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- AGRI PICK 編集部
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この記事では、そんないちじくの育て方をくわしく解説。収穫後のお楽しみ、いちじくを使ったおすすめレシピも紹介します!
いちじくとは?
いちじくは、アラビア半島南部を原産とする、クワ科イチジク属の落葉低木です。原産国は温暖な亜熱帯地域であることから、寒さにはあまり強くありません。いちじくの果実の肥大・成熟は、一般的に夏〜秋にかけてあり、これを「秋果」と呼びます。ここに間に合わなかった果実は、一旦生長を止めて、翌年の夏、6〜7月頃に肥大を再開します。これを「夏果」と呼びます。「いちじくは1年に2回収穫できる」といわれますが、それは冬によって子実の肥大のタイミングが分断されただけなのです。したがって、実がなる順番としては、「秋果」→「夏果」の順番になります。品種によっては、「秋果専用」「夏果専用」「夏秋兼用種」というものもあります。
いちじくの魅力
豊富な栄養価
いちじくは古くから世界中で栽培されてきました。その理由の一つとして、高い栄養価があげられます。バランスよくビタミン類を含み、食物繊維も豊富。美容・健康の両面において、大変有用な果物なのです。それが、「不老長寿の果物」といわれる所以なのです。初心者でも簡単に栽培できる
いちじくは、ほかの果樹に比べて樹勢が強いため、さまざまな剪定や整枝をしても、果実がつかなくなることはありません。したがって、庭先のスペースや形に合わせて、自由に剪定することができます。多少切り過ぎてもいちじくは問題なく生長しますので、あまり神経質になる必要はありません。その点、初心者でも気軽に剪定できる果樹といえます。収穫期間が長い
冒頭でも述べましたが、いちじくは品種によって、秋果・夏果・兼用種があり、比較的長く収穫できます。その上、いちじくは一果ずつ成熟する特性がありため、初心者でも簡単に、長く収穫することが可能です。いちじくの品種
秋果専用種
ゼブラスイート
特徴的な外見をもつのが、このゼブラスイート。果皮がストライプ模様のため、観賞用としての価値がある上、食用としても十分甘みがあります。蓬莱柿(ほうらいし)
日本で最も古い品種といわれています。樹勢が強く大樹となりますが、耐寒性は強いです。果肉はやわらかく、開裂しやすいですが味は申し分ありません。ネグローネ
果皮は黒くつややかで、とてもうつくしく、裂果も少ない品種です。果肉はねっとりとした食感で、人気の品種です。夏果専用種
ザ・キング
糖度が18度くらいまで上がり、味は極上といわれます。果肉もなめらかで、舌触りがよいです。ビオレ・ドーフィン
果実は大きめで、食べごたえがあります。果汁が多くて、甘みの強い品種です。夏秋兼用種
ドーフィン
ドーフィンの1番の特徴は、大きな果実をたくさん実らせることができるところです。しかしながら、ドーフィンにも弱点があります。それは、寒さに弱いこと。北関東以北で栽培する場合は、ドーフィンは避けたほうがよいかもしれません。ショートブリッジ
甘さにこだわりたいなら、ショートブリッジがおすすめです。果実はドーフィンと比べて大きくはありませんが、果肉は緻密で甘みは強いです。バローネ
ねっとりした果実の品種で、糖度は23度と甘さも非常に強いです。夏秋兼用種ですがメインは夏果で、最大で300gと巨大な実がなります。いちじくの育て方
栽培カレンダー
1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 | |
植え替え | ● | |||||||||||
肥料 | ● | ● | ● | |||||||||
剪定 | ● | ● | ● | ● | ||||||||
新鞘伸長 | ※ | ● | ● | ● | ● | ● | ||||||
病害虫の防除 | ● | ● | ● | ● | ● | ● | ● | |||||
着果 | ● | ● | ● | ● | ||||||||
収穫 | ● | ● | ● | ● | ● | ● |
植え付け
いちじくの植え付けは、3月の上旬から中旬が適期です。以前はいちじくの苗木は素掘り(畑からそのまま掘り起こしたもの)が中心だったため、いちじくの休眠期にあたる冬期が適しているといわれてきました。しかし、現在はポット苗が一般的になっており、ポット苗の場合は真夏と真冬を除き、周年での植え付け・植替えが可能です。しかしながら、初心者の場合は従来の適期である3月中の植え付けをおすすめします。鉢植えは、最初の数年はいちじくの生長に合わせて、鉢のサイズを大きくしていくことがポイントです。用土
鉢植え栽培の場合は、水はけと水もちの両方を兼ね備えた、保肥力の高い用土が適しています。具体的には、「市販の園芸用培養土:赤玉土(中粒)= 7:3」程度に配分するのがおすすめです。
置き場所
いちじくは地植えにしても鉢植えにしても、日当たりのよい場所が生育に適しています。鉢植え栽培の場合は、日差しの強い夏場や、気温の下がる冬は室内に移すとよいでしょう。水やりのコツ
水やりの頻度は、植え付け場所や季節などによって異なります。地植えの場合、春と秋には10日に1回程度、夏場は3日に1回程度水やりを行います。鉢植えの場合は地植えと比べて水もちが大きく劣るため、水やりの頻度を多くします。夏場は、毎日鉢底穴からしたたるくらい、たっぷりと水やりをします。摘果
摘果とは、果実をしっかり適切なサイズまで大きくするために、子実を間引いていく作業のことをいいます。いちじくは十分に生長した木であれば、基本的に摘果する必要はありません。新しい枝の勢いが強いときは、同じ箇所から2つの果実が実ることがありますが、これも両方を残して大丈夫です。ただし、1年目の若木は果樹そのものの生長を促すため、果実の収穫はせずすべて摘果します。そうすることで2年目以降の子実がより充実します。
剪定
落葉し休眠期に入ったら剪定を行います。2月の上旬くらいには、剪定を終えるようにしましょう。ここでは代表的な2つの選定方法を紹介します。杯状整枝
最も一般的な整枝です。1年目は3本程度残し、2年目では3倍の9本、そして3年目にはそのまた3倍の27本と、枝分かれの数を増やしていきます。この際に大事なのは、春の芽かきとひこばえの除去、そして冬の剪定です。家庭での栽培にはおすすめの剪定方法です。一文字整枝
2本の主枝を1直線に伸ばしていき、主枝から分岐した枝を伸ばしていく剪定方法です。この1文字整枝の利点は、機械的に整枝ができることです。けれど一直線に伸ばしていくため栽培にはスペースが必要になります。よってベランダ栽培など狭い場所には向いていません。肥料
元肥として、冬の間に施肥をします。3大栄養素のうち、リン酸は冬の元肥で年間分の全量、チッ素とカリは年間の半分量を施します。残りの半分は、生長期に追肥として与えます。鉢植え栽培の場合は、いちじくが遠くまで根を伸ばして栄養分を補給することができません。ですので、定期的に液肥などで施肥をする必要があります。また施肥をする際にはチッ素・リン酸・カリウムの3要素以外の微量栄養素も与えるようにしましょう。
いちじくの樹齢別・施肥量基準
樹齢(年) | チッ素(g) | リン酸(g) | カリ(g) |
1 | 40 | 20 | 20 |
2 | 60 | 30 | 40 |
3 | 80 | 60 | 80 |
4 | 120 | 100 | 120 |
5 | 140 | 120 | 160 |
6~ | 160 | 140 | 180 |
有機物・堆肥の利用
せっかく家庭で栽培するのであれば、化学肥料にできるだけ頼らない土づくりを目指したいもの。日頃から、枯れ草や落ち葉などをいちじくの株元にまいておきましょう!このとき、未熟な有機物を土の中にまぜこんでしまうと、悪影響を与えてしまう可能性があります。あくまで表層部分に施肥をするようにします。冬期の防寒対策
いちじくは亜熱帯果樹のため、基本的には寒さに弱い植物。冬にはいくつかの対策が必要です。特に若木は寒さに強くないのでワラを敷いてあげるなどの対策をしましょう。いちじくをベランダや室内でも栽培するときの注意点
いちじくをベランダや室内で育てるときはいくつかの注意するポイントがあります。以下でベランダ・室内栽培で気をつけるべきポイントを紹介します。鉢植えで気をつけること
どの果樹栽培にもいえることですが、鉢植え栽培でもっとも気をつけなければならないのは水やりです。地植え栽培と比べ、土の量が圧倒的に少ないため土が乾燥しやすい状態です。水切れを起こさないよう注意しましょう。ベランダ栽培の注意点
ベランダ栽培で気をつけなければならないのは日当たり。いちじくは日光を好むため、ベランダでも最も日の当たる場所に置きましょう。また、枝が伸び過ぎて周囲の迷惑にならないように適度な選定もお忘れなく。室内栽培の注意点
室内栽培でも、ベランダ栽培と同様に日当たりが重要です。室内で栽培するなら部屋の南側など、できるだけ日の当たる場所に置くようにしましょう。いちじくを病害虫から守るには?
いちじくは幸いにも比較的病害虫に強く、工夫をすれば無農薬でも栽培可能な果樹の一つです。それでも、いちじくを好む害虫や、かかりやすい病気もあります。ここでは主な害虫と病気について、対策方法も併せて紹介します。いちじくを好む害虫
カミキリムシ類
カミキリムシ類は成虫による被害もありますが、主には幼虫のときに樹木内部に侵入し、中を食い荒らすことで被害をもたらします。対策方法は、孵化する前の卵を発見したら削ぎ落とすことです。地道ではありますが、これが被害を最小限に抑える一番効果的な方法です。
イチジクヒトリモドキ
蛾の一種で、幼虫が葉を食い荒します。ひどい場合には、果樹を丸坊主に食害することもあります。イチジクヒトリモドキの対策は、幼虫の付いた葉を発見したらその葉を切り落とし、葉ごと撤去することです。
いちじくに多い病気
黒カビ病
一般に「水ぐされ」ともよばれる病気の一種で、成熟間近の子実が腐って酸っぱい臭気を発します。特に梅雨の時期に多く発生します。黒カビ病は、腐った実を放置しておくとショウジョウバエが媒介して被害を拡大します。したがって、病気が発生した際には病原となる子実を撤去することが大切です。
イチジク株枯病
これはカビの一種が病原菌となり、株全体を枯らしてしまう深刻な病気です。イチジク株枯病にかかってしまうと、土を完全に交換して植え替える以外の方法は現在のところありません。幸いにも、地植えの場合にこの病気が発生することはまれです。鉢植えの場合は、地植えと同じような環境になるように、日当たりや水やりなど健全な栽培を心がけましょう。
いちじくのおすすめレシピを紹介!
手間ひまかけて大事に育て、収穫したいちじくの実。せっかくならおいしくいただきたいですよね!ここでは、いちじくのおすすめレシピを紹介していきます。まずは定番!自家製「いちじくのジャム」
いちじくは収穫の時期が限られています。旬の時期に大量に採れたいちじくをジャムにして、おいしく長期保存しちゃいましょう!いちじくはペクチンが豊富に含まれるため、ジャムがトロトロになりやすく、誰でも簡単にジャムが作れますよ。
おいしさまるごと!「いちじくのコンポート」
これも、ヨーロッパでの伝統的な果物の保存方法の一つです。ジャムよりも砂糖の割合が少ないため、いちじくの味をそのままに感じることができます!参考:Rakutenレシピ「上品な大人の甘さ!イチジクのコンポート レシピ・作り方」
デザートだけじゃない!「いちじくのみぞれあん」
デザートのイメージが強いいちじくですが、和食での和え物や揚げ物にも使われるんですよ!参考:シェフごはん「イチジクのみぞれあん」