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今回は、雇用就農を経て独立し、静岡県浜松市で露地栽培でキャベツと白ネギを栽培する株式会社HSFarmの代表取締役社長の倉田聡志さんに、これまでの経緯と今後の雇用の方針を含めて話を聞きました。また、農場長を務める入社5年目の本間秀さんと露地栽培担当を務める佐野真也さんに農業法人へ就職した経緯や現在の思いを聞きました。
雇用就農についてはこちら
代表取締役社長も雇用就農を経験している
株式会社 HSFarmプロフィール
所在地:静岡県浜松市
栽培作目:キャベツ、白ネギ(いずれも露地)、育苗
作付面積:年間で20ha以上
従業員数:4名(うち1名外国人技能実習生)
売上:約1億円
販売:ほぼ契約栽培
雇用される形で農業界へ
神奈川県横浜市生まれで千葉県育ちの倉田さんは、自動車関連の専門学校を卒業したのち、埼玉県でサラリーマンとして自動車関連の仕事をしていました。しかし、2008年のリーマンショックを契機に異なる業界にも目を向け始めました。電話をしたところとんとん拍子で採用に至り、埼玉県の農家で雇用される形で農業を始めることになりました。倉田さんは、同世代の従業員が4、5人いる環境で楽しく農業をしていましたが、経営者にほかのやり方を提案したところ「言う通りにやってほしい」と言われて受け入れてもらえませんでした。これがきっかけで、自分で思う通りにやった方がおもしろいと考えるようになり独立就農へと目が向きました。
独立を視野に入れた勉強のための雇用就農も経験
退社するなら自分で始めようと思った倉田さんは、「独立就農をするならトップリバーに行くしかない」と考え、門をたたきます。半年ほど長野県でキャベツ、レタス、トウモロコシなどを栽培していましたが、千葉県と静岡県浜松市にも農場が立ち上がると聞き浜松農場での勤務に手を挙げました。独立2年目から雇用を開始
今まで、パート従業員も含めてのべ10人ほど雇用しましたが、7割が農業未経験者です。倉田さん自身が、専門学校を卒業後にオーストラリア、沖縄県、千葉県、埼玉県、長野県、静岡県などさまざまな地域での居住経験があるからか自然と地域を限定せず人が集まってくるそうで、県外出身の従業員が多いことが特徴です。また、「言われた通りに作業しているだけではもおもしろくない」というご自身の経験から、従業員にも自分で考えて動いてほしいと思っています。
HSFarmが求める人
・少しでも早く不具合に気付いて、即行動できる人:契約栽培をしているので、計画通りに作り納期を守ることは必須。
・自分で考えられる人:失敗しても繰り返さず、学びになればいい。
雇用就農で働くリアル|農場長と露地栽培担当者に聞く
農場長として技術の追究や経営、育成にも関わる|本間秀さん
求人に勢いを感じて応募
本間さんが農業に興味を持ったきっかけは「稼げそうだ」と思ったことです。当時は独立を考えておらず、求人サイトで正社員として働ける募集を探しました。農場長として経営視点も養う
本間さんは、それぞれの作業にかかる金額を把握し売上の予測なども考え始めていると言います。作業ごとの細かい数字を見ることで、自分自身の作業単価を把握できるようになります。
技術の追究と後輩の育成も
農業は天候によって作業が安定せず毎年変化させないといけないところが難しいと話す本間さんですが、奥が深くて楽しいと話します。最近では肥料や農薬などの資材にも興味を持つようになりました。独立を考えることもあるとは言いますが、現時点では会社の中で売上をしっかり出していくことに注力したいと熱く話します。本間さんの今後の目標
・作付け面積を増加予定の白ネギの安定した栽培管理を確立する
・農場運営を統括して売上を上げる
・作業ごとのコストを把握し利益の向上に努める
・後輩従業員を育成する
・プライベートでは旅行に行きたい
露地栽培担当者として的確な栽培管理を追求|佐野真也さん
屋外でのびのび仕事がしたい
佐野さんは、静岡県富士市で倉庫関係の仕事をしていました。屋内での仕事に窮屈さを感じ、農業は広々した屋外で仕事をするので気持ちがよさそうだと思い「やってみたい」という気持ちが生まれました。的確な管理ができしっかり育つことが喜び
実際に農業をはじめると、天候に作業内容が左右されることもあり思っていたより大変だと感じていますが、現実を知ってもなお将来的には独立したい気持ちを持っていると佐野さんは話します。佐野さんは現在、農薬の選定や散布時期の見極めなどを任されており、しっかり管理できていい作物が栽培できたときの喜びは大きいと言います。佐野さんの今後の目標
・本間さんから引き継ぐ予定のキャベツの栽培管理に注力する
・農薬を含め資材について知識を深める
規模拡大を続けながらより働きやすい環境づくりに取り組む
独立も応援。定年まで雇用もできるように仕組みも作る
倉田さんは独立希望者が働くトップリバーでの経験から、独立したい従業員に対しては十分にサポートをしていきたいと話します。1年に1回の個人面談で従業員本人の希望を聞きながら、本人の希望に沿った育成をしています。しかし、個人的には近年どの作目においても農産物が供給過剰な状況の中で、一から作り上げる新規就農はあまりすすめられないとも言います。将来的には、露地キャベツ、白ネギ、苗の生産販売、施設栽培などいくつかの柱を作り、さまざまな世代が活躍できる農場にしていきたいと話します。
雇用条件をさらに整備する
現在は日曜日が休日ですが、今後は有休消化も含めて年間休日を100日まで増やせる職場環境作りもしていきたいと言います。一人休ませるためには、人を一人増やして余裕ある状況であっても利益がでる仕組みづくりをしていく必要があります。そのためには、安定的に生産し利益を出していきたいと話します。HSFarmは3年後にさらに5haの規模拡大を予定しており、白ネギの周年栽培も開始予定です。自社倉庫や集荷場の建設に向けても動き出しています。今後は10人前後まで従業員を増やすことを予定しています。倉田さんは、10年後には今の年間売上1億円から1億5,000万円まで増やしていきたいと力強く語ります。
農場運営を自分ごとだと捉え仕事を任せられる人材を育成する
任せられることが好きだと強く語る本間さんと、任せられるのは少し苦手だと言いながらも着実に対応していく佐野さん。タイプの異なる二人は、任せられることで、それぞれの形で栽培管理や農場運営を自分ごとだと捉え、成長を続けます。二人を中心にした従業員の成長がひいてはHSFarmの進化につながるでしょう。