ライター たかはしひろみ 千葉大学園芸学部で造園を学び、卒業後は住宅メーカーの外構部門で設計・施工管理を担当。現在は自宅の庭をコツコツ改造しながら、庭づくりや花の育て方などの記事を執筆している。大好きなクスノキをなんとかして寒い地方で育てられないか、模索中。…続きを読む
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ニッサボク、スズランノキとともに、世界三大紅葉樹に数えられるニシキギ。秋になると木全体が鮮やかな深紅に染まる姿は、とても魅力的です。日本各地に自生するニシキギは、日本の気候風土に適しているので丈夫で育てやすく、庭木にもぴったりなんですよ。
ニシキギの基本情報と鑑賞や剪定など手入れの時期 出典:写真AC
ニシキギは
ニシキギ科ニシキギ属の落葉低木 で、日本や朝鮮半島など、アジアの温帯地域に広く自生しています。同じニシキギ科ニシキギ属には、生垣としてよく使われるマサキや、オレンジ色の果実が目を引くマユミ、小さくかれんな花が風に揺れる様が美しいツリバナなどがあります。
ニシキギの学名や科、属など基本情報 英語名/学名 Burning Bush,Cork Bush, Winged Spindle Tree, Winged Euonymus / Euonymus alatus 科・属 ニシキギ科・ニシキギ属 特性・形態 落葉性低木 樹高 3m 原産地 日本(北海道、本州、四国、九州)、朝鮮半島、中国東北部 USDA zone 4a~9b 耐寒性 強い 耐暑性 強い 耐陰性 強い
USDA zone とは United States Department of Agriculture Plant Hardiness Zone(米国農務省 植物の耐寒性地帯)の略。米国農務省 が開発した、寒さの段階を13のレベルに分け、植物の耐寒性レベルを数値とマップで明瞭化した指標です。造園やガーデニングをするうえで、植物がどの地域で、どれくらいの寒さまで耐えられるのかを確認するために使います。日本では気象庁の観測データを元に、都道府県市町村ごとにレベル分けされています。※指標は、植物を屋外で育てたときの目安。 参考:Japan Plant Hardiness Zone
ニシキギの鑑賞や剪定など手入れの時期 イラスト:AGRI PICK編集部
開花期:5月中旬~6月 結実期:10~11月 鑑賞期:10〜11月(紅葉) 植え付け、植え替え:12〜1月上旬、2月中旬~3月上旬 肥料:1月(寒肥)、3月(鉢植え・追肥) 剪定:12〜3月中旬 ニシキギの花、実、枝、葉の特徴|画像つきで詳しく紹介! 撮影:たかはしひろみ
ニシキギというと鮮やかな紅葉に目がいきがちですが、よく見てみると、小さなかわいらしい花を咲かせたり、美しい実がなったりと、ほかにも魅力がいっぱい。花や実、葉などの特徴がわかると、近縁種との見分けも簡単にできるようになります。
ニシキギの花 出典:写真AC
ニシキギの花は5月中旬~6月に咲きます。 新芽と同じような淡い黄緑色の花弁で、5mmほどと小さく目立ちにくいですが、4枚の花弁からなる花は、清楚な美しさがあります。花は雄花・雌花があり、雌花の方が花弁が離れていて、一回り大きく見えます。
ニシキギの実 出典:写真AC
花の咲いた後、黄緑色だったニシキギの実は、
晩秋の紅葉のころに濃い赤色になり、果皮がはじけて中からオレンジ色の種子が顔を出します。 このニシキギの
種子には毒性があり、人間が食べると腹痛、嘔吐、下痢などの症状を引き起こすことがあります。 ニシキギの葉 撮影:たかはしひろみ
ニシキギの葉は3~5cmほどの大きさの先がとがった楕円形で、葉の縁には細かな切れ込み(鋸歯)があり、枝から2枚が対になって出ています。 10〜11月に紅葉し、冬期は落葉しますが、3月下旬くらいに芽吹いて新しい葉を広げます。新芽を山菜として食する地域もあります。
ニシキギの枝 出典:写真AC
ニシキギの枝には、コルク質で板状の突起物がついています。
この突起物は「翼(よく)」と呼ばれ、ほかの近縁種でもみられない、ニシキギ特有のものです。 翼は若い枝に多く見られますが、何のためについているのか、よくわかっていません。ニシキギの枝は見た目の面白さやその存在感から、生け花やフラワーアレンジメントの花材としても利用されています。
ニシキギの剪定の仕方|正しい剪定の時期やきれいな姿を楽しむコツ 出典:Pixabay
ニシキギは、剪定しないで放っておくと、枝が伸び過ぎて間延びした形になったり、あちらこちらに伸びた枝で樹形が乱れたりしてしまいます。適切な時期にポイントをおさえた剪定をして、きれいな姿のニシキギを楽しみましょう。
ニシキギの剪定は年1回 出典:写真AC
ニシキギの生長はそれほど早くありませんが、萌芽力(ほうがりょく※)が強く、枝が混みやすい木です。すっきりとした樹形を保つためには、剪定が不可欠。年1回、定期的に剪定をして風通しを良くすることで、病害虫の予防にもなりますよ。
※植物が芽吹いて生長する力
ニシキギの剪定は休眠期の12~3月中旬に 出典:写真AC
ニシキギの剪定は、葉が落ちて休眠している12~3月中旬に行うのが基本。 ただし、徒長枝を切り詰めたり、生垣の形を整えたりするために、4~11月の生育期に軽めの剪定してもOKです。ただしこの間は、時期によって花芽や実を切ってしまうことがあるので注意してください。
寒冷地では新芽が開いて葉が固まった、7~11月に剪定するのが一般的です。生育期の剪定は樹勢を弱めることがあるので、猛暑日は避けましょう!
休眠期に間引いてすっきりとした樹形に 撮影:たかはしひろみ
萌芽力が強く、枝が混みやすいニシキギは、
落葉して休眠している時期に剪定して、しっかり形を整えるのが基本。 生育期に刈り込んだ生垣も、休眠中に不要な枝などを間引いて風通しを良くしておきましょう!
休眠期とはいえ、剪定はニシキギにとってストレスになること。この間でも雪が降るような厳冬期は避けて作業しましょう。
不要な枝など、剪定の基本に関する記事はこちら 剪定するときは下の方から大胆に 撮影:たかはしひろみ
ニシキギは萌芽力が強いため、剪定したところからたくさんの芽が吹いてしまいます。
先端の方を止めるだけでは、そこから放射状に芽吹いてさらに樹形が乱れてしまうことも。 すっきりとした樹形にするためには、混みあっている部分の枝を根元から大胆に切り取りましょう。
ニシキギの枝は葉と同じで、2本が対になって出ているので、三又(みつまた)に分かれているところが多いのが特徴。この三又部分の真ん中を切って芯をとめると、サイズ調整も可能です。
プロが教える!ニシキギの育て方&植え方のポイント5つ 出典:写真AC
ニシキギは丈夫で育てやすい庭木ですが、美しい紅葉を楽しむためや、元気に育てるためにはいくつかのポイントがあります。育て方のコツをおさえて、可憐な花や紅葉と実のコントラストなど、さまざまなニシキギの魅力を堪能しましょう。
Point1.きれいな紅葉を楽しみたいなら日当たりのいいところに 出典:写真AC
ニシキギは耐陰性があり、日陰から日なたまで、場所を選ばない庭木です。 ただし美しい紅葉を楽しみたいときには、発色を良くするためになるべく日当たりの良いところに植えましょう。
一般的に、昼と夜の寒暖差が大きく、日当たりの良いところにある木が美しく紅葉するといわれています!
Point2.植えてから1年はしっかりと水やりを 出典:Pixabay
ニシキギは比較的乾燥に強い木ですが、植えてから根付くまでの1年間は、乾いたらしっかりと水をあげてください。2年目以降は雨にお任せして大丈夫です!
特に夏場の水切れには要注意!2年目以降でも、日照りが続くようなときには水をあげてください。