新規に農業に就く人は毎年5万人以上
2018年の新規就農者は5万5,810人
2019年8月に公表された新規就農者調査によると、2018年の新規就農者は5万5,810人で前年並みに推移しています。そのうち最も多いのが、農家の家族がほかの仕事を退職したりして農業に携わる「新規自営農業就農者」。次に多いのが農業法人などに雇用される「新規雇用就農者」。最も少ないのが、土地や資金を独自に調達する「新規参入者」です。つまり、非農家の人が新たに農業に就くときには、農業法人などへの就職が多く選ばれていることがわかります。農業法人に就職した人は9,820人
農業法人に雇用されて農業に従事することになった人は9,820人で、その内訳は、49歳以下の割合が72.8%と高くなっています。最も多いのが20代で、次に30代、40代と続きます。独立を目指すなら
農業の求人を見つける方法
農業法人に就職する方法について確認しておきましょう。就職への入口には次のようなものがあります。求人サイトをチェック!
インターネットには農業専門の求⼈サイトがあります。農業の仕事を探すなら、一般の転職サイトを見るより格段に効率が高まります。条件を指定して仕事を検索することはもちろん、スカウトや未公開求人の紹介を受けることも可能。定期的にチェックしましょう。転職エージェントの利用
農業が初めて、転職も初めてという未経験者に特に頼りになるのが転職エージェント。一口に農業といえど業種もいろいろ、営農スタイルもそれぞれ異なるため、応募の前に詳しい情報を得ることができるのが魅力です。求人票に書かれていない詳しい情報や、農業の仕事そのものについても聞くことができます。ハローワークへの相談
「農林漁業就職支援コーナー」が設置されているハローワークがあります。ハローワーク品川によると、管轄している地域の情報に限らず、ほかの自治体の情報を教えてくれたり、開催される相談会などの情報を提供してくれることもあるとのこと。農業の経験がない場合には、体験先なども紹介してくれます。事前に電話で問い合わせをすれば、担当の方が情報を用意をしてくれることもあるそうですよ。厚生労働省「農林漁業雇用対策」
就農フェアなどのイベントに参加
農業系の求人を集めた就農フェアなどのイベントは、通年開催されています。一度に多くの法人と出会えるのが魅力。足を運んでみてはいかがでしょうか?農業転職エージェントに聞く
今回は、これまで特に農業に縁のなかった人が農業へ転職するときに考えておきたいことについて、農業分野に特化した人材事業を展開する株式会社あぐりーんの菅原さんにお話を伺いました!株式会社あぐりーんでは農業求人サイト「農家のおしごとナビ」を運営しています。農業への転職の傾向
農業界への転職者数は横ばい、40代以上も増加
一般的にも求職者が減っている中、農業界への転職者数は横ばい。注目すべきは、10年前と比べて40代、50代で農業への転職を検討する人も増えていること。「これは求人側の求める人材ニーズが多様化し、他業界で活躍していた方を求める農業法人が増えたことと、40代以上の方にもスマートフォンなどが普及しネットで情報を得るということが当たり前になってきていることが関係しているのではないかと考えています」と菅原さん。男女比は半々。年齢が上がると男性の比率が高まる
農業への転職希望者の男女比は、若い人では1対1。年齢が上がるにつれて、男性の比率が高まります。「農業への転職は引っ越しが伴うことが多いため、結婚後や子育て中の方にはハードルが高くなる傾向があります。また、農業は体を使う仕事なので、年齢が上がるにつれて⼥性が働きにくいというイメージが影響しているものかと思います」移住を視野に入れた転職も
都市で仕事をしていた人が農業をするとなると、移住して転職するケースも。「多くの方は農業を仕事にしたいという理由で引っ越しを伴う形で職探しをしていますが、田舎暮らしに憧れて農業への転職を考える方も一定数います。人気のあるエリアとしては、やはり農業のイメージが強い北海道、長野などがあげられます」未経験でも転職できる
未経験者歓迎の求人は多い
「農業への転職では、経験が問われることは少なく、未経験歓迎の求人が多いです。学歴や職歴ではなく、農業の仕事への関心度の高さの方が重要です。農業は未経験でもマニュアル免許や⼤型免許、中型免許、⼤型特殊などの免許を持ち、実際に動かしていた経験のある方は優遇される傾向にあります。」女性の転職|注意すること、向いている仕事
働く環境は改善傾向。女性を積極採用する法人も
女性が転職する場合には、仕事の内容のほかに、更衣室やトイレなどの働く環境もチェックしておきたいところ。「以前は女性の更衣室がない、畑にトイレがない、という環境の職場もありましたが、助成金などの効果もあって、働く環境は改善傾向にあります。また、農業の機械化が進んだことにより力仕事が減り、力仕事に向いていないという点でのマイナス⾯はなくなってきています。逆に仔牛の世話や野菜の出荷作業などきめ細やかな作業が必要な分野では⼥性の方が向いていると、積極的に女性を採⽤をしている法⼈もあります」うつ病で前職を辞めて、農業に転職するケース
ニーズは存在。病気の原因をよく見極めて
心の病を患って、自然のいい空気の中で仕事をしたいという理由で農業を志すニーズは一定数存在します。ただし、と菅原さんは注意を促します。「病気の原因によっては、農業に転職しても状況が改善しないこともあります。農業でも人間関係は重要ですし、時間や仕事に追われることもあります。また、地⽅での⼀⼈暮らしの寂しさなどにも考慮が必要です」正直に相談してみることが大切
農業は自然と向き合う仕事。収穫時期の忙しいときに、急に休みをとられたりすると雇用する側も困ってしまいます。もし体調面に不安がある場合には、雇用主や転職エージェントに正直に相談することが大切と菅原さんは言います。「体調などの事情を隠さないことが大切です。正直に話すことで、時間や業務内容に配慮してくれるケースもあります」農業への転職事例|介護ヘルパーから酪農ヘルパーへ
はまる仕事を見つける
菅原さんに印象に残っている転職のケースを伺うと、介護ヘルパーをしていた人が、酪農ヘルパーの仕事に転職した事例を教えてくれました。酪農ヘルパーとは、酪農家の人たちが休みを取るときなどに、代わりに家畜の世話を行う仕事。「ヘルパーの仕事を検索していて『酪農ヘルパー』の仕事を見つけたそうなのですが、同じヘルパーなら動物の世話でもいいのではないか、と飛び込んでみたら、ぴったりはまったようです。農業というと野菜を栽培することを想像される方が多いと思いますが、酪農、畜産などさまざまな仕事があります。まずは幅広く情報収集して自分にはまる仕事を探すといいと思います。『何から調べたらいいんだろう』『自分に何が合っているんだろう』など悩んだらぜひご相談いただきたいですね」
転職サイトで成功事例を知る
「農家のおしごとナビ」では、転職成功者の声を掲載しています。実際に転職した人たちの生の声には、転職のきっかけや仕事内容、やりがいや職場の雰囲気まで、それぞれ参考になることがたくさんあります。農家のおしごとナビ「ヴォイス」
農業への転職を失敗しないために
仕事の内容や暮らしを知っておくこと
農業への転職で失敗を防ぐために、仕事の内容をよく知ることが必要なのは、一般企業への転職と同じ。エリアや給料だけを見て就職したあとに、思っていた仕事と違うというのは未然に防ぎたいところ。そのほかに、農業への転職だからこそ気を付けるべきところを聞くと、「暮らしの部分」という答えが。「特に移住を伴う場合には、生活がガラリと変わるので覚悟が必要です。例えば、コンビニに行くにも車が必要という生活に不安はないか、など事前にイメージしておくことが大切です」