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- AGRI PICK 編集部
AGRI PICKの運営・編集スタッフ。農業者や家庭菜園・ガーデニングを楽しむ方に向けて、栽培のコツや便利な農作業グッズなどのお役立ち情報を配信しています。これから農業を始めたい・学びたい方に向けた、栽培の基礎知識や、農業の求人・就農に関する情報も。…続きを読む
地植え(庭植え)の育て方はこちらから!
今回お話しを聞いたブルーベリー農家さん
有限会社イズム代表 松村岩男さん
東京・府中市で、ブルーベリーの養液栽培を行っている松村さん。元カメラマンの松村さんは、ベリー好きの奥様と共に「爺ヤンのブルーベリー畑(iZM Blueberry farm)」を2015年にオープン。同園では、2019年5月からブルーベリーの摘み取り体験を始めています。農園情報
農薬をほとんど使わない最新の栽培方法「養液栽培」で育てられた、松村さんのブルーベリー。安心して食べられるうえ、土を使っていないため摘み取りで服が汚れる心配もありません。農園は全面防草シート張りで、ベビーカーも入れます。育てている品種は、「ユーリカ」「トワイライト」「OPI」という、大粒で糖度16度以上の新品種を含む、約20種類。甘味や酸味、香りの強さなどバリエーション豊かなブルーベリーを楽しめます!
■基本情報
・施設名:爺ヤンのブルーベリー畑(iZM Blueberry farm)
・住所:東京都府中市本宿町1-1-13
・アクセス:JR南武線 西府駅より徒歩5~6分、または京王線分倍河原駅より徒歩10分程度
・ブルーベリー摘み取り料金(120分食べ放題):中学生以上 2,000円、小学生以下 1,000円 (要予約)
・ブルーベリー摘み取りをされた方の持ち帰り:100g 350円
・店頭摘み取り販売(量り売り):100g 500円(入園無料・予約不要)
・ブルーベリー摘み取り・店頭摘み取り販売期間:5月~7月末まで(月・木・土・日曜)
・ブルーベリー摘み取りの予約方法:ホームページ(https://izm-bf.tokyo/sales)より予約
・営業時間:8:00~12:00/13:00~17:00
・ペット:園内入場不可
ブルーベリーの魅力とは?
松村さんいわく、ブルーベリーはとにかく手がかからないのが魅力。かかりやすい病気や害虫もほとんどないので、農薬を使わなくても丈夫に育つ果樹です。かなり大胆に剪定しても、すぐに新梢(しんしょう)が出てくる生長の早さも特徴といえます。ブルーベリーの種類(系統)・品種について
ブルーベリーには、ラビットアイ系とハイブッシュ系がありますが、特に系統によって育て方が変わるということはありません。品種によって甘味や酸味など味わいが変わるので、味の好みで選ぶと良いでしょう。ただ、育てる環境に適した特性の品種を選ぶことは重要なポイントです。また、早生・晩生種など品種をいくつかそろえると長く収穫が楽しめます。松村さんの農園では、5~7月の期間に摘み取りができるよう、ハウスと露地とでそれぞれ約20種類のブルーベリーを育てています。
ラビットアイ系
完熟前にウサギの目のように赤くなる系統が「ラビットアイ系」です。温暖地での栽培に適しています。味や果実のサイズはハイブッシュ系に劣りますが、比較的土壌を選ばず、樹勢も強いので、初心者さんにおすすめです。収穫時期は7月中旬~9月上旬と、ハイブッシュ系よりも遅くなります。松村さんからひとこと
ラビットアイ系は、たくさん実が収穫ができるのが魅力。酸味があるので、ジャムなどの加工品におすすめです。
ハイブッシュ系
一度は育ててみたい人気の系統が「ハイブッシュ系」です。ハイブッシュ系の中でも、寒冷地向けの品種は「ノーザンハイブッシュ」、温暖地向けの品種は「サザンハイブッシュ」と呼び分けられます。収穫時期は5月下旬~8月上旬頃。味が良質で、大玉になる品種が多いです。ただし、栽培がやや難しいという欠点があります。松村さんからひとこと
実は少なめですが、甘くてコクがある果実がとてもおいしいです。収穫数にこだわらず、おいしいブルーベリーが食べたい!というのであれば、ハイブッシュ系がおすすめです。
ブルーベリーの品種についてはこちらの記事で!
ブルーベリー栽培カレンダー
1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 | |
植え替え | ● | ● | ● | ● | ● | ● | ||||||
肥料 | ● | ● | ● | ● | ● | ● | ||||||
剪定 | ● | ● | ● | ● | ||||||||
収穫(ラビットアイ系) | ● | ● | ● | |||||||||
収穫(サザンハイブッシュ系) | ● | ● | ● | |||||||||
収穫(ノーザンハイブッシュ系) | ● | ● | ● |
※参考:住友化学園芸「ブルーベリー【鉢植え】の育て方」
ブルーベリーの育て方|鉢植え・プランター
苗の購入後にすべきこと
一年目の苗木を購入した際、花芽がついていたらすべて取り除きましょう。まだ若い苗木は、木の生長に必要な体力を花や果実に取られてしまうためです。まずは、木そのものの生長を充実させることが大事です。松村さんからひとこと
一年目の苗木も花芽を落とさずに実をならせています。通常では花芽を落とさないと、木の生長に必要な体力を花や果実に取られてしまうのですが、農園では養液の濃度を上げることでカバーしています。
土づくりのコツ
ブルーベリーは水はけが命!
一般家庭であれば、あらかじめpHが酸性に調整されている市販のブルーベリー用培養土が手軽でおすすめです。野菜用の培養土などを使用する場合は、ピートモスを混ぜて土壌改良を行ってください。また、ブルーベリーを健康に育てるためには、なによりも水はけをよくすることが大事。水やりをしたらすぐに鉢底穴から水抜けするような、さらさらとした土が理想的です。ヤシの実チップなどを混ぜて、水はけをよくするのもおすすめです。松村さんの農園では
松村さんは、用土の代わりに「アクアフォーム」という特殊な資材を使用。スポンジ状になっており、無数の穴に必要な水分だけをとどめるため、「水はけがよく、保水性にも優れる」という一見矛盾した条件をかなえています。
松村さんからひとこと
ピートモスを使用するとブルーベリーの根付きはよくなりますが、生長すると根詰まりを起こしてしまうことがあります。農園では、ピートモスは植え付けの際に少量のみ使用しています。ブルーベリーの様子を見ながら、量を調節すると良いでしょう。
ブルーベリー用に配合されたバランスの良い培養土
ブルーベリーの土壌改良に
PH無調整ピートモス
・容量:15L
水はけのほかマルチングにも
ブルーベリーの土作りはこちらの記事で詳しく説明しています!
水やりのコツ
ブルーベリーを健康に育てるには、水やりが一番重要と言っても過言ではありません。ブルーベリーが枯れる原因でよくあるのは、水はけの悪さによる根腐れ。かといって、水切れさせるのも厳禁です!特に鉢植えは、水切れを起こしがちなので注意が必要。土の状態をよく観察し、表面が乾いていたら水やりしましょう。夏場はたっぷりと、冬場は控えめに!肥料のやり方とコツ
肥料の量や濃度は、一年を通してメリハリをつけるのが大事です。新しく成長が始まる3~4月、収穫時期である5~7月と収穫後には肥料の量や濃度を上げて施肥をし、休眠期の冬には控えるようにしましょう。松村さんの農園では
養液栽培用の機械で、季節によって肥料の濃度や回数を調整しています。収穫時期は特に濃度を上げ、一日に4回、10分ずつ施肥しています。
日当たり
ブルーベリーは日光を好みますが、半日陰でも育つのであまり神経質にならなくても大丈夫。ただ、花付きをよくしたり、実を大きくするためには、できるだけ日当たりの良い場所に鉢を置いてあげると良いでしょう。松村さんの農園では
露地栽培のブルーベリーは日当たりの管理は特にしていませんが、ハウスでは、遮光カーテンを利用しています。夏の強い日差しで、ハウス内の温度が50℃ほどに上がってしまうこともあるからです。
ブルーベリーの剪定
剪定の目的とは
ブルーベリーの実は、新しい枝にできたもののほうが味がおいしくなります。そのため剪定することにより、新梢(しんしょう)を出現させるのです。また、ベランダなど限られたスペースで管理する場合は、剪定を行って樹高を抑える必要も。ブルーベリーはかなり大胆に剪定しても、そこからどんどん新しい芽が出てくるので、恐れずにカットしましょう!剪定に適した時期
ブルーベリーの剪定は、収穫後の夏と休眠時の冬に行います。夏は、実がなっていた先端部分のみ取り除く軽い剪定です。冬になり、ブルーベリーの葉が紅葉し、さらに落葉したら※、ばっさりと強剪定します。※品種によっては、紅葉・落葉しないものもあります。
剪定のポイント
木を上から見て、枝の混み具合を確認します。内部にも光が差し込むように、内側に向いた枝を取り除き、すき間を作ってあげましょう。マッチ棒のような細い枝も切り落とすようにします。松村さんからひとこと
ある程度の樹高を決めてから剪定しましょう。ブルーベリーは比較的どこを切っても大丈夫です。剪定後に出てくる新梢(しんしょう)においしい実がなるので、大切に扱いましょう!
詳しい剪定方法と剪定ばさみのおすすめはこちらをチェック!
受粉作業は必要?
ブルーベリーは、人工受粉をしなくても蜂などの虫の介在により、自然に結実します。しかし、受粉作業を行ったものに比べると、大粒にはなりません。また、高層ビルなど虫が飛来しにくい場所では受粉できない場合も。人工授粉には綿棒やブラシなどを使う方法もありますが、一般家庭であれば、花が咲いている枝を揺らして花粉を落とすという方法もおすすめです。
松村さんの農園では
ブルーベリーの開花時期になると、黒丸花蜂を農園に放して受粉を行っています。蜂は寒さに弱いので管理が大変。寒い時期は巣箱に毛布をかけるなど、お世話は欠かせません。
摘果の必要性とは
一年目の若い苗木は、摘果を行いましょう。摘果することにより体力がたくわえられ、実が大粒になり、幹も太く成長します。植え替え
花は咲くが実がならない、実付きが悪くなったという場合は植え替えのタイミングです。植え替えの時期
植え替えは休眠期である冬に、剪定が終わってから行いましょう。植え替えするときの注意点
細い根を切ると弱ってしまうので注意してください。根鉢は崩さないように植え替えます。ブルーベリーの増やし方
ブルーベリーは、挿し木で増やすことができます。時期としては年2回チャンスがあり、休眠時期の12~3月に行う「休眠枝ざし」と、緑の葉っぱが付いている7月上旬の枝で行う「緑枝ざし」があります。
松村さんからひとこと
ブルーベリーの挿し木は意外と簡単です!剪定した枝を土に挿すだけでも簡単に根付きますよ。
挿し木のコツについてはこちらの記事で
ブルーベリーの実を甘くするには?
ブルーベリーは、実の成熟度合いや品種により甘さは変わってきます。育てているブルーベリーを少しでも甘くしたいというのであれば、肥料を多めに与えることで糖度が上がる場合も。ブルーベリーの害虫対策
ブルーベリーは、コガネムシの幼虫が天敵!土中に潜んだ幼虫が、ブルーベリーの根を食べてしまい木が枯れてしまうのです。コガネムシの成虫を見かけたら、産卵される前に取り除きましょう。対策としては、コガネムシを寄せつけないように、防虫ネットの設置が有効です。また、コガネムシのほかに、アザミウマによる吸汁被害が見られる場合があります。被害にあった葉は、枝ごとカットして取り除きましょう。アザミウマも防虫ネットによる対策がおすすめです。
松村さんの農園では
ブルーベリーの鉢のまわりに糞が落ちていたら、コガネムシにやられている証拠。日頃からよく観察するようにしています。
アザミウマの対策には赤い防虫ネットを利用しています。赤色を認識できないアザミウマには、ネットが壁のように見えるんですよ。
鉢ごとすっぽりカバーできる!ファスナー付きネット
赤色のネットでアザミウマ対策
防虫ネットについてこちらの記事でも詳しく紹介しています!
ブルーベリーの害鳥対策
ブルーベリーが熟してくると、待ってましたとばかりにやってくる野鳥たち。せっかくおいしく育てたブルーベリーを横取りされないように、しっかり対策をしましょう!害虫対策と同様、ベランダや木のまわりに防鳥ネットを設置しておくと被害を防げます。防鳥ネットを使った詳しい対策方法はこちら!
松村さん直伝!ブルーベリーレシピ
松村さんの農園でごちそうになった、ブルーベリーのサワードリンク。とってもおいしかったので、レシピを教えてもらいました!ブルーベリーの香りがさわやかな、夏にぴったりの味わいです。「ブルーベリー酢」の作り方
材料
・お酢・氷砂糖
・冷凍ブルーベリー