- ライター
- 紀平 真理子
オランダ大学院にて、開発学(農村部におけるイノベーション・コミュニケーション専攻)修士卒業。農業・食コミュニケーターとして、農業関連事業サポートやイベントコーディネートなどを行うmaru communicate代表。
食の6次産業化プロデュ ーサーレベル3認定。日本政策金融公庫農業経営アドバイザー試験合格。
農業専門誌など、他メディアでも執筆中。…続きを読む
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「農業をやりたい!」と思ったときに、まず頭に浮かぶのが独立就農ではないでしょうか。しかし、農業の知識がなく、農作業が未経験の場合や、高校や大学卒業時に新卒で農業を始めることを考えたとき、40代以上で転職や再就職を検討し農業に携わりたいと思ったときに、収入が不安定できついイメージがある独立就農に二の足を踏む人も多くいます。農業をやりたいものの、後悔したくない場合の一つの選択肢として、農業経営体や農業法人に就職し、雇用される形で農業に関わる方法もあります。
農業経営体の常時雇用は増えている
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新規就農者調査(農林水産省)によると、2018年は、49歳以下においては、新規参入者が2,400名、自営農業を継ぐ就農者が9,900名、農業法人などに就職した人が7,100名でした。独立して新規で就農する人より、何らかの形で農業法人や農業経営体に就職する人の方が多いことがわかります。
また、2015年の農林業センサスによると、年間での農業経営体の臨時雇用者数は減少傾向にあるものの、常時雇用者数は22万人で、5年前から約2倍に増加しています。
参考:
新規就農者調査|農林水産省
2015年農林業センサス|農林水産省
高校・大学卒業後、農業未経験でも就職できる?
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農業経営体や農業法人はどのような人を求めているのでしょうか。農の雇用事業に関するアンケート調査結果概要(農林水産省)によると、正社員を雇用する学歴条件については、高卒や大卒、農業系の学校を卒業しているなどという「学歴を特に問わない」という回答が最も多く68%ありました。社会人経験の有無についても、59%が「社会人経験者・新卒者を問わず採用したい」と回答しています。
一方で、91% が普通自動車免許の取得が必須と回答しました。次で、大型特殊自動車免許やフォークリフト運転免許もあれば望ましいとされています。
参考:
農の雇用事業に関するアンケート調査結果概要|農林水産省
農業に必要な資格・役立つ資格をチェック
全国の農業大学校情報
農業法人や農業経営体で働く|後悔しない就職先を選ぼう
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農業法人や農業経営体に就職する理由は、大きく二通りあります。安定した収入を得ながら農業に携わりたい場合と、将来的に独立就農を視野に入れ、知識や技術を学ぶための研修先として農業法人などに就職する場合です。将来の目的の違いによっても選ぶ経営体の基準が異なります。
安定した収入で農業をしたい場合
未経験者でも、農業法人や農業経営体に就職することで、精神的にも経済的にも安定した状態で農業に携わることができます。その場合、年収や年間休日などの雇用条件や福利厚生、自宅から通いやすいなどの地理的な条件も就職先の決め手の一つになるでしょう。
独立就農を視野に入れる場合
独立を見すえた就職の場合は、独立後に活用できる知識や技術、経営を勉強できる経営体や農業法人に就職することが大切です。農業で独立したい人を積極的に支援する企業や、就農を予定している地域の研修先を見つけるなど、自身の就農を前提とした農業法人、農業経営体を探しましょう。
農業で就職した場合の雇用契約形態
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農業法人や農業経営体で就職する場合にも、一般企業と同様にさまざまな雇用形態があり、これによって得られる年収も変わります。それぞれの働き方や目的と、雇用主が提示する雇用形態とをマッチングさせて、どのような形で農業に携わりたいか検討しましょう。
正社員
正社員は、フルタイムで働くことを前提としており、契約期間の定めがありません。定年についても、一律で定められておらず、就業規則に基づいて決められています。
契約社員
契約社員は、あらかじめ雇用期間が定められています。労働契約期間は一定期間で更新され、契約期間が満了した時点で、契約を継続する場合も終了する場合もあります。
派遣社員
派遣社員は、農業経営体で働く人が派遣元である人材派遣会社と労働契約を結び、人材派遣会社が労働者派遣契約を結んでいる農業経営体に働く人を派遣する仕組みです。また、紹介予定派遣は、派遣期間(最大6カ月)を経過した後に、派遣先と派遣社員が合意すれば正社員または契約社員になります。
パートタイム雇用
パートタイムは、1週間の所定労働時間が、同じ農業経営体で雇用されている労働者の所定労働時間に比べて短い雇用形態です。
住み込みアルバイト
農業法人や農業経営体が保有する寮やアパートで生活しながら、農作業を行います。主に繁忙期の短期的な雇用である場合が多いです。
農業の就職先の探し方|求人情報はここをチェック!
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農業法人や農業経営体に就職したい場合、どのように求人を見つければよいのでしょうか。求人情報が見つかる経路はさまざまですが、その中でも農業関連の求人情報を提供している主要なメディアやイベントなどを紹介します。
ハローワーク
農の雇用事業に関するアンケート調査結果概要(農林水産省)でも、農業法人が正社員の求人を掲載する先としてハローワークが最も多くあがっています。ハローワークの求人情報は農業に特化しているわけではありませんが、農業の求人に絞り込んで検索すると多くの求人情報が見つかります。
農業求人サイト
農業に特化した農業求人サイトは、正社員からアルバイトまで幅広い求人情報が掲載されています。作目別や地域で絞り込んで検索ができ、求人情報以外の写真の掲載やコラムなどが充実しているサイトも多いので、より農場の雰囲気をつかみやすく、就職先を決めるときの参考になります。例えば、北海道で就職したい人向けに「北海道de農業をはじめるサイト」など地域に特化したサイトもあります。
農業の求人探し。全国都道府県別求人サイトのまとめはこちらをチェック
JAのサイト
各地域のJAの公式サイトにも、求人ページが設けられています。特定の地方で就職先を見つけたい場合、その地域に特化したより多くの求人情報が見つかる可能性があります。例えば、栃木県のJAグループ栃木は、「とちぎの農家で働こう!」という求人に特化したサイトを開設しています。
新・農業人フェアなどの就職相談会や就農イベント
新・農業人フェアなどの就職相談会やイベントは、求人情報を得られるだけでなく、農業法人で働いている人の話を直接聞くことができます。話をする中で、やりたいことや雇用条件だけでなく、社風が合うのかなどより深く会社を知ることができます。
農業法人のホームページ
自社のホームページで求人情報を掲載する農業経営体もあります。特定の農場で働きたいと考えている場合には、定期的にホームページやSNSをチェックして、求人情報が掲載されたら申し込んでみましょう。
農業法人に就職した先輩の声
どんな形で農業に関わりたいか考えよう
出典:ぱくたそ
農業に関わる方法もさまざまです。「農業はやりたいけど、新規就農をするのは…」という人は、農業法人や農業経営体を就職先として検討することも一つかもしれません。農業法人への就職には、特殊な資格や経験は必要ありませんが、なぜ農業をやりたくて、どのような形やどのくらいの時間・期間で関わりたいかを考えてから就職先を探すことが大切です。
農業の就職・転職への不安にプロがアドバイス