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農業を始めるには|未経験から新規就農をめざす方法と準備しておきたいこと


未経験から農業を始めるために知っておきたいことを総まとめ!必要な費用、どんな作物を作るのか、農業を始める場所や土地の確保については就農前に必ず考えておきたいことです。未経験でも大丈夫か。何歳までに始めるのがいいのかといった不安もあるでしょう。農業を始めるまでに乗り越えるべきハードルをクリアにしておきましょう。

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大野 千遥

2023年4月中山間地の耕作放棄地で新規就農。耕作放棄地の開墾から始めました。耕作放棄地を生み出さない仕組みや、地産地消で農家も地域も潤う仕組みを日々模索しています。ライスワークとしてライター・マーケターとしても活動中。2児の母。…続きを読む

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圃場を歩く農家

出典:PIXTA
農業を始める方法は独立就農だけではありません。この記事ではこれから新規就農をしたいと考える方向けに3つの就農スタイルとそれぞれの特徴、実際に農業を始めるときに必要なお金や準備についてお伝えします。

農業を始めるにはどんな方法がある?新規就農の3つのスタイル

出典:写真AC
新たに農業を始めたい方は、新規就農の3つのスタイルについてまずは知っておくとよいでしょう。
  • 親元就農(事業継承)
  • 雇用就農
  • 独立就農・自営
それぞれの就農スタイルの特徴を知っておくことで、自分の理想に近い形で新規就農することができるはずです。ここでは上記に挙げた3つの就農スタイルについて簡単に解説します。

親元就農(事業継承)|経営面のサポートを受けながら就農できる

まずは親元就農です。農家出身であれば、そのまま親の農地を引き継げることが多いでしょう。就農するまでのハードルはさほど高くないのが特徴です。また、就農後もこれまでの経営経験を踏まえたアドバイスをもらいながら実際に経営を任せてもらうことができるのも大きなメリットです。ただし、就農場所・栽培作物・販路などはある程度縛りがあるので、経営方針を大きく転換したい場合には話し合いが必要になることが多いです。

実家が農家ではない場合は、後継者のいない高齢農家を里親にして事業継承することで、親元就農と似たような経営環境で就農することができるでしょう。


雇用就農|経験を積むことに集中できる

2つ目は大規模農家や農業法人に就職する、雇用就農というスタイルです。雇用就農は、給料をもらいながら農業に携わることになるため、経済的なリスクを負う必要がありません。独立就農や親元就農を考える場合でも、まずは雇用就農をして農業に必要な経験と知識を得るという人も多いです。就農直後は農作業を中心に任されることも多い一方で、慣れてくればマーケティング面などで経営に参画できる可能性もあります。

当然ですが、決められた業務を決められた時間にこなしていくことになるので、栽培したい作物がある人や栽培方法へのこだわりを持って農業に取り組みたい人には向かない就農先もあります。就農ビジョンが明確にない場合は、金銭的リスクを負う必要のない雇用就農でまずは経験を積むのがおすすめです。


独立就農・自営|全て自分の裁量で決定できる

3つ目は独立就農・自営です。独立就農の一番の特徴は、就農する地域・栽培作物・栽培方法・販路など、全てにおいて自分の裁量で決定することが可能な点です。農家の人脈や農地などのリソースが一切ない状態からスタートする場合、独立就農を目指す人が多いです。ただし独立就農は就農準備に時間やお金がかかることも多いので、「農家になりたい」「自分の裁量で農業をしたい」と考える人向けの就農スタイルといえます。


未経験で農業を始めるなら農業研修への参加もおすすめ!

出典:写真AC
農業を始めるためにはさまざまな知識が必要です。最近では、農業経験が全くない人でもゼロから農業を学べる研修制度が充実しています。自分の目的にあった農業研修に参加して、基礎的な経験・知識を得ることで、スムーズに就農のスタートを切ることができるでしょう。研修制度内で農地探しや営農計画の作成などを手厚くサポートしてくれるところも多いです。


農業を仕事にするなら年齢的にはいつまでに始めるのがベスト?

みかんの木の前にいる男性
出典:PIXTA

新規就農を考えている方の中には、ご自身の年齢がネックになっている方もいるかもしれません。ここでは年齢別就農人口を簡単に紹介します。農林水産省「令和3年新規就農者調査結果」によると、令和3年の実際の就農者数は次のようになっています。
年齢就農者数全体新規自営農業就農者※新規雇用就農者※新規参入者※
15~19歳910人(1.7%)200人(0.5%)700人(6.0%)10人(0.2%)
20~29歳6,100人(11.6%)1,930人(5.2%)3,700人(31.9%)470人(12.2%)
30~39歳5,740人(10.9%)2,480人(6.7%)2,170人(18.7%)1,080人(28.1%)
40~49歳5,680人(10.8%)2,580人(6.9%)1,970人(17.0%)1,130人(29.5%)
50~59歳5,880人(11.2%)3,870人(7.7%)1,470人(12.7%)540人(14.0%)
60~64歳9,760人(18.6%)8,700人(23.5%)820人(7.0%)240人(6.2%)
65歳以上18,230人(34.8%)17,130人(46.4%)740人(6.3%)360人(9.3%)
合計52,290人36,890人11,570人3,830人
※「新規自営農業就農者」:主に親元就農を指す。「新規雇用就農者」:法人による雇用就農を指す。「新規参入者」:主に独立就農を指す。
農業を始める人口のうち、全体として圧倒的に多いのは60歳以上です。しかし内訳を見ていくと、雇用就農や独立就農は若者に多いことが読み取れます。特に独立就農などの新規参入であれば、さまざまな種類の補助金を活用できるなど若いうちに就農するメリットが多い場合もあります。

農業を始める時に気になるお金のはなし

出典:写真AC
農業を始めるときに多くに人にとって気になるポイントとなるのが「お金」です。ここでは必要な準備資金や実際の農家の年収について紹介します。資金について深く考えずに始めてしまうと、就農後に資金繰りが苦しくなってしまったり、離農せざるを得なくなってしまう可能性が高まります。新たに就農するときは、補助金の活用なども視野に入れましょう。

準備資金はどの程度必要?資金がゼロでも始められるか

就農に必要な資金は栽培作物や工夫次第で異なります。一般社団法人全国農業会議所全国新規就農相談センター「令和3年度新規就農者の就農実態に関する調査結果」によると、栽培品目ごとの資金と就農1年目の費用の平均値は以下の通りです。
栽培作物合計自己資金総額農地・機械・施設の取得・営農用
水稲・麦・雑穀類・豆類457.8万円302.2万円
露地野菜401.0万円237.8万円
施設野菜518.5万円320.9万円
花き・花木407.9万円275.0万円
果樹491.6万円247.2万円
その他耕種作目490.1万円302.0万円
酪農706.7万円581.3万円
その他畜産393.3万円269.7万円
その他653.4万円322.3万円
「令和3年新規就農者の就農実態に関する調査結果」を元に作成
配偶者が生活費を賄う場合や、借り入れで賄う場合など、個々の状況により資金の準備方法は異なります。必要な資材を廃材活用などで工夫をすることができれば営農資金を削減することは可能かもしれませんが、当面経営が安定しないことを前提に生活費は必ず確保しておく必要があります。

農家の年収はどれぐらい?

気になる年収ですが、こちらも栽培作物や経営規模により大きく異なります。

農林水産省「令和3年農業経営統計調査」によれば、個人農家と法人経営体を合わせたすべての農業経営体の平均所得は125.4万円となっています。個人経営では115.2万円、法人経営では424.5万円です。

個人農家の所得があまりにも少ないと感じた方もいるかもしれませんが、このデータには零細農家や兼業農家も含まれています。専業農家のなかには日本のサラリーマンの平均年収以上を稼いでいる人、1,000万円以上の利益を上げている人も多数いますので、取り組み方によっては平均値以上の利益を出すことも可能です。


農業を始める時に利用できる補助金・支援制度はある?

新規就農時に活用できる代表的な補助金は以下の2つです。
種類期間支援額
就農準備資金(準備型)研修期間中に最大2年間150万円/年
経営開始資金(経営開始型)経営開始後最大3年間150万円/年
注意点としては、それぞれ就農時の年齢が49歳以下でなければならないところです。また、交付は半年ごとになるため、当面の生活費は別途準備しておかなくてはなりません。
上記補助金は国が自治体に対して交付を行うものであるため、申請や交付手続は自治体を通して行う必要があります。

近年は自治体や協議会等の地域による支援策も充実してきていますので、チェックしておくといいでしょう。
全国新規就農相談センター「農業をはじめる.JP」

農業を始めるために考えておきたい4つのこと

都市部の農地
出典:写真AC
特に非農家出身でこれまで農家との関わりがなかった人の場合、農業を始めるには多くの壁を乗り越えなければなりません。ここでは非農家出身で新たに農業(特に独立就農)に取り組みたい人向けに、農業を始めるまでに考えておくべきことや、あらかじめ準備が必要なものについてお伝えします。

1. どこで農業を始めるのか

農業でまず必要になるのが農地です。具体的にどの地域で農業をしたいかを考えておく必要があります。
例えば、都心に住んでいる人であれば移住しなければならないかもしれませんが、周辺に農地がたくさんあるような地域に住んでいるのであれば、住居を変えずに農業ができるかもしれません。

また、農地は住居に近接していたほうが作物の管理や農機具の保管・メンテナンスなどあらゆる作業がしやすいため、農地に合わせて引っ越しを伴う方も多いです。農業をする場所は住居とも密接に関わるため、家族との意向のすり合わせも大切にしましょう。

2. どんな作物を栽培するか。もうかる作物はある?

仕事として農業に取り組む場合、限られた農地で効率よく収益をあげる必要があります。また、農地によって育ちやすい作物とそうでない作物があるため、条件に応じて利益が出る作物を検討しなければなりません。

栽培したい作物が既に決まっている方は、作物に応じた農地を探すのがよいでしょう。
小規模な面積からのスタートとなる場合は反収の高いトマトやきゅうり、ピーマンなどの果菜類から始める方が多いです。とはいえ初期投資の大きい稲作や畜産は、その分利益率も大きくなりやすいので、やってみたい方もいるかもしれません。機械やハウス、畜舎など準備段階で大きな投資をする必要がある場合は、後継者不足で悩んでいる高齢農家を引き継ぐなどの方法も検討してみましょう。


3. 必要な農機具・資材

栽培する作物によっては、準備段階で大型機械が必要になったり、ハウス建設が必要になったりすることがあります。大きな設備投資が必要ない場合でも、マルチや支柱など、作物に応じて資材を準備しなければなりません。

補助金や助成金の活用により初期投資の自己負担を抑えられる可能性もありますので、就農を希望する地域での制度を調べてみるとよいでしょう。

4. 収入確保の方法

順調に営農開始できたとしても、収穫期までは収入はありません。当面の生活費や経費を賄えるように準備が必要です。
収入確保の手段には補助金やアルバイト・副業などがあります。生活費はなるべく貯蓄で賄い、補助金やアルバイトで得たお金を新たな投資に回している新規就農者もいます。また、当面の収入確保の手段を考えると同時に、収穫期が来るまでに販路を整えておくことも重要です。

新規就農者にとってハードルが高い「農地探し」と「移住生活」

地域の草刈り
出典:写真AC
新規就農者にとって特にハードルが高いといわれているのは農地の確保です。自分が希望する地域で農地が見つからず、準備で半年以上を要するケースや、当初は意図していなかった移住を伴うケースもあります。

Uターン、Iターンによる移住生活と新規就農を同時に考えている人は、地方暮らしの理想と現実についてあらかじめ知っておく必要があります。地域行事やその地域でのルールなどを事前に聞いておくと、移住後の無用なトラブルを防げるでしょう。


農業を始めるために必要な準備を始めよう

キャベツの収穫
出典:写真AC
農業を始めるにはお金や農地の準備、場合によっては移住などについて、自分に合った条件で適切な情報を集める必要があります。全くコネクションがない場合、始めるまでの準備は大変かもしれませんが、自分の生活スタイルや理想に応じて就農スタイルを選べるのは農業の良いところといえます。

新規就農に少しでも興味があるのであれば、相談窓口に行ってみたり、既に活躍している現役農家に話を聞きに行ってみたりするのがおすすめです。実際に話をすることで、就農予定地にマッチした最新情報を手に入れることが可能です。

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