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今回は、次世代施設園芸で大玉トマトを栽培するイオンアグリ創造株式会社埼玉久喜農場で栽培リーダーを務める入社4年目の松澤尚樹さんに、農業法人へ就職した経緯や、従業員としてチームで農業に関わる魅力や難しさについて話を聞きました。
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施設園芸のトマト栽培に魅せられイオンアグリ創造株式会社に入社するまで
松澤さんは、農業に関わる仕事に就くことは念頭になかったものの、植物が好きという理由で農業高校に入学しました。何か農業を職業にしたいと考えたきっかけがあったのでしょうか。また、独立就農をせず、雇用就農を選び、イオンアグリ創造株式会社 埼玉久喜農場に入社した理由は何でしょうか。イオンアグリ創造株式会社 埼玉久喜農場の概要
イオンアグリ創造株式会社 埼玉久喜農場
所在地:埼玉県久喜市
栽培品目:大玉トマト(3.3ha)
栽培方法:隔離培地での施設養液栽培、低段密植栽培を採用
従業員数:正社員10名/パート従業員約90名
販売先:主に関東圏のイオン、まいばすけっと、ビッグ・エー、マックスバリュ、アコレ、ダイエー
年間休日:125日(うち20日は長休:連続5日以上の休暇を取得)
Webサイト:イオンアグリ創造株式会社
Instagram:イオン農場
お話を聞いた人
プロフィール:栽培リーダー 松澤尚樹(まつざわなおき)さん
略歴:長野県の非農家出身の24歳。
農業高校卒業後に農業大学校に進学。
2018年にイオンアグリ創造株式会社 埼玉久喜農場に正社員として入社
2021年4月より栽培リーダーとして活躍
農業高校を選んだきっかけは植物好き
長野県の非農家出身の松澤さんは、農業高校へ進学しましたが、その時点では農業に関する仕事に就くことを具体的にはイメージしていませんでした。農業大学校時代には「施設・トマト」に興味関心
3年間、農業高校で農業にどっぷりつかった松澤さんは、卒業する時点で、「農業関係の仕事がしたい」と考えるようになりました。高校卒業時には農業関連企業への就職も視野に入れましたが、さらに農業経営についても学びたいと考え、2年制の農業大学校へ進学します。松澤さんが選択した大学校は、有機認証機関でもあり、有機農業に力を入れていました。
独立か就職か|イオンアグリ創造株式会社を選んだ理由は
松澤さんは、農業大学校の卒業時には独立就農も検討したと話します。なぜ大企業が母体の農業法人への就職を選んだのでしょうか。また、数ある農業法人の中からイオンアグリ創造株式会社 埼玉久喜農場に決めたポイントはどこにあるのでしょうか。
作業オペレーションで基礎を固め、周りの信頼を得て4年目で栽培リーダーに
イオンアグリ創造株式会社埼玉久喜農場に入社した松澤さんですが、初年度は選果などの作業が中心だったと言います。やりたいことをすぐにはできませんでしたが、松澤さんはやる気を失わず一生懸命に作業に取り組みました。それは、松澤さんを支え、背中で引っ張っていく人たちの存在も大きかったと話します。作業中心の1年目の松澤さんを支えたのは?
栽培知識を学びたくて2018年に入社したものの、1年目は作業が中心の日々を送りました。これまでの知識を活用し、新たな知見を得たいと入社した松澤さんが、モチベーションを維持できた理由は何だったのでしょうか。自分の中で折り合いがついていたことに加え、上司など周りの人たちのサポートも大きかったようです。
作業に専念して得たものは?
さらに、作業をして得たものがあると松澤さんは言います。それは、1年間、パート従業員と一緒に作業をする中で、お互いに信頼関係を築くことができたことです。栽培リーダーとしてやるべきことは?
松澤さんは、入社2年目からは栽培に深く関わるようになり、年々任される業務が増えていきました。そしてついに、2021年4月からは栽培リーダーとして栽培管理をすることになりました。よりよい栽培の仕組みを構築すると同時に、上司たちが松澤さんにしてきたように、今度は松澤さんが後輩たちを支え教育し、栽培管理ができる社員を増やしていく重要な役割を担っています。上司の農場長から見る松澤さんは?
久喜農場の農場長である髙橋寛さんは、栽培の中核を担う松澤さんのことを以下のように見ています。農場長が考える松澤さんの良さ
・一緒に働く人たちを慮る(おもんぱかる)ことができ、彼のまい進を周りが支えたいと思っている。
・栽培チームが持つ不満や課題、より利益に結びつけるための改善点を洗い出すことができる。
・今までのやり方だけに固執しない。
・改善するために仮説→計画→実行→効果測定を繰り返して成果の良し悪しを判断する力もある。
チームで栽培をするとは?|企業農業のおもしろさとジレンマ
イオンアグリ創造株式会社 埼玉久喜農場には、現在10名の正社員が勤務しています。農場長、松澤さんも所属する栽培班、選果班、施設修繕担当に分かれています。栽培班は、統括として副農場長、松澤さんを含めて栽培リーダーが2名、担当が1名の計4名で構成されています。また、今後は新入社員の数名も栽培班に加わる予定です。パート従業員は90名ほどで、60歳以上が60%を占めます。この状況において、チームで農業をするおもしろさと難しさについて松澤さんに話を聞きました。チームで農業をする楽しみと難しさ
松澤さんは、日々変化するトマトの樹の姿や形を見ていることが楽しいと話します。それだけでなく、農業の魅力は、モノを作っている実感がわき、それが会社の収入につながっていくことも手に取るようにわかることだと言います。チームで農業をすると、人ごとに細かい作業のやり方や結果が異なり、平準化をすることが難しいそうです。その反面、松澤さんは、栽培する人によるバラツキを減らすことを目標に工夫を続けられることがチームで農業をする楽しみでもあると話します。チーム内でどのように情報共有をしている?
久喜農場では、シフト制で出勤日が毎日同じになるとは限りません。そんな中で、オンライン、オフライン共にチームで綿密な情報共有を行い、共通認識を持つように心がけているそうです。久喜農場の魅力は、一丸となって上を目指しているところ
松澤さんが久喜農場のどこに魅力を感じているかと言うと、「みんなで上を目指して進んでいるところ」だと話します。2017年の開場以来、収量や収益が増加し続けているのはもちろんのこと、農場をよりよくしていこうとする姿勢が好きだと言います。従業員であることの葛藤
従業員として農業に携わる中で、葛藤を感じたこともあると松澤さんは話します。それは、企業に雇用される形で農業をするメリットとしてあげられることが多い「安定収入」についてです。もちろん、安定的な収入は、収入が不安定だといわれている農業という産業において、大きなメリットではありますが、松澤さんはかつてそれにもどかしさを感じた経験があると言います。雇用される形で実現できたこと、これからやりたいこと
雇用される形で農業法人で働くと、「自分のやりたいことができない」というイメージを持たれがちですが、松澤さんはそうではないと言います。イオンアグリ創造株式会社のことをどのように見ているのでしょうか。具体的に、松澤さんが今までに実践した改善は、細かいことから大きなことまでさまざまだと言います。新しいことにチャレンジすることは、リスクも伴いますが、そのリスクを検証によって定量化しながら久喜農場も松澤さん自身も変化を続けています。
最後に、今後松澤さんが挑戦したいことについて聞きました。
イオンアグリ創造株式会社には、後継者や独立志望の人も働いているそうです。松澤さんのように、個人ではできない規模の農業を通じて、農業を発展させたい、リスクを考えながらも、現状に満足せず新しい目標に向かっていきたいと主体的に行動できる人にとっては、雇用される形での就農もおもしろい農業への関わり方でしょう。
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