個人が農地を購入するには/借りるには【新規就農】

個人が農地を購入、借りる方法についてお伝えします。農地の選び方、情報の集め方、購入と借りるのはどちらがよいか、価格の相場、許可を得る条件など、初めて農地を取得するときに役立つ情報をまとめました。


キャベツ畑

出典:写真AC
農業を始めるときに必要となるのが農地。農地はどうやって取得すればよいのでしょうか?ここでは個人による農地の取得にスポットを当てていきます。

農地を購入する/借りるには農業委員会の許可が必要

畑
出典:写真AC
2019年に一般社団法人全国農業会議所・全国新規就農相談センターが行った「新規参入者の経営資源の確保に関する調査結果」によると、就農時の農地の確保について、約63%の新規就農者が「苦労した」と回答しています。(「非常に苦労した」33%、「少し苦労した」30.6%)

実は農地は宅地のように自由に売買できるものではなく、農業委員会に申請して、農地法による許可を受ける必要があるのです。

農業委員会ってどんな組織?
農業委員会は市町村役場の中にある行政委員会です。農業委員会には大きく分けて二つの役割があります。
1. 農地法や農業経営基盤強化促進法などの法令に関する審議や議決を行うこと
2. 「農地の利用の最適化」を進めること。具体的には、新規就農の促進や農地の有効利用についての業務
新たに農業を始める人の相談窓口を設けている都道府県農業会議や全国農業会議所は、この農業委員会の系統組織です。


農地を購入する/借りるのに必要な資格や条件

トマトを栽培する男女
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農地を買ったり、借りたりするときには、原則として農地法第3条に基づく許可が必要となります。
許可は居住地の市町村の農業委員会に申請します。居住する市町村以外の農地の売買や賃貸は、農業委員会を通じて都道府県知事に申請して許可を得る必要があります。
許可を受けないと法律上の効力が生じないため、農地を買っても所有権の移転ができません。

許可を得るためには、次のような要件を満たす必要があります。
・農地を取得する人(またはその世帯員)が、取得する農地と現在所有する農地のすべてを耕作すること
・農地を取得する人(またはその世帯員)が、農作業に常時(原則年間150日以上)従事すると認められること
・農地を取得する人(またはその世帯員)の総経営面積が、原則として北海道(道南を除く)は2ha以上、都府県では50a以上になること
・農地を取得する人(またはその世帯員)が行う農業が、地域における農地の効率的かつ総合的な利用に支障を生じるおそれがないこと

この許可は、投資目的で土地を買うなど、農地利用の観点で好ましくない売買や賃貸を防ぎ、農地が有効に活用されることを目的として行われているものです。そのため、許可を得るための大きなポイントは、農地が十分に耕作されるかという点にあります。

もう一つの取得方法|農業経営基盤強化促進法による方法

並木道のある風景
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農地法3条以外の農地の売買・賃借として、農業経営基盤強化促進法の市町村農用地利用集積計画による農地の権利設定があります。これは、農家などの申し出によって、市町村が農用地利用計画案を作成し、農業委員会が決定することによって農地の利用権が設定される事業です。
この事業においては、農地法第3条の許可を得る条件のうち、最低限取得面積の要件が適用されません。また、貸し手、売り手にも条件や税制でメリットがあります。

農地を購入する or 借りる その違いは?

costと書かれたブロック
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新規就農者の土地の取得状況をみると、北海道では4割程度が、都府県ではほとんどの新規就農者が農地を借り入れによって確保しています。(「新規就農者の就農実態に関する調査結果」一般社団法人全国農業会議所・全国新規就農相談センター)

農地の借り入れと購入の違いは、経費の扱いです。農地の購入代金は必要経費として認められませんが、農地の借地料(地代)は農業経営上の必要経費として認められるため、借り入れの方が税制の上で有利です。

農地の価格、その相場は?

稲穂
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農地を買うにしても借りるにしても、その価格はどのくらいなのでしょう。一般財団法人日本不動産研究所は「田畑価格及び賃借料調べ」という調査を実施しています。田畑の価格及び賃借料は下落傾向にあります。
区分価格(10aあたり、円)前年比較(円)
田価格

689,080

▲12,421

畑価格424,921▲5,091
田賃借料8,791▲127
畑賃借料5,014▲42
出典:(一財)日本不動産研究所2020年3月末現在「田畑価格及び賃借料調べ」
農地の価格の相場は、都道府県によって異なります。日本不動産研究所のウェブサイトでは、都道府県ごとの平均価格も公表されています。

農地の探し方

トウモロコシ畑
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どこで就農する?

就農する地域をどこにするのか、まずは大まかな地域を想定しておく必要があります。

居住地というのも一つの考え方ですし、栽培したい作物に適した気象条件というケースもあるでしょう。あるいは、出荷や販売のことを考えて、消費地へのアクセスの良さを条件にする場合もあるかもしれません。

いろいろな条件を考慮して、就農地域を選んでいきましょう。

就農地域を考えるときのポイント
・出身地、現在の居住地、実家への近さ
・栽培する作物
・出荷や販売のしやすさ
・行政などの支援体制
・生活環境(学校や医療など、家族の生活のしやすさ)


必要な農地面積は?

必要な農地面積は、栽培作物によって異なります。水稲や酪農の場合は広い面積が必要ですが、野菜や花き栽培では比較的小さな農地面積でも農業を始めることができます。

なお、施設栽培は露地栽培よりも小さな面積で始めている人が多いです。農業に従事する人数や、機械化の状況なども考えて、農地の面積を検討することが必要となります。
参考:就農1年目の農地の経営面積、借入面積(新規参入者、単位a、%)
販売金額第1位の作物経営面積(平均値)借入割合(平均値)
水稲・麦・雑穀類・豆類148.393.4
露地野菜76.695.2
施設野菜47.791.3
花き・花木40.072.7
果樹67.888.1
酪農3748.535.5
その他の畜産141.171.6
その他62.895.9
出典:一般社団法人全国農業会議所/全国新規就農相談 センター「新規就農者の就農実態に関する調査結果」

農地選びのポイント|日当たり、土壌、水路などの要素は?

土を持つ手
出典:写真AC
日当たり、土壌などの生産条件も栽培作物によって異なります。生産条件は作業効率にも影響を与えるのでチェックしましょう。

農地を選ぶときのポイント
・日当たり
・傾斜
・栽培作物に必要な水は確保できるか(稲作の場合は広い平地で用水が通っているかなど)
・果樹の場合は水はけ
・過去に栽培された作物
・有機農業を目指す場合には、過去の農薬や化学肥料の使用状況
・近隣の環境


農地情報の入手方法は?

パソコンと葉3枚
出典:写真AC
全国の農地の情報は、「全国農地ナビ」から得ることができます。「全国農地ナビ」は一般社団法人全国農業会議所が運営しているウェブサイトで、農業委員会などが備えている農地台帳と農地に関する地図について、農地法により公開するとされた一部の情報が掲載されています。

農地を取得するまでのハードル

畑にいる男女3人
出典:写真AC
農地の情報を入手したとしても、簡単にその農地を得られると思わない方がいいかもしれません。冒頭でご紹介した「新規参入者の経営資源の確保に関する調査結果」には、「地主さんとの接点が少なく、農地があっても借りることができない」「地域の住民から受け入れられるのに時間と労力がかかった」という新規就農者の声が紹介されています。

農地の持ち主は、大切な農地を利用する人を慎重に見極めようとします。また、農業委員会に飛び込み、農地の取得について相談しても、一度の訪問では農地の買い手や借り手として適していると認められることは難しいでしょう。

農地取得のためには、農業への意欲や人柄、能力を認められることが必要となります。
では、認めてもらえるには、どうしたらよいのでしょうか。一つの方法として、新規就農相談センターなどに相談して、自分のやりたい農業や栽培作物に適した地域の紹介を受け、農業研修を受けたり、農業法人で働いたりすることがあります。農業研修先の農家や農業法人経営者などに、地域の農業委員会を紹介してもらうことが近道になるケースがあるようです。そのほか、農機具を持っているか、取得する農地に通える地域に住んでいるか、しっかりした営農計画を持っているかなどもチェックされるポイントといえるでしょう。

代々続くタマネギ農家の多い淡路島で、信頼を積み重ねて土地を借りられるようになったという迫田瞬さんの経験談はこちら。

農地取得は資格取得のようなもの

ガッツポーズをする男女
出典:写真AC
農地を得るには、普通の土地を買ったり借りたりするのとは違うハードルがあります。まずは、どのような農業をしたいかのビジョンを持ち、就農地域を定め、地の利を見極めること。自分にとっての条件を考え、購入するか、借りるのかを検討すること。そして、新規就農者向けの機関に相談し、農業技術を身につけるとともに、信用を培うことも大切です。

労力がかかるステップですが、だからこそ農地を得ることは、農業をすることを認められたパスポートを得るようなものです。自分の農地に立ったとき、きっと夢への一歩を踏み出した喜びがあふれるのではないでしょうか。

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神山 朋香
神山 朋香

大学卒業後、地方公務員として消費者教育や労働福祉の普及事業に従事した後、AGRI PICK編集部に。AGRI PICKでは、新規就農に役立つ情報などを執筆しています。

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