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【雇用就農事例】従業員も経営視点を持ち、的確な栽培管理を追求する株式会社HSFarm

雇用就農とは?正社員として静岡県浜松市の農業法人「株式会社HSFarm」で働き、農場長を務める入社5年目の本間秀さんと露地担当者を務める入社3年目の佐野真也さんに、雇用就農を選んだ経緯や現在の思いを聞きました。また、雇用就農から独立就農した代表取締役社長の倉田聡志さんに、ご自身の経験をふまえ従業員に求めることや、定年まで勤務できる農場の形について話を聞きました。


雇用就農農場長

写真提供:HSFarm
農業に関わるためには、農業経営体や農業法人などに就職し従業員として働く方法もあります。雇用される形で農業に関わる人は、どのような理由で農業を選び、なぜ従業員として働くことを選んだのでしょうか。

今回は、雇用就農を経て独立し、静岡県浜松市で露地栽培でキャベツと白ネギを栽培する株式会社HSFarmの代表取締役社長の倉田聡志さんに、これまでの経緯と今後の雇用の方針を含めて話を聞きました。また、農場長を務める入社5年目の本間秀さんと露地栽培担当を務める佐野真也さんに農業法人へ就職した経緯や現在の思いを聞きました。

雇用就農についてはこちら

代表取締役社長も雇用就農を経験している

雇用就農キャベツ
写真提供:HSFarm
株式会社HSFarm代表取締役社長の倉田聡志さんは、雇用就農をきっかけに農業に携わるようになり2015年に独立に至りました。

株式会社 HSFarmプロフィール
所在地:静岡県浜松市
栽培作目:キャベツ、白ネギ(いずれも露地)、育苗
作付面積:年間で20ha以上
従業員数:4名(うち1名外国人技能実習生)
売上:約1億円
販売:ほぼ契約栽培

雇用される形で農業界へ

神奈川県横浜市生まれで千葉県育ちの倉田さんは、自動車関連の専門学校を卒業したのち、埼玉県でサラリーマンとして自動車関連の仕事をしていました。しかし、2008年のリーマンショックを契機に異なる業界にも目を向け始めました。
倉田聡志さん
倉田聡志さん
たまたま自宅に田舎暮らしに関する雑誌があり、数年前に友人から「最近農業が熱いらしい」と聞いたことを思い出しました。さらに、テレビ番組で有限会社トップリバーが特集されているのを目にしたことが重なって、その田舎暮らしの雑誌に人材募集を掲載していた近隣の生産者に電話をしました。

電話をしたところとんとん拍子で採用に至り、埼玉県の農家で雇用される形で農業を始めることになりました。倉田さんは、同世代の従業員が4、5人いる環境で楽しく農業をしていましたが、経営者にほかのやり方を提案したところ「言う通りにやってほしい」と言われて受け入れてもらえませんでした。これがきっかけで、自分で思う通りにやった方がおもしろいと考えるようになり独立就農へと目が向きました。

独立を視野に入れた勉強のための雇用就農も経験

退社するなら自分で始めようと思った倉田さんは、「独立就農をするならトップリバーに行くしかない」と考え、門をたたきます。半年ほど長野県でキャベツ、レタス、トウモロコシなどを栽培していましたが、千葉県と静岡県浜松市にも農場が立ち上がると聞き浜松農場での勤務に手を挙げました。

独立2年目から雇用を開始

雇用就農事例
写真提供:HSFarm
倉田さんは、3年半ほどトップリバーの社員として、長野県と静岡県でキャベツなどの栽培を手がけました。栽培の基礎から経営まで独立に向けて学んだのち2015年に独立して静岡県浜松市にHSFarmを立ち上げました。
倉田聡志さん
倉田聡志さん
初年度は完全に一人で農業をしましたが、一人が寂しくなったので2年目から正社員の雇用を始めました。周囲の生産者から影響を受け、規模拡大していくのは当たり前だという感覚を持っていたことも雇用を早いうちに始めた理由です。


今まで、パート従業員も含めてのべ10人ほど雇用しましたが、7割が農業未経験者です。倉田さん自身が、専門学校を卒業後にオーストラリア、沖縄県、千葉県、埼玉県、長野県、静岡県などさまざまな地域での居住経験があるからか自然と地域を限定せず人が集まってくるそうで、県外出身の従業員が多いことが特徴です。また、「言われた通りに作業しているだけではもおもしろくない」というご自身の経験から、従業員にも自分で考えて動いてほしいと思っています。

HSFarmが求める人
・少しでも早く不具合に気付いて、即行動できる人:契約栽培をしているので、計画通りに作り納期を守ることは必須。
・自分で考えられる人:失敗しても繰り返さず、学びになればいい。


雇用就農で働くリアル|農場長と露地栽培担当者に聞く

雇用就農
撮影:紀平真理子
現在、HSFarmは日本人の正社員3人とベトナム人の外国人技能実習生1人を雇用しています。その中で農場のキーマンとなる農場長の本間秀さんと、露地栽培担当の佐野真也さんに話を聞きました。


農場長として技術の追究や経営、育成にも関わる|本間秀さん

HSFarm
写真提供:HSFarm
1992年生まれで東京都の非農家出身の本間さんは、2016年にHSFarmに入社しました。

求人に勢いを感じて応募

本間さんが農業に興味を持ったきっかけは「稼げそうだ」と思ったことです。当時は独立を考えておらず、求人サイトで正社員として働ける募集を探しました。
地域はどこでもかまいませんでした。当時、HS Farmはキャベツのみを栽培をしていたので効率がよさそうだと感じたこと、会社が創業して間もなかったので、今入社すれば多くのことに関われる立場になれるのではないかと考え応募しました。でも、何より求人募集のページに勢いを感じたことが大きかったです。
本間秀さん
本間秀さん

農場長として経営視点も養う

雇用就農農場長
写真提供:HSFarm
入社後3年目を迎えたころ、社長の倉田さんは農場運営を本間さんに任せるようになりました。
倉田聡志さん
倉田聡志さん
彼は「稼ぎたい」という気持ちがあり、社長などのポジションに憧れを持っています。雇用された状態で年収4桁を稼ぎたいという夢もありますが、現状のままでは難しいです。実現したいなら、責任者になって会社の利益を向上させて自分の稼ぎも増やすしかない。彼の希望をかなえるためにも成長してほしいと思っています。


本間さんは、それぞれの作業にかかる金額を把握し売上の予測なども考え始めていると言います。作業ごとの細かい数字を見ることで、自分自身の作業単価を把握できるようになります。

技術の追究と後輩の育成も

農業は天候によって作業が安定せず毎年変化させないといけないところが難しいと話す本間さんですが、奥が深くて楽しいと話します。最近では肥料や農薬などの資材にも興味を持つようになりました。独立を考えることもあるとは言いますが、現時点では会社の中で売上をしっかり出していくことに注力したいと熱く話します。
今後は白ネギ栽培も増える予定なので、栽培を安定させて売上を増やしたいです。今は、自分のことで精一杯ですが、後輩の育成にも力を入れていきたいです。農業は難しい局面も多く、心が折れそうになることもありますが、入社以来高いモチベーションを保てています。それは機械や面積、人が増えていくことで会社が徐々に進化していることを感じられることも一因です。
本間秀さん
本間秀さん

本間さんの今後の目標
・作付け面積を増加予定の白ネギの安定した栽培管理を確立する
・農場運営を統括して売上を上げる
・作業ごとのコストを把握し利益の向上に努める
・後輩従業員を育成する
・プライベートでは旅行に行きたい


露地栽培担当者として的確な栽培管理を追求|佐野真也さん

HSFarm
写真提供:HSFarm
1990年生まれで静岡県の非農家出身の佐野真也さんは、2018年にHSFarmに入社し本間さんの片腕として露地栽培を担当しています。

屋外でのびのび仕事がしたい

佐野さんは、静岡県富士市で倉庫関係の仕事をしていました。屋内での仕事に窮屈さを感じ、農業は広々した屋外で仕事をするので気持ちがよさそうだと思い「やってみたい」という気持ちが生まれました。
独立も視野に入れ、勉強のために就職先を探しました。「静岡県内」と「露地栽培」に絞ってインターネットの求人サイトで検索すると何軒かヒットしました。HS Farmの求人ページには、本間さんが楽しそうに収穫している写真が載っていて、「やっぱり農業は楽しいんだ」と思って応募しました。
佐野真也さん
佐野真也さん

的確な管理ができしっかり育つことが喜び

実際に農業をはじめると、天候に作業内容が左右されることもあり思っていたより大変だと感じていますが、現実を知ってもなお将来的には独立したい気持ちを持っていると佐野さんは話します。佐野さんは現在、農薬の選定や散布時期の見極めなどを任されており、しっかり管理できていい作物が栽培できたときの喜びは大きいと言います。
農業は、土の状態や農薬散布のタイミングでそのあとの結果が全く変わります。見極めが難しくて奥が深いところが好きです。作物がしっかり育つと、的確に管理ができてここまで至ったんだと思いながら収穫できます。これが農業の醍醐味(だいごみ)で楽しいです。
佐野真也さん
佐野真也さん

佐野さんの今後の目標
・本間さんから引き継ぐ予定のキャベツの栽培管理に注力する
・農薬を含め資材について知識を深める


規模拡大を続けながらより働きやすい環境づくりに取り組む

雇用就農事例
写真提供:HSFarm
HSFarmは、売上の向上に日々取り組んでいます。そのために規模拡大も新たな雇用も視野に入れています。HSFarmには20代を中心とした若い従業員が活躍していますが、その人たちが年齢を重ねても働き続ける選択もできるような仕組みづくりも考えています。

独立も応援。定年まで雇用もできるように仕組みも作る

倉田さんは独立希望者が働くトップリバーでの経験から、独立したい従業員に対しては十分にサポートをしていきたいと話します。1年に1回の個人面談で従業員本人の希望を聞きながら、本人の希望に沿った育成をしています。しかし、個人的には近年どの作目においても農産物が供給過剰な状況の中で、一から作り上げる新規就農はあまりすすめられないとも言います。
倉田聡志さん
倉田聡志さん
会社としては一定数は長く働いてもらった方が規模拡大や運営はしやすくなるとも思いますが、従業員本人の希望にかなうようサポートします。ずっとここで働く従業員がいる場合、体力が必要なキャベツ栽培を50代、60代になってもできるのかというのが課題です。今後5〜10年かけて従業員の体に負担がかかりにくい施設栽培への投資もしていきたいと考えています。


将来的には、露地キャベツ、白ネギ、苗の生産販売、施設栽培などいくつかの柱を作り、さまざまな世代が活躍できる農場にしていきたいと話します。

雇用条件をさらに整備する

現在は日曜日が休日ですが、今後は有休消化も含めて年間休日を100日まで増やせる職場環境作りもしていきたいと言います。一人休ませるためには、人を一人増やして余裕ある状況であっても利益がでる仕組みづくりをしていく必要があります。そのためには、安定的に生産し利益を出していきたいと話します。

HSFarmは3年後にさらに5haの規模拡大を予定しており、白ネギの周年栽培も開始予定です。自社倉庫や集荷場の建設に向けても動き出しています。今後は10人前後まで従業員を増やすことを予定しています。倉田さんは、10年後には今の年間売上1億円から1億5,000万円まで増やしていきたいと力強く語ります。

農場運営を自分ごとだと捉え仕事を任せられる人材を育成する

HSFarm
撮影:紀平真理子
倉田さんは、今後白ネギ栽培を本間さんに一任し、キャベツ栽培の管理を本間さんから佐野さんに少しずつ委譲していく構想を練っています。さらに、栽培に関する全体統括を本間さんがしていくという体制を整えたいと話します。

任せられることが好きだと強く語る本間さんと、任せられるのは少し苦手だと言いながらも着実に対応していく佐野さん。タイプの異なる二人は、任せられることで、それぞれの形で栽培管理や農場運営を自分ごとだと捉え、成長を続けます。二人を中心にした従業員の成長がひいてはHSFarmの進化につながるでしょう。

雇用就農事例インタビューはこちらもチェック


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紀平 真理子

オランダ大学院にて、開発学(農村部におけるイノベーション・コミュニケーション専攻)修士卒業。農業・食コミュニケーターとして、農業関連事業サポートやイベントコーディネートなどを行うmaru communicate代表。 食の6次産業化プロデュ ーサーレベル3認定。日本政策金融公庫農業経営アドバイザー試験合格。 農業専門誌など、他メディアでも執筆中。

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