近年、IPMの一端として、光を用いた農作物の病害虫防除「光防除」が注目を集めています。「光防除」は極端な農薬利用や作業者の過度な負担が必要ない、持続可能な農業生産につながる新たな可能性の一つです。中でも紫外線UVBを用いた病害虫防除は、その有効性が認められ実用化が急激に進み、今後の普及が期待されています。福岡県にある楽農ファームたけしたは、病害虫で苦労した経験からUVBを導入し見事に防除を成功させ、生産性を劇的に上げた農家さんです。今回はUVBによる防除の説明と合わせて、武下さんにインタビューすることができました。ここではインタビュー内容を通してUVBを用いた光防除の実用性・有効性をご紹介します。
※IPM(Integrated Pest Management)とは、農作物に対する有害生物の制御において総合的に病害虫防除・雑草管理を行うこと。
イチゴを守るUVB(紫外線)電球とは
イチゴはうどんこ病やハダニの発生など、その生産において防除対策が必須となる作物の一つです。この病害虫防除に紫外線(UVB)照射が大きな効果を発揮することが分かっています。農薬のように薬剤抵抗性発達の懸念がなく、品質向上も期待できることから、さらなる普及が期待されています。ここでは実際の応用事例を紹介する前に、そもそもUVBとは何か、なぜ病害虫を防除できるのか、農業生産における投資効果はどうなのか、についてご説明します。
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UVBとは
紫外線(UV)は太陽光中に含まれる400nm以下の波長の光のことを言います。その中でも、波長の長さによってUVA(315~400nm)、UVB(280~315nm)、UVC(280nm以下)に分類されます。太陽中に含まれるUVCは、その波長が短く、高エネルギーですがオゾン層によって吸収されるため地上には届きません。一方、中波長以上の波長の長さを持つUVについては、UVAとUVBの一部が地上に降り注ぐことがわかっています。特に中波長の紫外線UVBは高いエネルギーにより、人間活動に対して、殺菌作用・ビタミン生成効果などのメリットと日焼け・DNA損傷の原因などのデメリットを持っています。
UVBで病害虫を防除
UVBで、うどんこ病からイチゴを守る
UVBでハダニからイチゴを守る
UVB照射がハダニを直接殺したり、その発生を抑えたりすることがわかっています。ハダニは普段は葉の裏側に存在するので、上からUVBを照射するだけではハダニまで届かず、防除効果が現れないことがあります。そのような場合には、反射材を利用したり、天敵生物を放飼したり、とほかの防除法などとうまく併用して被害を抑えることができます。
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夜間照射が有効
ハダニやうどんこ病菌を含む生物には、「光回復効果」という現象が存在します。光回復効果とは、UVBなどの目に見えない紫外線によるダメージを、可視光のエネルギーを利用して回復することをいいます。
UVB防除の費用対効果
その高い防除効果が明らかとなってきているUVBですが、実際の農業現場で利用する上では、導入のための初期費用が高いことが最も大きなハードルとなります。
ですが、一旦導入すれば農薬の使用量が大幅に減少し、収量が大きくUPすることが見込まれます。これについては、実際に経営収支のモデルが立てられて検証されており、UVBによる農業所得の増加で導入に係る初期費用は初年度で回収可能であることが示されています。
参考:紫外線照射を基幹としたイチゴの病害虫防除マニュアル(農研機構)
UVB効果について、イチゴ農家さんにインタビューしました
武下浩紹(たけした ひろつぐ)
株式会社楽農ファームたけした代表取締役。産直農家として、「イチゴで感動を届けたい」という想いを胸に、おいしいイチゴを作るために日々研究・奮闘している。
ブログ「苺一愛(いちごいちえ)」にてそのイチゴ愛を発信中。
UVBの導入に至るまでの経緯
初期導入費用が高いことがハードルになりがちなUVB防除ですが、導入を決めるきっかけなどはあったのでしょうか?

そこでUVB導入を考えました。初期導入費用が大きかったのですが、うどんこ病による損失金額に比べるとマシだと思いました。うどんこ病で1,000万円の損失がこの先、毎年続いてしまうリスクを考えると安いと感じたんです。これを導入してうどんこ病が少しでも軽減できるのであれば導入する価値があると思って導入に踏み切りました。
UVBの導入によるうどんこ病への効果
実際に導入して、うどんこ病に対する効果はいかがでしたか?

UVBの導入による費用対効果

ハダニへの効果
ハダニの被害に対する効果はいかがでしたか?

天敵カブリダニもUVBでやられないかな、と少し疑問だったんですが、ハダニが発生しているのだからカブリダニも大丈夫だろうと思い、そのまま放飼しました。UVBと天敵ダニを合わせて使ってからハダニが大きく被害を広げるようなことはないです。
ハダニは毎年苦労するんです。毎年、天敵ダニを導入するんですが、今回UVB照射だけの状態でも発生は少ないなと感じました。ただ、うちの場合は、それだけでは抑えきれなかったので天敵ダニを合わせて使って防除しています。
UVB導入で日々の不安が解消された
UVBを導入してほかに良かったことはありますか?

ハウス内のうどんこ病の胞子はなかなか取り除けません。ハウスをあけて換気しようとすると、カビの胞子が舞い上がって拡散してしまいます。一方、ハウスをあけなければ、中でモヤモヤしてしまう。手の打ちようがなくとてつもない不安があったんですが、このUVBランプを照らし続けることでもう悩まなくてよくなる。これだけで全然気分が違います。
生産への効果は絶大!UVB導入による品質や売上について
品質への効果は絶大
国の害虫防除プログラムでは、UVBの効果として品質向上の可能性についても着目されています。武下さんのイチゴでは品質への効果は確認できましたか?

また、仕様書にはうどんこ病・ハダニへの防除効果しか記載がなかったのですが、電照としての効果もあるんじゃないかと思ってます。11月中旬ぐらいから、UVB夜間電照を始めたんですが、株がいつも以上に伸び過ぎるんです。普段から日中の電照時間は短めに設定してるんですが、あまりにも伸びるので、通常の電照を切りました。結果的に1月中旬ごろまで、日中の電照時間はゼロです。UVBが普段利用している電照としての効果も発揮して、生育を促したんだと思います。
玉の大きさ、花のつき具合にも効果が
果実や花の様子はいかがでしょう?

花の付き具合も花がついている枝が大きいので、ひょろひょろしておらず、しっかりとしたものがついています。花数が多くても、果実はしっかりした大玉になるのでとても栄養状態がいいんだと思います。
UVB照射の効果で葉が分厚くて強い、花も強く、果実も肥大するようになっているのであれば、うどんこ病やハダニの防除だけでなく生育促進効果についても、きっと研究の価値があるんじゃないかって思います。
売上にも効果が
UVBによる防除がまだまだ普及していない理由の一つに、投資効果がどれほどのものか、売上にどれほど貢献するのかが、わかりにくいことがあると思います。武下さんの農園ではUVB防除の売上への効果はいかがですか??

農家が幸せに暮らしていけるような仕組みづくりを
今後の夢や展望など、お聞かせください。

メーカーの皆さんと組んで最新の技術を応用しながら、農家が本当に幸せに暮らしていけるような仕組みづくりをしていきたいです。やっぱり自分が一番幸せになりたいので、そのためにも同じ業界の仲間でいろんな人とシェアしながら技術を効果的に使えるようにしていきたい。学者さんが良い技術を開発しても現場で使えなければ意味がないので、研究者の皆さんの学科と農家の実地の連携を深めていきながら、業界の発展に貢献したいと思っています。今回パナソニック株式会社さんとUVBランプを通じて人間関係ができたことは、将来に向けての財産になると思います。そういう風に組むことの大切さを感じられる農家を自分も応援したいと思います。





























