目次
植物に欠かせない光合成
作物に欠かせない光合成ですが、まずはその仕組みや農業現場での「光合成」について見ていきましょう。光合成の仕組み
太陽の光を用いて二酸化炭素と水から糖類を合成し、酸素を排出する働きを光合成といいます。作物は合成した糖類を養分にして生育します。
農業現場での「光合成」
農業現場では光合成を促進するために環境の管理が行われています。光合成促進は、光合成に足りない要素を供給したりコントロールしたりする必要があるため、天気などに直接影響を受ける露地栽培よりも閉鎖的で環境の制御がしやすい施設栽培で効果的に行うことができます。光合成の促進で得られるメリット
光合成を促進することで、考えられるメリットはどのようなものでしょうか。単位面積当たりの収量を高める
必要な要素を補い光合成を促進することができれば作物の生育が促進され、その結果として単位面積当たりの生育量(収量)を高めることができます。作物の品質を高める
キクでは施設栽培において栽培期間中での二酸化炭素の施用で葉数や切り花の重量の増加などによる品質の向上や日持ちが長くなったり(※1)、ガーベラでは施設を締め切る時期や時間帯での二酸化炭素の施用によって切り花の品質や収穫量が増加したり(※2)といった報告がされています。※1 福岡県農業総合試験場 特別報告 第13号(平成11年3月)
※2 あたらしい農業技術 No620(平成29年3月)
施設栽培において「光合成」に必要な6つの要素
光合成を促進するためには、栽培環境で足りていない要素を補い効率を上げることが必要です。▼環境制御についてはこちらをご覧ください。
1. 二酸化炭素
光合成に必要な二酸化炭素を人為的に供給します。二酸化炭素を供給する機械
▼施設栽培での炭酸ガス施用についてはこちらをご覧ください。
2. 酸素
酸素によって根の働きを活性化し、光合成や生育に必要な水や肥料の吸収を促します。酸素資材
3. 飽差(温度と湿度)
「飽差」は作物の気孔の開閉や蒸散に影響を与える要素で、同じ温度であっても湿度の違いによって異なります。飽差とは
1立米の空気の中に、あとどれくらい水蒸気を含む余地があるかを示すのが飽差です。作物にとって適正な飽差は3~6g/m3とされていますが、適正な飽差を保つことよりも急激に変化し気孔を閉じてしまわないようにすることが大切だといわれています。飽差が急激に変化しないよう、温度や湿度を管理する必要があります。飽差表(g/m3)
相対湿度(%) | |||||||||||
95 | 90 | 85 | 80 | 75 | 70 | 65 | 60 | 55 | 50 | ||
気温(℃) | 15 | 0.6 | 1.3 | 1.9 | 2.6 | 3.2 | 3.9 | 4.5 | 5.1 | 5.8 | 6.4 |
16 | 0.7 | 1.4 | 2.0 | 2.7 | 3.4 | 4.1 | 4.8 | 5.5 | 6.1 | 6.8 | |
17 | 0.7 | 1.4 | 2.2 | 2.9 | 3.6 | 4.3 | 5.1 | 5.8 | 6.5 | 7.2 | |
18 | 0.8 | 1.5 | 2.3 | 3.1 | 3.8 | 4.6 | 5.4 | 6.2 | 7.7 | 8.5 | |
19 | 0.8 | 1.6 | 2.4 | 3.1 | 4.1 | 4.9 | 5.7 | 6.5 | 7.3 | 8.2 | |
20 | 0.9 | 1.7 | 2.6 | 3.5 | 4.3 | 5.2 | 6.1 | 6.9 | 7.8 | 8.7 | |
21 | 0.9 | 1.8 | 2.8 | 3.7 | 4.6 | 5.5 | 6.4 | 7.3 | 8.3 | 9.2 | |
22 | 1.0 | 1.9 | 2.9 | 3.9 | 4.9 | 5.8 | 6.8 | 7.8 | 8.7 | 9.7 | |
23 | 1.0 | 2.1 | 3.1 | 4.1 | 5.1 | 6.2 | 7.2 | 8.2 | 9.3 | 10.3 | |
24 | 1.1 | 2.2 | 3.3 | 4.4 | 5.4 | 6.5 | 7.6 | 8.7 | 9.8 | 10.9 | |
25 | 1.2 | 2.3 | 3.5 | 4.7 | 5.8 | 6.9 | 8.1 | 9.3 | 10.4 | 11.5 | |
26 | 1.3 | 2.5 | 3.7 | 4.9 | 6.1 | 7.4 | 8.5 | 9.8 | 10.9 | 12.2 | |
27 | 1.3 | 2.7 | 3.9 | 5.2 | 6.4 | 7.7 | 9.0 | 10.3 | 11.6 | 12.9 | |
28 | 1.4 | 2.8 | 4.2 | 5.6 | 6.7 | 8.2 | 9.5 | 10.9 | 12.3 | 13.6 | |
29 | 1.4 | 2.9 | 4.2 | 5.8 | 7.3 | 8.6 | 10.1 | 11.5 | 13.0 | 14.4 | |
30 | 1.5 | 3.0 | 4.7 | 6.2 | 7.6 | 9.1 | 10.6 | 12.1 | 13.6 | 15.2 |
▼湿度管理についてはこちらをご覧ください。
4. 風
施設内は閉め切っている状況では無風状態になります。施設内で空気の流れが起きることによって、葉が吸収できる二酸化炭素の効率を上げることができます。循環扇の活用
▼循環扇についてはこちらをご覧ください。5. 光
光合成に必要な光を補ったり、適切な光を供給できるように調整します。LEDを用いた補光
トマトやぶどうなどでLEDを用いて光を補い栽培を行っている場合もあります。資材による光の調整
▼遮光シートや遮熱資材についてはこちらをご覧ください。6. 肥料
光合成の効率が上がると、肥料の吸収が良くなります。栽培途中に肥料が不足しているようであれば、速効性である肥料を施用するなどして対処する必要があります。栽培途中にECメーターなどを活用して簡易的に土壌診断を行っても良いでしょう。葉緑素を増やす液体肥料
▼肥料の種類や効き方についてはこちらをご覧ください。
▼土壌診断についてはこちらをご覧ください。
光合成の促進の前にやるべきこと!
光合成を効率よく行うためにはやみくもに二酸化炭素を施用したり温度を上げたりすればいいわけではありません。その環境の中でどの要素が光合成に制限をかけているのかを知るために、まずは施設内の環境がどうなっているのかを調べる必要があります。施設内の環境を調べてデータを取る
同じ施設内でも場所や一日の中で温度や湿度などは変化します。そのため、施設内のいくつかの場所でデータを継続して記録できるもの(残せるもの)がおすすめです。センサーや測定器が用いられますが、温度、湿度など単一の項目を調べるものや複数の項目を一つの機械で調べられるものなど種類があります。施設内の何が知りたいのかや導入にかけられるコストなどを考慮して選びましょう。
これらのセンサーはデータを記録するだけでなく、各種発生機などと接続することにより温度や湿度、二酸化炭素などを制御できるものもあります。
データは継続して取る!
光合成促進の前だけでなく、必要な要素を補っている間にもセンサーや測定器を用い継続してデータを取りましょう。継続してデータを取ることで、補った要素がどのように推移・変化しているかを見ることができるので、どのように施用すれば効率的であるかを考える材料となります。
環境データを測定する機器
温度を2chで測定
CO2 、温度、湿度を測定
環境データを測定し制御する機器
メーカー | 商品 | 特徴 |
デンソー | プロファームコントローラー | ハウス外(風向風速、雨、日射、温湿度)とハウス内(温湿度、CO2、水分)を測定し、複合的に環境を制御する |
ネポン | 環境制御盤 | 設定した温度に応じ換気窓の開閉するシンプルなタイプから、温度、温湿度、日射、CO2 、雨、風を測定し複合的に制御するタイプまで、栽培状況に応じて選択できる |
CHC | 施設園芸用CO2コントローラー | CO2を測定し、測定値に応じてCO2発生機やCO2ボンベを制御する |
▼環境制御についてはこちらをご覧ください。