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トラクターにスプレーヤやロータリーを付けて畑から畑に移動する際、農道ではなく公道を走行しなければならないこともあります。トラクターを公道で安全に運転するために欠かせない、トラクターの免許の取得方法や取得までにかかる期間、費用などについて紹介します。
まずはトラクターの免許に関する気になる疑問をチェック!
ここではまず、トラクターの免許に関する疑問についてお答えします!Q1. トラクターは普通免許で乗れる?
全長4.7m以下、幅1.7m以下、高さ2.0m以下、最高速度15km/h以下の小型特殊自動車に該当するトラクターであれば「普通免許」で乗ることができます。規定を一つでも上回ると「大型特殊免許」が必要です。Q2. トラクターに乗るにはどんな種類の免許が必要?
小型特殊自動車に該当するトラクターで公道を走る場合には、「小型特殊自動車免許」か「普通自動車免許」が必要です。最高速度35km未満の農耕作業用自動車や、全長4.7m以上、幅1.7m以上、高さ2.0m以上のトラクターの走行には、「大型特殊自動車免許」が必要です。Q3. トラクターの免許を取るにはいくらかかる?
「大型特殊自動車免許」が必要な場合、自動車教習所に通学する方法と、一発試験を受ける方法の2種類があり、方法によって費用は異なります。教習所に通う場合は、普通自動車免許を持っているという方で、費用は約13万円ほどかかります。詳しくは、この後の「大型特殊自動車免許を取りに行こう!」の箇所で解説しています。Q4. トラクター 免許は何歳から取れる?
18歳から取得できます。Q5. トラクターの税金はいくら?
農耕作業車(トラクター、コンバイン等)は年間約2,400円。その他小型特殊(フォークリフト等)は年間約5,900円ほどかかります。Q6. 大型特殊免許は何が乗れる?
大型のトラクター、大型のコンバイン、ロードローラー、クレーン車、ブルドーザー、ショベルカー、除雪車、路面清掃車に乗ることができます。Q7. トラクター免許に関する制度改正はいつ変わった?
トラクター免許に関する制度改正は2019年4月から。改正によって、トラクターは農業用の作業機を付けていても、一定の条件を満たした場合は公道走行が可能になりました。Q8. 公道走行した場合の罰則は?
条件(車両幅の確認、免許の確認、灯火器の確認、安全性の確認)を満たさずに公道走行した場合は、無免許運転となり、罰金50万円以下、免許取消し、交通違反点数は25点、最低2年間は免許は取れません。作業機付きトラクタの公道走行について(一般社団法人日本農業機械工業会)
トラクターの運転には免許が必要!どの免許をとればいい?
公道でトラクターを運転するために必要な運転免許と作業機を付けて公道を走る際の要件について説明します。トラクターの運転には免許が必要
トラクターで道路を走行するためには、いくつかの法令を尊守する必要があります。トラクターだけでなく、道路上を運転する際に守らなければならないのが、道路交通法です。道路交通法
交通ルールや運転免許に関する法律です。道路を走行する際には、走行させる車両の種類に応じた運転免許証の携帯が義務付けられています。道路交通法で定められている運転免許証の種類
農作業機を装着した状態の寸法が長さ4.7m、高さ2.0m、全長4.7mを超えたトラクターの走行には、大型特殊自動車免許(農耕車限定も)が必要です。この寸法以下のトラクターの場合には、小型特殊自動車免許・普通自動車免許で走行できます。ただし、トラクターが新小型特殊自動車にあたる場合には、大型特殊自動車免許が必要です。普通自動車免許で新小型特殊自動車を運転すると、無免許運転として免許を取り消されてしまうことがあるので注意しましょう。
作業機を付けて公道を走る際の注意点
スプレーヤやロータリーなど、直接トラクターに装着するタイプの作業機を付けたまま公道を走るときには、次の4点の要件を満たさなければなりません。1. 農業機械を装着しても灯火器類が見えていること
農業機械を装着していても、ウインカーや反射器、車幅灯などの灯火器類が後方からはっきりと見えている状態にしてください。2. 車両の幅の制限
トラクター単体で長さ4.7m以下、幅1.7m以下、高さ2.0m以下で、かつ最高速度が15km以下以下の場合には、農業機を装着した状態で車両の幅1.7mを超えないことが条件です。3. 速度の制限
農作業機を装着すると、トラクターの傾斜角度が変わり、安定性の保安基準を満たせなくなることがあります。安定性を保つために、15キロ以下で走行しなければなりません。大型特殊免許でも走行できない場合
ロールベーラーやマニュアスプレッダ、トレーラーなど、けん引型の農作業機を取り付けて公道を走ることはできません。運転免許証がいらないケースも
トラクターを圃場内のみで運転する場合は、運転免許は必要ありません。大型特殊自動車免許を取りに行こう!
ここからは、大型特殊自動車免許の取得方法について解説します。大型特殊自動車免許の適正条件
満18歳以上で視力が片目で0.3以上、両目で0.7以上あり、聴力や運動能力にも問題ない人は大型特殊自動車免許を取得できます。現在、何の免許を持ってる?
大型特殊自動車免許は、自動車学校・教習所のほか、農耕車限定の場合は農業大学校やJAの研修でも取得できます。取得方法、費用、取得までの期間は、現在所有している免許の種類によって異なります。何も免許を持っていない場合はお金も時間もかかる
普通自動車運転免許も取得していない場合でも、大型特殊自動車免許を取得できます。現在何も免許を持っていない状態で大型特殊自動車の免許を取得する人は、技能12時間、学科22時間の講習を受けなければなりません。免許取得のための費用は約22万円です。
普通自動車運転免許を持っているなら学科免除・技能の6時間でOK
普通自動車運転免許をすでに取得している人は、学科が免除され、さらに技能も6時間のみで免許を取得することができます。免許取得のための費用は約13万円です。自動二輪免許を持っている場合は学科免除・技能10時間
自動二輪免許を所有している人は、学科免除、技能10時間で大型特殊自動車免許が取得できます。費用は約15万円です。免許取得の流れ
大型特殊自動車免許を取得したい時は、自動車学校か教習所に免許取得の申し込みを行います。現在の免許の取得状況に合わせて、学科と技能の講習を受けます。自動車学校または教習所を卒業した後は、運転免許試験場で検査や手続きを行い免許証を交付してもらいましょう。運転免許試験場で直接取得する方法もある
自動車学校や教習所に通わずに、運転免許試験場で直接免許を取得する方法もあります。この方法の場合、自動車学校や教習所と免許取得までの流れが異なります。まずは警察署にて運転免許申請書を作成して、申請書を持って運転免許試験場で学科試験を受験してください。学科試験後、適性検査と技能試験を受験します。それぞれ合格すると、免許証が交付されます。運転免許試験場で免許を取得したい場合には、事前に試験場に問い合わせ、試験が可能かどうか確認しておきましょう。
普通自動車運転免許の所有者が自動車学校で大型特殊自動車免許の講習を受けた例
筆者は、普通自動車運転免許を取得した数年後に、自動車学校で大型特殊自動車免許の技能講習を受けています。当時、仕事の合間に自動車学校に通い、ホイールローダーで技能講習を受けました。実際の講習で感じた注意点を紹介します。
講習時の注意点
大型特殊自動車免許の技能講習では、普通自動車の講習と異なる点がいくつかあります。まずバケットの操作です。圃場内でトラクターを運転している人には慣れた動作ですが、初めての場合には難しく感じるかもしれません。また、車体にサスペンションがないため振動が直に伝わり、直線の走行がふらつきやすくなります。
講習で使用するホイールローダーは中折れ式で、内輪差がないのも特徴です。右左折の際やバックで駐車する際には、ハンドルの切れ角と実際の切れ角が一致しないこともあり、慣れるまで少し時間がかかるかもしれません。
バックの際には、ミラーだけで確認せず、直接後方を見ながらハンドルを調整しましょう。
卒業検定での注意点
6時間の講習が終わったら、卒業検定を受けます。実際に卒業検定を受けた際、驚いたのが「技能講習の際に先生がわざわざ教えていないことにも注意しなければならない」という点です。すでに普通自動車免許を取得している人は、基本的な運転操作や運転前に必要な動作が身についています。例えば、車体に乗り込む前に周囲を確認して、ミラーを見る。左折の際には巻き込みを確認するなどです。
運転の基本を忘れずに卒業検定に臨みましょう。
大型特殊免許を取得したら取っておきたい農業機械士
大型特殊免許を取得した後は、農業機械の運転・操作や安全管理についての知識や技術を有していることを示す資格である、「農業機械士」を取得するのもおすすめです。農業機械士は、都道府県が農業者や農業指導者に与える資格で、18歳以上の大型特殊免許の所有者でなければ取得できません。
農業機械士の資格は、農業法人への就職などにも役立ちます。
大型特殊自動車免許を取得して仕事に役立てよう
農耕用トラクターの運転以外にも、農業をするなら取っておいて損はない大型特殊自動車免許。普通自動車運転免許の所有者なら、6時間の講習と運転免許試験場での検査・手続きだけで免許が取得できます。免許取得のための費用は13万円~22万円ほどです。大型特殊自動車免許の取得費用を補助してくれる就職先も多くあります。これから農業に取り組みたいのなら、取得しておくことをおすすめします。