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なぜ摘果が必要か
植物には葉や根、茎、実などさまざまな器官があり、それぞれが決まった役割を果たしています。葉の主な役割は、太陽光をエネルギーとして使い、光合成を行って生命活動に必要な栄養分を作り出すこと。そして、葉の裏にある気孔から水を排出(=蒸散)して、根から水の吸収を促すことです。葉がなければ、栄養分の生成と温度調整という重要な働きができなくなってしまいます。
一方、実の役割は、種子を守りながら成熟させることですが、葉と違い自ら栄養分を作り出すことはできません。そのため、実の数が多ければそれだけ植物の内部にある栄養分が分散して消費されることになります。
つまり、摘果とは、実が成熟する前に数を適切に整えることによって、根から吸収された栄養分などを実に十分行き渡らせ、トマトの質や量をコントロールするための大事な作業なのです。
トマトの摘果の方法
同じトマトといっても大玉からミニトマトまであり、摘果の考えや方法もそれぞれ違いがあります。トマトの実のサイズによる摘果の方法
大玉トマトの場合
大玉トマトは1玉が200グラム程度ありますので、その分だけ1果あたりの摘果の効果も大きく、摘果による着果数の管理が重要になります。通常1つの果房に5~6個程度の実がついていますが、これを1房あたり3~4個に減らすのを基本にします。
ただし、1~2段目の果房の場合は少し考え方が異なります。
1段目が収穫時期を迎える頃には、2~6段目が着果、肥大期を迎えて、トマトの樹にかかる着果負担がとても大きくなってきています。
下段の着果数が多いと、中段以降の着果不良がさらに助長されてしまいます。中段以降の着果を促進するために、1~2段目の着果は2~3個に制限しておきましょう。
このように下段の着果数を減らすことによって、樹勢の回復を促し、長期的には収量を増加させることができます。
中玉・ミニトマトの場合
中玉トマトは1玉が40~50グラム、ミニトマトは20グラム程度と、大玉トマトに比べて1果あたりの重量が小さく、トマトの樹にかかる負担も大玉ほど大きくありません。ただし、果房の先端近くの実は肥大しにくいので、摘果を行うようにしましょう。摘果する実の見分け方
まず、優先して摘果すべきなのは、尻腐れ果や窓あき果などの障害が起きている実や灰色かびなどが発病した実です。灰色かびなどは他の部位にも感染が広がる原因にもなりますので、見つけしだい取り除きます。また、果房の最初の実は奇形になりやすいので注意が必要です。
それらの次に優先すべきなのは、果房の先の方についた実です。これらは遅れて着果した分肥大しにくいので摘果します。可能であれば、着果前の花の段階で取り除くと良いでしょう。
ほかにも、1つだけ極端に大きな実がある場合は摘果します。果房全体の実の大きさをそろえるイメージを持つと良い結果につながると思います。
摘果のタイミング
定植してから30日程経過すると、大玉トマトだと第1果房がゴルフボール程度に育っています。このタイミングで摘果していきます。特に夏秋栽培のトマトの場合、中段以降の開花が梅雨から高温期にあたるため、花の質が低下して、落花や肥大不良が発生しやすいです。
摘果の時期が早いほど養分の消費が少なくなるので、実が小さいうちに摘果を済ませておきたいところです。
摘果作業で樹勢を管理する
トマトの樹勢は、収量を大きく左右します。ただし、樹勢が強いからといって収量が多くなるわけではありません。強過ぎるといわゆる「樹が暴れる」状態になって、形の悪い果実が多くなったり着果率が落ちたりします。逆に樹勢が弱くなると、花に十分な栄養が届かず花が落ちてしまい、実も大きくなりません。
このため、樹勢を適度な状態で維持することが必要ですが、その管理方法の一つとして摘果を役立てることができます。
樹勢が強い場合 → 多めに摘果、タイミングを少し遅らせて摘果
樹勢が弱い場合 → 少なめに摘果、少し早めに摘果
樹勢が極端に弱っていると判断した場合は、果房そのものを落とすことも1つの方法です。
適切な摘果で収量アップ
摘果作業は「もったいない病」との闘いでもあります。せっかく着果して実が大きくなってきているのに、わざと摘み取るのは損しているような気になります。
でも、長い目で見れば、トマトの収量を増やすことができる有効な管理方法ですので、「トマトをたくさん収穫したい」と思ったらしっかりと行いましょう。