【新規就農】有機農業の町、山都町で農業にチャレンジ!気になるサポート体制は?

日本の有機農業の発祥の地といわれ、「有機JASの認証」を取得した生産事業者数も日本でトップの熊本県山都町。最近では、有機農業を志す移住者が増えて来ています。これから山都町で農業を始めたい方に向けて、サポート制度や実際に町の支援を受けて就農した農家さんのお話など、移住・就農のリアルな情報をお届けします。


農作業
撮影:たかきあゆみ
熊本県山都町は、日本の有機農業の先駆けとして40年以上前から有機農産物の栽培にチャレンジしてきた地域です。現在、山都町で有機JAS認証事業者が栽培している農産物は約50品目。ニンジンやお米、里芋、お茶、ベビーリーフなど多岐にわたります。
町の有機農家の大部分は60〜70代。長い歳月をかけて有機農業のノウハウを培ってきたにもかかわらず、後継者がいない生産者も少なくありません。

有機農業の新たな担い手を育てるために、山都町では新規就農を希望する人を柔軟に受け入れ、農業研修や技術の共有、コミュニティ作りや販路開拓など、安心して農業に取り組める仕組みや環境づくりに力を入れています。これから山都町で農業を始めたい方に向けて、サポート制度や新規就農した農家さんのインタビューなど、実際に役立つ情報をご紹介します。

有機農業を始めたい!まずは「山の都地域しごとセンター」へ相談を

山都町には有機農業にチャレンジしやすい仕組みや制度があり、移住や新規就農、起業準備、仕事や空き家探しの相談やサポートをワンストップで担っているのが「山の都地域しごとセンター」です。

【山の都地域しごとセンターのサポート内容】
山の都地域しごとセンターのサポート内容
提供:山都町 山の都地域しごとセンター

“農業経験ゼロ”でもしっかり学べる「農業研修制度」

山都町では、農業体験をしてみたい人からプロの農家をめざす人まで、経験を問わず幅広く受け入れ体制を整えています。新規就農に興味がある人には、主に3つの入り口があります。

(1)農業研修制度
(2)農業インターンシップ(1週間~1カ月程度、農家などに民泊して山都町の暮らしを体験)
(3)農家でアルバイト

なかでも農業研修制度は、山都町独自のもので、就農に役立つ実践的なカリキュラムとなっています。(農業次世代人材投資事業(準備型)対象)研修期間は最長で2年。受け入れ先の農家での実地研修のほかに、月に2回の集合研修があります。集合研修は、野菜や米作りの基礎知識をはじめ、「BLOF(生態調和型農業)理論」や鳥獣害対策、新規就農した先輩たちの体験談や就農計画の作成方法などを学べる座学と、町内外のさまざまな農家さんを訪ねる圃場見学の2本立てとなっています。

有機農業にチャレンジする移住者が徐々に増えています

山都町の過去3年間(平成28~30年度)の移住者数は、31組64人。このうち新規就農者は4組(農業研修生など就農予定も含む)、雇用就農は3組、農的暮らしを営んでいる方が3組です。有機農業にチャレンジするために山都町に移住する人や、有機JASの認証を新たに取得する新規就農者も徐々に増えています。そんな新規就農者を支援する「山の都地域しごとセンター」の兼瀬明彦さんにお話をうかがいました。

移住や新規就農をワンストップで応援

兼瀬明彦さん
撮影:たかきあゆみ

100人いたら、100通りの移住スタイルがある

――「山の都地域しごとセンター」ではどんなことをしていますか?

「山の都地域しごとセンター」は、山都町への移住や新規就農の受け入れ窓口として、さまざまな要望やご相談にワンストップで対応しています。知りたい情報や移住の本気度も人によってさまざまで、100人いたら、100通りの移住があります。農業体験や農業研修の手続き、空き家や仕事情報のマッチング、補助金申請のお手伝い、移住者交流会など、一人ひとりの相談内容に寄りそいながらサポートしています。


山都町の農業の担い手をみんなで育てたい

――農業経験がなくても、新規就農できますか?

農業経験がないけど、新規就農したいという相談は多いですね。地元の農家さんと協働して農業研修の受け入れ体制づくりや、農業インターンシップにも力を注いでいます。町内にはお試しで1年間住める短期滞在施設があるので、そこに滞在しながら空き家を探したり、農家でアルバイトをしたり、山都町の暮らしを知ることもできます。専業でなくても、「農業プラスα」のようないろいろなカタチの新規就農者が増えたらいいですね。


――農地は探してもらえますか?

農地を紹介してくれそうな人におつなぎすることができます。新規就農者の場合、農地付きの空き家を借りたり、農業研修で知り合った農家さんや地域の人が農地を紹介してくださるケースもあります。農業は一人ではできないので、農業研修でもなるべく多くの人とつながり、いろいろなことを相談したり学べるカリキュラムになっています。座学研修の中に農業委員からの講義があり、農地紹介などをしてもらえたり、就農してからの横のつながりを作ることができるようになっています。


一人ひとりが輝ける居場所を見つけるサポートをしたい

――これから移住を考えている人に伝えたいことは?

まず大切なのは、地域の人を尊敬すること。地域の人たちの暮らしや技術、昔から伝わる風習を敬ってほしいですね。農業を単なるビジネスと捉える人には向いていないと思います。地域ならではの暮らしや考え方を自分の生活にもうまく取り入れて、地域を大切に想う気持ちがある人は、移住もスムーズに成功します。
あとは田舎暮らしを思いきり楽しむことです。移住してきた人が山都町に溶け込んで、笑顔で暮らしていると、僕もサポートして本当に良かったなと思います。
2018年度の山都町の移住者は17名。移住してきた人は、それぞれ自分も地域に何か貢献したいという思いがあって、山都町を面白い町にしていく大きな可能性を持っていると感じます。この町に住んでみたいという意志があれば、僕たちが全力でサポートします。


山都町 山の都地域しごとセンター
住所:〒861-3513 熊本県上益城郡山都町下市158<
電話:0967-72-9111
e-mail:yamato.shigotocenter@machi-y.jp
HP:https://www.town.kumamoto-yamato.lg.jp/shigoto/default.html

山都町は「農業ビギナー」も野菜の売り先に困らない

中村司郎さん
撮影:たかきあゆみ
新規就農をする際に気になるのは「販路」の問題。せっかく作った野菜も売り先がなければ、収入が安定しません。新規就農者が販路で困ることがないように、山都町にはいくつかの出荷団体が存在しています。その中のひとつである「株式会社 肥後やまと」取締役 中村司郎さんにお話をうかがいました。

販路をつなぎ、生産者のやりがいに伴走したい

――「肥後やまと」のはじまりについて

「肥後やまと」は有機農業の普及と、若い生産者を一人でも多く育てたいという想いから、平成22年に有志で生産者グループを結成。平成28年4月に有機野菜の販売に特化した株式会社「肥後やまと」を設立しました。
私も農業研修生の受け入れをしている農家の一人です。研修生の多くは、農業経験がないけれど、有機農業に興味があって山都町に来ています。ただ、せっかく野菜を作れるようになっても、販路がなくて売れなければ、生活ができない。その課題を何とかしたくて、「肥後やまと」は販路開拓と有機野菜の販売に特化しています。現在は100種類を超える野菜を取り扱っています。


――生産者さんはどのぐらいいらっしゃいますか?

「肥後やまと」には現在、約50名の会員がいます。そのうち半分は50代以下で、生産者の年齢構成は若いほうだと思います。作っている品目や売り上げなどは、すべてガラス張りにしてみんなで共有し、出荷する野菜が足りないときは、みんなで協力しながら出荷しています。


有機野菜の付加価値を伝えるために、自分たちの手で売りたい

――有機野菜の販売に特化するなかで大変なことは?

有機野菜を作るには、長いスパンが必要です。その分のコストや付加価値が値段に反映されていることを、消費者にどう理解して納得してもらうかが課題ですね。なぜ、有機野菜は高いのか?それはたくさん作れないからです。例えば、同じ面積で農薬を使った野菜の収穫量を100とするならば、有機野菜は70ぐらいしかできない。農薬を使わないので、育てる手間もかかります。
私たちの取り組みや想いを消費者に伝える一番いい方法は、自分で作ったものを自分で販売することです。そうすると、きちんと説明できますから。やっぱり、お客さんと直接話すと手応えが違います。イベントがあるときは、新規就農の人たちにもなるべく声をかけて、一緒に野菜を販売してもらっています。


売り先はある!山都町で安心して農業を始めてほしい

肥後やまとのみなさん
撮影:たかきあゆみ

――これから新規就農する人たちに伝えたいことは?

「肥後やまと」としては、新規就農した人が作った野菜を積極的に販売支援していきたいと考えています。自分の作った野菜が売れて、収入として数字が上がるとやりがいや楽しみが増えますからね。それが一番大事です。
有機野菜だけではなく、有機JAS認証を取得する手前の無農薬野菜の出荷も可能です。新規就農しても、有機JASの認証を取得するまでに少なくとも、3年かかります。その期間は、有機でもなければ、一般の野菜でもないので、それをどうするか?うちの場合は既に売り先がありますし、新規就農者の野菜を中心に入れたセットも販売できます。どんな形でも販売をバックアップできる体制があるという安心感はあると思います。


株式会社肥後やまと
住所:〒861-3784 熊本県上益城郡山都町川野362
電話:0967-72-0565

ゼロから始めた農業。思っていた以上に楽しい!

撮影:たかきあゆみ
富山県出身の上田裕之さんは、山都町の農業研修制度を利用して、2019年に新規就農しました。どのようなサポートを受けながら農業にチャレンジしたのでしょうか。移住のきっかけや農業研修制度についてお話をうかがいました。

農業経験ゼロからのスタート

――上田さんが山都町に移住したきっかけは?

僕は2016年に山都町に移住しました。妻が熊本の宇城市出身で、結婚を機に熊本で暮らそうと思っていました。山都町は農業がさかんだと聞いて、住む場所を探していたときに町役場の方や、受け入れ担当の兼瀬さんが親身に相談に乗ってくださったことが移住の決め手になりました。
移住当初は飲食店で働いていたのですが、翌年に子どもが生まれました。僕は家族と過ごす時間を優先するならば、農業のほうが自分たちのライフスタイルに合うと思いました。農業経験はゼロでしたが、飲食店を辞めて山都町の農業研修を1年受講し、今年から就農しました。


トラクターを使えるようになりたい

――農業研修はどんな内容でしたか?

山都町の農業研修制度では、月に2回、座学と生産者の圃場見学があります。それ以外は受け入れ農家さんの畑で実際に作業をしながら、多くのことを学びました。山都町には11軒の受け入れ農家があります。事前に自分が気になる農家さんを2~3軒選んで、1週間ずつ体験研修をさせてもらえるんです。お互いを知ったうえで、受け入れ先を決めることができます。
僕は初心者なので、農業機械の扱い方や、マルチの上手な張り方も習得したいと思いました。トラクターは耕し方次第で、作物の出来が変わる重要な作業ですからね。僕の受け入れ農家の大隈徹さんは理解のある方で、トラクターを積極的に使わせてくださいました。


農業は「人」とのつながりがすべて

――充実した農業研修だったのですね。

大隈さんという素晴らしい農家さんに出会い、山都町の内外にもたくさんの人のつながりができたので、農業研修を受けて本当に良かったと思います。出荷先や販路も広がるし、困ったときにすぐ相談したり、助け合える仲間がいるのは心強いです。
農業は「人」とのつながりがすべてです。野菜を作っても食べてくれる人がいなければ、やりがいや収入にならないし、一人じゃ何もできない。たくさんの人のおかげで僕は野菜を作ることができて、誰かが喜んで食べてくれる。それがすごくうれしいですね。


新規就農に挑みやすい環境がここにはある

上田裕之さん2
撮影:たかきあゆみ

――実際に就農されてどうですか?

今はグリーンリーフと里芋、玉ねぎ、ニンジン、みょうがの5種類を作っています。就農1年目はいろいろ失敗して課題もありますが、ある程度の売り上げを残せたので自分としては合格点です。


――新規就農をめざす人に伝えたいことは?

農業に興味があるならば、できるところまで突っ走ってみたらいいと思います。もちろん、無理のない範囲で。専業農家や兼業農家や農的暮らしなど、人それぞれの農業のカタチがあります。
山都町はどの農家さんも自分の仕事にとても誇りを持っていて、かっこいい。僕は富山での会社員時代、何のために生きているのか、仕事をしているのかわからなくて、もやもやしていました。せっかく仕事をするならば、自分が充実できて、世のため、人のためになることをなりわいにしたいとずっと思っていました。それが僕にとって農業だったのでしょうね。まだ駆け出しですが、農業の仕事は思っていた以上に楽しいです。自分の手で食べものを生み出すことは素晴らしいし、生きている実感があります。


たくさんの人が応援してくれる町

株式会社山都でしか
提供:株式会社山都でしか
新規就農に挑む上田さんは、農業への想いを語りながら、優しいまなざしで自分の畑を見つめていました。取材前には、近所の農家さんが上田さんの畑のあぜ道を重機で整備していました。重機をすいすいと操り、笑顔で去っていく農家さんの姿がとても頼もしく、かっこ良かったです。「たくさんの人たちのおかげで農業ができる」という喜びを上田さんはこの町で日々、実感しているそうです。

今回お話をうかがった皆さんは、山都町の有機農業や暮らしに誇りをもち、農業を次の世代につなぎたいという想いにあふれていました。山都町には安心して農業にチャレンジできる環境が整っています。

山都町で有機農業をしたいと思っている方は、ぜひ今回の記事を参考に、自分のライフスタイルに合わせた移住・就農の形を見つけてみてください。

<取材>Michiko Takasaki
フリーランスインタビュアー&編集者 熊本出身、東京在住。スタートアップや地域活性ビジネスなどの分野を中心に、編集や企画プロデュース・インタビューなどの仕事をしています。自分らしく、人生のハンドルを握って生きている人に興味があります。

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