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- YasuhiroOgawa
植物園に勤務していた経験を活かして、正確でわかりやすい記事を書いていきたいです。好きな花はハイビスカス。現在は、トロピカルフルーツの新しい栽培に取り組んでます!…続きを読む
ハイビスカスは、ハワイや沖縄など、熱帯地域を代表する鮮やかな花が人気の熱帯花木です。一般に夏の花として有名で、暑さに強い印象を持たれがちですが、実際の特性は暑さに強くない品種が多いです。春や秋など人間にとっても過ごしやすい季節に最もよく開花し、条件がよければ1年中開花します。
ハイビスカスとは、ヒビスクス(フヨウ)属のハワイ、モーリシャス諸島産のごく少数の原種から改良された園芸植物で、一般には鉢花として親しまれています。霜がほとんど降りない関東の海沿い以南から沖縄までの暖かい地域では、戸外で庭木として植えられています。
花色は人気があり基本色とも言える赤色の他、ピンクや黄色、白、オレンジ、さらに青に近い紫色や、茶色に近い色など、他の植物と比べても類を見ないほど非常に様々です。成長しながら枝先に花を付け、咲いた花は夜までにはしぼんでしまう一日花です。暑い季節は花は短命になりますが、涼しい季節は長持ちする傾向があり、特に大輪系の品種や最近人気のロングライフシリーズは1つの花が2~3日間咲き続けます。
花言葉は新しい恋、繊細な美です。
種類・品種の違いと育てやすい品種!
品種は、外観や特徴から主に、大輪系、在来系、コーラル系の3系統に分けられます。ただし中間的な性質をもった品種も多くあります。大輪系
肉厚の葉は縁がなめらかで大輪の花は花もちがよく、品種数が最も多く花色の変化に富みます。ただし暑さに弱く性質も弱いため、鉢物として流通することは少なくなってきています。昔ハワイで品種改良が盛んに行われたためハワイアン系の別名がありますが、現在はアメリカ本土やオーストラリアなどで新品種が多く生まれています。日本では、豪華な大輪系品種を多く見ることができる施設はほとんどなく、また入手も残念ながら困難な場合が多いです。在来系
花は小輪から中輪で、葉は淵にギザギザがあります。花色の変化は大輪系に比べると乏しいですが、性質が比較的丈夫で開花しやすいため鉢花として最も普及しています。コーラル系
花は小輪で横向きまたは下垂し、幹が太くなり背丈が高く成長します。品種数は最も少ないですが、暑さに強く丈夫なので、熱帯地域では庭木としてよく植えられています。人気の品種の詳しい特徴などはこちらの記事を確認してください。
⇨次ページ:ハイビスカスの育て方!きれいな花を咲かせるポイント
ハイビスカスの育て方!水やり・肥料・地植えなどのポイントも解説
日当たり
出典:photo-AC日当たりのよい場所を好みます。鉢植えは、温度が安定する5月以降に戸外に移動し、よく日光に当てるようにしてください。ただし厳しい暑さを嫌う品種が多いため、7~9月中旬の夏は、暑さで弱った株や大輪系品種は30%程度の遮光下か、午前中だけ日光が当たる場所に移動してください。またベランダなどではコンクリートの上に直接置くのは避け、台などの上に置いて高い位置に置くとよいでしょう。
水やり
出典:photo-AC水は鉢土の表面が乾いてから与えます。ただし7月から9月の暑い季節は、根詰まり気味だったり、よく開花している鉢植えは、晴れた日は毎朝か、夏朝夕2回の水やりが必要な時があります。水を与える際は、ハダニ等の被害を防ぐためにも株全体にかけ、鉢土内に残っている前回与えた水を洗い流すくらいたっぷりと水やりするとよいでしょう。
葉が落ちるなど調子が悪い時は、水やりを控え気味にして様子をみてください。また鉢皿にたまった水で根腐れを起こすことが多いので、鉢皿の水はすぐに捨てるとよいでしょう。
肥料
春から秋の成長期に3要素が等量か、リン酸がやや多めの置き肥を切らさないように与えてください。よく開花している時は、液体肥料も1週間に1度程度、併用して与えるとよいでしょう。成長期でも葉が落葉するなどして調子が悪い時は、肥料を与えるとさらに悪化する場合が多いので肥料は控えてください。地植え
ハイビスカスは鉢植えとして楽しむだけでなく、庭の花壇などに地植えするもお勧めです。植え付けは5月初旬頃が適期で、遅くても梅雨時までに完了するようにしてください。掘り上げる際は11月までに行い、枝葉を半分くらいにバッサリと剪定してください。掘り上げた株を鉢に植える際は、腐葉土や堆肥などの有機物を混合せず、赤玉土や鹿沼土にくん炭を1割程度混ぜた清潔な用土で使うと、秋に根を切ったことによる立ち枯れを防ぐことができます。
⇨次ページ:ハイビスカスをきれいに咲かせるポイント『植え替え』について!
ハイビスカスの植え替えの時期と方法
植え替えの時期
ハイビスカスは生育旺盛で、すぐに鉢の中が根でいっぱいに詰まってしまいます。根詰まりすると生育が衰えて花も咲かなくなり、立ち枯れなども起こりやすくなります。植え替えは、1~2年おきに行うようにしてください。植え替えの方法
植え替えは、根を切らずに鉢サイズだけ大きくする方法と、根を切って合わせて枝葉の剪定も行って鉢サイズを変えない方法があります。根を切る植え替えは5月が適期で、鉢底部分の根を中心に半分から3分の1程度切り、合わせて枝葉も同じ割合でバッサリと剪定します。
根詰まりした鉢を一回り大きい鉢に替えるような植え替えは、春から秋の成長期にいつでも行えます。鉢を購入した場合も、ほとんど根詰まり気味で植えられていることが多いので、すぐに一回り大きな鉢に植え替えてください。
適する土は?
ハイビスカスは根腐れすることがよくあるので、通気性と排水性のよい用土が適します。簡単な配合例としては、赤玉土7割に腐葉土を3割程度混ぜた用土がありますが、5号鉢までは赤玉土を小粒、6号鉢以上は中粒を使うとよいでしょう。さらに他の配合例としては、赤玉土、鹿沼土、パーライト、腐葉土、ピートモスをそれぞれ同じ割合で配合した用土もオススメです。ハイビスカスはやや酸性の土を好むので、酸性の鹿沼土を配合したほうがよい結果がでるようです。レッドスターなどの丈夫な品種は比較的用土を選ばないので、市販の培養土でもよく育ちます。ハイビスカスの剪定は?
鉢花として一般に売られている株は、矮化剤が散布されているので購入後ほとんど枝が伸びませんが、来春から枝が伸び始めます。剪定は休眠期の前、秋に室内に取り込む際に行うのがオススメです。全体の枝を、半分から3分の1程度を残してバッサリと切ってください。また成長期前の3月下旬から4月中旬までに、冬に間延びした枝なども切るとよいでしょう。ちなみに春から秋の成長期に強く枝を切ると、花が長期間開花しなくなるので注意してください。ハイビスカスの病気・害虫とその対策
ハイビスカスは、他の植物と比べても病害虫の被害にあいやすいです。枝葉の先などの柔らかい部分や蕾などによく発生するアブラムシ、葉を食害するヨトウムシやハマキムシ、バッタ類、ハモグリバエ、枝葉がよく茂った部分につきやすいカイガラムシなど様々な害虫がつきます。鉢植えの場合は、あらかじめ土の上に粒剤をまいて予防するのがオススメです。また害虫が付きだすと数日で凄い被害を受けることもあるので、葉の裏など日々よくチェックして、発見したら早めに防除してください。最近の家庭用薬剤は、野菜の収穫前日にも使えるような安全性の高い製品があります。また食品成分などを使った製品も人気があり、初期のアブラムシ等の発生時や予防などによいでしょう。
オススメの病害虫対策グッズ
⇨次ページ:ハイビスカスの挿し木の方法や冬越しの仕方、花が咲かないときの対処法など
ハイビスカスの増やし方!挿し木の時期と方法
さし木で増やすことができますが、大輪系は難しいです。適期は、在来系と大輪系は4月中旬から6月、コーラル系は5月から8月です。枝を10~12cmほどの長さで切り口を斜めにするように切り、葉を2~3枚残して取り、大きな葉は半分ほど切ってさし穂とします。さし床には水はけのよい清潔な用土(鹿沼土、赤玉土、バーミキュライト)が適します。挿し木する際は、遮光下や日陰の涼しい場所で行い、さし穂の切り口に発根剤を付けると成功率が上がります。
さし木を行った後、さし床は強風や直射日光の当たらない明るい場所に置きます。水やりは、さし木後から1週間は毎日水を与えて用土を乾かさないようにしますが、その後は徐々に鉢土の表面が乾いてから水を与えるようにします。常に用土を乾かさないように管理すると、さし穂が腐って失敗しやすくなります。
ハイビスカスの冬越しの仕方は?
ハイビスカスの鉢植えを冬越しさせて来年も楽しむためには、11月までに室内の日当たりのよい窓際に移動してください。よく日光の当たる場所に置けば、11月中はよく開花することが多いです。冬が近づいて開花が少なくなってきたら、徐々に水やりの回数を減らすようにしていき、寒い時期は乾かし気味に管理してください。また生育が停止している冬は、肥料を与えないようにしてください。最低温度12℃以下にならない日当たりのよい場所では、冬でも開花することは珍しくありません。開花している場合は、通常よりやや薄めの倍率にした液体肥料を10日に1回程度与えてください。
霜があまり降りない地域では、戸外でも越冬します。ただし置き場は、冬の冷たい北風や西風が当たらない場所に置くことがポイントです。また失敗しやすい小株は、室内で越冬させたほうがよいでしょう。
ハイビスカスの花が咲かない!そんな時は?
花が咲かないだけでなく株も元気がないような場合は、日光や水分が不足しているかもしれません。用土が湿っているのに水を与えて用土を過湿にしたり、規定量より肥料を多く与えて根にダメージを与えている可能性も考えられます。大輪系の品種と他の品種も、厳しい暑さが続くと花が咲かなくなるので、涼しい場所に移して様子を見れば秋にまた開花します。植え替えを怠って根詰まりすると、すぐに花が咲かなくなることも多いです。
生育が盛んで株が元気なのに花が咲かないことは、コーラル系品種でよくあります。夏にチッソなどの肥料分が多いと起こりやすくなるので、骨粉などリン酸が主体の肥料をやや控えめに与えるとよいでしょう。また大輪系の品種も、夏に弱っているように見えなくても開花は休みがちになります。
ハイビスカスをもっと知りたい方におすすめの本とサイト
ハイビスカスは5000以上の品種数があるといわれ、驚くほど多様な花色があります。品種をコレクションして育てるのも楽しいですが、入手方法やハイビスカスについてもっと詳しく知りたい方は、日本ハイビスカス協会のサイトにアクセスしてみてください。日本ハイビスカス協会 http://www.hibiscus-japan.org/
またハイビスカス専門の本としては、月ごとの管理方法等を解説した以下の本をオススメします。
5つのポイントをおさえて、たくさんの花を咲かせよう!
ハイビスカスの育て方として、5つのポイントが特に重要です。
①日光によく当てる
②夏は涼しく
③病害虫に注意
④植え替えを1~2年おきに
⑤冬越しは日光がよく当たる室内に置く
以上のことを踏まえて日々の観察を欠かさずに育てれば、ハイビスカスもその愛情に応えてよく花を咲かせてくれると思います。
ハイビスカスは夏の花として一般に流通しているので、夏の終わり頃によく販売店で少し弱った鉢植えなどが安く売られていることがあります。株が弱っている理由はハイビスカスのシーズンが終わりのせいと思われがちですが、ほとんどは根詰まりと肥料不足、夏の暑さが原因です。夏終わり頃に弱った株を安く購入しても、一回り大きな鉢に植え替えて肥料を与えれば、1か月くらいで回復し花を咲かせます。本来は秋のほうがハイビスカスの見ごろであり、また年間を通して開花させ続けるのも意外と難しくありません。花がひとつふたつあるだけで周りの雰囲気が明るく変わるハイビスカスを育てて、多くの花を咲かせてみてください。