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山都町でしかできない町づくり、ものづくりを
八田さんはカラーピーマンの生産者であり、2017年2月に設立された町づくりの会社「株式会社山都でしか」の立ち上げメンバーでもあります。「株式会社山都でしか」は、その名のとおり「“山都町でしか”できない価値」で町づくりをはかる会社で、町の資源を活かしたさまざまな事業を手がけています。設立のきっかけは山都町が主催した「食農観光塾」という地域リーダーの育成を目的とした勉強会。農家を中心に、山都町を引っぱる若手リーダーの多くが参加し「山都町の何が価値で、何が課題なのか」を掘り下げ、自分たちの手でより良い町づくりのアイディアを模索しました。
メンバーの心が一つになり、盛り上がりを見せている最中に熊本地震が発生。幸い、山都町は周囲の町に比べて被害が少なかったため、塾のメンバーで炊き出しなどの復興支援活動を行いました。一緒に汗を流し、同じベクトルで活動した仲間たちと「山都町にしかない価値を形にしよう」と「株式会社山都でしか」を設立しました。
若手で町を盛り上げよう!株式会社山都でしか設立
「食農観光塾で、自分たちの町の良さを初めて知った」という八田さん。「この町の魅力を外部の人に知ってもらう前に、住んでいる自分たちが山都町の魅力を再確認することが大事だと思い、まずは町民が楽しめる仕組みを作っています」と語ります。「アイディアが止まらない!」と八田さんが言うように、メンバーが集まると「あれはどうか、これはどうか、こうするとおもしろい」と、あふれるアイディアを元に何時間も話し合います。情熱をエネルギーに、わくわくしながら発展する山都町を目指して、八田さん達が取り組む町づくり事業の一部をご紹介します。地元の人が楽しめる町づくり事業
1. 大好評だった「レストランバスツアー」
好評だった企画の一つが、レストランバスツアー。1階にキッチン、2階は空を見上げながら食事ができるテーブル席のあるレストランバスで農家をめぐり、食材の生産背景に理解を深めつつ、有名シェフが作る料理に舌つづみ。料理はもちろん、山都町で採れた食材を使っています。通潤橋や小笹円形分水などの観光地にもバスを走らせました。町外からの参加者が多かったのかと思いきや、参加対象は山都町民が半数以上でした。山都町は平成の大合併の際に、矢部町・蘇陽町・清和村の3町村が合併してできた町。実は自分の住む地域以外のことはよく知らないという人も珍しくなく、バスツアーを終えて「自分たちの住む町はこんなに良いところだったのか」という感想が多く寄せられたそう。あらためて山都町の豊かさを、視覚・味覚を通じて感じられる時間となりました。
2. 毎年恒例「山都de呑みフェス」
町民が積極的に参加するのが交流イベント「山都de呑みフェス」。2019年で4回目の開催となり、設立から恒例行事となりつつあります。地域の夏祭りのようなものを想像するかもしれませんが、海外のマルシェのようなオシャレなイベントです。オーガニックのピーマンを使ったピザ、じゃがいもを使ったサモサ、ジビエ料理、いちごのクラフトビールなどなど、山都町の食材を使った一風変わった料理が並びます。「地元のものを地元の人が食す機会を作りたい」という思いから企画されたこのイベントは、山都でしかが目指す「地産地食」の一環。おいしい食事に加え、音楽の力もあって会場は大盛り上がり。通潤橋を眺めながら行われるこのフェスは、町民だけでなく町外からもファンが訪れるようになりました。
3. 親子で楽しむ食育体験
山都でしかは食育体験にも力を入れています。ホテル日航熊本とのコラボイベント「親子で楽しむ秋の山都町野菜農園」は、参加者が農家の元で収穫体験をし、その食材を使って料理をするというイベントです。廃校となった学校でホテルのシェフと料理をし、コース料理をいただくというなんともぜいたくな内容でした。有機農業が盛んな山都町での食育体験は、これからも需要が高まりそうです。4. 畑のコンシェルジュ
約40年前から有機農業の先進地として一目置かれてきた山都町。そんな山都町に憧れを抱き、視察に訪れる農業関係者や就農希望者はたくさんいました。しかし、農家さんが個々の訪問に対応する時間を確保するのは難しいのが実情。そこで、訪れる人たちに山都町の有機農業の魅力、そして農家それぞれの農法などを丁寧に伝えていくために考えられたのが「畑のコンシェルジュ」でした。コンシェルジュは訪問者を連れて農家を訪問し、農法の説明をしたり農業体験のサポートをしたりします。訪れる方は「忙しいのに申し訳ないな…」と恐縮することなく、たくさんの農家さんの声を聞くことができ、満足度も上がります。農家側も「本当はもっとしっかり説明したいんだけど…」という消化不良感がありません。
現在、より良いサービスを提供するために、プロフェッショナルなコンシェルジュを育成中。自治体頼みにならずに、民間で受け入れ体制を作ってしまおう!という行動力が、山都でしかのおもしろさですね。
山都でしかの今後の展開は?
農泊の実現に向けて
山都でしかが取り組む事業は、地域が抱える課題解決につながっています。その一つが、宿泊施設の問題です。山都町に観光などで訪れる人の滞在時間が短いという課題に対して、力を入れているのが”農泊”事業です。現在、農家の家にただ寝泊まりするだけでなく、農業体験も一緒にできるようにコンテンツを増やし、稼働に向けて準備を進めています。「ワクワクするような体験ができますよ」と自信をのぞかせる八田さん。まるで田舎の親戚の家に遊びに行くように、アットホームに滞在できる農泊が実現できる日が近いかもしれません。目指すは農業テーマパーク!
実は、山都でしかが目指すのは、町全体を農業テーマパークにするということ。有機栽培の野菜を採って、食べて、飲んで、遊んで、泊まるという一連の流れを山都町で満喫してもらいたいという思いがあります。農業が町の産業の多くを占める山都町ならではの観光誘客の方法です。前述したイベント企画、食育体験、宿泊施設の整備や山都町の食材の販売店や飲食店の整備も全て、この農業テーマパーク構想実現のための準備を一つひとつやっている、というところです。山都町に住む人の魅力を伝えていきたい
近年移住者が増えてきている山都町ですが、「移住を決めるポイントとなっているのは人だ」と八田さんは言います。一度山都町の人に出会うと、みんなに熱意があり、キラキラと輝く様子にほれ込んでしまうのです。もちろん山都町は空気も水もおいしいし、星は美しい。だけど一番の良さは「人」だと移住者の方からよく言われるのだそう。山都町の人、観光、農業などさまざまな資源を活用しながら今後どういった町づくりをし、過疎の地域を盛り上げていくのか。民間企業である山都でしかと行政が一体となり、同じ熱量を持って町を盛り上げていくことが重要だと語ります。
「人の良さが山都町の良さ」を筆者も実感!
取材で農家さんを訪れると、「これ、持って帰らんね?」と気前よく持たせていただき、たった2日の取材でこんなにたくさんのお土産をいただきました。これでもまだ一部です。全て体が喜ぶオーガニック!「人の良さが山都町の良さ」という八田さんの言葉をそのまま実感して帰路につきました。ありがたく噛み締めながらいただきたいと思います。全国に先駆け有機農業を推進してきた山都町には、有機農業を通じて広がるあたたかい人の輪が確かにありました。
山都でしかについて
名称:株式会社山都でしか
住所:熊本県上益城郡山都町大平301−1
HP:https://www.yamatodesica.com/
Facebook:https://www.facebook.com/yamatodesica
【番外編】山都町のおすすめ観光スポット
阿蘇外輪山に囲まれた豊かな自然、そしてのんびりとした里山の雰囲気が観光スポットとして人気の山都町。日本を代表する石橋「通潤橋」など歴史的な建造物や文化は、今も地元に根付いています。そしてお隣の宮崎県・高千穂地方とともに、知る人ぞ知るパワースポットでもあります。そんな山都町で定番の観光スポットをご紹介します。山都町を訪れる際にはぜひ立ち寄ってみてくださいね。通潤橋
水不足に悩む近隣地域に水を送るため、1854年に作られた石造りの水路橋です。当時の惣庄屋の布田保之助の指揮のもと、石工たちの技術、地元住民の寄付により完成しました。その大きさは日本最大級を誇り、1960年には国の重要文化財に指定されました。定期的に行われていた放水は圧巻の一言でしたが、現在、熊本地震の影響で放水は中止され、2020年4月の再開に向けて復旧中です。町のシンボルである通潤橋の復興を願い、夏にはここで「山都de呑みフェス」が行われます。名称:通潤橋
住所:熊本県上益城郡山都町長原
公式・関連サイトURL:https://www.town.kumamoto-yamato.lg.jp/kanko/kiji0033616/index.html
弊立神宮
天照大神が住む宮殿「日の宮」とも呼ばれている弊立神宮。およそ150段の石段を登った先にある境内は、静かで神聖な空気が漂います。その歴史は15000年とも言われており、健磐龍命が幣を立て、宇宙から降臨された神々を祀ったのが起源なのだそう。神々はここから世界各地に散らばり、現在のような人種に分かれたと伝えられています。日本列島の九州から関東に縦断する日本最大の断層帯「中央構造線」上に位置する、県内屈指のパワースポットです。名称:幣立神社
住所:熊本県上益城郡山都町大野698
公式・関連サイトURL:https://www.jalan.net/kankou/spt_43427ag2130011585/
服掛松キャンプ場
山都町のキャンプ場は県内外のキャンパーに人気。その中でも、家族連れやビギナーも利用しやすいのが服掛松キャンプ場】。広さはなんと西日本最大級!キャンプ場、ロッジ、田舎風ログハウス、シャワー、遊具設備があり、必要な道具もレンタルできます。特に田舎風ログハウスは、五右衛門風呂や囲炉裏があるなど、普段とは違うアウトドアを楽しめます。4〜10月までが過ごしやすいそうですよ。デイキャンププランもあり、ニーズに合わせて利用できるのもうれしいですね。名称:服掛松キャンプ場
住所:熊本県上益城郡山都町長崎361
公式・関連サイトURL:http://fukukake.com/
<取材>たかきあゆみ日々の営みを撮るのが大好きなフォトグラファー。興味の矛先はもっぱら「人」。 中でも農家さんはヒーローで、畑にいる人を見つけては声をかけて写真を撮らせてもらうということを趣味で続けてきました。どういう想いをかけているのか、何に人生を使っているのかをお聞きしながら撮影をする瞬間が何より幸せです。
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