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- AGRI PICK 編集部
AGRI PICKの運営・編集スタッフ。農業者や家庭菜園・ガーデニングを楽しむ方に向けて、栽培のコツや便利な農作業グッズなどのお役立ち情報を配信しています。これから農業を始めたい・学びたい方に向けた、栽培の基礎知識や、農業の求人・就農に関する情報も。…続きを読む
レモンの育て方を専門農家に教えてもらいました!
今回レモンの栽培方法を教えてくれたのは、笠井 信吾(かさい しんご)さん。2003年~会社経営の傍ら、小豆島でレモンを1,500本ほど栽培。遊休地を活用すべく、地域のグループでもレモンを栽培しています。貴重な国産レモンは大人気で、一度食べた人はリピーターになってくれるそう!
レモンの栽培カレンダー|植え付け・肥料・剪定・収穫の時期
・植え付け、植え替え:3~4月・肥料:地植え/3月、6月、11月、鉢植え/3月、6月、10月
・剪定:3~4月
・収穫:10~翌4月
・害虫:ミカンハモグリガ/4~8月、カミキリムシ(テッポウムシ)/通年
・病気:潰瘍病/5月~6月下旬
育てやすい&珍しいレモンの種類|サイパン・ピンクレモネードなど
まずはレモンにはどのような種類があるのか、チェックしてみましょう。珍しいトゲなしや糖分の高いレモンは、ぜひ育ててみたいですね!サイパン
大きくて丸みのある実が付く品種。実は約400gまで大きくなることも!実の色は完熟状態でほんのりオレンジ色に色づきます。果汁をたくさん採るのを目的とするのであればこの品種がいいですよ。ピンクレモネード
果肉がピンクのかわいらしいレモンです。料理に添えれば簡単に華やかにしてくれます!種が少なくトゲの多い品種で、葉は班入りなので観賞用として室内で育ててもおしゃれですよ♪りのか(璃の香)
2015年に新しく登録された新品種。日向夏とリスボンレモンをかけ合わせてできた品種で、果汁が多く酸味が少ないのが特徴です。柑橘類に発病する「潰瘍病(かいようびょう)」に対して強く、初心者でも育てやすい話題の品種です。トゲなしレモン
レモンはトゲによって傷が付き、そこから病気に感染することがありますが、トゲなしレモンであればその心配はありません。若い木は少しトゲが出ますが、生長していくうちに小さくなっていきます。防風の手間が省けるので、初心者の人におすすめの品種です。リスボン
リスボンはトゲが小さく耐寒性も高いことから、とても人気の高い品種です。耐寒性にもっとも優れた品種で、関東以北でも栽培が可能!原産地はポルトガルで、樹勢が強く育て方によっては大木になります。ユーレカ(アレンユーレカ)
笠井さんの農園の畑で見たレモンはこの品種。ユーレカの枝分かれ品種がアレンユーレカで、どちらも果実はリスボンにとても似ています。種が少なく果汁の多いのが魅力。アレンユーレカはユーレカの枝分かれた品種で、アレンユーレカのほうがトゲが少なく育てやすいです。香りがよく高品質。農園では2年半ぐらい育てているそうです。ビアフランカ
シチリア原産。耐寒性は中で、トゲは少なく育てやすい品種です。また、隔年結果が起こりにくく毎年安定して実を付けるのも魅力。果実は丸くて大きく、ユーレカと見た目が似ています。収穫は少し遅く冬季です。ポンテローザ
一見レモンには見えないほどに大きい大型品種です。果実は通常のレモンの約4倍程度の大きさで、重さは1kgを超えるものが実ることもあります。じつは100年以上前から知られた長く親しまれている品種でもあります。スイートレモネード
スイートレモネードはその名の通り、糖度10度にもなる甘いレモンです!そのまま食べてもいいですが、レモンの風味は残っているので、レモネードなどのジュースにするのもおすすめ。耐寒性に欠けるので、寒冷地は鉢植えで育てましょう。トゲありの品種です。マイヤー
マイヤーはレモンとオレンジが自然交雑して誕生した品種。原産地は中国です。酸味がマイルドで香りが良く、お菓子作りなどにもよく使われます。リスボンなどの品種に比べて果皮がツルツルしており、冬場においしい実がなるのが特徴。レモン栽培に適した場所や植え付け時期、苗の選び方
レモンは鉢植えでも地植えでも育てることが可能な、初心者でも育てやすい果樹です。柑橘類は基本的に農薬がなくてもうまく育ちやすくおすすめです。ここでは、庭や畑で育てたいという方のために、レモンの地植えの方法について解説していきます!Point1. レモンを地植えするのに適した場所は?
レモンを地植えするなら風の当たらない暖地の日当たりのいい場所に植えること!耐寒性に若干弱いので、冬に-3℃を下回る地域では、育てることが難しいといわれています。最近は温暖化の影響で、育てることができる地域が広がりつつあるので、まずはお住まいの地域の気温を調べてみるのがベターです。温暖な地であっても3年生以下の木は防寒をしてあげましょう。
また、風の当たらない場所に植えるのは、レモンにはトゲがあり、風の強い場所に植えるとトゲで実が傷付いてしまうためです。
そして、雨にも弱いので梅雨や秋の雨が多い季節は要注意。紀伊半島より東側の地域は雨除け等で対策しましょう。
Point2. 植え付け・植え替えの時期
植え付け時期は3~4月の春の季節。地植えでは植え替えは必要ありませんが、鉢植えにした場合は、基本的には3~4年に1度は植え替えるようにしましょう。植え替えをすることで、通気を良くして根詰まりを防ぐことができます。Point3. いい苗の選び方
苗木の良し悪しは今後の成長を左右するので、苗木選びはとっても大事!基本的には下記の項目をチェックしてください。- 葉が多く付いている
- 葉の色が濃い
- 枝が多く、主幹が太い
- 1年生以上の苗であること
レモンの木の植え付け手順
1. まずは土作り
土壌の種類はあまり選びませんが、土層が深く有機物を多く含む土が良いとされています。牛ふん堆肥や石灰を入れてよく混ぜましょう。2. 苗木の植え付け
根が張らないうちはしっかりと支柱立てをしてあげましょう。また、風に弱いので、風が吹く日は風よけもしてあげてください。3. 植え付けの間隔もポイント!
無農薬レモンを育てるためには草刈りが重要!そのため、笠井さんの農園では、草刈り機を入れやすいよう間隔を5~6m開けているそうです。地植えしたレモンの育て方|水や肥料の与え方・冬越し対策など
レモン農家の笠井さんに聞いた、育て方のコツを紹介します!地植えにしたレモンの木を元気に育てて、果実をたくさん収穫してくださいね!水やりのコツ
土壌品質によって変わりますが、夏に乾燥が続くようなら水をあげる必要がでてきます。土の状態や天候をよくチェックするようにしましょう。肥料の与え方
牛ふん堆肥を使用します。牛ふん堆肥は三大栄養素(窒素、リン、カリウム)がバランスよく含まれているので、土壌改良に役立ってくれます。草刈り
無農薬でレモンを育てる場合、草刈りは大切です。笠井さんの農園では2週間~1カ月に1度は草刈り機で草刈りを行っているそう。花が咲いたら?受粉は必要?
レモンは1年生では実は付きません。大体2年目から年3回ぐらい実がなるようになりますが、笠井さんは若いうちは花を取ってしまうのだとか。その理由は、レモンは四季なりで、夏(7~8月)や秋(9~10月)にも開花するため、樹が疲れてしまうからです。葉20~30枚に1果を目安に摘花するのがおすすめです。
なお、レモンは自家受粉のため、受粉作業は必要ありません。
レモンを種から育てることはできる?
レモンは種から育てることも可能です!ただ、実を収穫するまでは3~4年の年月を要するので、「レモンの実を収穫する」ことが目標の方は、ある程度育った苗木を育てるのをおすすめします。レモンの木の冬越し対策
地植えのレモンを冬越しさせるには霜よけが必要です。敷きわらなどで霜が付かないようにしてあげましょう。タカショー 敷わら
園芸用の敷きわらです。天然のわらで腐食後は肥料にもなる優れもの!冬季の霜や凍結からレモンの木を守りましょう!!保温だけでなく、雑草の増殖防止にも効果を発揮しますよ。
内容量 | 12L |
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レモンの木の剪定方法|たくさん収穫するための剪定のコツ
剪定の時期
剪定は植え付け・植え替えの時期と同じ3~4月です。剪定方法
日当たりを考慮して間引き剪定(透かし剪定)を行いましょう。みかんの木と同じように、葉の間を空けて日光がよく当たるように剪定します。剪定するポイントは、下を向いている葉を切るということ!そもそも日に当たっていない枝や葉は切ってしまっていいということです。
実が付きやすくなる剪定のコツ
枝を間引く際のポイントが二つあります。まず一つ目は、レモンは実を付けた枝は翌年には実がなりにくい性質を持っています。ですので、枝を間引くのであれば前年に実がなった枝から間引くのがいいですよ♪また、夏に伸びた枝に付いた花芽を摘芽すると、春に伸びた枝に付く実(秋に結実)が大きくなりやすいです。
レモンの収穫時期や成熟方法
収穫時期はグリーンレモンが10月。黄色いレモンは11月以降です。酸味や香りを楽しむのであれば、旬の秋から冬(お正月明けくらい)までに収穫し、皮を使いたいなら4月ぐらいまでに収穫するのがおすすめ。また、レモンは樹上で成熟させると酸味が落ちるので、タイミングを見極めて収穫していきましょう。黄色いレモンであれば収穫してから3~4日追熟させることで、酸味が落ち着きます。
笠井さんは、絞った汁を冷蔵庫で保存し、お酢の代わりに使ったりもするんだとか。特に天ぷらにひとかけするのがおすすめとのこと!また、葉の香りもいいので、料理に添えて楽しむこともできます!!
レモンの木の増やし方|接ぎ木・種まき
レモンの木は、接ぎ木や種からも増やすことができます。手間ひまはかかりますが、興味のある方はぜひ挑戦してみてくださいね!
接ぎ木で増やす
レモンは一般的には接ぎ木で増やします。接ぎ木とは2つ以上の個体を人為的に作った切断面で接着して一つの個体とすること。ポピュラーなのは種から育てたカラタチに接ぎ木する方法。自宅ですでに育てている柑橘類と接ぎ木をする場合は、5月頃に行うようにしましょう。
種から増やす
種を発芽させてから移植する方法と、直接土にまく方法があります。20℃前後がレモンの発芽適温なので、暖かい季節にトライしてみましょう。レモンは種から育てると、果実を収穫できるまで数年~10年以上かかります。すぐに収穫したい人は、苗木から栽培するのがおすすめですよ。種を発芽させてから育てる方法
レモンの種は水で洗ってぬめりを取り、白い表皮とその下の茶色い皮をカッターではぎ取ります。次に、湿ったキッチンペーパーで種を包み、密閉できる食品用保存袋に入れ、乾かないように管理しましょう。種が発芽し、根がある程度伸びたら、土に1~2cmの深さで穴をあけて苗を植え付けます。その後は日当たりの良い場所に置き、できるだけ長く日を当てて育てましょう。苗が生長し、鉢底穴から根が出るようになったら、大きな鉢に植え替えます。
土に直接種まきする方法
種を水で洗い、外側のぬめりを取っておきます。鉢土に1~2㎝程度の深さの穴をあけ、レモンの種のとがったほうを下にして埋めます。発芽まで土が乾かないように、鉢にラップをかけておきましょう。ラップには、つまようじなどで通気の穴をあけてください。土が乾いたらラップを外して水やりしますが、水を張った容器に鉢を置いて、鉢底から吸水させるのもおすすめです。発芽後は日当たりの良い場所で管理し、土の表面が乾いたら水やりをします。苗の生長とともに鉢増ししていきましょう。
レモンを苗木から育てる方法は、こちらの記事をチェック!
レモン栽培に関するQ&A|病害虫や栽培トラブルなど
Q1. レモンの実がならない!?実が落ちる!
A. レモンの実がならなかったり、せっかくなっても実が落ちてしまったりしたときには、いくつか原因があります。どれも病気ではないため、そこまで気にする必要はありません。原因1. 木が若い
小さなレモンの木には、花は咲かせても実を大きくする力がありません。そのため、小さな実を付けても大きくなる前に落としてしまうことがあります。笠井さんも若い木は摘芽して、生長に力を使えるようにしているそうです。原因2. 隔年結果
柑橘類の果樹にみられる現象です。花がたくさん付いて豊作になる年と、実を付けても落としてしまい不作となる年があります。豊作となる年は力をめいいっぱい使い、疲れてしまうため、次年は力尽きて実を付けられなくなってしまうそうです。原因3. 葉が少ない
前年もしくはその年に葉が少ないと、実を付けるための力が蓄えられず、実を落としてしまうことがあります。これは主に剪定の失敗や、シカなどの害獣やアゲハの幼虫などが葉を食べることにより起こる現象です。原因4. 肥料が適切でない
レモンは有機肥料を好みます。土壌の栄養状態が悪いと、パワー不足で実を付けられないので、土壌改良を検討してみてください。Q2. レモンがかかりやすい病気とは?
A. 潰瘍病(かいようびょう)が主な病気です。柑橘類に多く発祥する病気で、細菌の寄生によって起こります。感染ルートは、ミカンハモグリガの食害のあとや風でこすれてできた傷口です。葉や果実に茶色い染みのような斑点ができ、ひどい場合は落葉します。
暴風ネットで風による傷が付かないようにするか、ミカンハモグリガの防除に努めることで防ぐことができます。
また黒点病やそうか病などにも感染します。
シンセイ 防風ネット
風下に設置し、風の流れを変えたり減らしたりすることができるネット。通風性に優れており、風だけでなく、砂・雪・光などからもレモンの木を守れます。 設置が容易で、使用しない時期は取り外すこともできます。
サイズ | 1×5m |
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目合 | 4mm |
Q3. レモンの天敵!害虫にはどんな種類がいるの?
A. アブラムシ、アゲハの幼虫、ダニ、カミキリムシ(テッポウムシ)が、レモンの天敵です。葉に穴を開けたり、木を腐らせたりします。また、柑橘類の新梢にのみ寄生するミカンハモグリガも要注意!無農薬で育てる場合は、草刈りを2週間~1カ月の間隔で行い、虫を見つけたらすぐさま排除するなど、こまめな手入れが重要です。