目次
農業の年収はどのくらい?
2021年2月に農林水産省が発表した農業経営統計調査の結果によると、2019年の個人経営体の平均農業粗収益は約666万円となっています。民間企業の給与の平均が436万円(令和元年分民間給与実態統計調査)なので、多く感じるかもしれませんが、サラリーマンの給与と違い、農業の年収は事業収入となります。経費を差し引いた農業所得は約115万円との調査結果が出ています。個人経営体の主業農家の農業所得は?
農業を営む個人経営体のスタイルはさまざまで、その所得の中で農業所得がどの程度の割合を占めるかによって、主業農家、準主業農家、副業的農家に分けられます。このうち、農業所得が主(農家所得の 50%以上が農業所得)の主業農家に限ってみると、農業所得は約408万円となっています。農業年収が1,000万円以上のケース
農業で年収1,000万円を目指すことはできるのでしょうか?1,000万円以上の農業所得を得るには、ある程度大きな規模で営農する必要があります。農業経営統計調査の営農類型別経営統計によると、農業所得の平均が1,000万円を超えるのは、水田作と畑作では作付け延べ面積が20ha以上、露地野菜では5ha以上、施設野菜では1ha以上の区分となっています。北海道で1億円以上稼ぐ農家をはじめトップランナーたちの本音とは?
農業年収の営農類型別ランキング
個人経営体の農業所得は、営農類型ごとに大きな差があります。最も農業所得が多いのは、酪農経営の820万円です。一方、農業所得が最も低かったのは水田作経営で12.8万円となっています。ただし、水田作経営は労働時間もほかの業種に比べて格段に短いという特徴があります。また、野菜や花きの生産については、露地栽培よりも施設栽培の方が所得が高いことがわかります。区分 | 農業粗収益(万円) | 農業経営費(万円) | 農業所得(万円) | |
1 | 酪農経営 | 6,140.0 | 5,320.0 | 820.0 |
2 | ブロイラー養鶏経営 | 8,093.7 | 7,419.0 | 674.7 |
3 | 養豚経営 | 5,505.1 | 4,917.3 | 587.8 |
4 | 施設野菜作経営 | 1,459.1 | 1,056.8 | 402.3 |
5 | 繁殖牛経営 | 1,606.1 | 1,276.7 | 329.4 |
6 | 施設花き作経営 | 1,436.9 | 1,122.4 | 314.5 |
7 | 肥育牛経営 | 6,422.8 | 6,190.0 | 232.8 |
8 | 畑作経営 | 1,005.7 | 780.8 | 224.9 |
9 | 果樹作経営 | 604.1 | 422.6 | 181.5 |
10 | 露地野菜作経営 | 841.0 | 666.6 | 174.4 |
11 | 露地花き作経営 | 688.8 | 518.5 | 170.3 |
12 | 採卵養鶏経営 | 3,427.1 | 3,360.6 | 66.5 |
13 | 水田作経営 | 274.2 | 261.4 | 12.8 |
レンコン農家やトマト農家の年収や仕事内容をチェック!
農業法人に正社員で雇用される場合の年収|就職・転職するときの注意点
ここまでのデータは、自営の農家の年収ですが、農業法人などに雇用された場合の年収はどのくらいなのでしょうか。給与は農業法人によってさまざまですが、傾向を探るため、ハローワーク インターネットサービスに掲載されていた求人情報を10件ピックアップして、年収を推定してみました。主に仕事内容が栽培業務の給与は以下のとおりでした。法人名 | 基本給(月額、円) | 賞与 | 推定年収 |
A | 220,000 | なし | 2,640,000 |
B | 172,000 | 3カ月分 | 2,580,000 |
C | 210,000 | なし | 2,520,000 |
D | 180,000 | 2カ月分 | 2,520,000 |
E | 185,000 | 30,000円 | 2,250,000 |
F | 170,000 | 200,000円 | 2,240,000 |
G | 160,000 | 2カ月分 | 2,240,000 |
H | 170,000 | なし | 2,040,000 |
I | 142,800 | なし | 1,713,600 |
J | 138,240 | なし | 1,658,880 |
給与に関する注意点
・基本給の額が低くても、賞与によって年収が高くなる場合も。ただし、賞与は業績によって変動したり、制度があっても支給実績がない場合があるので、就職前によく確認する必要があります。
・将来的に長く働く場合には、昇給がどの程度行われているのかも知っておきたいものです。農業転職サイトなど就職エージェントのサービスを活用すると、賞与や昇給の実態を確認しやすいかもしれません。
転職のプロのアドバイスはこちら
農業を副業とした場合の年収は?
農業を副業とする場合には、どのくらいの収入を得られるのでしょう。自営の場合(兼業農家)とアルバイトの場合について考えてみます。兼業農家の場合
ほかに主な仕事をもっている兼業農家の年収については、農林水産省が実施した2018年の経営形態別経営統計(個別経営)を参考にしてみましょう。この統計では、準主業農家と副業的農家という定義でそれぞれの平均農業所得が算出されています。区分 | 定義 | 農業所得 |
準主業農家 | 農外所得が主(農家所得の50%未満が農業所得)で、 1年間に60日以上自営農業に従事している65歳未満の世帯員がいる農家 | 417,000円 |
副業的農家 | 1年間に60日以上自営農業に従事している65歳未満の世帯員がいない農家 | 565,000円 |
副業のスタイルもいろいろ「週末農業」「半農半X」
農業アルバイトの場合
農業アルバイトの時給は農園によって異なりますが、各都道府県の最低賃金が設定されていることもあります。例えば、2020年度の北海道の最低賃金を基に、週20時間働いた場合について、計算してみましょう。(例)時給861円(2020年度北海道の最低賃金)で1日5時間、週4日、1年間働いた場合
861円×20時間×52週=895,440円(税引き前)
(例)日給10,000円で週6日、6月から9月まで(約17週)働いた場合
10,000円×6日×17週=1,020,000円(税引き前)
農業アルバイトや農業ヘルパーについて知ろう
独立することで年収を上げることが可能に
農業でどのくらいの年収を目指すのか。それは、人それぞれ置かれている状況により異なります。例えば、年金収入がある、別の仕事を持っている、自分以外の家族が主な収入源を持っているような場合と、農業だけで世帯収入を得ようとする場合には、目指す年収も変わってくるでしょう。農業で年収をできるだけ上げることを考えるのであれば、やはり独立して農業経営をすることが最も有力な道筋といえます。規模を拡大したり、ブランド化や六次産業化、コストの削減などの工夫を行うことで、可能性が広がっていきます。AGRI PICKでは、夢を持って新規就農した人たちの就農体験談を掲載していますので、ぜひご覧ください。