このGAPには大きく分けて3つの種類があり、それぞれ認証を受けるための基準や内容が異なります。ここでは、GAPとはどのようなものなのか、認証基準や種類についてご紹介します。
GAP(農業生産工程管理)とは「よい農業の実践」に向けた取り組み
GAPとは、「Good Agricultural Practice」の略語で、「より良い農業経営の実現」という意味を持ちます。持続可能な農業生産に向け、農作物に対する安全性だけでなく環境保全や労働安全、人権保護や農場経営管理への取り組みを記録、掲示、確認し、改善しながらより良い農業経営を目指すのがGAPです。GAPで何が変わるのか
農場にGAPを導入することで、次のような効果が見込めます。効果の内容 | 効果があったと答えた農業者の割合 |
品質の向上 | 45% |
資材の不良在庫の削減 | 54% |
作業時間・作業事故件数の改善 | 30% |
従業員の責任感・自主性の向上 | 70% |
従業員間の意思疎通の改善 | 56% |
生産コストの削減 | 37% |
欠品や在庫の減少 | 40% |
GAPを導入した農場にどのような経営改善効果があったのかアンケートを取ったところ、従業員の責任感や自主性が向上すると答えた農場が約7割、販売先への信頼や品質が向上したとする農場はそれぞれ約5割という結果になりました。そのほかにも、不良在庫の削減や生産コストの削減など経営に好影響とする回答が多くあります。
GAP手法の実践の仕方
GAPでは具体的に次のような取り組みを行います。まずは普及指導センターや農協に相談する
GAPに取り組む際は、事前に普及指導センターや農協に相談してみましょう。GAPに対する指導やアドバイスを行える普及指導員や農業指導員もいます。GAPの基礎を無料で学べるオンライン研修
農林水産省のWebサイト「これから始めるGAP」にて、事前にGAPについての学びを深めておきましょう。GAPの基本や始め方を知ることができます。目標とルールを策定する
GAPでは、実践する農業者自身が目標やルール、実践するうえでの基盤づくりを行います。GAP認証の基準書を参考にしつつ、点検項目や規定を法令に沿った形で決め、農場に適したルールを作りましょう。整理整頓・記録からはじめる
GAPの基本は整理整頓と生産履歴の記録です。倉庫内の備品や農薬、肥料などの物品を整理し、どこに何があるのかを誰でも把握できる状態にしておきます。また、毎日の作業内容を記録する癖をつけるようにしましょう。農場内の点検と問題点の改善を実行する
次に、農場内をくまなく点検して、問題点を見つけたら順次改善していきます。・食品に異物が混入しない体制になっているか
・農場に立ち入る人へ衛生指示をしているか
・農薬の空容器を分別して処分しているか
・余った農薬や液肥の管理は適切か
・労働中のケガや事故につながる場所・機械がないか
・農業機器の整備・点検を行っているか
・家族経営協定の締結を行っているか
・技能実習生の作業条件を遵守しているか
などを改めて確認しましょう。
次のステップ:GAP認証を取る
GAPへの取り組みを実践するだけでも農業経営の改善に役立ちますが、GAP認証を取得すると「GAPを実践している」ことを証明できるようになります。大手流通との取引では、GAP認証を求められるケースも増えています。GAP認証は、審査会社に申し込み、審査員に取り組みを評価してもらうことで取得できます。取り組みの中に問題があれば、審査員が適宜指摘してくれます。
GAP認証には種類がある!3つのGAPとは
GAP認証には、GLOBALG.A.P.、ASIAGAP、JGAPの3種類があります。JGAPおよびASIAGAPは一般財団法人日本GAP協会が運営しており、GLOBALG.A.P.はドイツのFood PLUS GmbHが運営母体で、主にヨーロッパで普及しているGAPです。いずれも東京オリンピック・パラリンピックの調達基準を満たす認証です。GAP認証 | JGAP、ASIAGAP | GLOBALG.A.P. |
運営主体 | 一般財団法人日本GAP協会 | Food PLUS GmbH |
審査会社 | ・AFC インターナショナル株式会社 ・一般社団法人日本能率協会審査登録センター(JMAQA) など | ・日本オーガニック&ナチュラルフーズ協会 ・テュフズードジャパン など |