目次
菜園家・ブルーベリー研究家
福田 俊東京農工大学農学部農学科卒。「どうすればおいしい野菜がたくさん採れるか」「いかにラクで楽しい野菜づくりができるか」を追求し、「フクダ流」自然農的有機栽培を実践。16平米という限られたスペースの市民農園で、年間50品目以上の野菜を有機・無農薬で栽培しています。監修を務めた家庭菜園誌や著書も多数。 ■関連サイト HP:http://www.fukuberry.com/ Youtube:https://www.youtube.com/user/f104ryo Instagram:https://www.instagram.com/fukuberry104/?hl=ja Twitter:https://twitter.com/29da104 facebook:https://www.facebook.com/toshi.fukuda.73 ■著書:『市民農園1区画で年間50品目の野菜を育てる本』(学研プラス)、『フクダ流家庭菜園術』(誠文堂新光社)、『福田さんのラクラク大収穫!野菜づくり』(学研パブリッシング)…続きを読む
- AGRI PICK 編集部
AGRI PICKの運営・編集スタッフ。農業者や家庭菜園・ガーデニングを楽しむ方に向けて、栽培のコツや便利な農作業グッズなどのお役立ち情報を配信しています。これから農業を始めたい・学びたい方に向けた、栽培の基礎知識や、農業の求人・就農に関する情報も。…続きを読む
今回はそんなピートモスについて、ブルーベリー研究家である福田俊先生にお話しを聞き、長所や短所、正しい使い方などについて詳しく解説します。
ピートモスとは?
ピートモスとは、コケ(苔)類などが蓄積してできた泥炭(ピート)を乾燥させた土材です。最大の特徴として、「酸性である」ことが挙げられます。ブルーベリーを始めとする、酸性土壌でなければうまく育たない植物の栽培には欠かせない園芸資材です。原材料・産地
ピートモスの原材料はミズゴケ(水苔)、ヤナギ、ヌマガヤ、ヨシ、スゲなどです。日本では北欧やカナダ、北海道産のピートモスが流通しています。なかでも高品質とされているのは、カナダ産のピートモスです。使われている植物の種類によって多少性質が異なり、ミズゴケ(水苔)を主成分としたものは分解に時間がかかるため、効果が長持ちします。特徴と用途|腐葉土との違いは?
ピートモスと腐葉土の一番の違いは、pH値の度合いです。腐葉土はpH値が6〜7とほぼ中性であるのに対し、酸度未調整のピートモスはpH3~4の強酸性になります。また、腐葉土は黒ずんだ色合いですが、ピートモスは赤っぽく明るい褐色をしているのが特徴です。さらに価格面でも両者には違いがあります。ピートモスは、海外産の商品が多いため流通コストが上乗せされており、土材の中では価格が高めです。加えて、酸性土壌を嫌う野菜や草花は多いことから、園芸や農業では腐葉土の方がよく使われます。
腐葉土についてはこちらの記事で!
ピートモスの効果と長所
土を酸性にしたいときに便利
ピートモスの使用目的で一番多いのは、「土を酸性にしたいとき」でしょう。土壌の酸度で花色が変わるアジサイや、土が酸性でなければあっさり枯れることも多いブルーベリーの植え付けに使われます。一般野菜や草花では、強酸性は石灰分を加えて中和させなければなりませんが、ブルーベリーに関しては最適の培土になります。土に有機質を追加できる
コケ(苔)などの植物が蓄積し、腐食化したピートモスは、有機質や有機微生物を豊富に含みます。有機質を土に加え、土壌を改良するのに使用します。水をたくさん吸う
主にコケ(苔)を主成分とするピートモスは、ほかの土に比べ、水をたっぷり蓄えることができる土材です。そのため、土の保水性を高める土壌改良材としても使用されます。ただし、ピートモスは水分をしっかりと馴染ませてから使用することが重要なポイント。水を馴染ませていないと、逆に保水性がなくなり、水やりの際に土が浮いて流れ出てしまう原因になります。保肥性を高める
ピートモスは保肥性に優れます。土に配合することで肥料成分を蓄えやすくし、植物の根が養分を吸収しやすくなります。通気性を高める
高繊維質のピートモスを配合することで、土をふかふかにして通気性を高めることができます。土の通気性が良くなると植物の根が生長しやすくなり、根腐れも起こしにくくなります。ピートモスは、細かく砕かれたものより、大きく砕かれたものの方が通気性がより高いため、購入する際は粗さもチェックすると良いでしょう。
軽くて扱いやすい
ピートモスは容量のわりに軽いのも特徴。触ったとき手がジメジメする不快な感覚もほとんどなく、扱いやすい土材です。軽量のため、ハンギングバスケットの用土にも適しています。また、ピートモスはほぼ無菌のため、室内栽培でも清潔に使うことができます。ピートモスやほかの土材を使った土壌改良については、こちらの記事で!
ピートモスの短所
有機質に富んだふかふかのピートモスですが、以下のような短所もあります。水に浸すのが面倒
市販のピートモスは乾燥していることが多く、水をかけてもはじいてしまい、なかなか吸水してくれません。あらかじめバケツにピートモスを入れ、水と混ぜておく必要があるのですが、これが少し面倒といえます。吸水性は高いが、一度乾かすと大変
最初は乾燥しているものの、水となじませればたくさん水分を吸収してくれるピートモス。ですが植え付け後に乾燥させてしまうと、また水をはじくようになってしまいます。本当は保水性があるのに、乾いていると水分とのなじみが悪くなる難しい土材です。できるだけ乾燥させたくないのであれば、粒が細かいピートモスを選びましょう。価格が高い
鶏糞や牛糞など、ローコストで入手できるほかの土材に比べて、輸入品が多いピートモスは価格が高め。購入するときは、大容量の商品がお買い得です。ピートモスの価格はどれくらい?販売場所は??
小袋であれば、ダイソーをはじめとした100均の園芸コーナーでも購入できるピートモス。コメリやカインズホームなどのホームセンターでは、3Lなら200円、18Lなら500円くらいの値段で販売されています。海外産のピートモスは高めですが、圧縮されているものをほぐすと量が多く感じられますよ。
ピートモスの用途①|ブルーベリーなど園芸・家庭菜園に使う!
ブルーベリーが好む酸性土壌にする
酸性土壌を好むブルーベリーの栽培では、ピートモスと鹿沼土が5:5くらいの混合土を使います。酸度が狂うと枯れる原因になるので、十分気を付けましょう。ブルーベリーの育て方や土作りはこちらの記事で!
アジサイの花色を青くしたいときに
アジサイは、土が酸性かアルカリ性かによって花の色が変わります。赤くしたいときはアルカリ性、青くしたいときは酸性の土が必要です。酸度未調整のピートモスを配合することで酸性に傾いた土になり、アジサイの花色を青くすることができます。ツツジの土に配合して酸性土にする
ツツジも酸性土を好みます。鉢植えにするときは、赤玉土(小粒)、鹿沼土(小粒)、ピートモス(酸度未調整)、バーミキュライトを4:3:2:1の目安で配合すると良いでしょう。バラの根張りを良くする
通気性や保肥性のあるピートモスを使うことで、バラの根の生長を促進させ、根張りも良くなります。ただし、バラは弱酸性の土を好むため、ピートモスを使用するときは、酸度調整済みのものを選びましょう。山野草の土に配合する
日本の土はもともと酸性寄りであるため、昔から日本に自生している山野草も酸性の土を好みます。ピートモスを加えることで、山野草の好む配合土にすることができます。また、保水性のあるピートモスは、湿地帯に自生する山野草にも特に適した土材といえます。観葉植物を室内栽培するときに
ほぼ無菌で清潔なピートモスは、室内栽培に向いています。赤玉土3:バーミキュライト3:ピートモス2:パーライト2くらいの配合がおすすめです。種まき用の土として使う
ピートモスは種まき用の土としても使えます。手のひらサイズのポリポットやセルトレーに、8分目くらいまでピートモスを入れ、土が完全に乾かないように管理しましょう。酸度調整済みのものが適しています。ピートモスの用途②|水槽のpHを下げる!
ピートモスは園芸用途以外にも、熱帯魚の飼育にも利用されています。水槽の水にピートモスを投入することで、熱帯魚が好む弱酸性水にすることができるのです。使用するピートモスは、園芸店で購入したものでもOKですが、酸度未調整のものを使うようにしてください。調整済みのピートモスには石灰が含まれており、魚に悪影響を与えることがあるためです。できれば、アクアリウムショップで熱帯魚専用のピートモスを使う方が安全です。
水槽に使う際の注意点
ピートモスは煮沸消毒し、数日間水にさらしてから使用するにしましょう。入れる際は、そのままだと水中で繊維がバラバラになって水が濁ってしまいます。そうならないように、お茶用のパックやストッキングなど、目が細かく、水を透すものに入れてから投入するのがおすすめです。また、急激に水のpHを下げると魚が拒否反応を起こす場合があるため、ピートモスの利用は少量から始めましょう。pH測定値で計測して様子を見ながら、入れる量の調整をしてください。
ピートモスの使い方
まずは「酸度未調整」か「調整済」かを確認!
ピートモスには強酸性の「酸度未調整」のものと、石灰質を混ぜて酸度を中和した「酸度調整済」のものがあります。調整済みのものは土壌改良材として、一般的な植物に幅広く使用できます。未調整のものは、ブルーベリーやツツジなど酸性土を好む植物の土材として使用します。購入する際は、必ず酸度の調整・未調整を確認し、使用目的に合ったピートモスを選びましょう。十分に水で湿らせてから使用する
海外から輸入されたピートモスは、乾燥・圧縮されているのため、そのまま使用すると水を吸収せずにはじいてしまいます。水を入れた容器に、ピートモスと鹿沼土など、混ぜたい土材を入れ、よく混ぜ合わせて水を吸わせてから使いましょう。自分でpH調整する方法
酸度未調整のピートモスは、当然ながら酸性です。この酸を中和したいときは、消石灰や苦土石灰を使いましょう。植え付け数週間前のピートモス1Lに対して、消石灰か苦土石灰を3~4gほど混ぜます。ただし、pH調整は非常に繊細な作業なので、酸度計がない状態で行うのはリスクを伴います。pHを測るのにおすすめの酸度計
そのほかのおすすめ酸度計は、こちらの記事で紹介しています!
おすすめのピートモス5選紹介|コメリの人気製品も
ここからは、おすすめのピートモスを5種類紹介します。上質なカナダ産や、ピートモスを使用し、そのまま土に還る育苗ポットもピックアップしました!
1. ブルーベリー用に適した配合
2. コメリの酸度未調整ピートモス
コメリ ピートモス
・内容量:18L
3. ピートモスでできた育苗ポット
4. 数少ない酸度調整済みピートモス
5. 使い切りに便利な小容量
100均のピートモスってどうなの?
100均でも購入することができるピートモス。ホームセンターで扱っているものとは、何か違いがあるのでしょうか?実際にそれぞれのピートモスを購入し、比較してみました!画像の右側は100均のピートモスで、内容量は2L。裏面にラトビア産と記載があります。左はホームセンターで購入したピートモスで、価格は税込み294円でした。内容量は4Lで、カナダ産です。
色の比較
右が100均のピートモス、左がホームセンターのピートモスです。パッと見ではあまり違いは感じられませんが、100均のピートモスの方がやや赤味があります。臭いの比較
100均のピートモスは、腐葉土のような臭いを強く感じます。ホームセンターのピートモスは、鼻を近づけて嗅いでもほとんど臭いはしません。細かさの比較
細かさは同じ位で、差はないように感じます。触ってみても、どちらもふんわり、しっとりとした感触です。見た目の比較
100均のピートモス
100均のピートモスは、白っぽい細かな繊維状のものが目立ちます。ホームセンターのピートモス
ホームセンターのピートモスは、繊維のようなものはあまり見えず、均一な印象です。水の染み込み具合の比較
最後に、それぞれ50ccずつ水をかけて、水の染み込み具合を見てみました。右が100均、左がホームセンターのピートモスですが、一目瞭然!100均のピートモスは、水をはじいてしまい馴染んでいません。ホームセンターのピートモスは、水を吸い込みながらムクムクと膨れています。100均とホームセンターのピートモスを比較した感想
両者を比較して実感したのが、臭いと水の染み込み具合の差です。見た目はほとんど一緒なのに、ここまで違いが出るとは意外でした。水とすぐ馴染むホームセンターのピートモスのほうが使い勝手は良さそうです。また、ホームセンターのピートモスの外袋には「無調整」と記載されていますが、100均のものには無調整か調整済かの記載がないという点も気になりました。100均と比べるとホームセンターのほうが若干割高ですが、どちらを選ぶかと聞かれたら、ホームセンターのピートモスと答えます!