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世界の農家の耳事情!農作業中に聞く音楽、ラジオ、配信は?|おしゃれじゃない世界の農業見聞録【最終回】


農業・食コミュニケーター紀平真理子さんが、世界の農業関係者に聞いた話や、自身が見聞きしたことをゆるく、時には鋭くお伝えする連載「おしゃれじゃない世界の農業見聞録」。今回は、最終回になります。テーマは農家の耳事情として、農作業中に何を聞いているのか、紹介してもらいます。

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Avatar photo ライター
紀平 真理子

オランダ大学院にて、開発学(農村部におけるイノベーション・コミュニケーション専攻)修士卒業。農業・食コミュニケーターとして、農業関連事業サポートやイベントコーディネートなどを行うmaru communicate代表。 食の6次産業化プロデュ ーサーレベル3認定。日本政策金融公庫農業経営アドバイザー試験合格。 農業専門誌など、他メディアでも執筆中。…続きを読む

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農作業番組

出典:Shutterstock
前回、前々回はジャガイモとサステナビリティについてでした。


最終回は日本と世界の生産者が農作業中に何を聞いているのか?「農家の耳事情」です!国内外の21人の生産者に尋ねました。私が何を聞いているのか知りたい人を中心に質問したので、かなり偏った回答の可能性がありますのでご注意ください。

そもそも農作業中に何か聞く?

農作業音楽
写真提供:紀平真理子
そもそも、生産者は農作業中に音楽やラジオ番組など何らかの音声コンテンツを聞くのでしょうか。

オランダの農家は「鳥の声」に耳を傾ける

興味深いことに、日本の生産者は尋ねた16人全員がなんらかの音声コンテンツを聞いていると回答しましたが、オランダの生産者4人中3人は「何も聞かない」と言っていました。その理由をTuinderij de StroomのAngelienは「屋外では自然の音、沈黙、仲間との会話、トラクターの騒音を楽しむので何も聞きません」と言います。ほかにも「鳥やハチの音を聞く、仲間と話す」という理由がありました。

一人で作業?みんなで作業?

日本の生産者は作業中に音声コンテンツを聞いていますが、これは従業員から離れて一人で作業する時間があるのか、どのような人と働くかも影響を与えていると想像します。オランダ生産者からは、「ボランティアや障がい者と働いているので会話が大切」や「女性の経営者や従業員が多いとおしゃべりに夢中になって音楽を聞く暇がないのでは」という意見もありました。
長野県ののらくら農場 の塚原芽衣さんは状況に合わせているそうです。「基本的にいつも複数人で作業するのでおしゃべりをしますが、1人作業のときはクラシック音楽やラジオを聞きます」

どんなメディアで聞く?|音声プラットフォーム、ラジオ、音楽配信サービスなど

石原農園
写真提供:紀平真理子(石原農園さんのトマト)
生産者が農作業中に音声コンテンツを聞くときには、どのようなメディアを活用しているのでしょうか。

音声プラットフォーム

圧倒的支持を得ていたのが音声プラットフォームのPodcastでした。そのほかVoicyやYouTubeで音声のみを聞いているという声もありました。

音楽配信サービス

音楽配信サービスで音楽を聞いている人も多数いました。トラクターの運転時には事前にダウンロードした音楽をBluetoothイヤホンでオフラインで聞いているという話も。

ラジオ

地域のラジオ局の人気も根強いです。こうのとり風土セントラルファームの綿田謙さんは、地域のラジオ局「KissFM神戸」を聞いており、ほかにも地元のラジオ局の番組を流しているという人もいました。また、インターネットラジオのradikoで全国のラジオ番組を聞くという声も

オーディオブック

audibleやAudiobookなどのオーディオブックを活用して平野 啓一郎『本心』や『源氏物語(全五十四帖)与謝野晶子訳』を読んでいる人もいました。作業しながらだと難しい内容でも眠くならずにいいのかもしれません。

音声SNS

音声SNSのclubhouseでイチゴ農家同士がつながる「いちご農家の作業場」に参加している人も。同じ作目でリアルタイムに情報交換ができるのは有益ですね。

何を聞く?|農業、歴史、ビジネス、音楽など

丹下の茄子
写真提供:紀平真理子(丹下さんの畑)
具体的に、農作業中にどのような番組や音楽を聞いているのでしょうか。おすすめやリアルタイムで聴いている番組や音楽を教えてもらいました。1日に何番組も組み合わせて聞いていることも多く、おすすめ番組数が膨大でしたので、その一部を紹介します。

農業系チャンネル

やはり農家系チャンネルの「農ある鷹」「ノウカノタネ」「小農ラジオ」などの名前がよく挙がりました。「青いTシャツ24時」「農業デザイン!アグデザ」も。農業系といっていいかわかりませんが、京都府はらだ農園の原田亮佑さんは、雑草の調理法や活用術を伝える「道草を食む」も聞くそうです。

歴史系チャンネル

農業系チャンネルの次に人気が高かったのが歴史系チャンネルです。「世界一周!チラ見の世界史」「主に日本の歴史のことを話すラジオ」なども名前も。実は、こっそり「世界一周!チラ見の世界史」に出演したことがあります。
愛知県の石原農園 石原雅大さんは「COTEN RADIO」「a scope」「カエサルの休日」などの歴史とカルチャー融合系のチャンネルをよく聞いているそうです。個人的にも「カエサルの休日」はぜひ聞いてもらいたいです。

ビジネス・勉強系チャンネル

そごう農園
写真提供:紀平真理子(十川さん)
ビジネス、雑学系や話し方講座や英語などの役に立つ番組を聞く人もいます。茨城県のそごう農園 十川英和さんは、「荒木博行のbook cafe」「毎朝の思考 佐々木俊尚」「#鴨頭嘉人の朝礼」「大久保圭太の『財務アタマを鍛えるラジオ~マネトレ~』」なども聞いているそうです。
十川さんの記事はこちら
茨城県の江戸崎トマト 飯沼学さんは、「すごい進化ラジオ」や「青春あるでひど ぶっちょカシワギとアニワギはかせ」などの科学、生物学のチャンネルをよく聞いています。
飯沼さんの記事はこちら

音楽・趣味系チャンネル

愛知
写真提供:紀平真理子
十川さんと飯沼さんの師匠である茨城県の久松農園 久松達央さんが必ずチェックするのは、「山下達郎サンデーソングブック」「藤島大の楕円球に見る夢」「宇多丸のアフター6ジャンクション」「西寺郷太最高ファンクラブ」の音楽やスポーツ系番組です。

久松達央さんのジツロク農業論
久松達央さんのジツロク農業論実践編

同じく山下達郎さんの番組をチェックしているのは、ひとりマルシェの丹下の茄子 丹下孝則さん。テック・ガジェット系の「backspace.fm」や「伊集院光深夜の馬鹿力」も聞くそうです。

やっぱり音楽

もちろん音楽を聞く人も多くいました。1日は長いので、音楽を間に挟むイメージでしょうか。独自の世界を楽しむ人が多いようです。作業と音楽のテンポが合うと気持ち良さそうですね。

・薬師寺 寛邦/般若心経(Remixed)-Japanese Zen Music vol.1-(ウエンダアラヤファームの新谷太一さん)
・音楽は津軽三味線ばかりで、一番よく聞くのは「輝&輝」というユニット(十川さん)
・メタルを中心とした歴史や他ジャンルとメタルのつながりの勉強のためにメタル系、邦楽はラジオで知った邦楽ミュージシャンのアルバムの消費(石原さん)
1人作業の時はグワっと盛り上がるテンポのいいチャイコフスキーの『1812年』、ラヴェルの『ダフニスとクロエ』をヘビロテ(塚原さん)

ちなみにオランダで唯一「農作業中に音声コンテンツを聞く」と言っていた畑作農家は、90%が英語の人気トップ40、たまにオランダ、フランス、ドイツ語の曲を聞くそうです。

ガーナの農家は、場所によって聞けないこともあるとしながらも伝統音楽のDagaraを聴きながら作業をするそうです。かっこいいので、ぜひ!
ガーナの農業については、こちらの記事をご覧ください。

作業内容や状況に応じて音楽を変える?

音吹畑
写真提供:紀平真理子(大原。この日はインディーロックが合いそう)
畑での手作業から機械での仕事、調整作業、事務仕事、場合によっては運送などさまざまな仕事が考えられる農業。さらに、一人仕事とチーム仕事もあります。シーンに合わせて聞き分けをしているのでしょうか。

力仕事と事務仕事で音楽を変える

京都、音吹畑の高田潤一朗さんは、「草刈り中などテンション上げてゴリゴリ力仕事したいときはアッパー系の音楽を聞き、事務仕事や頭使う仕事のときはインストを中心にゲームBGMや民族音楽を聞く」と言います。また、曇天時はUK系で晴天時はパンクが多いそうです。とても共感します。

音吹畑さんほか京都の大原ふれあい朝市の関係者の方々に回答いただきました。

大原ふれあい朝市関連の記事はこちら

一人と周りに人がいるときでチャンネルを変える

オランダの農家は、地域のラジオ番組を聞くことが多いそうですが、お父さんやトレイニーなどほかの人がいるときは全国ラジオを聞くそうです。

ありがとうございました!

農家音楽
写真提供:紀平真理子
「おしゃれじゃない世界の農業見聞録」、「おしゃれじゃないサステナブル日記」ともにご愛読いただきましてありがとうございました!「世界の農家の耳事情」ができたので思い残すことは何もありません。私の現在のおすすめ番組はコクヨ野外学習センターの「新・雑貨論」と「働くことの人類学」です。

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おしゃれじゃない世界の農業見聞録

おしゃれじゃないサステナブル日記

紀平真理子(きひらまりこ)プロフィール
1985年生まれ。大学ではスペイン・ラテンアメリカ哲学を専攻し、卒業後はコンタクトレンズメーカーにて国内、海外営業に携わる。2011年にオランダ アムステルダムに移住したことをきっかけに、農業界に足を踏み入れる。2013年より雑誌『農業経営者』、ジャガイモ専門誌『ポテカル』にて執筆を開始。『AGRI FACT』編集。取材活動と並行してオランダの大学院にて農村開発(農村部におけるコミュニケーション・イノベーション)を専攻し、修士号取得。2016年に帰国したのち、静岡県浜松市を拠点にmaru communicateを立ち上げ、農業・食コミュニケーターとして、農業関連事業サポートなどを行う。食の6次産業化プロデュ ーサーレベル3認定。日本政策金融公庫 農業経営アドバイザー試験合格。著書『FOOD&BABY世界の赤ちゃんとたべもの』
趣味は大相撲観戦と音楽。行ってみたい国はアルゼンチン、ブータン、ルワンダ、南アフリカ。
ウェブサイト:maru communicate

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