- ライター
- 柴﨑 光一
建築・インテリア学科卒の造園士×Webコンテンツクリエイター。 東京で建築、カナダのトロントで造園、その後カナダのハリファックスの大自然で植物と戯れながら、植物・庭・ガーデニングのWebコンテンツクリエイターを開始。 現在はヤシの木を主体とするドライガーデンの造園士とWebコンテンツ・ガーデニング商品の監修者としても活動中。日本での建築とカナダでの造園の経験に加え、趣味の植物やコケの収集、植物アート作りを生かして、 みなさんに植物や庭の魅力をお届けします。…続きを読む
春から初夏にかけて新緑を芽吹いた後、9〜10月ごろに上品な甘い香りのするオレンジ色の花を、枝先に房のように咲かせるキンモクセイ。芽吹く力が強く、枝葉や幹が自然に整いやすため、初心者でも剪定(せんてい)や刈り込みがしやすい庭木です。樹形を美しく保ち、香りの良い花をたくさん咲かせるための、キンモクセイの剪定や刈り込みの仕方についてまとめました!
年に1回のペースで!キンモクセイの剪定や刈り込みの特徴
出典:Shutterstock
冬に葉を一斉に落とさない常緑樹のキンモクセイは、地面から出る幹が1本の「単幹樹形」と、幹が複数出てくる「株立ち樹形」と呼ばれる両方の種類があります。鉢植えやポットから地面に移植すると生長速度が早く、長い間放置すると樹高が10mを超える高木になる場合も。また、
単幹樹形のものは、株立ち樹形のものよりも生長速度が早くなりやすく、葉も鬱蒼(うっそう)としやすいため、年に1回のペースで剪定や刈り込みをしましょう。キンモクセイの剪定の特徴
基本的には、長く伸び過ぎた中心の幹、絡み合った枝葉、色が黒ずんだ古い枝葉、枯れた枝、不要な枝を間引くように透かしながら剪定します。
強剪定にも強いので、大きくなり過ぎたときは、好みの高さで太い幹や枝を切っても大丈夫!その場合は、切り口がきれいな断面になるように、ノコギリを使って剪定しましょう。
キンモクセイの刈り込みの特徴
出典:写真AC
枝葉のどこを切っても新しく芽が伸び、細かく密集して生長するキンモクセイ。比較的刈り込みがしやすく、自由な形に仕立てられます。
刈り込みをするときは、ヘッジトリマー(生垣用バリカン)を使うと作業効率が上がり、短時間で楽にできますよ。キンモクセイの最適な剪定時期は、10月下旬〜12月上旬か3〜5月下旬
出典:Shutterstock
キンモクセイの剪定は、花が咲き終わる10月下旬〜12月上旬か、暖かくなりはじめる3〜5月下旬が適期です。ただし、氷点下を下回るような冬に強剪定をしてしまうと、株が枯れてしまう場合も。太い幹や枝を切って高さを調節するような剪定をする場合は、極寒日を避けましょう。
時期を間違えなければ、キンモクセイの剪定は失敗しにくいですが、真冬の強剪定は、キンモクセイの木にとって大きなストレスに。新芽が出なくなってしまう場合もあります。
キンモクセイの鑑賞や剪定などの手入れの時期
イラスト:柴崎光一
- 鑑賞期:9月下旬〜10月中旬(花)
- 結実期:11〜4月
- 植え付け、植え替え:3〜4月
- 肥料:寒肥/2月下旬〜3月下旬
- 剪定:3〜5月下旬、10月下旬〜12月上旬
キンモクセイの詳しい育て方はこちらの記事をチェック!
キンモクセイの透かし方や失敗しない剪定方法とコツ
一本の太い幹(主幹)から、細い幹や太い枝を伸ばしながら生長するキンモクセイ。剪定をうまくしないと、株の内側に光が当たらず枝葉が枯れ、スカスカで見た目の悪い姿になります。
キンモクセイの剪定や刈り込みは、剪定ばさみを使って枝葉の数や長さを整える方法と、木の表面の伸び過ぎた枝葉を刈り込んで形を整える方法の2つがあります。どちらも上部がドーム状の円柱型になるように樹形を整えるのが簡単でおすすめです。
Step1. 主幹から伸びる太い枝の透かし剪定から
撮影:柴崎光一
まずは、主幹から伸びる太い枝を間引くように透かし剪定をします。
複数の枝葉が絡まったものや、空へ真っ直ぐと強く伸びるような太い枝を、全て枝分かれしている箇所で切り落としましょう。このとき古い枝や枯れた枝も一緒に取り除きます。
目隠し用の庭木にする場合は、枝葉を少し多めに残すといいです。
Step2. キンモクセイが大きくなり過ぎたときは幹を芯止め
撮影:柴崎光一
キンモクセイが大きくなり過ぎたときは、木の中心にある太い幹を切り落とす「芯止め」をします。
好みの高さの位置にある節目から、数ミリ上を切り戻しましょう。不自然な樹形にならないよう、株上部がドーム型になるようにイメージしながら、全体のバランスを整えてくださいね!
芯止めとは
樹木の中心にある主幹の先端を切って、上に伸びようとする生長を止めることです。先端を切ることで、切った箇所のすぐ下の幹や枝に養分が流れるようになり、樹形を横に広げる役割があります。
葉のない丸刈りにして高さを調整することもできます。
Step3. 不要な枝を切り落とす
撮影:柴崎光一
花付きや生育が悪くならないように、以下のような枝を枝分かれしたところまで切り戻しましょう。中途半端に枝を残してしまうと、そこからすぐに新しい枝葉がたくさん伸び、樹形が乱れて見た目が悪くなります。
・ひこばえ|地面から出る細い枝
・胴吹き枝|幹の胴回りから伸びる枝
・絡み枝|太い枝に絡みつように伸びる枝
・平行枝|平行に同じ方向へ伸びる枝
・逆さ枝|地面に向かって伸びる逆さ枝
キンモクセイの剪定のコツ|枝分かれした節目の数ミリ上で切り落とす
撮影:柴崎光一
キンモクセイの枝を切るときは、
必ず付け根の数ミリ上で、切り口と残った枝のラインが並行になるように切ります。切る位置が近過ぎたり、遠過ぎたりすると枝が枯れる場合も。
Step4. 枝先を切って木の形を整える
撮影:柴崎光一
最後にキンモクセイの枝先を切って、樹形を整えます。
枝先は間延びしたように長く伸びている場合が多いので、先端から主幹に向かって、2〜4節目の枝葉が出ている箇所まで切り詰めるように剪定しましょう。
剪定の種類や切るべき不要な枝など関連記事をチェック!
おしゃれな庭木や生垣に!キンモクセイの上手な刈り込み方法
出典:写真AC
幹や枝を一本一本カットしていく剪定とは違い、刈り込みは木の表面の伸び過ぎた枝葉を、刈り込みばさみやヘッジトリマー(生垣用バリカン)を使って、大胆に切り落としていきます。
木全体のバランスを見ながら、外側から刈り込んでいくのがポイントです。
Step1. 芯止めをして高さを決める
キンモクセイを刈り込む前に、まずは好みの高さの位置で主幹の先端を切る芯止めをして、高さを調節しましょう。
Step2. 側面が円柱型になるように刈り込み剪定をする
撮影:柴崎光一
株の下部の側面が円柱型になるように、木を一周ぐるりと縁取りするように刈り込み剪定をします。
先に仕上がりの木の形と大きさを決めて、ある程度刈り込んでおくと、ラインが目で確認しやすく、失敗もしにくいです。
Step3. 側面を下から上に向かって刈り込む
提供:写真AC
円柱型のラインに沿って、木の側面を下から上に向かって刈り込みます。
ヘッジトリマーで刈り込む場合は、 ブレード(刃)が地面と平行になるように構え、腕を上下に動かしながら整えていきます。円柱型のラインからズレていないか、後方を確認しながら刈り込むようにしましょう。
ヘッジトリマーの場合、振動によって株の内側で絡んでいた枝が外側に飛び出し、一緒にきれいに刈り込むことができます。しかし、刈り込みばさみの場合だと枝が出てこないためきれいに刈り込めず、後に樹形を乱す可能性があります。刈り込みばさみで剪定する場合は、枝を揺すったり叩いたりしながら刈り込むようにしましょう。
キンモクセイの剪定後にするべきこと
キンモクセイの剪定後、そのまま放置してしまうと、木が病気にかかって枯れてしまうこともあります。剪定で大きなストレスを受けたキンモクセイが、早く元気に生長するためにするべきことを知っておきましょう。
枝の切り口には癒合剤を塗っておこう!
出典:写真AC
キンモクセイの剪定が終わった直後に、枝の切り口からウイルスが入らないよう、癒合剤を塗って殺菌とコーティングをしましょう。
特に太い幹を切るような芯止めをしたときは、癒合剤は必須!傷口の治りも早いですよ。
おすすめの癒合剤
トップジンMペースト
殺菌剤を含んだ、使いやすいチューブタイプの癒合材。
・内容量:100g
水やりと施肥は忘れずに
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剪定後のキンモクセイは、新しい芽を出そうとします。その生長をサポートするために、水と肥料を適度に与えましょう。土の中に指を入れ、中まで乾燥しているようであれば、液体タイプの肥料を混ぜて水やりをします。ただし、水も肥料も与え過ぎると根腐れや生長不良を引き起こすことも。
土の中の水分量や木の様子を観察しながら、与え過ぎに注意してくださいね。
剪定後、キンモクセイの木が病気にかかって弱ってしまった場合、地面に打ち込むタイプの肥料「グリーンパイル」を使うのがおすすめです。ただし、元気な木に打ち込んでしまうと生長に勢いがつき過ぎて、枝葉がたくさん伸びてしまうことも。病気の症状がない元気な木には、株周りに緩行性化成肥料だけで大丈夫です。
おすすめの肥料
グリーンパイル
樹木専用の地面に打ち込むタイプの肥料。
・内容量:100g×3本
鉢植えのキンモクセイを剪定した場合|日当たりと風通しを良くする
キンモクセイを鉢植えで育てている場合は、剪定が終わったら、
風通しが良く日中の強い直射日光が当たらない半日陰に移動させます。ただし、湿気が多い場所ではカビが発生しやすく、病気にかかりやすいので避けましょう。
道具をそろえて安全に!キンモクセイの剪定に必要なもの
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キンモクセイの剪定や刈り込みに必要、またはあるといい道具はこちら!作業中に株元に敷いておくと便利なブルーシートや、切った枝葉や幹を入れるゴミ袋も用意しておくといいですよ。
剪定ばさみ|手にフィットするものを
撮影:柴崎光一
剪定ばさみは、枝葉や幹を切るのに必要な道具です。
グリップ部分がゴム製など、滑りにくいものがおすすめ!自分の手の形にフィットするような、使いやすいものを選んでくださいね。
詳しい剪定ばさみの選び方・使い方については、こちらをチェック!
刈り込みばさみ|自分の体にあったものを
出典:写真AC
刈り込みばさみは剪定ばさみとは違い、木の表面の細かい枝や葉を切って、見た目をきれいに整えるための専用のはさみ。刃が短いものや長いものがあり、刃が短いものは軽量で疲れにくく、刃が長いものは一度に刈り込める量が多く、作業スピードを早くできます。持ち手にグリップや、刃の交差した下部にバネがついたものが使いやすいですよ。
詳しい刈り込みばさみの選び方・使い方については、こちらをチェック!
ヘッジトリマー(生垣用バリカン)|軽量のものが使いやすい
電動式のヘッジトリマーは、生垣やトピアリー(植物の造形物)などを楽に狩り込めます。動力には充電式、電源コード式、エンジン式の3つがあり、刈り込みばさみよりも短時間で作業ができます。
軽量なモデルが多い充電式は、腕や肩などに負担がかからず、初心者でも扱いやすいのでおすすめ!詳しいのヘッジトリマー選び方・使い方については、こちらをチェック!
ノコギリ|太い枝を切るときの必需品
出典:写真AC
ひこばえなど、太く伸びた幹や枝を切るときは、ノコギリを使って切り落としましょう。枝の切り口の断面がきれいに切れ、水がたまりにくいです。
手袋|作業をしやすくするために
撮影:柴崎光一
枝葉や幹を素手で触ると、ケガをする危険があります。事故防止のためにも、キンモクセイの剪定をするときは、必ず手袋をして作業をしましょう。手のひらにクッションや滑り止めが付いているものが、太い枝などを握りやすくておすすめです。
脚立|キンモクセイの剪定には、5〜8段ある大きめのものが最適
出典:写真AC
樹高が3mを超えるなど、大きめのキンモクセイの高さを調整するときは、脚立を使いましょう。脚立の上から木全体を見ながら剪定すると、バランスのとれた美しい樹形に。
脚立は足掛けが5〜8段ほどついた大きなものが、高木のキンモクセイとの高さがちょうど良く、作業がしやすいですよ。
キンモクセイの剪定の時期とコツを知って、樹形の美しい庭木や生垣に!
キンモクセイは年に1度、花が咲き終わった後か、冬を越した暖かい春に剪定すると木が大きくなり過ぎることもあまりなく、翌年にオレンジの花を楽しめる庭木になります。樹形が美しく、上品な甘い香りも楽しめる庭のシンボルツリーや生垣になるようにイメージして剪定してみてくださいね!