本記事では主枝を適切な位置で切り取る「摘芯」のほかに、大きな果実に育てる「摘果」、トマトを元気に育てる「摘葉」についても紹介します。
トマトの支柱の立て方・わき芽かき・雨よけについてはこちら
基本のトマトの摘芯方法
トマトの生産者さんは、一つの株からたくさんの品質の良い果実を収穫しなければならないため、さまざまな仕立て方で摘芯を行っています。今回は家庭菜園のトマト栽培なので、簡単でしかも果実が甘くなる摘芯の方法を紹介します。摘芯するトマトの種類
ホームセンターや園芸店で販売されているほとんどのトマトは、3葉1花房性(非芯止まり性)といって本葉3枚の後に花房をつける種類なので、主枝のみ、または主枝とわき芽を数本伸ばして育てます。今回は主枝のみ伸ばして育てたトマトを摘芯する方法を紹介します。
▼家庭菜園でのトマトの仕立て方や支柱の立て方ならこちらをご覧ください。
ちなみに2葉1花房性、または段飛び性(芯止まり性)といって本葉0〜2枚で花房をつけるトマトは、本葉10枚程度着生した後に頂芽に花房を作ると、主枝の生長がストップしてしまいます。この種類は今回紹介する摘芯の方法とは異なります。
トマトの摘芯の方法
摘芯は茎を折り取る、または切り取る作業なので、切り口が早く乾きやすいように雨の日を避けて行いましょう。タイミング
摘芯のタイミングは最終果房の花が咲いたころ。茎が手で折り取れるくらいの細さのうちに摘芯します。花が咲き終わり、実が大きくなるころに摘芯をしたのでは、せっかく果実の充実に使いたい栄養分が無駄になってしまいます。トマトはぐんぐん生長するので、少なくても2〜3日に一度は様子を見に行った方がいいですね。
家庭菜園でのトマトの最終果房の目安とは?
ほとんどのトマトの生産者さんはビニールハウスなどの施設で栽培することが多いため、トマトの生育に適した温度に合わせて、長い期間栽培しています。しかし、トマトの苦手な夏の高温多湿の環境下で育てる家庭菜園では、初秋には草勢も衰えたり、病害虫に加害されたりして、これ以上元気に生育できない状態になることもしばしば。関東地方で例えるならば、秋冬栽培が始まる前の8月下旬までには栽培を終えるように、または作業しやすいよう手が届く位の高さの位置にある花房を最終花房として摘芯の目安にしてみましょう。
手順
最終果房である花の上に2〜3枚ほど葉を残して手で折り取るか、消毒したはさみで切り取ります。はさみの消毒はどうするの?
カートリッジに洗浄除菌液を入れて使用する園芸はさみや、手指・はさみを消毒する抗ウイルス剤も販売されています。
家庭菜園ではスプレーボトルにキッチン用の消毒液を入れて、はさみを使うごとに吹きかけて消毒してもOK!
読んで納得!トマトの摘芯の効果
摘芯を行ってトマトの生長点を止めてしまった後、「本当にこれでいいの?」と疑問に思ったり、不安になったりしていませんか?ここで摘芯の効果について理解して不安を吹き飛ばしましょう!トマトの摘芯の効果
今まで主枝を伸ばして育てていたトマトの株は、葉や茎、花、果実の生育に養分を使い、上へ上へと生長を続けていました。今回摘芯したことによって、残された花房が果実となって大きく熟していくことに生育を集中できるようになったというわけです。トマトの上の葉の役目
摘芯では最終果房の上に葉を2〜3枚残しました。あえて残したトマトの上の葉の役割について説明します。1. 日焼けによる裂果を防ぐため
トマトの果皮が裂ける裂果は、急激な温度変化や水分補給が原因で起こるほかに、強過ぎる日光で果皮が固くなり、その後の果実の肥大で生じます。上に残した葉は、強過ぎる日差しを避けて適度な日当たりを作るためです。
2. トマトに養分を届けるため
理科で習った経験があるかと思いますが、植物は気孔から水分を排出する「蒸散」という働きをします。植物体内の水が減少した圧によって、根から道管とよばれる組織を通って、水と一緒に養分を植物全身に届けて生長を促します。この作用をトマトの最終果房に行き渡らせるため、上の葉を残しています。
摘芯以外の大事なトマトのお手入れ「摘葉」と「摘果」
トマトは家庭菜園で多くの方に栽培されている作物ですが、じつは難易度が高く、甘くて大きなトマトを作るためにはさまざまな作業が必要です。トマトの摘葉の効果
トマトの株が旺盛に生育してくると葉が生い茂ってきます。このとき適度に葉を取り除く葉かきの作業「摘葉」を行います。1. 風通しを良くする
古い葉を残したままにしておくと、風通りが悪くなり病害虫の原因になります。また、古い葉や枯れた葉には光合成能力はほとんどなく、残しておいてもあまり意味はありません。収穫を終えた段より下の方の葉は処理しましょう。収穫前の下葉の役割は?
植物の葉は、ブドウ糖を生成するなど光合成を行うために必要な部位です。トマトが甘くなるために重要な役割を果たしているので、収穫前の果実に効果的な光合成の働きがある下の葉2〜3枚は残しましょう。
2. 作業性の向上
葉が生い茂っていると作業がしにくくなるので、適度な摘葉を行います。葉の取り過ぎに注意!
果房間に葉を少なくとも2枚は残し、込み入った部分のみ取り除くようにします。これ以上葉数を減らせない場合は、大きな葉の先の部分だけを切り取ってもかまいません。