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今回は、研究者でもあり、実業家でもあり、また農業者でもあるZuobog Philip Neri(ズオボグ・フィリップ・ネリ)にガーナの農業や食事情について話を聞きました。
聞いた人
Zuobog Philip Neri プロフィール
Tamale工科大学で農業技術の学士号、Kwame Nkrumah理工大学で農業経済学の修士号、Van Hall Larenstein応用科学大学(オランダ)で開発学(食糧安全保障、農村開発)の修士号を取得
政府機関や非政府機関で15年以上の実務経験があり、発展途上国の農村開発、農業、食糧安全保障のプロジェクトを主導した経験を持ち、ヨーロッパ、南アジア、アフリカでの調査・研究経験も
現在は、Tamale Technical Universityで農業経済学部の博士課程に在籍しながら、Zuobog’s FarmsとAgriconsult Ltdのコンサルタントマネージャー、ガーナ拠点の農村開発と農業を専門とする非政府組織であるFoundation for Self Relianceの創設者兼CEOも務める。
農業者であり、教師、トレーナー、農業経済学者、食料安全保障の専門家とさまざまな顔を持つ。また、結婚しており、4人の子どもの父でもある。
ガーナの農村部ではどのような野菜が栽培され、食べられている?
ガーナの主要農産物はカカオ豆で、農産物輸出の中心です。1984年に構造調整政策が導入されて以降は、パーム油などの油糧作物、パイナップル、マンゴーも輸出用に栽培が盛んになりました。そのほか、自国消費用としては、メイズ(トウモロコシ)、ソルガム、トウジンビエ、コメ、キャッサバ、ヤムイモ、タロイモ、調理用バナナ、落花生、豆類などが栽培されています。野菜はあまり栽培されていないと聞いたことがあったので、ガーナの農村部と農業をよく知るPhilipにガーナで栽培されている野菜と、農村部で食べられている料理について尋ねました。
ガーナで栽培されている野菜
ガーナでは、野菜として、Kontomireという甘くない調理用のバナナの葉、唐辛子、トマト、オクラ、ナス、キャベツ、ショウガなどが栽培されているそうです。ガーナの農家がよく食べる料理は地域によって異なる
ガーナのさまざまな農村部で仕事をするPhilipは、農家が食べる料理は地域ごとに異なると言います。一例をあげてもらいました。北部はトウモロコシや雑穀のTuo zaafi
ガーナの北部の特に西側の地域では、Tuo zaafi (T.Z)という穀物ベースの料理がよく食べられます。Tuoはかき混ぜる、Zaafは熱いという意味で、基本的にはメイズか、キビやアワのような雑穀に熱湯を入れ、かき混ぜて作ります。キャッサバ粉が加えられることもあります。乾燥ニシンとアヨヨ(Corchorus Olitoriusなのでモロヘイヤのような葉)または、乾燥オクラを入れたスープと一緒に食べられます。
南部はヤムイモのFufuとトウモロコシを発酵させたBanku
南部の農家は、Fufu(pounded yamとも呼ばれる)というキャッサバ、ヤムイモ、食用バナナなどを蒸して、臼でついたマッシュポテト状にしたものをよく食べるそうです。また、Bankuというメイズやキャッサバ粉、ソルガムで作られた料理もよく食べられます。北部のTuo zaafiと違う点は、発酵させることです。オクラや唐辛子スープや、魚と一緒に食べられます。
ガーナの農業事情|課題はかんがいと販路
ガーナの全労働人口に占める農業従事者の割合は、近年減少傾向にあるものの、依然として人口の半分程度を占めます。ガーナの農家をひきつける話題は?
ガーナでは、農業人口の90%以上が「小規模農家(または小農)」だといわれることがありますが、「小規模農家」の定義が曖昧だという指摘もあります。ガーナの農業を「大規模商業農家」「小規模商業農家」「半商業農家」「非貧困層の複合的で多様なリスクを抱える農家」「貧困層の複合的で多様なリスクを抱える農家」と分け、後者の3つのカテゴリーを合わせて「小規模農家」と認識されることもあるそうです。もっと知りたい人は参考文献をご確認ください。そんなガーナの農家はどんな話題に魅力を感じているのでしょうか。
ガーナの農家が困っていることは?
ガーナでは、かんがい地は農業用地の0.2%のみで、ほとんどが雨水に依存しています。
カカオ以外の輸出用作物や国内消費用の作物については、政府の価格や流通規制はなく、自由に市場で取り引きできます。農家は、定期的に開催される地方のマーケットで作物を販売します。そこに、小規模仲買人が買い付けに訪れ、都市部の定期市で販売する流通が一般的です。
Philipが目指していること|農村部に栽培技術を伝え、収入源を確保する
Philipは、主にプロジェクト立案や、技術面での主導、関係者との調整なども行なっています。今取り組んでいるプロジェクトについても説明してもらいました。養鶏ビジネスを確立し、農村部の女性の収入源に
現在、採卵鶏(レイヤー)2,000羽と、地元産の鶏の放し飼いを組み合わせて飼育しています。販路が確立しているパームオイルとココアのプランテーションで収入の確保
もともと販路や市場が確立しているパーム(2エーカー=80a)と、カカオ(2.4エーカー=97a)を栽培し、収入を得ることを目的としたプロジェクトにも取り組んでいます。農村部の農家への栽培指導
ガーナ農村部の農家へ、農業技術の普及やノウハウの提供もしています。一元的ではない魅力的なガーナの農業をのぞき見る
ガーナの農業というと、輸出用の作物か穀物について語られることがほとんどです。それらは農家の生活を支え、食べていくためには不可欠ですが、今回は、ガーナ国内を飛び回りいろいろな地域を訪問するPhilipからカジュアルにさまざまな話を聞くことができました。ガーナの農業や食の魅力を少しだけ感じられたのではないでしょうか。参考:人口問題が農業・農村環境に与える影響に関する基礎調査―ガーナ共和国―|財団法人 アジア人口・開発協会(APDA)
ガーナ国小規模農家向け農業機械販売事業準備調査(BOP ビジネス連携促進)|独立行政法人国際協力機構(JICA)ヤンマー株式会社
DEFINING SMALLHOLDER AGRICULTURE IN GHANA: WHO ARE SMALLHOLDERS, WHAT DO THEY DO AND HOW ARE THEY LINKED WITH MARKETS?|Jordan Chamberlin
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おしゃれじゃないサステナブル日記
紀平真理子(きひらまりこ)プロフィール
1985年生まれ。大学ではスペイン・ラテンアメリカ哲学を専攻し、卒業後はコンタクトレンズメーカーにて国内、海外営業に携わる。2011年にオランダ アムステルダムに移住したことをきっかけに、農業界に足を踏み入れる。2013年より雑誌『農業経営者』、ジャガイモ専門誌『ポテカル』にて執筆を開始。『AGRI FACT』編集。取材活動と並行してオランダの大学院にて農村開発(農村部におけるコミュニケーション・イノベーション)を専攻し、修士号取得。2016年に帰国したのち、静岡県浜松市を拠点にmaru communicateを立ち上げ、農業・食コミュニケーターとして、農業関連事業サポートなどを行う。食の6次産業化プロデュ ーサーレベル3認定。日本政策金融公庫 農業経営アドバイザー試験合格。著書『FOOD&BABY世界の赤ちゃんとたべもの』
趣味は大相撲観戦と音楽。行ってみたい国はアルゼンチン、ブータン、ルワンダ、南アフリカ。
ウェブサイト:maru communicate