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ジャガイモはサステナブルな未来の食べものなのか?前編【エチオピアのジャガイモレシピ付】|おしゃれじゃない世界の農業見聞録【6通目】


農業・食コミュニケーター紀平真理子さんが、世界の農業関係者に聞いた話や、自身が見聞きしたりしたことをゆるく、時には鋭くお伝えする連載「おしゃれじゃない世界の農業見聞録」。今回のテーマはジャガイモ。2回に分けて、ジャガイモのサステナビリティについて考えます。エチオピアのジャガイモレシピも。

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紀平 真理子

オランダ大学院にて、開発学(農村部におけるイノベーション・コミュニケーション専攻)修士卒業。農業・食コミュニケーターとして、農業関連事業サポートやイベントコーディネートなどを行うmaru communicate代表。 食の6次産業化プロデュ ーサーレベル3認定。日本政策金融公庫農業経営アドバイザー試験合格。 農業専門誌など、他メディアでも執筆中。…続きを読む

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ジャガイモ主食

写真提供:紀平真理子(勧められて作ってたジャガイモパスタ風)
前回はマイノリティと食についての備忘録でした。


今回はジャガイモです!「ジャガイモは環境負荷が少なく、発展途上国のお腹を満たす未来の食べものだ」という話を何年か前から耳にしています。ジャガイモ好きの私としては、調べてしまってこの話が間違いだった場合二度と立ち上がることができないと思い目を背けてきました。

そんな弱い自分とおさらばするために、ジャガイモと向き合ってみようと思います。若干ジャガイモびいきなところはご勘弁ください。

ジャガイモが環境負荷が少ないといわれている理由

オランダジャガイモ栽培
写真提供:紀平真理子
2016年にオランダのアムステルダムでNederlandse Aardappel Organisatie (NAO/オランダばれいしょ協会)が主催する「HET AARDAPPELCONGRESS, De aardappel een verceten groente?(ジャガイモ会議、ジャガイモは忘れられた野菜ですか?)」というイベントに参加したところ、「ジャガイモはサステナブルの星」だと語られていました。具体的にサステナブルな理由は以下だとの説明がありました。

カーボンフットプリントが少ない

カーボンフットプリント(商品やサービスの原材料調達から廃棄・リサイクルに至るまでのライフサイクル全体を通して排出される温室効果ガスの排出量を CO2に換算)で見ると、ジャガイモは、牛乳、肉、魚、パン、豆、米などのほかの食品と比較して低い数値です。

作物100gごとの乾物量は、ジャガイモと白米や小麦は同等ですが、単位面積で見ると穀物類よりジャガイモの方が50%以上も乾物量が多いことが影響しています。つまり土地利用が効率的(投入資材が少なく、収量が高い)であるほど、環境負荷が少ないとされています。

このカーボンフットプリントの計算は、前提条件としてオランダでの1haあたりの収量を米は6.5t、エンドウ豆は4t、デュラム小麦は4.8t、ジャガイモは45tで計算している点には注意が必要です。平均収量は各国で異なるので、世界どこでもほかの作物よりジャガイモ=環境負荷が低いとは断言できなさそうです。

調理に必要な水分量が少ない

調理においても、ジャガイモはパスタや米よりも水分の吸収量が少なく、比較的少ない水分量で済むため環境負荷が低いといわれています。しかし、調理に要するエネルギーや調理時の残さ量などについても考える必要があるのではないでしょうか。

ジャガイモはヴィーガン向け

ジャガイモは植物ベースのヴィーガンメニューに適合し、気候変動への影響が少ないといわれています。そういえば最近「ヴィーガン用でグルテンフリーのポテトチップス」も販売されています。ほとんどのポテトチップスに当てはまりますが。

ジャガイモ栽培のポテンシャルがあるエチオピア

Dalawit Kahsay
写真提供:Dalawit Kahsay
エチオピアのジャガイモ好きの友人Dalawit Kahsay(ダラウィット・カーゼイ)に「ジャガイモは持続可能だと思う?」と聞いてみました。彼女は、エチオピアにあるノルウェーのNGO団体で女性や若者への支援やアドバイスを担当しており、貧困と栄養に関しても知識を持ち、数々の実務も経験しています。

ジャガイモは、1858年にドイツ移民によってエチオピアに導入されたといわれています。その後、高地ではほかの穀物栽培が失敗したときの保険として栽培されるようになりました。エチオピアでは、耕作可能な土地の70%程度がジャガイモ栽培に適しているとされています。生産量は少しずつ増加しており、反収は14.5t/haです。(FAOSTAT/2019年)

ジャガイモが持続可能だと考える理由は?

エチオピアマーケット
出典:Flickr (Photo by:David Stanley)
Dalawitが「ジャガイモは持続可能な作物」だと考える理由は、「ジャガイモは安価で栄養価の高い作物」だからです。エチオピアの主食は、テフ(イネ科)を発酵させてクレープ状に焼いた酸味があるインジェラで、ジャガイモは野菜とみなされています。

ジャガイモには、炭水化物、タンパク質、食物繊維、カリウム、ビタミンC、B1、B6などが含まれています。エチオピアでは、基本的なカロリーや栄養素を満たすための十分な食料が手に入らない人たちが、ジャガイモを利用しているそうです。ジャガイモは、生育サイクルが短く植え付けや収穫の時期を柔軟に変更できる点も有益だと言います。

インジェラだけでない!エチオピアのジャガイモ料理

インジェラ
出典:Shutterstock(インジェラ)
エチオピアの伝統的かつ一般的なジャガイモ料理のレシピを紹介してもらいました。

エチオピア風ポテトシチュー

みじん切りにしたタマネギを鍋iでいためます。そこにチリパウダー、カルダモン、ニンニクとショウガのすりおろし、生のトマトの順に入れます。さらに、皮をむいて大きめに切ったジャガイモを順番に加えて、水を入れて煮込みます。最後に塩で味を調えます。

エチオピア風ポテトサラダ

レタス、キュウリ、青唐辛子、トマト、ニンニク、レモン、紫タマネギ、ニンジンを切り、大きめに切ってゆでたジャガイモと和えます。味付けは、塩こしょう、油、レモン汁、すりおろしニンニクで。

エチオピア風ポテトエッグサンドイッチ

ジャガイモを薄切りにしてポテトチップスのように揚げておきます。薄焼き卵も作っておきます。

タマネギのみじん切りをいため、そこにトマトのみじん切り、白コショウ、チリペッパー、ローズマリーパウダー、塩、お湯を入れて煮込んでソースを作ります。完成したらその中に揚げたイモも加えて、ソースに絡めます。
半分に切ったパンに、薄焼き卵とジャガイモが入ったソースをたっぷり挟みます。

ジャガイモは環境負荷が低そう。さらに検証が必要!

ジャガイモサステナブル
写真提供:紀平真理子
ジャガイモはうわさ通り何となく環境負荷が低そうです。後編ではもう少し深掘りして、ジャガイモの栽培・貯蔵(加工)・輸送・消費に切り分け、未来の食べものか否かを考えてみます。

後編はこちら

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おしゃれじゃない世界の農業見聞録

おしゃれじゃないサステナブル日記

紀平真理子(きひらまりこ)プロフィール
1985年生まれ。大学ではスペイン・ラテンアメリカ哲学を専攻し、卒業後はコンタクトレンズメーカーにて国内、海外営業に携わる。2011年にオランダ アムステルダムに移住したことをきっかけに、農業界に足を踏み入れる。2013年より雑誌『農業経営者』、ジャガイモ専門誌『ポテカル』にて執筆を開始。『AGRI FACT』編集。取材活動と並行してオランダの大学院にて農村開発(農村部におけるコミュニケーション・イノベーション)を専攻し、修士号取得。2016年に帰国したのち、静岡県浜松市を拠点にmaru communicateを立ち上げ、農業・食コミュニケーターとして、農業関連事業サポートなどを行う。食の6次産業化プロデュ ーサーレベル3認定。日本政策金融公庫 農業経営アドバイザー試験合格。著書『FOOD&BABY世界の赤ちゃんとたべもの』
趣味は大相撲観戦と音楽。行ってみたい国はアルゼンチン、ブータン、ルワンダ、南アフリカ。
ウェブサイト:maru communicate

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