- Miyuki Tateuchi
アメリカのミシガン州に居住中。海外の農業情報や普段の生活を通して感じた食農トピックを紹介します。祖父が農家だった影響もあり、四季折々の「旬」を大切にしたいと思っています。…続きを読む
前回はブルーベリー狩りとパイコンテストの様子をお伝えしました。
今回のテーマは、ファーマーズ・マーケット。ミシガンでは中心部のデトロイトだけでなく、小さな街でも「市」が毎週開催されています。
新鮮な野菜を手に入れたい場合には、ここへ来れば間違いなし。アメリカでのマーケットの様子やマーケットでの買い物の醍醐味(だいごみ)をお伝えします。
開催は暖かい季節限定。イベント感覚で来ても楽しいマーケット
デトロイトのイースタンマーケットのように年中開催されているものもありますが、多くの場合が屋外開催で期間が限定されています。ミシガンでの時期は、気温が上がって外に出たくなってくる5月初めから10月末までとなります。
具体的な品目だと、母の日向けの花の販売に始まって、カボチャが並ぶハロウィンで幕を閉じる感じ。
最終日に行くと、“See you next spring.”という言葉をかけられ、「あー、今年の市も終わってしまった。これから寒い冬の始まりだ」と少し感傷的な気分にもなります。
平日開催の場合もあり
曜日は週末だけではなく、平日に開催されることもあります。大小問わずさまざまな街で開催されており、販売する農家の人も1カ所だけでなく、近隣を巡っています。
以前、夏場に旅先のマーケットに行ったら、3カ所の違う街で同じ出店者に偶然遭遇したこともありました。(私も追っかけのようですが…。)
新鮮でローカルな野菜が手に入るファーマーズ・マーケットは、いつ行っても人気です。
人々の生活の一部であり、多くの固定ファンがいる「なくてはならない存在」なのです。
野菜のほかにも面白いものがいっぱい
多くの人の目的は農産物を買うことですが、私が出向くところではイベントも開催されていて、マーケットのついでに立ち寄る人も。ギターで歌を歌うミュージシャンやマジシャン、最近ではタップダンサーが来て子どもたちが飛び入りで一緒に踊っていました。ほかにも、地元のアーティストが作品やアクセサリーを出品していたり、燻製(くんせい)ソーセージのお店や魚屋さんが出張販売していたり、家庭で使うナイフを研いでくれるサービスがあることも。
買い物だけでなく、行ったら面白いことがありそうな空間になっています。
新鮮さは折り紙つき。珍しい野菜にもトライできるのも魅力
我が家のイチオシは、トウモロコシ。夏場にかけて店先にトウモロコシが並ぶ時期になると、買い物にまったく興味がない夫が自主的にマーケットに行くようになります(笑)。それくらい、新鮮なトウモロコシは味が違います。店主に聞くと、出店の前の日に収穫しているとのこと。
皮の中の粒はつややかで、水で洗った時に水をはじく様子がまた新鮮なこと、この上なし。
食べたときにぷちっとした感触がしっかりあり、その甘さが「スーパーで売られているものとは違う」と思わせてくれる、明らかに違いがわかる一品になっています。
ナスもおすすめ。バラエティ豊かな品種が魅力
ナスも違いがわかる一品。ガクのトゲがしっかりしており、切ったとき、中が真っ白になっています。スーパーで買ったものは収穫から時間が経ち、中の種が黒っぽく変色していることが多いので、マーケットのナスを初めて調理した時、「明らかな違い」がわかりました。
普段はあまり見かけない、白っぽいライラック色のナスやまだら模様のもの(日本名だと「ゼブラなす」)も。
値段は品種にかかわらず、1つ1ドルと明朗。1つから買えるので、今まで食したことがないものも気軽に試すことができます。
毎回同じ種類の野菜を調理していると、料理にもついつい飽きが出てしまいますが、バラエティに富んだ野菜を見かけると気持ちもアップ。自分の創意工夫にも火がつき、料理を楽しめる気がします。
色鮮やかなピーマン類
パプリカとピーマン、どちらもナス科トウガラシ属の植物ですが、アメリカでは種類も豊富です。こちらも大きさ、色にかかわらず1つ1ドル。パプリカは紫色やチョコレート色のものもあり、マーケットでもきれいな色が目をひきます。
パプリカは中を切ってみるまで、わたの大きさや果肉の厚みがわからず、時々ハズレと思うものをひいてしまうこともありますが、実はわたや種も食べられます。
加熱してスープにしてしまったりやオーブンでの丸焼きがおすすめです。
ピーマンやパプリカの品種について知りたい人はこちらをチェックしてみてください。
葉物野菜は感動のおいしさ
圧倒的な鮮度の良さを感じられるのがレタス。普段、スーパーではしなびていたり、売り場のシャワーにぬれて水浸しだったりするため、葉物といえばパック入りのベビーリーフを選んでしまいがちですが、ファーマーズ・マーケットではここぞとばかりレタスを購入します。
アメリカの野菜がぬれている背景はこちら
夏場は日中の気温が高くなるため、若干ぐたっとした葉に見えますが、以前話題になった「50℃洗い」をせずとも、水で洗うだけでシャキっと感が戻ってきます。リーフレタスはやわらかい食感もまた魅力です。
海外にいて強く感じたのが、日本の野菜の鮮度の良さ。日本では、スーパーでも「野菜の鮮度が悪くて欲しい物が買えなかった」という経験は、ほとんどなかったように思います。
これは生産者と流通業界の努力の賜物。日本の国土がアメリカほど広くないという事情もあるかもしれませんが、消費者にもっと認知されてもよいことだと思います。
対面のマーケットに加えて、オンライン販売に取り組む出店者も
ファーマーズ・マーケットは新鮮さや生産者と直接対面できるライブ感が魅力的ですが、決まった日時になかなか行きづらいという点がデメリットです。この点を商機と捉え、ファーマーズ・マーケットへの出店日に近隣の地域へのデリバリーをしてくれる農家があり、私もこの夏大いにお世話になりました。
地域で一定の利用希望者がいると配達可能地域となり、利用者は最初に40ドルを支払うと、シーズン中の配送料や追加手数料は一切かかりません。
毎週15ドル以上の購入が求められますが、事前のオンライン注文や農家が選んだ詰め合わせ(Farmer’s Choice)により、希望した品物を受け取ることができます。
生鮮食品ならではのタイムリーなメッセージ通知
アメリカでは新型コロナの感染が広がる前から、宅配便の荷物が直接の受け渡しではなく、玄関前に置かれることが多くあります。配達状況を知らせるために、電話のテキストメッセージに報告が届きます。生鮮食品の場合も例外ではなく、むしろ生ものだけにより細やかな通知が送られてきました。
完了報告だけでなく、配送当日には配送予定時刻を分単位で、配達の順番が近いことも逐次連絡が入る驚きの精度でした。
消費者にとってのメリット
このサービスを利用してよかったのは、手にする食品の種類が増えたこと。野菜だけでなく、この農家が製造しているジャムやソース、ピクルスなどの瓶詰め商品は味のバラエティに富んでいます。他の商業者ともタイアップしており、少し遠方で気になってもなかなか買いに行けなかった有名なパン屋さんのパンも食べてみることができました。肉や卵の取り扱いもあります。
ファーマーズ・マーケットに出品するクオリティなので、野菜の鮮度も抜群。ここには農家主導で流通のネットワークを作り、住民の食生活を向上させてくれる新しい取り組みがありました。
参考:アメリカではCSAという取り組みもありますが、こちらも生産物を受け取れる日時が限定されることが多いという課題があります。
CSAについてはこちらで解説しています。
もうすぐ秋が深まる10月。そろそろハロウィンの話題ものぼるようになってきました。
アメリカでは、カボチャの種類が豊富。次回は日本ではあまり見かけないカボチャを紹介します。
ハロウィンとカボチャの関係についてはこちら
バックナンバーはこちら
「アメリカ生活アグリ日誌」Miyuki Tateuchi プロフィール
就職情報会社、外資系人事コンサルティング会社を経て、2017年よりアグリコネクト株式会社でリサーチ業務に従事。2019年より夫の転勤に伴い、アメリカのミシガン州在住。成長期真っ只中の2児の母。農業と地域、世界の料理などへの興味を元に、情報発信していきます。