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八百屋さんは農家の救世主?|おしゃれじゃないサステナブル日記No.14


【連載】農業・食コミュニケーターとして活動する 紀平真理子さんの「農業と環境」をテーマにしたコラム「おしゃれじゃないサステナブル日記」。第14回は「八百屋さんは農家の救世主?」。 京都・大原地区の朝市を訪ねた筆者が、京都の八百屋さん事情や以前暮らしていたオランダの青果物販売について考察します!

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紀平 真理子

オランダ大学院にて、開発学(農村部におけるイノベーション・コミュニケーション専攻)修士卒業。農業・食コミュニケーターとして、農業関連事業サポートやイベントコーディネートなどを行うmaru communicate代表。 食の6次産業化プロデュ ーサーレベル3認定。日本政策金融公庫農業経営アドバイザー試験合格。 農業専門誌など、他メディアでも執筆中。…続きを読む

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京都の八百屋

写真提供:maru communicate 紀平真理子(畑で野菜を食べている時の幸せそうな顔!)
前回は、世界の朝市と、京都の大原ふれあい朝市を取り上げました。

大原の生産者や京都の八百屋へアテンドしてくださったのは、八百屋Gg’sの角谷香織さんでした。今回は「八百屋と農家」の関係について、もっといえば、農家にとって八百屋とはどのような存在なのか?について、考えてみます。ここでは、Gg’sさんにならって「八百屋」と呼びます。

京都の八百屋

京都の八百屋
写真提供:maru communicate 紀平真理子(京都大原古民家わっぱ堂さんのお弁当)
そもそも八百屋は、野菜類を売る商家や人のことで、元々は野菜を生産した農家自らが売り歩いていたそうです。京都の場合、八百屋・青果店の軒数は363件で、人口10万人あたりは13.91件と全国でも数としては決して多い方ではありません。(平成26年経済センサス基礎調査より)しかし、近年開店した若い年代の八百屋も多く、また店舗を構える形態ではない新しい(古いともいえる)スタイルの八百屋も多いようです。

今回訪問した八百屋さんも、おしゃれな店構えでしたが、普段使いのお店として地元のお客さんが普段の装いのまま、新鮮な野菜や食材を求めてやってきます。おしゃれ×おしゃれな雰囲気だと入店に二の足を踏む私でもとても居心地が良く、近所にあったら通いたいお店でした。

振り売りの歴史

京都の八百屋
写真提供:maru communicate 紀平真理子(大原ふれあい朝市での仕入れの様子)
「近所の八百屋で野菜を買う」という文化は、京都には農家による「振り売り」が行われていた歴史も関係していそうです。京都には大きな卸売市場もありますが、市街地に近い農家は、昔から大八車やリヤカーに野菜を積んで、個人宅への行商「振り売り」を行ってきました。

京都大原
写真提供:maru communicate 紀平真理子(山本有機農園さん)
八百屋Gg’sの角谷さんも、現代なので車ですが、京都の新鮮な野菜を料理人や個人顧客に配送する「振り売りスタイル」です。仕入れ先は、前回の「世界の音がある朝市・マーケット」で紹介した大原ふれあい朝市や、京都の生産者の圃場へ直接出向き、集荷しています。

京都大原
写真提供:maru communicate 紀平真理子(パープルファーム藤岡さん)
生産者からあらかじめ収穫予定を聞き、まとめた情報を顧客(飲食店、個人客)へ提供し、注文を取りまとめたうえで、車でぐるぐる回りながら集荷していきます。そして、また車でぐるぐる回りながら配達しています。こうすることで、新鮮な野菜を必要な時に必要な人に届けられるため、ロスもありません。

オランダの八百屋の形態は?

オランダの八百屋
写真提供:maru communicate 紀平真理子(3のスタイルの八百屋)
八百屋の話を書いていたら、「そういえば、オランダに八百屋ってあったかな?」とふと思い、記憶の引き出しを一つずつ開けてみました。日本の「八百屋」のイメージとは異なりますが、近い形態は以下のようでした。個人の記憶なので悪しからず。

スタイル1:毎日異なるマーケット/朝市に出店

スタイル1の八百屋は、毎日、オランダ内の朝市・マーケット(毎週決まった曜日に開催)を巡回しています。地域の野菜に限定せず、EU域内外の商品も見られました。中には、オーガニック縛りやローカル縛りの店もありました。

スタイル2:デリカテッセン中心で、野菜や果物も置いてある店舗

オランダの八百屋
写真提供:maru communicate 紀平真理子
スタイル2は、卸売市場のようなところから野菜を仕入れているケースが多いと思います。メインは惣菜で、野菜や果物が置いてあるお店もありました。以前、北海道北見市の玉ねぎのダンボール箱が置いてあるのを見て「おお!」と思ったことがあります。

スタイル3:PR要素が強い店舗

オランダの八百屋
写真提供:maru communicate 紀平真理子
スタイル3の飲食店なども入っている観光メインのマーケットの中には、新品種などを中心に販売するPR要素の強い店舗もありました。Koppert Cress社のスプラウトや、新品種のトマトなどの販売やワークショップを行なっていました。

スタイル4:店舗を持たず飲食店や施設へ配送

スタイル4は、振り売りに近い形態です。ただ、BtoBがほとんどなので、八百屋というより卸売だと思います。また、どちらかというと地元農産物にこだわるというよりは、奇想天外な作物や品種を売りにしているビジネスが多い気がします。日本の野菜(シソ、ユズ、ミズナ、シュンギク、海藻類など)も、「料理人のイノベーティブなアイディアを引き起こす!」と紹介されているのを見かけたことがあります。

日本はオランダより地産地消の意識が高い?

オランダの八百屋
写真提供:maru communicate 紀平真理子(ローカル&プラントベースドッグ)
地元の生産者が出荷している可能性があるのは、スタイル1もしくは4の八百屋です。

オランダでは、「ローカルなものを食べよう」という文脈もあります。しかし、日本で見聞きするヨーロッパの現状より、(少なくともオランダの場合は)ローカルを気にしているのは、一部の意識が高い人たちであって、多くの人たちはあまり関心を持っていません。むしろ日本の方が、ずっと地産地消の意識が強いように思います。

そうなると、直販を考える場合の販売形態についても限定的です。少ないながらも、オランダで小規模農家を訪問したことがありますが、基本的には野菜ボックスの販売と、ローカルスーパーへの直販がメインで、直接顧客に取りに来てもらう、または小売店に自ら納品へ行っていました。これは、日本のようには宅配業者が当てにならないという背景もあります。オランダ在住中には、荷物が時間通りに届かない!紛失を何度も経験!勝手に近隣の家に荷物を預ける!ことも多々ありました。私がオランダの農家なら、絶対に宅配業者は使いません。

京都の八百屋と農家は「おいしさを共有する関係」

京都大原
写真提供:maru communicate 紀平真理子(音吹畑さん)
京都の八百屋Gg’sさんのように「集荷に来てくれる八百屋」の存在は、営農するうえでとてもとても大きな意味を持つのだと思います。そして、角谷さんを見ていると、飲食店・消費者ー八百屋ー農家の関係が、「野菜が好きな人たちが、おいしさを共有している」ようですてきでした。一方で、八百屋側にも取り扱いができるキャパはあるし、集荷しやすいルートや時間もあるので、営農する場所や、お店との相性もあったりするのかな。

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紀平真理子(きひらまりこ)プロフィール
1985年生まれ。大学ではスペイン・ラテンアメリカ哲学を専攻し、卒業後はコンタクトレンズメーカーにて国内、海外営業に携わる。2011年にオランダ アムステルダムに移住したことをきっかけに、農業界に足を踏み入れる。2013年より雑誌『農業経営者』、ジャガイモ専門誌『ポテカル』にて執筆を開始。『AGRI FACT』編集。取材活動と並行してオランダの大学院にて農村開発(農村部におけるコミュニケーション・イノベーション)を専攻し、修士号取得。2016年に帰国したのち、静岡県浜松市を拠点にmaru communicateを立ち上げ、農業・食コミュニケーターとして、農業関連事業サポートなどを行う。食の6次産業化プロデュ ーサーレベル3認定。日本政策金融公庫 農業経営アドバイザー試験合格。著書『FOOD&BABY世界の赤ちゃんとたべもの』
趣味は大相撲観戦と音楽。行ってみたい国はアルゼンチン、ブータン、ルワンダ、南アフリカ。
ウェブサイト:maru communicate

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