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- AGRI PICK 編集部
AGRI PICKの運営・編集スタッフ。農業者や家庭菜園・ガーデニングを楽しむ方に向けて、栽培のコツや便利な農作業グッズなどのお役立ち情報を配信しています。これから農業を始めたい・学びたい方に向けた、栽培の基礎知識や、農業の求人・就農に関する情報も。…続きを読む
ゼラニウムの特徴と種類
ゼラニウムは、ペラルゴニウム属に分類される非耐寒性で宿根性の草本植物です。現在、園芸用に栽培されているほとんどは、アフリカ南部の温暖で乾燥した地帯に自生している品種から改良が進んだものです。
ゼラニウムの茎や根は乾燥に耐えるため、養分や水分を貯蔵できるように肥大しています。
高温多湿の日本の夏は苦手なので、花壇に植える花というよりも鉢植え栽培に適しています。
ゼラニウムの豆知識
「ゼラニウムなの?ペラルゴニウムなの?」と、ゼラニウムは園芸で使われている名称と植物分類学上とで名前が混同することがあります。今回紹介するゼラニウムは、かつてゼラニウム属に分類されていましたが、後にペラルゴニウム属に分類されたため、園芸名はゼラニウムですが学名はペラルゴニウム(Pelargonium)です。
一方、植物分類学上でゼラニウムといえば、日本に自生する植物ではゲンノショウコなどのフウロソウ科フウロソウ属(Geranium)がそれにあたります。
植物名 | ゼラニウム |
別名 | ペラルゴニウム |
和名 | テンジクアオイ(天竺葵) |
学名 | Pelargonium |
英名 | Geranium,Pelargonium |
科名 | フウロソウ科 |
属名 | ペラルゴニウム属 |
原産地 | アフリカ南部 |
ゼラニウム
園芸で使われている名称はゼラニウム、和名ではモンテンジクアオイと呼ばれています。花は四季咲きで、咲き方は一重咲きから八重咲き、葉は斑入りや草丈も矮性など種類が多く、挿し芽によって繁殖する系統や、種子で繁殖する系統など多様に栽培されています。
最近ではもみじのような葉をもつ、もみじ葉ゼラニウムという品種が人気です。
ペラルゴニウム(ミルフィーユローズ)
一般的にペラルゴニウム属は、ゼラニウムと呼ばれていますが、開花期が4〜7月の一季咲きのものはペラルゴニウムと呼ばれています。ゼラニウムよりも大輪で、一重から半八重咲きの花が咲き、花の中心にブロッチと呼ばれる模様が入るものや、花弁にフリルのあるミルフィーユローズなどがあります。
アイビーゼラニウム
アイビー(セイヨウヅタ)に似た葉の形や、葉と茎が下に垂れるようにして伸びていくことからアイビーゼラニウムと呼ばれ、ハンギングやトレリスなどに茎を這わせるように育てる品種です。四季咲き性で花色も多彩、一重咲きや八重咲きが栽培されています。
センテッドゼラニウム(ニオイゼラニウム)
センテッドゼラニウムは芳香と花の美しさを持ち合わせるものが多く、観賞用として花壇や鉢花として栽培されます。春から初夏に咲く一季咲きの品種が多くありますが、四季咲きの種類もあります。
ほかのゼラニウムと違い、化粧品に使われる精油の原料になったり、香りの良い葉を乾燥させてクッキーなどの料理に使用したりすることができます。
芳香はローズ系、柑橘系、フルーツ・ナッツ・スパイス系、ミント系以外にもパインなど、さまざまな種類を楽しめます。
パンジーゼラニウム
パンジーのような花をつけることから、パンジーゼラニウムという名がつけられました。ゼラニウムの中でも高温多湿に弱い種類なので、夏越しがほかのゼラニウムに比べて難しい種類です。
湿気を溜め込まないように浅めの鉢に植え、雨になるべく当てないように育てます。
カリオペ
ゼラニウムの女王と呼ばれる「カリオペ・ダークレッド」。深紅の花色が特徴で、アイビー系とゾナル系が掛け合わされたハイブリット品種ともいわれています。耐暑性があるので、夏でも盛んに花を咲かせます。ゼラニウムは初心者でも簡単に育てられる?栽培前に知っておきたいこと
ゼラニウムは、種類によって種子から育てるものと、苗を用意して育て始めるものがあります。また、育てているゼラニウムを挿し木で増やすこともできます。ゼラニウムを育てる環境
日当たりが良く乾燥した比較的冷涼な気候を好みます。地植えで育てる場合は多湿が苦手なので、水はけや風通しが良い環境で育てます。梅雨があり真夏の気温が高い日本の気候を考えると、鉢植え栽培の方が育てやすい傾向があります。
生育に適した気温は昼間で18〜23℃、夜間は15〜18℃。27℃以上が続くと生育障害が発生します。特に夏の高温期の直射日光の強い場所は避けたほうが良いですが、育てる品種によって耐暑性、耐寒性などが違ってきます。
▼高温障害のことならこちらをご覧ください。
ゼラニウムの種
種子で繁殖する系統のほとんどがゼラニウムとアイビーゼラニウムです。発芽適温は20〜25℃で種まき後1週間ほどで発芽します。
種まきの時期
暖かくなってきた4〜5月が種まきの適期です。ゼラニウムの苗の選び方
葉の色が明るい緑色で、茎の根元付近から新芽が出始めている、節と節の間が短い徒長していない苗を選びましょう。苗の植え付け時期
5〜6月が適期ですが、9月の植え付けも可能です。▼ゼラニウムの品種についてはこちらをご覧ください。
ゼラニウムの鉢植え・プランター栽培
好みのゼラニウムの種や苗が決まったら栽培のスタートです!鉢植えで育てると梅雨期や秋の長雨の時に雨の当たらないところに移動できるので、多湿を嫌うゼラニウムには鉢植え栽培が向いています。
種まき
ゼラニウムとアイビーゼラニウムは種から育てることができる品種もあります。準備するもの|用土は排水性の良いものを
乾燥気味な土を好むので、排水性の良い用土を選びます。このほかに、小さくて発芽までの管理がしやすいセルトレイと3号位の育苗ポットを用意します。
種まきの手順
セルトレイに土を入れ、ゼラニウムの種を1粒ずつまきます。ゼラニウムは発芽後の管理がその後の苗の生育の良し悪しを決めるのでしっかり行いましょう。
発芽後の管理
種まき後、芽が出るまで乾燥させないように管理しますが、発芽後は水やりを控えめにして、15〜20℃位を目安に管理すると良い苗に育ちます。鉢上げ
本葉が1〜2枚で3号位の育苗ポットに鉢上げし、2〜3カ月位育苗してから鉢に植え付けます。苗の植え付け
種や挿し木から育苗した苗、購入した苗の植え付け方です。準備するものは種まきと同じです。ゼラニウムに合う鉢
感想を好むゼラニウムには、水はけのよいテラコッタなどの鉢が合います。素朴な風合いも色鮮やかなゼラニウムを引き立ててくれます。葉や茎が旺盛に育つので、同じ鉢で1株以上育てる場合は、株と株の間をしっかりあけられるくらい大きめの鉢を選びましょう。
苗の植え付け手順
上図のように鉢にゼラニウムの苗を植え付けます。根が活着するまでは水切れしないように気を付けましょう。ゼラニウムの地植え|気をつけるべき3つのポイント
ゼラニウムを地植えする場合は、多湿を避けることが大切です。1. 水はけや風通しが良い環境を選ぶ
2. 梅雨時期に株を切り戻す
3. 水やりは真夏の土が乾いたときだけ
ゼラニウムの日頃の管理・手入れ
ゼラニウムは高温多湿が苦手なので過湿に注意し、真夏の直射日光は遮光するか風通しの良い軒下などに移動します。花を咲かせる期間が長いので肥料も忘れずに与えましょう。
水やり
種まきしたゼラニウムは本葉6枚位まで生長してから、植え付けた苗は根が活着して後の水やりについて紹介します。鉢植えの水やり
過湿状態は根腐れの原因となるので、ゼラニウムは乾燥気味に育てますが、鉢植えは地植えよりも乾燥しやすく、乾き過ぎると下葉から落葉します。土の状態を確かめてから、適度な散水でゼラニウムの花付きや生育を良好にしましょう。
鉢植えの水やりは水を与えるだけじゃない!
鉢底から流れるくらい水をたっぷり与えることは、水分補給以外にも良いことがあります。
それは土中の空気の入れ替えです。
土の中にも酸素が存在しています。私たちの部屋でも時々空気の入れ替えが必要なように、植物も時々空気の入れ替えが必要です。
鉢底から流れてくるくらい水をたっぷり与えることで、土中の水分とともに空気を入れ替え、土中の状態を良く保ちましょう。
ゼラニウムの肥料
真夏と冬を避けた春と秋に緩効性肥料を与えるか、週に1度の液肥を施します。ゼラニウムの多くの種類は四季咲きの性質があります。花を咲かせ続けるためには肥料は欠かせません。特に鉢植えの肥料は忘れずに与えましょう。
ゼラニウムの病害虫
比較的育てやすいゼラニウムですが、土壌状態が過湿気味であったり、通気性が悪いことで病害虫が発生しやすくなります。病気
灰色かび病や炭疽病、茎腐病などにかかることがあります。咲き終わった花は摘み取り、被害部の茎をカットしましょう。害虫
アブラムシやスリップス、ヨトウムシ、ハマキムシの食害を受ける場合があります。見つけ次第駆除しましょう。ゼラニウムの開花後の管理
花が咲いたあとのゼラニウムの苗の管理のポイントを紹介します。花がら摘み
花が次々に咲くので、咲き終わって茶色くなってきた花や、黄色くなった葉を摘みとることで病気の予防につながります。摘心(摘芯)
苗を育てる場合や挿し木をする場合は、先端を切る摘心を行います。脇芽が生長し、株にボリューム感が出ます。切り戻し(草丈を適度に保つ剪定)
宿根草のゼラニウムは年々大きく生長していくので、大きくなり過ぎたときは、全体の3分の1くらいを切り戻します。仕立て直しなどの剪定作業は、苗に負担がかからないように真夏と冬を避けて行いましょう。
仕立て直し後に肥料
仕立て直しや、特に切り過ぎてしまった剪定を行ったあとなどは、切り口の回復や落葉を防ぐために液肥や活力剤を施して草勢を上げましょう。ゼラニウムの冬越し
ゼラニウムの冬越しのポイントを押さえて、翌年もお気に入りのゼラニウムを元気に育てましょう。北海道などの寒冷地では室内で冬越しさせます。冬越しに適した場所
ゼラニウムを上手に冬越しさせるためには、屋外、室内それぞれの鉢植えの置き場所にポイントがあります。屋外で冬越しする場合の置き場所
・雨に当たらない軒下
・暖かな日差しが入る南側
室内で冬越しする場合
・日光の当たる窓辺
・日差しはレースのカーテン越し
冬越し中の水やり
土が乾いてから水を与えますが、低温時の水やりは控えます。冬越し中の肥料
室内でも花を咲かせ続けている間は緩効性または液体肥料を与えましょう。鉢植えゼラニウムの植え替え
鉢の中で根詰まりを起こすと生育に影響が出るので植え替えましょう。ゼラニウムの植え替えの目安
次第に株が大きくなっていきますので、年に1回が目安です。ゼラニウムの植え替え時期
真夏や冬は株を傷めてしまうので、早春か秋が適期です。用意するもの
株をより大きく育てたい場合は、使用している鉢より一まわりか二まわり大きな鉢を用意します。鉢と株の隙間を埋めるための新しい用土、足りない分の鉢底石を用意しましょう。
植え替え手順
鉢から取り出したら、株についている土を3分の1ほど削り落とします。古い根も一緒に削り落とすことで発根を促します。準備しておいた鉢へ植え替えたら、鉢底から流れてくるくらいにたっぷりと水をあげましょう。
ゼラニウムの挿し木の手順
ゼラニウムは茎の一部を切り取って、挿し木で増やすことができます。茎頂は生育旺盛なので挿し穂に適しています。
挿し木の時期
春、または秋がおすすめです。発根の適温は20℃ほど。高温だと発根しづらくなりますが、最低でも10℃以上は必要です。
準備するもの
清潔な挿し木用の用土と3号位の育苗ポットを用意します。挿し穂の準備
花芽の付いていない枝を選び、茎のてっぺんから10〜15cm位のところで切り取ります。葉を3〜4枚ほど残して、ほかの葉は取り除き、大きい葉は蒸散のためしおれやすくなるので半分程度にカットします。
用土に差し込む部分は2cm位の浅植えにします。
発根までの管理
挿し木後はたっぷり水を与え、直射日光を避けた半日陰で管理します。ほとんどのゼラニウムは20〜30日ほど、アイビーゼラニウムは15日前後で発根します。水切れしない程度に乾き気味に管理をし、徐々に太陽の光に慣らしていきます。
根が十分に張ったら
育苗ポット内にしっかり根が張ったら鉢に植え付けます。手順は苗の植え付けと同じです。▼挿し木のことならこちらの記事もご覧ください。
ゼラニウムの楽しみ方
鉢植え以外のゼラニウムの楽しみ方を紹介します。切り花
特に香りの良いセンテッドゼラニウム(ニオイゼラニウム)は、株から切り離しても芳香が続きます。部屋の中で爽やかな香りを楽しみましょう。▼ゼラニウムの花の楽しみ方ならこちらの記事もご覧ください。
寄せ植え
アイビーやローズマリーなど、ゼラニウムと似た温暖で乾燥を好む植物との寄せ植えもおすすめです。ドライにしてポプリなどに
センテッドゼラニウムの葉をドライにして、お茶パックなどに入れてから布で包んでポプリにします。クローゼットの中や、カバン入れて爽やかなセンテッドゼラニウムの香りを楽しみましょう。ゼラニウムにまつわるQ&A
Q. 花が咲かない場合はどうすればいいの?
日光不足や水のやり過ぎ、肥料不足、病気や害虫などが考えられます。鉢の中で根詰まりが起きているようなら、切り戻しや植え替えを。
Q. 茎がスカスカで枯れそうな場合はどうすればいいの?
切り戻しを行い、株をリフレッシュさせましょう。完全に枯れている茎は除去します。