当たりをよくして育てることが基本です。肥料
成長が早い場合は肥料を与えます。一般的な草花用の肥料でOKです。土
極端に酸性・アルカリ性に寄らず、水はけがよければ土はあまり選びません。市販の多肉植物・サボテン用の土で十分です。パキポディウムの植え付け・植え替え
休眠期が明けて成長を始めたタイミングがベスト。種によって成長サイクルが違うので植え付け・植え替えの適期もそれ次第です。パキポディウムの剪定・切り戻し
基本的に剪定・切り戻しは不要です。中には切り戻す人もいますが、不自然な形になりやすいのでおすすめはしません。パキポディウムは非常に水気が多く組織がもろいので、樹液が垂れてきたり、切り口から一気に腐ることがあります。パキポディウムの病気・害虫
比較的に害虫や病気には強い方です。ただ、冬場に暖房の効いた屋内に置いておくとカイガラムシがつくことがあります。パキポディウムに関するQ&A
塊根部分がブヨブヨに…原因は?元に戻すことはできる??
Shabomaniac!さん
冬に断水している間は水気が抜けて柔らかく感じることがありますが、健康な株は水をやればまたパンパンに膨らむはずです。冬場の成長が止まっているときに水をやり過ぎたりすると、根が腐って塊根部分もブヨブヨになってしまいます。原因がどちらなのかを見極めるのは難しいですが、指で押してグジュっといくようであれば完全に腐っているので残念ながら助かりません。
葉が枯れてしまった…
Shabomaniac!さん
生育期が終われば葉は落ちます。多くの場合は秋ですが、ナマクアナムのような冬型種は春に葉を落とすのでそこを間違えないようにしましょう。また、暑過ぎたり、水が少し足りなかったり、ちょっとした要因で植物が「休眠期に入ったのかな?」と勘違いし、生育期にもかかわらず葉を落としてしまうことはあります。たとえば、夏型のパキポディウムは外に出しておくと、通常は4月ごろの春先に葉を出し始めますが、一晩寒い日があって気温が5度くらいまで下がったりすると、急に葉が落ちてしまったりします。