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田植えの準備や田植え機を使った移植作業を米作り初心者に解説!


米作り初心者の方に、ハウスで育苗した苗を田植え機で移植する方法を紹介します。田植えのときの服装や、作業しやすいおすすめの長靴、田植え機の準備や除草剤のセッティング、田植えの手順についてはイラストでわかりやすく説明します。

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yonewan

山形県在住です。知人の米農家で働きはじめて6年目。つや姫、雪若丸、コシヒカリ、はえぬきを栽培しています。農業の傍らライターとしても活動しています。農作業の様子はTwitterで発信中!…続きを読む

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田植え中の風景

出典:写真AC
山形県では、5月上旬~中旬ごろに田植えのシーズンを迎えます。代表的な品種に「はえぬき」や「つや姫」、「雪若丸」がありますが、食べたことがあるという方も多いのではないでしょうか。

現在の田植えは機械化が進んだので、家畜を利用して田を耕し、人の手で田植えをしていた数十年前と比べて、随分楽になりました。そんな田植え機での移植作業を中心に、私が勤めている農家さんの田植え(主にはえぬき)の方法を、米作り初心者の方にもわかりやすいように紹介します。

田植えの主流は移植栽培

田植えで植え付けする
出典:写真AC
米栽培には、ビニールハウスで育苗する「移植栽培」と、種もみを直接田んぼにまく「直播栽培」という方法があります。現在の米作りは、移植栽培が主流になっています。この移植栽培の低コストや負担軽減のために、日々さまざまな技術研究が行われています。

▼米作りの育苗のことならこちらをご覧ください。

移植栽培のメリット・デメリット

移植栽培のメリット・デメリットについて紹介します。

移植栽培のメリット

1. 雑草を防ぐ
米作りは雑草との戦い。いかに雑草を抑えるかが収量に影響します。移植栽培は田植え前に水が張ってあるので雑草の芽が出にくくなるため、直播栽培よりも雑草を防ぐことができます。
2. 害獣被害を防ぐ
直播栽培では、圃場にまいた種もみを鳥に食べられてしまう可能性がありますが、移植栽培では種もみではなく、苗を植え付けるため、鳥に食べられる心配がありません。

移植栽培のデメリット

田んぼの規模を拡大しようとすると、苗を育てるビニールハウスや育苗箱が新たに必要になるなど、移植栽培では資金面での負担が増えてしまうというデメリットがあります。

コストと労働力の負担軽減には「密苗」

「密苗」とは、育苗箱に種もみを高密度に播種し育てた苗を、機械が(密苗対応)が小さくかきとって田んぼに植え付ける手法です。つまり、同じ面積の田植えに必要な育苗箱の数が、従来よりも少なく済みます。ということは、育苗するハウスの面積も、播種や苗の運搬時間も減らすことができます。

密苗の省力・低コスト化
・育苗箱数1/3
・ハウス面積1/3
・育苗資材費1/2
・播種・苗運搬時間1/3

参考:農林水産省農林水産技術会議事務局研究企画課『「密苗」栽培技術による田植作業の革新的省力・低コスト化の実現』(https://www.affrc.maff.go.jp/koho/message/2019/message20190315-2.htm)(2020年4月23日に利用)

田植え前の準備とは

田植え前の田んぼ
出典:写真AC
ここからは田植えの前に欠かせない準備について紹介します。

▼田植えなど米作りの栽培スケジュールのことならこちらをご覧ください。

田んぼの準備

田植え機で植え付ける前に、田んぼの土や水の量を調整しましょう。

時期

山形県では5月上旬~中旬ごろ

柔らか過ぎると苗が倒れやすく、硬過ぎると植え付けができません。代(しろ)かきが終了したら、1~5日間ほど田面が落ち着くのを待ちます。

代かきから田植えまでの日数の目安
【砂質】
1~2日程度
【粘土質】
4~5日程度(それ以上の日数がかかる場合もある)


田んぼの水は、ある程度落水して水深1cm程度の浅水に調整します。

注意!
水の量が多過ぎると、田植え機のマーカーの跡が見づらくなってしまいます。


服装

服装はそのときの気候に合わせて半袖でも大丈夫です。苗の補充役の人は厚手のビニール手袋と腕カバーを使いましょう。

肌荒れ注意!
苗箱には薬剤が散布されているので、直接肌に触れると肌が荒れてしまうことがあります。


長靴・足袋

普通の長靴で田んぼに入ると足が抜けなくなってしまうので、田植え専用の長靴や足袋がおすすめです。

軽快ソフト 先丸 4630

薄手で、足にしっかりなじむので、田んぼの中でも動きやすくなります。
筆者も愛用経験あり!

・素材:本体:天然ゴム、合成ゴム
・素材:裏生地:ナイロン
・サイズ:SS(22.0-23.0)、S(23.5-24.0)M(24.5-25.0)、L(25.5-26.0)、LL(26.5-27.0)、3L(27.5-28.0)

田植え機のの試運転

必ず使用前におかしな音がしないか、可動部に問題はないかなど動作の確認と、注油を行いましょう。

▼トラクターなど農業機械での事故のことならこちらをご覧ください。

田植え機の準備

田んぼによって植え付けの深さも変わってくるので、田植えを始めてから再度田植え機の調整を行うこともあります。

田植え機のレンタルはあり?

田植え機は各都道府県のJAなどで田植え機のレンタルも可能です。

▼米作りで使用する農業器具・機械のことならこちらをご覧ください。

植え付けの深さ

植え付けの深さは3cm程度

注意!
植え付けが深過ぎると分げつが抑えられ、反対に浅過ぎると欠株が増えてしまいます。
※分げつとは、主茎から新しい茎が出てくること。


植え付け本数

苗1株あたりの植え付け本数は、4本程度と少なめが最適です。

注意!
多過ぎると過剰分げつになり、米の粒も小さくなってしまう可能性があります。


作業人数

2haほどの田植え作業は作業効率や負担軽減を考慮して、田植え機のオペレーター(運転手)と苗の補充役の計二人で行います。

苗の用意

ビニールハウスで育てた苗を軽トラックなどに積んで田んぼへ運びます。

苗の取り違いに注意!
見た目だけで品種の違いを見分けるのはほぼ不可能なので、複数の品種を育てている場合は苗の取り違いに注意します。事前にビニールテープなどで、ここからここまでは「はえぬき」というように目印を付けておきましょう。

水平式育苗棚64枚 SH-64N

一度に数十~百枚程度の苗が運べます。
水平式なので楽に苗を積み下ろしができます。

・サイズ:1360×1270×1230mm
・棚ピッチ:130mm
・自重:22.6kg

苗を田植え機へ

運んできた苗は、農道の端や畦畔に並べておきます。

苗を田植え機に載せるときは「苗取りボード」で根を切って育苗箱から取り外します。
6条植えの田植え機なら後方に12枚、前方に予備の苗を6枚載せましょう。

注意!
田植え機後方の台に載せるときは、苗と苗の間に隙間ができないように。隙間ができると欠株につながる恐れがあります。

苗取りボード

育苗箱にからみついた苗の根も、苗取りボードがあればきれいに切ってはがせます。

・サイズ:約275×655×4.5mm
・重量:約610g

除草剤

田植えと同時に除草剤を散布する場合は、苗とともに田植え機にセットします。
除草剤も苗と同じように補充しながら田植えを進めましょう。


田植えの手順

家族で田植えをしている風景
出典:写真AC
私が勤めている農家さんが行っている農業機械を使用した田植えの手順と、作業のチェックポイントを紹介します。

田植え機のスタート地点

イラスト田植え機のスタート手順
Illustration:rie
田植え機で畦畔から入って、スタート地点(上図参照)から植え始めます。
※田んぼの形や状況によって効率的な田植えの手順が変わってきます。

作業のチェックポイント!
除草剤が落ちているか、欠株がないか、マーカーがきちんと落ちているかをこまめに確認しましょう。オペレーターが気付かないこともあるため、苗の補充役の人もよく見ておくことが大切です。


田植え機のマーカーって?

マーカーで跡をつける田植え機
出典:写真AC
田植え機の両サイドについているマーカーの片方を落とすことで、次に田植え機が走る場所の目安が付けられます。

作業のチェックポイント!
風が強い場合は、風下から植えることがポイントです。田植え機が走ると水面はにごりますが、風上から植えてしまうと、にごった水が風下に流れてしまうので、マーカーの跡が見えづらくなります。


田んぼの中側は往復植え

イラスト中側の農業機械の田植えの手順
Illustration:rie
何度も苗を補充しながら中を往復して植えます。

作業のチェックポイント!
欠株に気付いたら田植え機の爪を確認しましょう。途中で爪に石が挟まって爪先が広がったままだと、欠株は解消されません。爪先が広がっている場合は、新しい爪と交換してから再開しましょう。


 最後に周り

イラスト周囲の農業機械の田植えの手順
Illustration:rie
中側が終わったら、畦畔の枕地を植え付けます。畦畔側の枕地(6と7)が終わったら田んぼの端(8)を植え付け、そして反対側の枕地(9と10)を植え付けます。最後に残っている田んぼの端(11)を植え付けて、ゴール地点の畦畔を登れば作業は完了です。

作業のチェックポイント!
最後は植え付け作業をしながら畦畔を登るのでスピードは控えめに。


田植え後にやること

田植えの終わった田んぼ
出典:写真AC
田植えが終わったからといってまだ安心はできません。入水や補植といった作業が残っています。

入水

田植え後は、低温や風から苗を守るために3~4cm位のやや深水管理にします。

苗が活着したら

2~3cmの浅水にします。

▼入水後の水田用の除草剤のことならこちらをご覧ください。

補植

田んぼの形によって、どうしても田植え機で植え付けができなかったり、欠株になってしまったりした箇所がある場合は補植することがあります。

注意!
補植用の苗を田んぼに置いたままにすると病害虫の発生源になります。終わったら早めに処分することをお忘れなく。


補植はする?しない?

欠株になった部分は草が生えやすく、また田んぼの見栄えをよくするために補植することがありますが、全体の収量にはほとんど影響を与えなといわれています。そのため、補植をするかどうかは生産者が個々に判断します。
ちなみに、私の勤めている農家さんでは収量に影響はないと判断しているため補植はしていません。

田植え機を洗車

最初はポンプを使って水路の水で大まかに泥を落とします。その後に洗浄機などを使って洗うと効率的に汚れが落とせます。
洗車が終わったら、可動部に注油やグリス塗布をして来年に備えましょう。

注意!
水洗いする際は電装部品に直接水がかからないように注意しましょう。直接水をかけてしまうと故障の原因になります。
田植えと同時に除草剤を散布している場合は、散布口に除草剤が固まっていることもあります。よく確認して掃除をすることがポイントです。

▼洗車のときに使用する高圧洗浄機ならこちらをご覧ください。

    育苗箱の片付け

    育苗箱は水路で洗うことがほとんどですが、根っこをしっかり落とすことが大切です。

    育苗箱洗浄機 洗ちゃん NBC-300

    育苗箱専用の洗浄機を使えば、あとからまとめて洗うこともできます。

    ・最大処理能力:300枚/時
    ・機体寸法:690×570×920mm
    ・洗浄ブラシ:3本
    ・苗箱送り:ゴムローラー1軸駆動
    ・機体重量:42kg

    苗箱バンド

    片付けの途中で育苗箱が崩れることを防ぐには苗箱バンドの使用がおすすめです。

    ・数量:50本入 (苗箱250枚分)

    田植えは体力のペース配分がカギ!

    機械化が進んだとはいえ、田植えは米作りのなかでも体力を使う作業です。とくに苗の運搬、補充作業は体にかかる負担が非常に大きくなります。田植えの終盤になると疲れもたまってくるので、うまくペース配分しながら作業を進めましょう。秋に黄金色の稲穂に出会うためにも、欠株がないか、苗の取り違えはないかなど、一つひとつの作業に集中して田植えを頑張りましょう!

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