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農家・研究者・栽培コンサルタントを兼務するPhilipに聞く!ガーナの農業と食事情|おしゃれじゃない世界の農業見聞録【4通目】

農業・食コミューター紀平真理子さんがお届けする「おしゃれじゃない世界の農業見聞録」。今回、アフリカはガーナからお届けします。農家・研究者・栽培コンサルタントとマルチに活躍しているPhilipにガーナの農業についてお聞きしました。


Zuobog Philip Neri

写真提供:Zuobog Philip Neri
前回の「オランダの弁護士I-Chu Chaoに聞く!食や農業分野でも進む顔認識(AI)システムの注意点は?(3通目)」では、顔認識システムを農業や食分野で活用するときに起こりうる、法律上の注意点を教えてもらいました。

今回は、研究者でもあり、実業家でもあり、また農業者でもあるZuobog Philip Neri(ズオボグ・フィリップ・ネリ)にガーナの農業や食事情について話を聞きました。

聞いた人

Zuobog Philip Neri
写真提供:Zuobog Philip Neri

Zuobog Philip Neri プロフィール
Tamale工科大学で農業技術の学士号、Kwame Nkrumah理工大学で農業経済学の修士号、Van Hall Larenstein応用科学大学(オランダ)で開発学(食糧安全保障、農村開発)の修士号を取得
政府機関や非政府機関で15年以上の実務経験があり、発展途上国の農村開発、農業、食糧安全保障のプロジェクトを主導した経験を持ち、ヨーロッパ、南アジア、アフリカでの調査・研究経験も
現在は、Tamale Technical Universityで農業経済学部の博士課程に在籍しながら、Zuobog’s FarmsとAgriconsult Ltdのコンサルタントマネージャー、ガーナ拠点の農村開発と農業を専門とする非政府組織であるFoundation for Self Relianceの創設者兼CEOも務める。
農業者であり、教師、トレーナー、農業経済学者、食料安全保障の専門家とさまざまな顔を持つ。また、結婚しており、4人の子どもの父でもある。


ガーナの農村部ではどのような野菜が栽培され、食べられている?

ガーナの野菜
写真提供:Zuobog Philip Neri
ガーナの主要農産物はカカオ豆で、農産物輸出の中心です。1984年に構造調整政策が導入されて以降は、パーム油などの油糧作物、パイナップル、マンゴーも輸出用に栽培が盛んになりました。そのほか、自国消費用としては、メイズ(トウモロコシ)、ソルガム、トウジンビエ、コメ、キャッサバ、ヤムイモ、タロイモ、調理用バナナ、落花生、豆類などが栽培されています。

野菜はあまり栽培されていないと聞いたことがあったので、ガーナの農村部と農業をよく知るPhilipにガーナで栽培されている野菜と、農村部で食べられている料理について尋ねました。

ガーナで栽培されている野菜

ガーナの野菜
写真提供:Zuobog Philip Neri
ガーナでは、野菜として、Kontomireという甘くない調理用のバナナの葉、唐辛子、トマト、オクラ、ナス、キャベツ、ショウガなどが栽培されているそうです。

ガーナの農家がよく食べる料理は地域によって異なる

ガーナトマト
写真提供:Zuobog Philip Neri
ガーナのさまざまな農村部で仕事をするPhilipは、農家が食べる料理は地域ごとに異なると言います。一例をあげてもらいました。

北部はトウモロコシや雑穀のTuo zaafi

ガーナ料理
写真提供:Zuobog Philip Neri
ガーナの北部の特に西側の地域では、Tuo zaafi (T.Z)という穀物ベースの料理がよく食べられます。Tuoはかき混ぜる、Zaafは熱いという意味で、基本的にはメイズか、キビやアワのような雑穀に熱湯を入れ、かき混ぜて作ります。キャッサバ粉が加えられることもあります。

乾燥ニシンとアヨヨ(Corchorus Olitoriusなのでモロヘイヤのような葉)または、乾燥オクラを入れたスープと一緒に食べられます。

南部はヤムイモのFufuとトウモロコシを発酵させたBanku

ガーナヤムイモ
写真提供:Zuobog Philip Neri
南部の農家は、Fufu(pounded yamとも呼ばれる)というキャッサバ、ヤムイモ、食用バナナなどを蒸して、臼でついたマッシュポテト状にしたものをよく食べるそうです。

ガーナ料理
写真提供:Zuobog Philip Neri
また、Bankuというメイズやキャッサバ粉、ソルガムで作られた料理もよく食べられます。北部のTuo zaafiと違う点は、発酵させることです。オクラや唐辛子スープや、魚と一緒に食べられます。

ガーナの農業事情|課題はかんがいと販路

ガーナの市場
写真提供:Zuobog Philip Neri
ガーナの全労働人口に占める農業従事者の割合は、近年減少傾向にあるものの、依然として人口の半分程度を占めます。

ガーナの農家をひきつける話題は?

ガーナでは、農業人口の90%以上が「小規模農家(または小農)」だといわれることがありますが、「小規模農家」の定義が曖昧だという指摘もあります。ガーナの農業を「大規模商業農家」「小規模商業農家」「半商業農家」「非貧困層の複合的で多様なリスクを抱える農家」「貧困層の複合的で多様なリスクを抱える農家」と分け、後者の3つのカテゴリーを合わせて「小規模農家」と認識されることもあるそうです。もっと知りたい人は参考文献をご確認ください。

そんなガーナの農家はどんな話題に魅力を感じているのでしょうか。
Zuobog Philip Neri
Zuobog Philip Neri
私がいま感じているのは、規模の大小にかかわらず、しっかり栽培計画を立てることを魅力に感じている農家が多いです。特に、穀物を栽培している人たちの間ではそれが顕著です。

ガーナの農家が困っていることは?

ガーナ農業
写真提供:Zuobog Philip Neri
Zuobog Philip Neri
Zuobog Philip Neri
ガーナの農家が苦労していることは、栽培のための水の確保です。かんがいシステムが不十分なことに加え、それに投資できる農家は非常に少ないです。ほとんどの農家は降雨に頼っていますが、そんなにうまくはいきません。

ガーナでは、かんがい地は農業用地の0.2%のみで、ほとんどが雨水に依存しています。
Zuobog Philip Neri
Zuobog Philip Neri
ガーナでは、農業をしている場所にもよりますが、ほんの少量の農産物を消費者へ直販し、そのほかを中間業者に販売するケースが多いです。それぞれの農家の考えや、そこに至った背景などもあるので、どちらが正しいとは言えません。ただ、業者への販売価格がとても安いことは確かですし、直販したくても、道路などのインフラ整備や場所などの関係で、直接消費者へ販売することは難しいです。

カカオ以外の輸出用作物や国内消費用の作物については、政府の価格や流通規制はなく、自由に市場で取り引きできます。農家は、定期的に開催される地方のマーケットで作物を販売します。そこに、小規模仲買人が買い付けに訪れ、都市部の定期市で販売する流通が一般的です。

Philipが目指していること|農村部に栽培技術を伝え、収入源を確保する

ガーナ営農指導
写真提供:Zuobog Philip Neri
Philipは、主にプロジェクト立案や、技術面での主導、関係者との調整なども行なっています。今取り組んでいるプロジェクトについても説明してもらいました。

養鶏ビジネスを確立し、農村部の女性の収入源に

ガーナ養鶏
写真提供:Zuobog Philip Neri
現在、採卵鶏(レイヤー)2,000羽と、地元産の鶏の放し飼いを組み合わせて飼育しています。
Zuobog Philip Neri
Zuobog Philip Neri
約5,000羽まで飼育できる施設がありますが、新型コロナウイルスや、投入資材の価格高騰などが課題で、まだ実現できていません。将来的には、レイヤーを拡大し、農村部の女性の収入源として供給することを計画しています。

販路が確立しているパームオイルとココアのプランテーションで収入の確保

ガーナのカカオ
写真提供:Zuobog Philip Neri
もともと販路や市場が確立しているパーム(2エーカー=80a)と、カカオ(2.4エーカー=97a)を栽培し、収入を得ることを目的としたプロジェクトにも取り組んでいます。
Zuobog Philip Neri
Zuobog Philip Neri
パームについては、加工も視野に入れています。それは、農村部の人たちがバリューチェーンの上流でトレーニングの機会や仕事を得られると考えているからです。

農村部の農家への栽培指導

ガーナ農村部の農家へ、農業技術の普及やノウハウの提供もしています。
Zuobog Philip Neri
Zuobog Philip Neri
具体的には、気候に合わせた作物の生産方法や真っ直ぐに播種する方法、適切な株間・畝間、植栽密度などのアドバイスをします。また、肥料や農薬などの使用の標準的な推奨事項や、農産物販売支援なども行なっています。

一元的ではない魅力的なガーナの農業をのぞき見る

ガーナ農業
写真提供:Zuobog Philip Neri
ガーナの農業というと、輸出用の作物か穀物について語られることがほとんどです。それらは農家の生活を支え、食べていくためには不可欠ですが、今回は、ガーナ国内を飛び回りいろいろな地域を訪問するPhilipからカジュアルにさまざまな話を聞くことができました。ガーナの農業や食の魅力を少しだけ感じられたのではないでしょうか。

参考:人口問題が農業・農村環境に与える影響に関する基礎調査―ガーナ共和国―|財団法人 アジア人口・開発協会(APDA)
ガーナ国小規模農家向け農業機械販売事業準備調査(BOP ビジネス連携促進)|独立行政法人国際協力機構(JICA)ヤンマー株式会社
DEFINING SMALLHOLDER AGRICULTURE IN GHANA: WHO ARE SMALLHOLDERS, WHAT DO THEY DO AND HOW ARE THEY LINKED WITH MARKETS?|Jordan Chamberlin

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おしゃれじゃない世界の農業見聞録

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紀平真理子(きひらまりこ)プロフィール
1985年生まれ。大学ではスペイン・ラテンアメリカ哲学を専攻し、卒業後はコンタクトレンズメーカーにて国内、海外営業に携わる。2011年にオランダ アムステルダムに移住したことをきっかけに、農業界に足を踏み入れる。2013年より雑誌『農業経営者』、ジャガイモ専門誌『ポテカル』にて執筆を開始。『AGRI FACT』編集。取材活動と並行してオランダの大学院にて農村開発(農村部におけるコミュニケーション・イノベーション)を専攻し、修士号取得。2016年に帰国したのち、静岡県浜松市を拠点にmaru communicateを立ち上げ、農業・食コミュニケーターとして、農業関連事業サポートなどを行う。食の6次産業化プロデュ ーサーレベル3認定。日本政策金融公庫 農業経営アドバイザー試験合格。著書『FOOD&BABY世界の赤ちゃんとたべもの』
趣味は大相撲観戦と音楽。行ってみたい国はアルゼンチン、ブータン、ルワンダ、南アフリカ。
ウェブサイト:maru communicate

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紀平 真理子

オランダ大学院にて、開発学(農村部におけるイノベーション・コミュニケーション専攻)修士卒業。農業・食コミュニケーターとして、農業関連事業サポートやイベントコーディネートなどを行うmaru communicate代表。 食の6次産業化プロデュ ーサーレベル3認定。日本政策金融公庫農業経営アドバイザー試験合格。 農業専門誌など、他メディアでも執筆中。

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