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セダムはどんな多肉植物?
セダムは、北半球の温帯から亜熱帯地域にかけて広く生息する多肉植物です。乾燥地や高山、海岸の岩場などのわずかな土壌に根を張って生育します。生育形態は群生するものや茎を下に垂らすもの、地面をはうように伸びるもの、茎を上向きに伸ばして群生するものなどさまざまです。葉が肉厚なので分類上は多肉植物とされていますが、種類によっては観葉植物としても扱われることもあります。現在は約500種以上の品種が確認されており、日本で流通している品種は主に日本の原産種と洋種の2種類に分けられます。日本の原産種は約30~40種類ほど存在し、洋種に比べて平たい葉を付けるのが特徴です。代表的な種類には、ミセバヤ、キリンソウ、マルバマンネングサ、タイトゴメなどがあります。日本原産種はかなり頑強で、耐寒性・耐暑性に優れ、乾燥にも強いため屋外でも丈夫に育ちます。そのたくましさと、はうように育つ性質から、グランドカバーや屋上・壁面の緑化にもよく使われています。
一方、洋種のセダムはメキシコやアフリカ、ロシアなどを原産とし、原産地の環境によって性質や葉姿はさまざまですが、全体的に日本原産種よりも葉が肉厚です。大きく分けて耐寒性種と暖地性種の2種類があります。
セダムの基本情報
基本情報
学名 | Sedum |
和名 | マンネングサ、ベンケイソウ |
科名 | ベンケイソウ科 |
属名 | マンネングサ属(セダム属) |
園芸分類 | 多肉植物、山野草 |
形態 | 一年草、二年草、多年草 |
特徴
草丈
2~60cm耐寒性
強い~やや弱い耐暑性
強い~やや弱い栽培適温
5~25℃原産地
北半球の世界各地栽培難易度
初心者でも育てやすいセダムの花
春秋型、冬型、夏型によって花の咲き方が異なり、早ければ2月上旬から、遅いものだと11月ごろまで咲き続けます。大きさは1cm前後で、色は黄色や白が多く、ほかに赤、ピンク、紫、オレンジなどもあります。セダムは日陰でも育てられますが、花を咲かせたいのであれば日当たりの良い場所で育てましょう。セダムの花言葉
こまめに水をあげなくても枯れにくいことや「マンネングサ」と呼ばれるように常に緑を保つことから「枯れることのない愛」という花言葉が付けられています。ほかにも、手がかからず放置されがちなことから「私を想ってください」、セダムの花を真上から見ると星形に見えることから「星のかがやき」、はって生長する姿が何かに耐え忍ぶように健気な印象を与えるとして「静寂」「穏やか」といった花言葉もあります。セダムは寄せ植えやリース風アレンジにも◎
バリエーション豊富な葉姿や色合いを生かし、寄せ植えやリースづくりに挑戦してみるのはいかがでしょうか?繊細な葉や多肉質な葉、上に伸びる種類やはうように伸びる種類など、いろいろなセダムを組み合わせると動きが出せます。色の濃さが異なるセダムを並べてグラデーションに仕立ててもいいですね。寄せ植えにするなら、テラコッタの鉢や底に穴をあけたブリキの容器を使い、アンティークっぽい雰囲気を演出してみるのもおすすめです。セダムを庭一面・花壇のグランドカバーに
セダムは少ない水と浅い土壌で栽培でき、繁殖力も強いことからグランドカバーに向いています。グランドカバーには雑草が生えにくくなるメリットがあり、花を咲かせる種類であれば季節感も味わえますよ。梅雨の時期は多湿になりやすいので、雨よけカバーなどで管理するのがおすすめ。密集して風通しが悪いと害虫が付きやすくなるため、定期的に剪定して風通しをよくしてあげましょう。セダムの品種・種類
セダムは原産地や個体ごとに性質が異なり、葉姿やカラーもさまざまです。以下では鉢植えや花壇で楽しむタイプと、グランドカバーに適したタイプとに分けてセダムの品種を紹介します。鉢植えや花壇におすすめのセダム
虹の玉
虹の玉は中米原産で、厚みのあるツヤツヤとした赤い葉が特徴。秋から春にかけて葉が赤く色付きます。ぷっくりとした葉にはかわいらしい存在感があり、寄せ植えにも使われるなどセダムの中でも人気の品種です。オーロラ
虹の玉の斑入り品種・オーロラ。ピンクっぽい葉が特徴で、冬になると色が濃くなります。生育環境や個体によって紅葉時の色の濃さが違うので、シーズンごとにさまざまな色付き方が楽しめるでしょう。乙女心
虹の玉によく似ていますが、生長すると虹の玉よりももう少し大型になります。バナナのような葉が密集して生え、葉の表面がうっすらと白い粉で覆われているのが特徴。その形から英語ではジェリービーンズと呼ばれているのだとか。夏の間はブルーグリーンですが、秋になると葉の先端が赤く染まり、春先には黄色っぽい星形の花を咲かせます。葉挿しに向かないので挿し芽で増やすのがおすすめ。八千代
長く立ち上がった茎の上部に、バナナのような細長い葉をたくさん付けるセダムです。乙女心に似た葉姿をしていますが、八千代の葉は黄緑色。紅葉時には黄色~オレンジに染まります。レッドベリー
ツヤのあるコロンとした葉っぱをたくさん付けるレッドベリー。緑色の葉は秋になると赤く色付き、最盛期には真っ赤に染まります。粒々の赤い葉が密集してイチゴの実に似ていることからレッドベリーという名が付けられたのだそう。暑さ寒さに強いので育てやすく、株が小さいため寄せ植えの脇役としても活躍してくれます。アドルフィーコッパー(銘月)
真上から見るとバラの花のような形に葉を生やし、茎が伸びるにつれて葉の重みで倒れていきます。葉先が尖っていたり丸かったりと、アドルフィーコッパーの中でもバリエーションが豊富です。秋になると葉の縁から黄色っぽく紅葉し、春から夏にかけて白やオレンジの花を咲かせます。ミセバヤ
ミセバヤは、日本原産種代表するセダムの一種です。茎を横に広げて垂れ下がるように生長するので、ハンギングバスケットなどに入れて天井からつり下げて鑑賞するのがおすすめ。丸いシルバーグリーンの葉は秋になると紅葉し、それと同時に茎の先端に小さな花を球状に咲かせます。冬になると葉が落ちて休眠に入りますが、春になると茎の根元から新芽が出てきます。ステフコ
ステフコは、小粒のプチプチとした葉を密集して生やすセダムです。秋に紅葉し、緑の葉がピンクから濃い紫に染まります。株があまり大きく生長しないため、小さめの鉢のままでも育てられますよ。ドラゴンズブラッド
コーカサス地方原産のドラゴンズブラッドは、地面に広がるように群生し、グランドカバーにもよく使われています。夏は緑色ですが、秋から冬にかけて赤褐色に染まる姿が「ドラゴンの血」を思わせることからこの名前が付きました。トリカラー(コーカサスキリンソウ)
5mm程度の小さな葉にピンクの斑が入るトリカラー。こちらもコーカサス地方が原産で、正式にはセダム スプリウム・トリカラー、別名コーカサスキリンソウとも呼ばれています。冬になるとピンクがさらに濃くなり、気温が高くなるにつれて白っぽく変化していきます。夏には星形をしたピンクの花も見せてくれますよ。ダシフィルム
原産地は中米やヨーロッパ、北アフリカなど諸説あります。和名は姫星美人。繊毛の生えたしずく型の小さな葉を茎の上部にたくさん茂らせ、一本の木のように生長します。葉や茎をカットするとミントのような独特の香りが漂うのも特徴です。初夏から夏にかけて白~ピンクの星形の花を咲かせ、冬にはピンク~薄紫に紅葉します。パープルヘイズ
パープルヘイズはダシフィルムの変種で、葉姿や色合いもダシフィルムによく似ています。ただダシフィルムよりも葉が大きめで、繊毛は生えていません。夏場は青みがかった緑色、秋になると紫に紅葉します。夏には茎の先端から花芽を伸ばし、花を咲かせます。ミルクゥージ
メノマンネングサと呼ばれる日本原産種の斑入り種です。名前の通り、ミルク宇治抹茶のような色合いが魅力。はうように広がってこんもりと生長します。オータムジョイ
セダムの中では大型の品種です。上に茎を伸ばし、50cmくらいまで生長します。光沢のあるライムグリーンの葉が特徴で、夏から秋にかけてピンクから紫の小さな花を球状に咲かせます。日本では多肉植物として扱われていますが、欧米では花壇や庭園によく植えられているようです。グランドカバー向きのセダム
ゴールデンカーペット
その名の通り黄色っぽい葉が特徴のゴールデンカーペット。コケのように横に広がって生長し、日光を好むため直射日光に当てても平気です。暑さ寒さに強く、2~3℃まで耐えられます。生長が旺盛なので、葉が広がることを想定して植えるのがポイント。秋になると紅葉も楽しめます。ゴールドビューティー
メキシコマンネングサとも呼ばれるゴールドビューティーは、細長い鮮やかなライムグリーンの葉をもち、地面をはうようにこんもりと広がります。寒さと乾燥に強く、塀の上のくぼみなど、わずかなスペースでも栽培可能。繁殖力が非常に高く、ほとんど手入れの必要がありません。春から初夏にかけては星形の黄色い花も楽しめます。パリダム
東ヨーロッパや西アジアが原産のパリダムは、淡いグリーンの細い葉を群生させ、寒くなると鮮やかな赤色に染まります。開花した株は枯れてしまうので、翌年以降も育てたければ挿し芽で増やしておくとよいでしょう。春から初夏にかけて小さな星形の花を咲かせます。アトランティス
クリーム色と緑のマーブルが美しいアトランティスは、日本名でタケシマキリンソウとも呼ばれています。通常キリンソウ属は冬に落葉しますが、アトランティスは唯一冬でも常緑の品種です。鉢植えにすると、葉が鉢を覆うように広がる美しい株姿が楽しめますよ。ミルキーウェイ
小さな葉をもこもこと伸ばすミルキーウェイ。天の川(ミルキーウェイ)のようにたくさんの小さな白い花をまとまって咲かせることが名前の由来です。紅葉時期には全体が淡いピンク色に染まります。セダムの育て方
栽培カレンダー
植え付け・植え替え:3〜5、9〜11月開花時期:2〜11月
肥料:3〜5月、9〜10月
株分け・挿し芽:3〜5月、9〜10月
水やり
生育期の春と秋は、土の表面が白く乾いたらたっぷりと水をあげましょう。夏は生育が鈍り、水やりが多過ぎると過湿になって根腐れを起こしやすくなるので、10日に1回程度と控えめにします。冬は休眠期に入るので水やりは2~4週間に1回くらいの頻度でOK。地植えにするなら水やりは不要です。置き場所・日当たり
生育期の春・秋は日当たりと風通しのよい場所で管理します。室内でも育てられますが、戸外に出してたっぷりの日に当ててあげた方が元気に育ち、葉の色ツヤや花付きもよくなります。ただし、高温多湿の環境に弱く、直射日光に当てると葉焼けを起こす場合があります。夏は風通しのよい半日陰に移し、9月ごろから日当たりのいい場所に戻すとよいでしょう。冬は耐寒性種なら戸外で育てても構いませんが、日当たりの良い室内で管理した方が安心です。室内で育てる場合
セダムは丈夫なので、底に穴があいていれば鉢以外の容器でも育てられます。置き場所は日当たりのよい窓辺がおすすめ。真夏はレース越しのカーテンなどで遮光します。地植えにする場合
水はけの良い場所に植えてあげることがポイントです。梅雨の時期から夏は遮光カバーで直射日光を避け、雨が当たらないように注意しましょう。※洋種のセダムは日本の気候に合わない可能性があるので、地植えにするなら日本の原産種を選んだ方が安心です。夏越しのコツ
セダムは高温多湿が苦手です。夏は通気性を確保し、水のやり過ぎに注意しましょう。真夏は直射日光を避けて半日陰で育て、長雨に当てないようにしてください。冬越しのコツ
耐寒性が強いタイプは屋外でも冬越しさせても大丈夫です。寒さに弱いタイプは霜に当てると株が腐ってしまうことがあるため、0℃を下回るようになったら室内に取り込みます。土
セダムは排水性の高い土を好みます。鉢植えにするなら市販のサボテン・多肉植物用の培養土がおすすめです。観葉植物用の土はサボテン・多肉植物用と比べて保水性が高いため、セダムにはあまり向いていません。自分で土を作る場合は、赤玉土(小粒)3:鹿沼土(小粒)3:腐葉土4、もしくは赤玉土(小粒)5:腐葉土3:パーライト2に調整します。排水性を高めたい場合は、鹿沼土(小粒)2:赤玉土(小粒)2:ピートモス2:川砂2:くん炭2がおすすめです。肥料
セダムは葉や茎に養分を蓄えているので、基本的に肥料は必要ありません。生育を早めたいときには、生育期の春と夏に緩効性の置き肥、もしくは希釈した液体肥料を与えてもOKです。ただし、生育が悪いからといって肥料を与え過ぎるとかえって肥料やけで枯れてしまうこともあります。生育の悪い株は過湿や根詰まりの可能性があるので、水やりの頻度を見直し、根がいっぱいになっているようなら植え替えをしてあげましょう。セダムの植え付け・植え替え
セダムは生育スピードが速く、根の回りも早い多肉植物です。根詰まりを起こさないためにも、1~2年に1回は植え替えの必要があります。鉢植えの場合、鉢内に根が回っていたら一回り大きな鉢に植え替えるか、大きく育てたくなければ根をカットして同じ大きさの鉢に植えてあげましょう。二回り以上大きい鉢に植えると過湿を招きます。寄せ植えされている鉢を購入した場合、元気に育っているようであれば問題ありませんが、種類ごとに個別の鉢に植え替えた方が管理が楽です。植え付け・植え替えの時期は生育期の春と秋。特に生育期に入り始める3~4月ごろがベストです。梅雨から真夏は株への負担が大きいので避けましょう。
手順
鉢植えの場合
- 引き抜いたら古い土を軽く崩して落とす
- 底にネットを敷き、その上に軽石を敷く
- 水はけの良い土を容器の2/3まで入れる
- 苗を入れて容器との隙間を埋めながら土を入れていく
- 根が落ち着くまで1週間くらいは水やりをせず日陰で管理する
- 根が落ち着いたら日当たりのよい場所に移す
ポイント:植え替えの数日前から水やりを控えて土を乾かしておくと、苗が鉢から引き抜きやすくなります。
地植えの場合
- 土を10cm程度の深さまで掘り起こす
- 苗の根をほぐしてから植える
ポイント:土は水はけの良い土を。根が落ち着くまで1週間程度は水やりを控えましょう。